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植物を維持し成長させている力の源
しおりを挟む「えぇ。開けた門は一つだけじゃない。一つだけでも、私やユノの干渉力を全て使うくらいなのにね……リクは二つ開けたのよ」
「高まっていた魔力と、流れて行った感情……それだけでできるとは思えないけどなの。でも、実際に目の前にあるから、信じないわけにはいかないの」
「えっと……つまり?」
ユノちゃんとロジーナちゃんのやり取りを、私は理解する事ができず思わず声を出した。
ちらりと見れば、フィネさんだけでなくアマリーラさんやリネルトさんも、よくわからないといった表情をしていたわ。
「魔物を全て消滅させた赤い光は皆見たの。この植物は、あの赤い光と同様の力……と言えばいいの?」
「なんで私に聞くのよ。むしろこっちはユノの方が詳しいでしょうに。まぁ、厳密には違うけど、人間から見ると同じと言ってもいいんじゃないかしら」
「赤い光と……っ!」
ユノちゃんとロジーナちゃんの言葉を聞き、頭に浮かぶ魔物達を消滅させた赤い光。
アマリーラさん達も同じだったのか、私と同時に植物の方を驚愕の表情や目で見て、体を離すような動きをした。
だって、今まで知らなかったから近寄って攻撃していたけど、あの赤い光と同じだと言うのならこれは、私達を消滅させるような物に見えてしまったから。
「今更気付いて驚いているようだけど、特に害はないわ。いえ、中に入らなければ害はない、といったところかしら。中にいればどうなるかは……まぁ、私を助け出した事でわかっているでしょうけど。とにかく、これには近寄ったり触れた程度で何かが起こるような物じゃないわ」
「中に入らなければ……」
ロジーナちゃんが茎に絡め捕られていたのは皆見ている。
幸いながら無事だったけど、身動きが取れないくらい茎が絡んでいたあの様子から、害はないとは言えないんじゃないかしら?
まぁ、確かに触れたくらいでは何もないんでしょうけど……私達が斬っても、ただ伸びて再生するだけだったから。
でも中に入るのは危険って事は……もしかして!
「っ! リクさん、リクさんはどうなの!? この中にリクさんがいるのに……!」
「あぁ、リクは無事よ。というか、これがまだここにこうしてある。それだけじゃなく、力の吸収と生長を繰り返しているのはリクがいるからよ」
得体のしれない植物、そしてそれにリクさんの力が使われている。
それはロジーナちゃんのように、力を吸われているのかと一瞬思ったけれど、それとは少し違ったみたい。
「……それじゃあ、これはリクさんが……」
「さっきからそう言っているじゃない」
「簡単に言うと、これは内部に入った異物を絡め捕り、その異物から力を吸収するの。だからロジーナはさっきあぁだったんだけどなの。そして、吸収する事だけでなく斬っても伸びるのは、吸収した力だけでなくリクが力を注いでいるからなの。それがリクの意思かどうかはともかくとして、門を開いて現出させた存在の力でもって、ここにあるの」
「数千や万の生き物をならともかく、私の力を吸収したくらいじゃほとんど意味はないから、結局はリク一人の力ね」
「それはつまり……」
「これがこうして生きている限り、リク自身は間違いなく無事って事なの」
「そうなのね……良かった」
リクさんが無事……すべてを理解する事はできなかったけれど、私にはそれがわかっただけでも十分。
ロジーナちゃんが落ちないように片手で支えながら、もう片方の手でホッと胸を撫で下ろしたわ。
「そう安心してもいられないわよ? 現状あれが吸い取る力は限られている……そうなると使われるのはリクの力」
「リクさんの……それって」
私が少しでも安心した様子を見せたのに気付いたロジーナちゃんだけど、それを否定するように首を振った。
使われているのがリクさんの力、それを補うように誰かから力を吸い取ったりはできていないわけで。
ロジーナちゃんを助け出したから、もう完全にリクさんの力のみって事になるのでしょうね。
「どれだけリクが馬鹿魔力を持っていようと、上限を越えて魔力や力を与えられようと、限界はあるわ」
上限を越えた魔力や力っていうのは、センテ周囲に渦巻いていた負の感情……というものなんだろうと思うわ。
けどそれにだって、そしてリクさん自信にだって限界はあるっていうのは当然ね。
これまでにも、魔力を使い過ぎて何度か倒れてしまった事があるくらいだし。
「私やロジーナもそうだけど、限界はあるからリクにも当然あるの。今は人間に近いけど、本来の状態でもそうなの」
「本来の……そうなのね」
リクさんから聞いた話では、ユノちゃんは創造神様……らしい。
嘘だとは思っていないけど、無邪気に笑っているユノちゃんを見ていると、正直なところ信じられないというの本音だけど。
これまでの活躍やリクさんの言う事だから、一応は納得しているわ。
そしてそんなユノちゃんと関係がありそうなロジーナちゃんも、はっきりとは聞いていないけど、多分相応の存在なんだと思う。
じゃないと、二人でヒュドラーの足止めやリクさんと協力して、レムレースとヒュドラーの討伐なんてできるものじゃないから。
そんなユノちゃん達にも、今ではなく本来の創造神様の状態だったとしても限界があるらしい。
まぁ、比べる相手が神様っている時点でリクさんのおかしさを感じるけれど、それはとても納得できる話でもあるわね。
「だから、すぐにどうこうという事はないと思うけど、もしリクを止めるのならこのまま見ているわけにもいかないわ。いえ、今のこれを止めるだけなら、放っておいてもいずれ力が尽きてなくなるのでしょうけど」
「放っておくって、そうしたらリクさんは……?」
「当然、力を使い果たすわよ。力の源がなくなってしまえば、維持はできなくなる。道理よね」
力を使い果たすって事は、つまりリクさん自身が死んでしまうって事。
そんな事、絶対に受け入れるわけにはいかないわ。
ロジーナちゃんの話を聞いて、焦りと共に植物を見る私……フィネさん達も同じく、植物を睨むようにして見ているみたいね。
特にアマリーラさんなんて、今にも剣を振りかざして向かおうとするのを、リネルトさんに止められているわ。
単純に剣を振り回してもどうにもならないのは、ロジーナちゃんを助け出す前にやってわかっている事。
だから、今はむやみやたらに飛び込むんじゃなくて、どうやってリクさんを助ければいいのかを考えるべきね。
「焦る気持ちは……私としてはわからないけど。このままリクが自滅してくれた方が都合がいいし。けどまぁ、もうしばらく猶予はあるわ」
私達の様子を見て、呆れたような声をだすロジーナちゃん。
あまりユノちゃんと仲が良くないのはわかっていたけど、リクさんをどうしても助けたい……と思うような子ではないみたい。
まぁ、あくまで一時的な協力関係なだけらしいから、それも仕方ないわね。
「猶予があるのは、リクの力がまだまだ尽きないからって事なの?」
「それもあるけど……それだけじゃないわ。今もだろうけど、リク以外の力を吸い取って使っているのだろうから」
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