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植物への突入
しおりを挟む「リク様への道は、私が斬り開く!! 待っていて下さいリク様、今行きますっ! せあぁぁぁ!!」
アマリーラさんが大きく叫び、ワイバーンが植物のすぐ横を通過する勢いも加え、横にした剣を大きく振り抜く。
さすがと言うのだろうか、斬り裂かれた植物は切り離された上部が地上に落ちていくのと同時に、人が数人並んで通れるくらい、大きく深い空間を作った。
けど、今はまずロジーナちゃんの回収だから、リクさんの所に行くわけじゃないんだけど……まぁ、ここ最近のアマリーラさんの行動や言動を見ていると、それが原動力になるのならいいんじゃないかとすら思えてきているんだけどね。
……リクさんの所に行くのは、私だからなんてちょっとした対抗心も沸いているのも、否定はできないけれど。
「リネルト!」
「はい! ふっ、はぁっ!」
植物を斬って離れる瞬間、アマリーラさんがリネルトさんに声を掛ける。
アマリーラさんの動きに追従するように、ワイバーンに動いてもらっていたリネルトさんが、目で追う事が難しい速度で剣を振るう。
斬られた直後からすぐに伸び始めていた植物が斬られ、さらに深く斬り進められる!
「見えたわ!」
「間違いなくロジーナなの」
リネルトさんの後ろで、突入を待つ私の目にはっきりと、植物の蔦にも見える茎のような物に絡め捕られているロジーナちゃんが見えたわ。
ロジーナちゃんがいるからなのか、ほんの少しそこだえ他よりも空間があるわね。
「動いていないけど……大丈夫、なのよね?」
「多分、意識を失っているだけなの。死んでいないのは間違いないの。じゃなかったら、私はここにいないの」
はっきりとは見えないからわからないけれど、絡め捕られたままのロジーナちゃんが一切動いていないため、不安に駆られて呟く私にユノちゃんが答えてくれる。
ロジーナちゃんにもしもがあったなら、ユノちゃんがここにいないという意味はよくわからないけど……今は余計な事を心配している余裕はないわね。
なんとしてでもあそこから助け出さないと!
「ふっ、はっ、せい!! ……くっ、これ以上は!
さらに斬り進んだリネルトさん……だけど、大きく開いているのもあって植物の再生速度と拮抗し始めたようね。
多分、とてつもない速度で剣を振り続ける事からの疲労もあるんだろうと思うわ。
結界を破る時からずっと、ろくに休憩もしていないし。
「フィネさん、お願いします!」
「できるだけロジーナの下を狙うの!」
「難しい注文ですが、承知しました! ワイバーン、少し上へ! ……ここ! せやぁっ!」
頃合いを見て、フィネさんに声を掛けるリネルトさん。
ユノちゃんからの声と合わせて、ワイバーンを上昇させたフィネさんは、斬り開いた空間を維持しているリネルトさんの頭上から、斧を投げ込む。
ロジーナちゃんがいるのは、アマリーラさんが斬り開いた部分よりさらに下になるわ。
リネルトさんが植物に張り付くようにしながら、剣を振るっているのでそこを飛び越えるようにして狙うのは難しい。
それを、高い位置に行って狙いやすくしたのね。
フィネさんが投げた斧は回転し、ロジーナちゃんがいる空間の途中にある植物、その蔦のような茎を斬り裂いて行く。
そうして、ロジーナちゃんを絡め捕られている場所の少し下部分、狙い通りだと思うけどそこに突き刺さるフィネさんの斧。
それはおそらく、空間を閉じるのを遅らせるための布石みたい。
斬られた先から、再生を始めて伸びる植物だけれど……斧が突き刺さった部分は再生をせず、しかも周囲の植物は斧を絡め捕ろうとする動きをしているように感じられた。
詳細な説明はなかったけれど、ユノちゃんはこれをわかっていて狙ったのかもしれないわね。
何故ユノちゃんがわかったのか、とかそんな事は考えない。
だって、私達にわからない事……エルサちゃんすらわからない事ですら、ユノちゃんは知っている様子を見せる時があるもの。
とにかく私達はそんなユノちゃんがやろうとしている事に、全力で従うだけ。
それが、リクさんを助け出す一番の方法だと信じているから。
「モニカ、今なの! また伸び始める前にロジーナを掴むの!」
「えぇ! リーバー、お願い!」
「ガァゥ!!」
ユノちゃんの叫びに答え、乗っているリーバーにお願いして突入。
ばっさばっさと羽ばたいていた翼を小さく畳み、斧を投げ終えたフィネさんと、若干速度が落ちつつも剣を振るい続けるリネルトさんの間を通過し、斬り開かれた植物の中へ!
「ロジーナちゃ……っ!?」
「こっちに伸びてきているのだわ! 絡め捕ろうとしているのだわ!」
斬り開かれた空間に入り込んだ瞬間、さっきまで一定の速度で再生して伸びようとしていた植物が、私達に向かってその茎を伸ばしてきた。
まるで意思でもあるかのように。
内部に入った異物を排除、もしくは絡め捕って動けなくするかのように……。
「ガァ!?」
「リーバー!?」
伸びた茎の一本が、リーバーの畳んでいた翼に絡み付いた。
このままじゃ、ロジーナちゃんに届くまでに私達が身動きできなくなる……!
「ガ……ガァァァ!!」
だけどリーバーは雄叫びと共に、翼に絡み付く茎を引き千切り、ロジーナちゃんへと向かう。
さすがワイバーン……いえ、リーバーね。
そうして……。
「グガァァァァ!!」
「え、ちょ! リーバー!?」
もう少しでロジーナちゃんの所へ辿り着く……と思った瞬間、顔を上げたリーバーが口から炎を噴射。
そういえば、再生能力の高いワイバーン達の中で、唯一魔法が使えるんだったわね。
って、そんな事を考えている場合じゃなくて……このままじゃロジーナちゃんまで焼けちゃうわ!
「大丈夫なのだわモニカ。燃えていないのだわ」
「え、あ……」
頭にくっ付いたままのエルサちゃんに言われ、よく見てみると……。
吐き出された炎は、突き進む私達の先にある植物を多少焼いて、空間を広げた……けど、それだけだった。
あれだけの火を放てば、燃え広がってもおかしくないのに。
「植物自体に、魔法に対するなんらかの抵抗がされるようになっているみたいなのだわ。まったく意味がないわけじゃないみたいだけどだわ……火に対してなのか、魔法に対してなのかわからないけどだわ、とにかくロジーナも含めて燃える程ではないのだわ」
「そう、みたいね……ロジーナちゃんも絡め捕られている茎が減っているし。リーバー、ありがとう」
「ガァゥ!」
理由はわからないけれど、とにかく魔法もしくは火が効きにくいって事よね。
まぁ、そもそも斬っても斬っても再生し続ける植物なんて聞いた事ないし、そんな不思議な特性を持っていてもおかしい事じゃないわ。
とにかく、リーバーにお礼を言って少しだけ余裕ができた空間を進む。
ぐったりとして動かず、本当に生きているのかすら疑わしいロジーナちゃん。
絡め捕られているロジーナちゃんの近くで、リーバーが体を傾け、限られた空間内で滞空状態になる。
そのリーバーの首辺りまで移動し、だらんと垂れ下がっているロジーナちゃんの右手に、私の手を伸ばした……。
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