神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

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断熱性に優れるワイバーンの鎧

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「動けば滑る、立っているのもやっとというのも多いようだ。まぁ、今は少しずつ氷を融かして表面が露出した地面に立ちながら、少しずつ融かしている状況だ」
「ですが、それでもやはり寒いので……魔法を使うには声が震えてしまい、思ったように発動できない者もいるようです」

 氷を融かした後の地面なら、ぬかるんでいるだろうけど滑る事はほとんどないから、少しずつ範囲を広げていくのでやっとってところなため、遅々として進まないんだろう。
 なんとなく、その光景が目に浮かぶようだ。
 それに、シュットラウルさんに続いてマルクスさんが言った事……寒いと体が自然と震えるのは、だれしも経験した事があると思う。
 魔法は呪文を覚えて体に刻み込み、魔法名を唱えるだけで魔力が変換されて発動するように短縮はできる。

 けどそれは、何度も発動させて慣れてようやくだ……それが、魔法の種類を多く人が使えない原因の一つになっているんだけどそれはともかく。
 新しく炎の魔法を覚えた人にはまだ、呪文を発声しないといけない人が多く、そのため体が震えて声も震えてしまえば、まともに発動しなくなるんだろう。
 思わぬ落とし穴だね……なんとなく間抜けな理由に思えてしまうけど、実際はそれなりに深刻な問題。
 氷を速く融かさないと、センテが孤立した状態が続いてしまうわけだから。

「とりあえず、寒いのは服を重ねて厚着をして対処するしかないですね……」
「そうなります。ですが平時でも多くの服を用意するのは難しいうえ、今は孤立していますので……」
「氷を解かす兵士さん達全員に、行き渡らせる事はできませんか」
「うむ……」

 重ね着を提案したけど、マルクスさんは難しいと言った表情。
 シュットラウルさんも、眉間にしわを寄せて俺の言葉に頷いた。
 アテトリア王国は温暖な気候のため、厚着をする文化がないうえに、服は結構貴重だったりする。
 布は安価で買えるくらいに作られているんだけど、ミシンもないから全部手縫いになるわけで。

 人手がいるから高価になるし、数もすぐに用意できない。
 そのうえ、他の街……センテで言うとヘルサルからすぐに持って来る、というわけにいかない状況だからなぁ。
 厚着をすると言っても、大量の兵士さん達全員にというわけにもいかないか。
 もしヘルサルや周辺の街や村から届けられるようになっても、数十人ならまだしも数百から千近い人になると、間に合わないだろうし。

「ですが幸いにも、寒さに対応できる者もいるようです」
「そうなんですか?」
「はい。ワイバーンの素材を使った鎧を着た者達ですね。あの鎧ならば、寒さもあまり気にならないようです。まぁ、それでも全く寒くないというわけではないようですが」
「ワイバーンの……」

 ワイバーンの素材を使った物は、火に強い。
 それは高温を遮断するという事でもあって、逆に低温にも対応できるのかな?
 まぁ熱伝導率が低いという事なのかもしれない、よくわかんないけど。
 単純に燃えにくいだけかと思っていたけど、そうでもないんだね。

「ですが、急遽用意したワイバーンの皮を張り付けた盾のような物では、効果がほとんどないようで……」
「鎧などにする際に、金属と混ぜ合わせて作った物のみという事のようだ」

 急いで作ったワイバーンの皮を張り付けるだけのタワーシールド、それと同じように鎧にも張り付けてみたけどそれじゃ駄目だったのか。
 本来のワイバーンの素材を使った武具は、鍛造の段階で混ぜ合わせるものらしく、そうする事で綺麗な青い金属になるらしい。
 断熱効果が見込めるのは、その青い金属を使った鎧でないといけないわけか。

「だとすると、寒さの影響を受けない人はあまり多くは……」
「はい。幸い、ワイバーンの素材はリク様やカイツ殿、そしてワイバーン達の協力で不足はしないのですが、作るにしてもすぐというわけにはまいりませんから」
「現状で王都からの援軍にいる、マルクス殿のような元からワイバーンの鎧を使っている者のみとなるな」

 人が着込む鎧が、一瞬でできるわけもない。
 そのうえ、ワイバーンの素材を扱うのだから作れる鍛冶師も限られる。
 となると、生産して配備を待つのはあまり現実的じゃないか……今ある物で、持っている人達でなんとかするしかない。
 融かす作業を続けていれば、そのうちにいくつかの鎧が完成するかもしれないけど、あまり多くないだろうからね。

「うーん、人数が少ないと作業が進みませんね……もちろん、俺達も協力はするつもりですが」

 俺の言葉に、一緒に来ているモニカさん達も頷く。
 それに俺がやった事だから、俺自身が協力するのは当然だからね……もっと一気に氷を融かせると思っていたから、考えていたよりは日数がかかりそうだ。
 魔物がいるわけではないし、物資もワイバーン達がいてくれれば大きな問題はなさそうで、急ぐ必要はそこまでないんだけど。
 ある程度時間が経てば、自然に解け始めてもくれるだろうし……とはいえずっと隔離結界の中でというのも、不安になる人も多いだろうからあまりのんびりもしていられないかな。

「リク殿達が協力してくれるのはありがたいな。まぁ、魔物の討伐などではないが、冒険者達の方にも依頼として出すようにしている。今朝は様子見の段階ではあったが、多少は改善されるだろう」

 冒険者さん達なら魔物への対処のために幅広く魔法を使えるようにしている人が多いし、助かる。
 ただ、やっぱりそれでも予想していたよりは人の数が不足しそうだなぁ。
 こういうのは、人海戦術というんだっけ? 一人の強力な魔法の使い手よりも、大勢で一気にやってしまった方がいい。

「冒険者さん達も寒さを防ぐのは必要ですし、滑って怪我をしないようにもしないと……」

 金属鎧を着た兵士さん達なら、転んでも大きな怪我はあまりしそうにないけど、冒険者さん達は重装備を嫌う人が多いから、勢いよく転べば怪我の可能性もある。
 もちろん兵士さん達もあるだろうけど、軽装の冒険者さん達の方が、その危険度が高いのは間違いない。
 スキー場みたいに、柔らかい雪が広がっているわけでもなく、転んだ先は硬い氷だからね……場所によっては、簡単に突き刺さるくらい鋭く尖っている事だってありそうだ。

「基本的には、やっぱり氷にはあまり乗らないように、とかして少しずつ進むとして……シュットラウルさん、マルクスさん。ちょっと相談なんですけど」
「む、リク殿から相談と言われると、何が来るのかと身構えてしまうが……なんだ?」
「どういった相談でしょうか?」
「えっと、靴に……」

 シュットラウルさんとマルクスさんに、アイススパイクのような、氷の上でも滑らないための靴を作ってみないかと提案する。
 ただ、靴そのものを作るわけではなく、靴に取り付けて使えるようにというくらいだけど。
 それなら、製作にあまり多くの時間はかからないと思うから。
 氷の上でも作業ができるようになれば、他の事も含めてやりやすくなる……んじゃないかなぁ? と考えたのもある――。


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