神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

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氷を滑らないための提案

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「成る程、上に乗って滑るのなら、穴を穿って自ら固定すればいいのか」
「そんな感じですね。ちょっとだけ取り扱いには注意がいりますし、多少動きが阻害されますけど、滑るよりはいいかなって」

 アイススパイクはつまり、靴に太めの針を取り付けようって事だからね。
 もしそれで誰かを踏もうものなら、氷より柔らかい皮膚は簡単に貫ける……鎧でガードはできるだろうけど。
 あと、スパイク部分を突き刺すので、機敏に動けなくなりそうなのも欠点か。
 滑らなくなるという利点が上回るから、使用する場所を考えれば悪くはないはずだ。

 新しく靴を作って履き替えるのではなく、脱着式にする事でコストも抑えられる……と思う。
 脱着式にする方がコストがかかったり、しないよね?
 ちなみに針としたのは、俺自身がアイススパイクに詳しくないからこんなものだろうと思っての事なのと、細かく説明しようとしても伝わらないだろうからっていう理由。

 できるだけ簡単に作れそうな物として、そう考えた……今回以外で、需要はほとんどなさそうだしちゃんとした物を作る必要もないからね。
 開発に時間をかけている場合でもないし。

「針を靴底に、折れない耐久性も必要ですから、少々手間取るかもしれませんが……明日には作れるかと。今は、センテの鍛冶職人達が結集して協力してくれていますから」
「緊急で戦いのための武具製作のため、集まってもらっているからな。まぁ、今は一部にワイバーン素材の武具製作を任せてはいるが。それらも含めて、リク殿の提案した物を作るのはマルクスが言っているくらいか。量を作るのには数日といったところだな」
「滑らないようになればもっと作業が捗りますし、効率アップは必要ですから、よろしくお願いします」

 センテは農作物の集積場ではあるけど、何故か鍛冶師も多い……農具とかに必要だからかな?
 王都を除けば人口は国内一のヘルサルよりも多いらしいから、協力してもらえれば簡易的なアイススパイクはすぐに作れるだろう。
 最初に少しくらい手間取っても、俺の考えている限りでは複雑な物でもないので、量産もすぐにできるはず。

 使用する人数が千人近い規模だし、使っていれば壊れるのも当然なのでかなりの数を用意するのに時間がかかるのは当然として……金属が足りない、という事は多分なさそうかな。
 魔物との戦闘で使えなくなった武具があるから、それを再利用するみたいだし、ヒュドラー戦前もそうして不足しがちな装備を支給していたりもしたようだからね。

「すぐに手配しましょう。少々席を外します」
「うむ、頼んだ」
「よろしくお願いします」

 マルクスさんが、アイススパイクの準備をするよう伝えるため、部屋を出る。
 ロジーナの話をするため人払いをしていたから、いつもと違って部屋の中に執事さんとか、伝令などを担当してくれる兵士さんとかがいないからね。
 しばし、マルクスさんが戻って来るのを待つ。

「……戻りました。すぐにセンテにいる鍛冶職人を集めて、最優先で仕上げると意気込んでいました」
「え、報せを向かわせたんじゃ……」

 戻ってきたマルクスさんは、満足そうな笑顔で何やら不思議な事を言った。
 職人さん達に伝える伝令を送るなら、まだ答えは返ってこないはずなんだけど……。

「ちょうど、鍛冶職人をまとめている親方衆が、ワイバーン素材の装備について報告に来ていたようでしたので、直接伝えました。皆、リク様からの提案とあって最優先で当たってくれるそうです」
「そ、そうなんですか……まぁ良かった、のかな」

 まとめてくれている親方衆なら、作る物の詳細もすぐにわかってくれただろうし、伝令を向かわせて伝言ゲームになるよりはわかりやすいと思う。
 マルクスさんの言葉からは、その親方衆の底知れぬ意気込みのようなものが感じられたけど……俺が提案したからって、無理をしようとしていないか少し心配だ。

「思っていたより、やる気になってくれているようで」
「まぁ今この街でリク殿に頼まれて、断らない者はいないだろうし、皆真剣に取り組んでくれるだろうからな。それに、滑らないためだけの物をというのも、一つの理由だろう」
「そうなんですか?」
「ここしばらく、センテは魔物との戦いが続いていたからな。鍛冶師達は皆、武具を作るのに専念していたはずだ。それが、戦いとは関係ないような物がようやく作れるのだ、喜びこそすれ、嫌がる者はいまい」

 やる気になっている理由を予想しながら話す、シュットラウルさん。
 戦うための物ばかり作っていて飽きたから、他の物を作ってみたいという事だろうか。
 いや、暗い雰囲気が漂って鬱々としていたからもあるのかもね……戦中は、そうなるのも当然ではあるけど。

「武具を作る事に喜びを感じる者もいますし、専門の者もいますが……鍛冶で製作するのはそれだけではありませんからね。リク様提案のアイススパイクも、使い方や改良すれば別の事にも使えそうですが、とりあえず戦闘とは直接関わりのない物ですし」

 マルクスさんの言葉で、なんとなく納得した。
 鍛冶職人が扱うのは金属製品全般で、別に武具に限った事じゃないからね。
 鍋とか農具もそうだし、馬車の一部にだって金属製の部品がある。

 それこそ、靴に金属を仕込んで丈夫にした物だってあるからね……まぁこれは、細かい金属加工というよりも、金属板を入れるくらいみたいだけど。
 武具を製作するだけじゃないから、それ以外の物もたまには作りたいっていうところかな。

「あとは寒さをなんとかすれば……」
「それに関しては、リク殿が来る前にマルクス達と考えていたんだが……」

 寒さ対策に関しては、シュットラウルさん達がどうにかしようと考えてくれていたらしい。
 それは、薪などの火が点く物を各地に配置。
 一定の間隔で暖を取れる環境にする……早い話が、そこかしこで焚き火をするって単純な方法だね。

 ただ、氷を溶かした場所だけだとまだまだ狭い。
 そこで、さっき俺が提案したアイススパイクがあれば、氷の上でも多少動きやすくなるので、焚き火を設置するのも容易になるから、実行しようってわけらしい。

「成る程、それなら体が冷えてもすぐ暖められますね」
「もちろん、先程話していたように服を重ねて着る事で、少しでも寒さを防ぐなどの方法も必要だがな。それに、外に出た者の報告では現状、センテの周囲……少なくとも凍り付いている地面のある場所では、他に何もなくなっている」
「そうですね。戻って来る時に空からも確認しましたけど、木々なんかもありません。まぁ、俺がやった事なんですが……」
「だが逆に、そのおかげで気軽に火を点ける事ができる」

 隔離結界以外は、俺が作った石の壁以外センテ周辺はまっさらになっている……まぁ多少の起伏くらいはあるだろうけど。
 少なくとも、魔物も含めて生き物や草木などはない状態だから、延焼の危険性は極めてい低い。
 気軽に火を点けるというシュットラウルさんの発言は、聞き方によってはちょっと危ない気もするけど……魔法で融かす代わりにもなってくれるはずだから効率的と言えるかもしれない。
 凍てついた地面の端まで行けば多少気を遣う必要はあるだろうけど、そこまで氷を融かせられればもう焚き火をする必要もないからね――。


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