神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

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本性を現す狂気

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「何を言っても、何を確信しても、俺はここで緑の光に力を与え続ける。魔物も人も関係なく、全てが消えてなくなるまで……どうせ俺も……この意識も! なくなればいい!」
「本性を現したのだわ。負の感情……憎しみ、悲しみ……人や魔物の思念が凝り固まって、膨れ上がった意識、なのだわ」
「自分も含めて、世界を恨んでいっそなくなればいい、なんて自滅するような方向になってしまったってところかしら」

 声はリクさんの物だけれど、段々と本物の振りをしていたさっきまでとは変わってきたわね。
 これが、エルサちゃんの言う通り本性ってところなんだと思うわ。
 けど、リクさんの体を使ってそんな事、させられるわけないじゃない。

「絶対、そんなことさせないわ。迷惑極まりないわよ……消えたいなら、その意識だけ消えればいいじゃない」
「できれば苦労はしないよ。でも、俺を、僕を、私を……殺したのは人と魔物。自分を殺した人が憎い、生きたかったのに殺した魔物が恨めしい。自分だけが、僕だけがただ消えていくだけなんて許せない。私が苦しんでいるのに、のうのうと生きている人が忌まわしい。俺を痛めつけた何かに同じ苦しみを味合わせてやりたい……じゃないか」
「……なんなの、これ。さっきまではリクさんを騙る偽物なだけだったのに、今は複数の人……いえ人なのかしら? 複数からの言葉を聞いているみたい」

 偽物の発する言葉……声こそリクさんの物だけれど、その内容は聞いているだけで恐怖を感じるものだった。
 ただ憎い、恨めしい、混ざり合って、溶け合って、まるで集団を相手にしている感じね。
 目の色は相変わらず青色のままだけれど、焦点が合わなくなったり、私すら見ていなかったり……人でも魔物でもないおぞましいものを相手にしている気分。

「全部、全部全部全部! 消え去ってしまえば感情も意識も何もなくなる!! あはははははは!!」
「モニカ、理解しないようにするのだわ。理解は共感になって引きずられるのだわ」
「理解は共感に……難しいけど、わかったわ」

 エルサちゃんの言葉に、あまり詳しく考えないようにして頷く。
 目の前の相手は、姿はリクさんでもリクさんではない偽物……確信はしていたけど、狂ったように笑い植物に塞がれて暗い空を仰ぎ見る様子は、理解の及ばない何者かだと思えたわ。
 もしかしたらつつかない方がいい存在だったのかもしれない、触れてはいけない相手だったのかも。
 なんて、沸き上がる恐怖を目の前の狂気を感じつつ、でもそれでもリクさんの体を使っている以上、なんとかしないといけないという思いに駆られる。

「一人、一体、一匹、そういったくくりではないのだわ。複数の魔物や人が殺されて、その感情の残滓が少しずつ集まったもの。そして未練を残した感情だから、負の感情として固まっているのだわ。だから、それ以上あれが何を考えているのか、何をしようとしているのか、考えない方がいいのだわ」
「そう、みたいね。いえ、なんとなくしかわからないけれど、その方がいいと思うわ」

 それは本能というべきものだろうか、それとも理性なのだろうか?
 人として、生き物として、感情のある存在として、決して共感し、引きずられてはいけないのだと感じる。
 頭で考えるというよりも、全身で感じているわ。

「さぁ、どうする!? 俺は、僕は、私は! この素晴らしい体で目的を、悲願を成し遂げる! この体を持っているからこそわかる、お前達は俺達を止める事は不可能だ! 人が、魔物が邪魔をしようと、全てを弾く力があるのだから!」

 目を見開き、首を横に倒して口角を上げ、激情に駆られているような笑っているような……いえ、そうしていながらも悲しんで泣いているような、まさに狂っているという言葉が一番しっくりくる様子で叫ぶ偽物。

「……言っている事は正しいのだわ。私やモニカじゃ、リクの体を使われたらどうしようもないのだわ。せめて私の魔力がと思っても、多分無理なのだわ」

 悔しそうに呟くエルサちゃん。 
 確かに、私達じゃどれだけ頑張ってもリクさんの体をどうにかする事はできないでしょうね。
 剣や槍を簡単そうに素手で受け止めるリクさんだもの、実力行使をしようとしても無駄なのはよく知っている事……そもそも、今私は武器も持っていないし。

「でも、なんとなくわかるわ。どうすればいいのかって」
「モニカ、だわ?」

 多分、この状況を一番よくわかっていたのはユノちゃんとロジーナちゃん。
 リクさんの体に入り込んでいる、負の感情という意識がこれほどまでに狂気に満ちていたり、全てを巻き込んで……とまで考えているかはともかく、私なんかよりも多くの事を理解しているはず。
 そのユノちゃんが私の槍をフィネさんに渡すように言い、ロジーナちゃんも止めなかった。

 それはつまり、槍なんて持っていても役に立たない事や、使う必要がないとわかっていたんじゃないかしら?
 リクさんを助け出すのは槍なんていう武器じゃなく、別の事だと。
 なまじ武器を持っていたら、どうにもならないとわかっていてもそれに頼ってしまうかもしれないから。

「いくら攻撃しても、あれがリクさんの体である以上どうにもならないわ。弱っているとかならともかく、今はそんな感じじゃないし」
「別の意識が支配しているから、そう見えるようにとも考えられるけどだわ……けど、リクの魔力はまだまだ残っているみたいなのだわ」

 ルジナウムで戦った際に、魔力が減っていた影響かリクさん自身も、普段なら防御すら必要ない事に対して怪我をしていたわ。
 そういう状況ならともかく、エルサちゃんの言う通り今のリクさんにその魔力によるらしい防御が薄れているとは思えない……それなら、植物への力も足りなくなるだろうし。
 あと、魔力はともかく契約の繋がりを取り戻しているエルサちゃんの言う事だから、リクさんの状況は私よりもわかっていると思うからね。

「だから、私達がやる事は攻撃なんかじゃない。向こうもこちらを攻撃できないように、こちらからも攻撃をしちゃいけないの」
「どういう事なのだわ?」

 私を見上げ、首を傾げるエルサちゃん。

「負の感情……今リクさんを支配しているのは、死んだ人や魔物の感情が、無念さが一つになったものなんでしょう? だったら、その感情を揺さぶればいいのよ。さっきも、私の言葉で何度も目の色を本当の意味で変えていたから」
「成る程、だわ。感情が相手なのだからその感情を揺さぶれば、だわ。上手くいけばリクの意識にも働きかけて揺さぶる事ができるかもしれないのだわ」

 感情が相手なら感情をぶつければいい……なんて、短絡的な考えかもしれないけど。
 でも、さっきは偽物だと看過されたからかもしれないけど、それでも私の言葉にすごく動揺していたわ。
 相手は複数の意識、感情の集合体とはいえ、私やエルサちゃんの感情に、言葉に何も影響されないという事はないはずなのよね。
 感情が相手なら、こちらも感情をぶつけるだけよ! それしかできないし、それでいいのだと信じて――。


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