神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
1,362 / 1,955

攻撃をされる心配なし

しおりを挟む


 本当のリクさんならそんな事をしないけど、今は偽物が意識を乗っているためか、こちらに攻撃をする危険性に怯えた様子のエルサちゃん。
 それができるのなら、私もエルサちゃんと同じように怯えていたのかもしれない、と思うと偽物側についたように私を止めようとするのは理解できるわね。

「危険なんてないわよ、エルサちゃん。まぁ、周囲の植物が蠢いているから、もし近付いたら絡め捕られるとかはあるかもしれないけど……ここはこうしてリクさんの体のために空間が空いているから、壁になっている方に近付かなければ問題ないわ」

 大きく、広がるためなのか、周囲の植物は茎と葉を今も動かしている。
 草原の草花や、森の木々が風に揺られているのとは違い、まるで意思を持っているかのように不自然な動きをしているから、蠢いているという表現がぴったりね。
 ただ、ここに来るまでと違って壁になっている植物は、私達の方に伸びては来ない。

 きっと、リクさんが……力の源であるリクさんの体があるこの空間を、維持するためなんだろうと思うわ。
 近付いたら、その限りではなさそうだけど。

「そ、そうかもしれないけどだわ。リクが……表面の意識に出ているのが、私達に敵意を向けて攻撃でもしたら、危険過ぎるのだわ」
「安心してエルサちゃん。あの偽物が私達を攻撃する事はできないわ」

 開いている片方の手で、エルサちゃんを撫でながら安心させるように言ったわ。
 ……小さくなっても、リクさんが好きそうなモフモフは健在なのね。
 知っていたけど、やっぱりエルサちゃんのモフモフは心を穏やかにさせてくれる……だからって、偽物に対する怒りが完全に収まったわけじゃないけど。
 まぁ、我慢しきれずに爆発なんて事にはならないくらいにはなったかしら。

「っ!」
「ど、どういう事なのだわ!?」

 私の言葉に、目に見えて動揺する偽物。
 エルサちゃんも動揺しているけど……これは、私の言葉の意味を計りかねているだけね。
 偽物の方はちゃんと意味がわかっているんだろうけど。

「さっきから、動いていないのがその証拠。よく考えてみて? 魔物も人も関係なく、全てを飲み込もうとしているはずなのに、私達はまだこうしていられるわ。それは隔離結界のように、リクさんの本当の意思が私達を守ろうとしているからじゃない」
「……確かにおかしいのだわ」
「本当に、さっきの言葉通り魔物も人も関係ないと思っているなら、リクさんの振りをする必要すらないのよ。私達を騙そうとする前に、さっさと排除すればいいだけなんだから。ちなみに証拠は、偽物の同様ね。さっきから目の色が、目まぐるしく変わっているわ」
「……っ!」

 ほら、私の言葉にまた動揺した。
 青い目が黒い目になり、黒い目が青い目になる。
 さっきまで、ジッと見ていないと見逃しそうだったのに、今は黒い目になった瞬間がよくわかるわ。
 ただ……見開いて私を見ているその目は、青い目だと驚きや焦燥などの動揺が見て取れるけど……黒い眼の時はそれよりも怯えが見え隠れしているのは、なんだか納得がいかないけど。

 もしかして、リクさんが私を怖がっているとかかしら?
 リクさんに注意した時とか、何度か同じ目をしているのを見た事があるけど……。
 本当のリクさんを取り戻したら、ちょっと問い質す必要があるかもしれないわね。

「本当に、モニカの言う通りなのだわ。目の色がさっきよりも、はっきり変わっているのだわ。確かに考えてみれば、こうして話をしているだけでも不思議なのだわ。リクの体なら、邪魔をする私達をさっさと排除すればいいし、できないわけがないのだわ」

