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柔らかいが強固な守りの植物
しおりを挟む「これがあったから、リクの魔力とかが流れて来ないのだわ? リクの魔力が吸い取られているのだわ?」
「エルサちゃん?」
「わからないのだわ。どうしてこうなっているのか、だわ……でもとにかく、この草を掻き分けるなり焼き払うなりしていかないと、中にいるはずのリクの所には行けないのだわ!」
「よくわからないけど、どうにかしないといけないって事よね……一番堅くて難関だと思っていたリクさんの結界、それを越えた先に今度はこれって、きつすぎるわ」
生い茂った、というにはあまりにも成長し過ぎている植物を前に、羽ばたいて空中に留まるワイバーン。
その背中にいる私にくっ付いたままのエルサちゃんが、驚きが混じった様子で植物を見て考察しているみたいだけど……結局よくわからなかったみたい。
とにかく、やっぱりリクさんが関係しているって事よね……厄介だわー。
ついついエルサちゃんの口癖が移ってしまう程、どうしていいのかわからない。
植物だから、焼くか斬るかすればそれで良さそうだけど……あ、引っこ抜くっていうのは無理ね。
掴む事はできるけど、引っ張ってもビクともしないんだもの。
それに大量にあるから……一つや二つを引っこ抜いたところで、意味はあまりなさそうだわ。
ちなみに、リーバーが焼いても駄目だったのは今目の前で行われた事だけれど、斬るに関しては……。
「んっ! んーっ! やっぱり駄目なの。斬れるけど、すぐにまた伸びるの」
リーバーの近くで、ワイバーンに乗ったユノちゃんが植物のすぐ近くまで行って剣を何度も振るって、効果がない事を証明していたからね。
焼いた時と同じで斬れるのだけれど、斬った分だけすぐに伸びてしまう。
斬られた植物は地面に落ち、ほんの一瞬、まばたきをしている間に見逃してしまいそうな間で燃え、消えて行くわ。
……これは斬ってすぐに突入する、というのもなしね……伸びる速度が早すぎて、取り込まれてしまいそうだし、現に……。
「あぁ、私の斧が!!」
右手で振るう、ワイバーンの斧で植物を斬り、さらにその中へと以前から持っていた小さめの斧を投擲するフィネさん。
でも、その斧は斬って開いた部分に入り込んだ後、伸びた植物に絡め捕られてしまったわ。
そのまま、別の草と折り重なって植物の一部のように……いえ、オブジェのようにすらなってしまっているわね。
あれを人の身でやったら、抜け出せなくなってしまいそうだから得策じゃないわ。
「リク様の力、リク様が育てた植物……それはつまり、リク様の分身と言っても過言では……」
「過言なの! アマリーラはいい加減、正気に戻るの!」
「失礼な! 私はいつでも正気だ、ユノ殿!」
今にも植物に向かって飛び込みそうなアマリーラさんは、ユノちゃんに任せておくとして……とりあえず正気ではないと私も思いますと、念だけ飛ばしておきましょう。
「焼いてもダメ、斬ってもダメ……どうしたら……」
結界みたいに、強固なわけじゃないから斬るのに次善の一手はいらないくらい。
だけど、さっきからユノちゃん達が何度もそうしているように、斬る先から伸びているのだから意味がないわけで……。
次善の一手、こういう封じ方というか通用させない方法があったのね。
正直、それを知っても何も役に立ちそうにはないけれど。
「これがリクのしている事なら、斬り続けてもあまり意味はないのだわ。けど、やるしかないのだわ。無限ではなく有限のはずだと信じるしか……だわ」
「そう、よね……」
エルサちゃんの言う通り、いくらリクさん……もしくはリクさんの体を支配している、負の感情がやっている事だとしても、無限に続く事はないのだと信じたいわ。
今までだって、リクさんが魔力を使い過ぎて倒れてしまった事があるように、リクさんの魔力がどれだけ多くとも、どれだけ負の感情とやらで魔力が回復されているとしても……。
それはいつか限界が来るはず。
そう思って、自分も植物を斬るためにこれまで使っていた魔法具の槍を握りしめたわ。
ワイバーンの槍は、結界を破った直後に柄以外が消滅してしまったから、代わりに持って来ていたのだけど。
あの槍、魔法は使えないまでも重さや丈夫さ、そして穂先の切れ味まで全てがいい物だったのに。
なんて、急遽使っていた槍の事を惜しみながら、植物に向かって構えたその時……。
「ふっ! はぁ! んむ……?」
「アマリーラさん?」
ユノちゃんに言われて、渋々ながら大きな剣を軽々と振り回して、植物を大量に斬り払うアマリーラさん。
だけど何度目かの剣を振るった後、急に動きを止めた。
どうしたんだろう?
「いや、今人のような何かが中に見えたような気がしてな。ユノ殿、私が切り開くから中を見てくれないか! さすがに、剣を振るった直後に見るのは難しい」
「わかったの! 思いっ切りやるの!」
「人のような……? もしかして……」
リクさん、なのかしら?
いえ、でもここは地上からはかなり高い場所のはず。
そこまで伸びている植物の内部に、私達がいる高さと同じ場所に、リクさんがいるのは少しおかしい気がするわ。
「行くぞ……せいっ!!」
「んー……あ、あれは!?」
「ユノちゃん、何があったの!?」
大きく振るわれるアマリーラさんの大剣……植物の葉なのか茎なのかを、幾重も斬り取る。
その斬り取った空間に、ユノちゃんが顔を覗き込ませて驚きの声を上げたわ。
ユノちゃんが驚くって、よっぽどの事よね……一体何があったのかしら。
可能性は否定したけどリクさんかもしれない、という期待感はやっぱりあるけど。
「ロジーナがいたの! ロジーナが、絡め捕られているのが見えたの!」
「ロジーナちゃん……」
リクさんじゃなかった……という落胆はけれど、先に可能性を否定していたおかげでそれ程でもない。
でも、少しだけ槍を握る力が弱まったのは許して欲しい。
「むぅ、あんまり気は進まないけど……皆で協力してロジーナを助け出すの! もしかしたら、この気持ち悪いくらい伸びる植物をなんとかできるかもしれないの!」
「わかったわ!」
「承知した!」
「リク様のためになるのならば!」
「了解したわぁ、頑張るわねぇ~」
どういう事かはわからないけれど、ロジーナちゃんを助け出すというユノちゃんの叫びに応えて、皆が動き出す。
アマリーラさんとユノちゃんの周りに、リーバーに乗った私だけでなくフィネさん、リネルトさんも集まってきた。
リネルトさんは、植物の周囲をワイバーンで回るようにしながら、高度を変えつつ色んな所を斬り付けていたようだけど……こっちに来たって事は成果はなかったみたいね。
「アマリーラが大きく斬り開いて、リネルトが細かく斬って伸びる植物を止めるの。フィネが中に残った斧を投げて、モニカが突入。ロジーナを回収したら、絡め捕られる前に私がすぐに引っ張り出すの!」
ロジーナちゃんとは気が合わないからなのかしら、顔をしかめながらも私達に指示を出すユノちゃん。
その指示に従って、全員が動き出す……ワイバーン達もリーバーも、乗っているそれぞれの人達の意思を反映するように、手足となって動いてくれた――。
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