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方法と手段を見出すモニカ

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「そんな事って言われたのだわ。私にとっては重要な事なのだわ」
「いいから。えっと、今リクさんの体を使っているのは負の感情という、人や魔物が死んだ後に残った魔力とか思念とかなのよね?」
「全然良くないのだけどだわ、そうなのだわ。数十、数百、もしかしたら数千の意識が固まって、無理矢理リクの体に入り込んでいるのだわ。リクが特別と言っても、意識は一つだけだわ。だから、複数の意識が固まったあれに飲み込まれているのだわ」

 ようやくまともに話してくれるようになったエルサちゃん……どうしてそうなったのかは考えないでおくわ。
 とにかく、かなりの数の意識の塊がリクさんの中に入り込んだって事よね。
 そりゃ、リクさんがいくら特殊だとしても意識は一つだし、大量の意識が入り込んできたら飲み込まれるのも当然か……多分。

「川を思い浮かべるといいのだわ。足下の深さしかない川に立っていたら、急に全身を越える濁流が押し寄せて来るとか、そんな感じなのだわ」
「成る程……」

 川の流れの速さとかはともかく、いきなり濁流にのみ込まれたら流されてしまうのも無理はないか。

「自意識というからの流れにたゆたっていたのが、急にとんでもない水量と水流が押し寄せてきたような物なのだわ。通常なら体すら保っていられないのだけどだわ、リクだからかろうじて維持できているのだわ」
「それって、無理矢理入り込んでパンパンになっている状態、とも言えるわよね?」
「そうなのだわ」

 チラリと、偽物に視線を送りながら聞くと、エルサちゃんはコクリと頷く。
 こうしてエルサちゃんと話していても、あまり割って入って来る事がなくただこちらを睨みながら、呆れながら? 見ているだけの偽物。
 やっぱり、私達と話す、言葉を聞く事で感情や意識が揺さぶられると見て良さそうね。
 そして、無理矢理入り込んでいる複数の意識で、今リクさんの内部がいっぱいいっぱいの状況だとしたら……。

「私は革袋を思い浮かべているんだけど、なんでもいいわ。中に、水や荷物を限界まで詰めたとしましょう。もし、その革袋に外から強めの刺激を与えたら……?」
「最悪の場合破裂するのだわ。でも、逃げ道があればそこから吐き出されるのだわ。どれだけ丈夫な革袋でもだわ」
「そうよね」

 さっきエルサちゃんが、川に例えたけどおかげでさらに私自身の考えがまとまってくれたわ。
 革袋……つまりリクさんの中に無理矢理入って、パンパンに詰め込まれている状態なのだとしたら……。
 エルサちゃんが言った最悪の場合、破裂というのは考えたくないけど、でも。

「水や荷物は逃げ道……つまり口の部分がないと、外へは吐き出せない。だから破裂する事も考えられるけど」
「風船と一緒なのだわ」
「その風船? 何かはわからないけど、でもリクさんに入り込んだ意識は、水や荷物とは違う。触れられる物じゃないでしょ?」
「そうなのだわ。魔力と同じで、触れたりはできないのだわ。魔力を使っての干渉はできるけどだわ」

 その魔力を使っての干渉で、レッタだったかしら? その人がリクさんの中に負の感情を誘導したのでしょうね。
 同じ事ができれば、逆にリクさんの体の外に誘導できるかもしれないけど、私達はそんな事ができないし、今レッタはいない。
 いても協力してくれるかわからないから、その方法は除外ね。

「だったら、大量の意識が入ってパンパンになっているリクさんに対して、刺激を与えればどこからでも負の感情とやらが、吐き出されたりしないかしら?」

 それが、さっきふと頭に浮かんだ事。
 一つと言っておきながら、複数の意識があるという偽物の言葉を咀嚼して思いついた事。

「……あり得るのだわ。さっきから、時折目が黒に戻っているからリクの意識も残っているのは間違いないのだわ。それを刺激すれば、外と中から刺激して吐き出せる事ができるかもしれないのだわ」
「結局、私がさっきしようとした事とあまり変わらないけど……リクさんの意識を表面に引き摺り出すのではなくて、負の感情をリクさんの体から引き摺り出す。という方法で良さそうね」
「なのだわ。上手くいけば、リクの意識だけ残って負の感情が全て噴出するのだわ」
「噴出って……あまり考えたくないけど」

 負の感情というのは、リクさんへと誘導されるまでは目に見えなかったから、噴出しても見えない可能性が高い。
 けど、なんとなくリクさんが全身のあらゆる箇所から、血を噴き出すイメージをしてしまって顔をしかめた。
 それはともかく。

「でも、もし上手くいかなければ?」
「リクの意識の方がはじき出されえるのだわ。それか、さっき言ったように……パーン! と破裂するのだわ」
「っ!」

 エルサちゃんが量前足を上げて、パーンとなった状況伝えられて一瞬だけ体がビクッとなってしまったわね。
 さっきの血が噴き出すとかよりも、考えたくない事だけれど……。

「そ、それは危険ね。……やっぱり、止めておいた方がいいかしら?」

 最悪の場合を考えて、しり込みしてしまう私。
 さっき叫んでいた時の勢いなら、そのまま突き進んだのでしょうけど……冷静になって考えるとどうしてもね。

「ここまで来て止められないのだわ。どちらにせよ、さっきみたいにリクの意識を刺激して表層に、というのも似たような事なのだわ。今の私達には、それ以外にリクを助ける方法はないのだわ。絶対にリクを取り戻すのだわ!」
「……エルサちゃん、素直になったわねぇ」
「モニカのせいなのだわ。恥ずかしい事を言わせないでなのだわ」

 素直なエルサちゃんに目を細めながら言うと、プイッとそっぽを向かれた。
 いつもよりさらに小さくなっているからかしら、そんな仕草も可愛らしいわね。
 いえ、いつも可愛いしリクさんが言う通り極上の撫で心地なのだけれど。

「「……」」

 ほんの一瞬の間、これまでの雰囲気を払拭するようにエルサちゃんと視線を合わせて、同時に頷く。
 そして、偽物の方に視線を向けた。
 ……エルサちゃん、手の上でモゾモゾするのはこそばゆいから、控えめでお願いね? 真剣な雰囲気やその他色んな物が台無しになりそうだから。

「……相談は終わったようだな。まぁ、どれだけ相談しようと、我には……そして私をどうする事もできないわよ。俺はこの体を支配して、僕はこのまま力を注ぎ続けるんだよ」

 相変わらず、統一性のない口調ね。
 ただ立っているだけなのに偉そうに……まぁ、それで緑の光とかって植物に力を与えているんでしょうけど。
 それにしても、植物には触れていないのにどうやって力を与えているのかしら?
 ……あぁ、足から地面を伝ってとかかもしれないわね。

 さっきから、顔や腕は動かしているけど、足を動かす事はなかったから……もしかしたら足を動かす事ができれば、与えている力とやらも途切れるのかしら?
 まぁそれがわかったところで、魔力が残り少ないエルサちゃんや、武器すら持っていない私には、動かす事はできないんだけど。
 飛びついても、普段のリクさんを考えると岩のようにどころかそれ以上に、動かす事はできないだろうから。
 とにかく、余計な考えはここまでにして、後はリクさんの中から負の感情を外に出すためにエルサちゃんとやれる事をやるだけね!!


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