 ようやく、エルサちゃんも理解したみたいね。
 今リクさんを乗っ取っている意識……いえ、リクさんの体そのものが動けない事を。
 私達にその力を向けられない事を。

「私やエルサちゃんだから、という楽観はできないわね。言葉通り、リクさんの体を使っているのは青い目の意識みたいだから。リクさんの意思じゃない以上、私達を守ろうとかそういう考えはないはずよ」

 リクさんの意思が関係しないのなら、私達は邪魔者だから余計な事はせず、守ろうなんて考えも一切ないはず。

「もしかしてだわ、ユノ達が捕まった事や、モニカに対しても絡め捕ろうと伸びてきていたのは……偽物とは別なのだわ?」
「それも多分そうね。私達を狙って来ていたから、意思が介在しているようにも感じたけど。でも、よく考えてみれば、フィネさんの斧にも反応していたのよ」

 思い出すのは、ロジーナちゃんを助け出すために突入する直前の事。
 フィネさんが投げ込んだ斧は、ロジーナちゃんが捕まっていた場所の下に突き刺さって再生を阻害していたけど、植物はその斧も絡め捕ろうと茎をのばしていた。
 とにかく、内部に入った異物を絡め捕ろうとするかのように……。

「つまり、防衛本能のようなものかしら? 植物に意思があるのかはわからないけど、入り込んだ物をとにかく捕まえる、ただそれだけの事」
「……成る程なのだわ。大きく広がり魔物や人を包み込み、そして内部に入った物をとにかく絡め捕って力を吸い取ろうとする。それは、偽物が操るとかそういうのではなく、ただの特性や性質だったって事なのだわ」

 力の源、発生の原因である偽物が植物を操っているのではなく、ただそこに発生させて必要な力を与えているだけ……だと思うわ。
 それを証明するように、私とエルサちゃんが話して解き明かす程、偽物が動揺しているのが手に取るようにわかる。
 だって、目の色が変わるだけじゃなく、その目をあちこちにさまよわせているから……目は口程に物を言う、というのはリクさんだったかエルサちゃんから聞いた言葉だったかしら。

「くっ……あは、あはははははは!! そうだよ、その通りだよ! この緑の力は、ただそこに存在して力を吸い取り、広がり、大きくなって全てを飲み込むだけのもの! 俺が操作する事はできないし、力を与えている以上ここから動けない!」

 急に狂ったように笑い出した偽物は、ついに私達の言っている事が事実だと認めた。
 これ、緑の力っていうのね……植物だから緑なのかしら? 確かに茎も葉も濃い緑だけど……安易な、とまでは思わないことにしておくわ。
 魔物を消滅させたのも、ただ赤い光と呼んでいるだけだし。

「でも、だからそれがどうしたって? ただ君達が俺に直接やられないというのがわかっただけで、どうにもできない。緑の力はこのまま広がり続ける。それを君達が壊す事はできないだろう? それに、俺にしたって君達がどうにかできたりはしないんだ!」

 偽物が声を荒げ、腕を振り回す。
 確かに言われた通り、私達に植物……緑の力とやらはどうにかできないわね。
 リクさんの力が尽きるか、もっと大きく広がって魔物や人を巻き込み、そこから力を吸い取るのかのどちらが早いかってところでしょうけど。
 既にユノちゃん達が捕まっている以上、多分前者は期待できない……期待したくもないわ、それはリクさんがいなくなるって事でもあるから――。


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる

暁刀魚
ファンタジー
 社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。  なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。  食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。  そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」  コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。  かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。  もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。  なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。  カクヨム様にも投稿しています。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。 彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。 剣も魔法も得意ではない主人公は、 最強のメイドたちに守られながら生きている。 だが彼自身は、 「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。 自分にできることは何か。 この世界で、どう生きていくべきか。 最強の力を持つ者たちと、 何者でもない一人の青年。 その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。 本作は、 圧倒的な安心感のある日常パートと、 必要なときには本格的に描かれる戦い、 そして「守られる側の成長」を軸にした 完結済み長編ファンタジーです。 シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。 最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。

処理中です...