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起きたリーバーと叩き起こされるワイバーン
しおりを挟む「はは、モニカさん達に協力してくれたのは聞いているよ。リーバーって名も付けてもらったみたいだね。うん、ありがとう」
「ガァウ!」
無事を示すように起きたリーバーへと近付きながら手を振って、俺からも感謝すると帰ってきた鳴き声は、喜んでいるような明るさがあった。
植物の内部に突入した時、リーバー達ワイバーンが体を張って頑張ってくれたからこそ、今ここにこうしていられる。
あれがなかったら、モニカさんもエルサもたどり着けなかっただろうからね……具体的に何があったのかは、多少察する事くらいしかできないけど。
そもそも、ワイバーン達がモニカさん達を乗せて飛んでくれなければ、隔離結界の外には出られなかったんだし。
「リーバー、起きてすぐで申し訳ないけど、飛べる?」
「ガァ、ガァガァゥ!」
ここまで頑張ったリーバーを、またさらに使う事になって申し訳なく思いながらも問いかける。
するとリーバーは、横たえていた体を起こして翼を広げた……飛べるようだね。
「それじゃ悪いけど……って、どうしよう? 誰が戻ったらいいかな? さすがにリーバーに全員乗れるわけじゃないし……」
早速隔離結界、というかセンテへ戻ろうとしてふと気付く。
リーバーは頑張っても人を二人載せられるくらいの大きさだから、全員は乗れない。
誰かを選んで先に返す必要があるわけだけど、それを誰にするか決めていなかった。
「当然、リクさんは絶対に行かないといけないわ。だって、もし隔離結界の方で何かあった時、対処できるのはリクさんだけだもの」
「そうなのだわ。他にもう一人選ぶとして、残ったのはここで待っておくのだわ」
「あぁ、そうだよね。俺はいかないといけないよね」
もし隔離結界の方で、ブリザードの影響による何かが起こっていたら、多分俺がどうにかするしかないからね。
「ガァゥ? ガァ!」
「えっと……他のワイバーンを起こさないの? ってとこかな?」
「ガァゥ」
前足で、折り重なるように横たわって寝ている、他のワイバーン達を示すリーバー。
エルサを通しての通訳がないので、その仕草と鳴き声から何を言っているかを察して聞くと、その通りだと頷いた。
「起こすって言われてもなぁ……」
こうしている間にも、一向に目を覚ます気配のないワイバーン達。
魔物との戦いから、皆を乗せて空を駆け、植物への突入に加えてしばらく捕まって力を吸い取られていた。
体が大きい分、フィネさん達より多く茎が絡み付いて力を吸い取られているのと、これまでの疲労も相まって眠りは深そうだ。
多少揺らしても起きそうにない……一番いいのは、確かに皆起きてもらって全員で空を飛んで帰る事だけども。
「ガァ! ガァガァガァゥ!」
「ちょ、ちょっとリーバー?」
何を思ったのか、考えている俺達を見かねたリーバーが、翼をバサバサと動かしてワイバーン達を叩き始める。
起こそうとしているようだけど、そんな無理矢理起こしたら可哀そうだ。
そんな事を言っている場合じゃないかもしれないけど、ここまで頑張ってくれていたのにとも思ってしまう。
「ガァウ! ガウガァ!」
「……多分、叩いた方が喜んで起きるって言っているのだわ」
「あ、そういう……」
ペシペシと、翼で叩くリーバーの鳴き声から察したエルサ。
そういえば、ワイバーン達の中にはボウリングの球にされたり、皮を剥がされるのを喜ぶのもいたっけ。
ここにいるのがそうなのか……。
再生能力を付けられたせいだと思っているけど、ちょっと理解に苦しむ性質だなぁ。
「でもまぁ、そういう事なら……」
「リクは止めておくのだわ。ちょっと力を入れたら弾け飛ぶのだわー」
「加減はするけど、そう言われたらちょっと不安だね」
俺が叩くと、グリーンタートルの甲羅を殴った時みたいになると思ったのだろう、エルサに止められた。
意識を戦闘への切り替えをしていなければ、大丈夫だろうとは思うし、加減もするけど……じゃないと普通に生活もできないからね。
でもまぁ、万が一のためにやめておいた方がいいか。
人と違って、どれくらいで起きるかわからないし。
「えっと、モニカさん達……ワイバーンを起こすのをお願い」
「わかったわ。このまま、リーバーに叩かれ続けるのもどうかと思うからね」
俺は手を出さない事にして、ワイバーン達を起こすのはモニカさん達に任せる事にする。
その際、「リク様が求めているのに、寝ているとは何事か!」と全力で拳を握って繰り出そうとしたアマリーラさんは、俺が止めておいた。
アマリーラさんも十分怪力タイプだからね、全力で言ったらいかに皮膚が硬いワイバーンだとしても、やり過ぎてしまいそうだ。
ただ止める時、ちょっと勢い余ってアマリーラさんの体からコキッという、音がして意識を奪ってしまったけど……不可抗力としておこう。
リネルトさんは、起きていても使い物にならないし面倒だからそのままで、と言っていた。
いいんだろうか? まぁ、ちょっと見ないうちに大袈裟とも言えないうえに、よくわからない方向へ突き進んでいたから一度寝てもらって冷静になってもらうと考えておこう。
冷静になってくれるといいなぁ。
ちなみに骨は折れていないし、どういう止め方をしたのかは内緒だ……後で、モニカさんにちょっとだけ叱られた事だけは言っておこう……小柄だけど、やっぱり女性なんだなアマリーラさん――。
「よし、皆起きたわね」
「ガァ!」
体感で数分くらい、寝ているユノやロジーナに、アマリーラさんが加わって少し。
起きて立ち上がったワイバーン達が、モニカさんの頷きとリーバーの号令で整列する。
寝ていたワイバーン達は、文字通り叩き起こされたというのに、何やら嬉しそうな雰囲気をまとっている。
……向こうからの言葉はこちらに通じないので、何を言っているのかわからないけど、リーバーの言う通り叩いて起こされたのが嬉しかったんだろう、多分。
「それじゃ、起きたワイバーン達も飛ぶのに問題がないみたいだし……寝ているユノ達も一緒に……」
リーバーも合わせて、ワイバーンは五体。
俺はリーバーに乗り、寝ているユノ達はそれぞれモニカさん達が支えつつ、一緒にワイバーンへ分乗してもらう。
ユノはモニカさんが、ロジーナはフィネさんが、アマリーラさんはリネルトさんが一緒だ。
リネルトさんだけ、アマリーラさんを置いて行こうと言って渋っていたけど……さすがにそれはね。
というかリネルトさん、アマリーラさんの部下で付き合いも長そうなのに、そんな扱いでいいのかな?
誰も乗っていないワイバーンが少し寂しそうにしているけど、乗せたかったのか。
被虐的な意味では、確かに誰かに乗られるというの喜びポイントなのかもしれないけど、我慢してもらおう。
俺には理解できないけど、もし望むならセンテに戻った時カイツさんに頼んで、皮を剥いでもらおうかな……素材にもなるし。
とにかく、ワイバーン達が起きてくれたおかげで、センテまで戻れそうだ。
俺の魔法の影響、ほとんどなくて被害が出ていないといいなぁ――。
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