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ワイバーン輸送を提案

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「完璧とまでは言えませんけど、とりあえずなんとかなりそうですね」
「まぁあとはどれだけ早く、外……いや、ヘルサルなどの別の街や村と繋げられるかだな。日数がかかり過ぎてしまえば、いずれセンテにある物資が尽きてしまう」
「あ、それなんですけど……」

 完全に孤立している状態で、センテだけで自給自足は無理だ。
 特に食糧の問題を懸念しているんだろう、シュットラウルさんとマルクスさんが表情を曇らせたのを見て、俺とモニカさん、そrからエルサが昨夜帰り道で話していた事を伝える。
 空を飛べるワイバーンを使っての、物資の輸送だね。

「一体のワイバーンで運べる量は、あまり多くないでしょうけど……でも、ワイバーンは数がいるので何度も往復すれば、足りない物資もなんとかなると思います」
「ワイバーンを使っての輸送か。ありがたいな」
「それがあれば、孤立状態が長期にわたってもなんとかなりそうです。もちろん、そうならないように努力はしますが」

 ワイバーン輸送は、シュットラウルさん達に好意的に受け止められた。
 ここまで協力してくれているから、ワイバーンに対する信頼もあるんだろう。

「それに、王都にも報せが送れます。あちらの状況が少々気がかりなのもありますし、リク様やセンテが無事である事も報せたいですね」
「センテや俺達がというのはわかりますけど、王都で気がかりというのは?」

 連絡が取り合えるのは喜ぶ事だと思うけど、マルクスさんは何か心配事があるみたいだ。

「私が王都を出て、センテに向かう少し前ですが……帝国の方で何か動きがあったようなのです。国境付近で変事ありとの報せが入っておりました。緊急性としてはこちらの方が高かったため、私は兵を連れてここまで来たのですが……今どうなっているのか」
「帝国の動き……ロジーナ?」
「そこまで私はわからないわよ。知識なんかの供与を少ししただけで、どう動くかは任せているわ。多少の扇動くらいはしたけど、ここでリクと関わる事くらいまでよ」
「そうか……」

 帝国の動きが気になるけど、ロジーナは何も知らないようだ。
 ロジーナ自身は、俺を取り込むためにセンテに集中していたんだろう。
 破壊神としても多少の扇動はしても、直接指示をしたりまではしていないのでわからないんだろう。

「知っているとしたらレッタね。あれはれっきとした人間で、直接関わっていたから。でも、今回はこちらに注力していたし、国境とかの事はわからないんじゃないかしら?」
「レッタさんか。起きたら、一応話を聞いてみる必要がありそうだね。正直に答えてくれるかは微妙だけど。とにかく、報せをこちらから送るのと同時に、連絡を取り合う必要がありそうですね」
「はい。すでに何かが起こっている可能性、というのも否定はできませんから。ヘルサルまで行けば、多少の情報も入っているかもしれませんし」
「ワイバーンでの連絡は重要そうですね」

 王都や国境で何かあれば、ヘルサルにも情報が入っているかもしれないので、それを聞くためにもワイバーンは必要だろう。
 無理をすれば凍てついた大地でも、人をヘルサルに向かわせられるかと思っていたけど、寒くて滑ってしまう現状は難しいため、ワイバーンの重要性が上がっている。

「なんなら、王都に直接ワイバーンに行ってもらえば、もっと早く詳細な情報を得られるんじゃないですか? 俺が行くのでもいいんですけど……俺は氷を解かす作業を手伝った方がいいかもしれないので」

 しばらくはセンテを離れず、融かす作業をした方がこちらも早く片付くだろうからね。
 そう思って、ワイバーンをと思ったんだけど……マルクスさんは渋い表情をしている。

「王都にワイバーンは……リク様がエルサ様に乗って、という事や共にならば大丈夫でしょうが、ワイバーンだけで行くのは難しいでしょう」
「え?」
「以前、王都は大量のワイバーンに襲われましたから。あの時はリク様によって全て討伐され、ワイバーンによる被害はほとんどありませんでしたが、今はリク様が王都にいません。空から近付くのは警戒されるかと……最悪の場合、王城の者にて攻撃される恐れがあります」
「あー、確かに」

 空を飛んで王都にと言えば、俺というかエルサになる。
 それ以外では、ワイバーンなどの魔物なのが王都にいる人達の認識だろう……姉さんも同じくだろうし、あの時エルサに乗ってワイバーンと戦うのを、至近距離で見ていたからね。
 単独、または数体で近付けば魔法なりの攻撃で、撃ち落とそうとしかねない。
 そのワイバーンが味方だって知らないんだから当然だ。

「王都の民も、また同じ事がと不安がります。こちらは、大きな問題にはならないでしょうが……せめて、リク様とエルサ様が同行するか、こちらからワイバーンに関する報せを送ってからでしょう」

 ヘルサルに行くならまぁ、大体数時間で往復できるから最初は同行するつもりだったけど、王都はちょっと難しいな。
 ある程度、ヘルサルにはワイバーンの事が伝わっているはずだから、俺がいなくても大丈夫な可能性が高いけど、そこはシュットラウルさん達に判断してもらおう。
 それはともかく、王都との往復となると……エルサだけなら、一日で往復できるけどワイバーンも一緒となると日数がかかる。
 少なくとも片道数日、三日以上はかかるかな。

 戻る時は、ワイバーンにはのんびり戻ってもらって、俺だけさっさと戻る事もできるけど、大体四日から五日は離れるわけで。
 今すぐ一緒にというのは難しいし、それならとりあえずヘルサルとの往復で、物資を運ぶのを任せておいて報せが行った頃か、復旧のめどが立ったあたりで俺が行くのが良さそうだ。
 もし王都の方で緊急性のある何かがあれば、ワイバーンを送るって悠長なことはせず、俺とエルサが向かう事になるだろうけど。

「わかりました。とりあえずワイバーンで直接王都へ行くのはなしですね。しばらくは、ヘルサルと往復してもらうようにします」
「うむ、それだけでも随分……いやかなり助かる。生命線とも言えるからな」

 そうして、とりあえず氷を解かす作業の問題点の改善と、物資輸送に関する話を終える。
 ちょっと長くなってしまったけど、シュットラウルさん達との話の本題はこれじゃない。

「では……先程も名が出ていたが、レッタという者に関してだが」

 レッタさんをどうするかという問題。
 クラウリアさんやツヴァイのように、帝国と直接関わっているので王都へ送って処罰を任せる、でいいんだけど……ロジーナとの関係があって、どうするべきか話し合おうというわけだね。
 そのために、俺はモニカさんに起こされたし。
 いやまぁ、昼まで寝てしまっていたから何もなくても起こされて当然だし、それで良かったんだけど。

「レッタさんに関しては、魔物を操っていたのは間違いありません。どういう人物かとかは……ロジーナの方が詳しいと思います」
「うむ……」

 レッタさんに関しては、昨日のうちにある程度話しているから事実確認みたいなものだ。
 本人がいない状態だから、何を考えてとかを詳しく話せないけど……今回の首謀者と言っていい人物のはずだから――。


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