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ヒュドラー達本来の役割

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「だが、ヒュドラーなどは……あれ程の魔物を使うとなると、センテや周囲の壊滅だけを狙っていたとは思えないのだが……」
「あれは、リクに対する切り札みたいなものね。本来なら、最初にこの街を魔物で取り囲んで壊滅させるつもりだったのよ。まぁ、向こうはリクがここに来ている事を知らなかったからでもあるんだけど。そして、それを私が利用させてもらったわ。結果は、不本意ながら失敗ね」
「そういえば、そんな事を言っていたっけ」

 ロジーナが仕組んだ事ではなく、ただ利用しただけ。
 隔離された時に話した感じでは、俺がいない状態でセンテを囲んで壊滅させ、俺自身を追い詰めるとか破壊の衝動に傾かせるとか、そんな意図があったみたいだ。
 結局は、防衛側のシュットラウルさん達が想像以上に長く持ちこたえてくれて、エルサや俺が早めに抜け出せた事でなんとかなったわけだけど。

「……リク殿への切り札というのは?」
「帝国はあれだけの魔物をぶつければ、いかにリクと言えどもなんとでもなる……と考えていたみたいね。だから、この街を壊滅させておいて、帝国が準備を整えて侵攻。それに合わせてヒュドラー達が暴れるって寸法よ。そうすれば、対処ができないこちらにリクが来ると踏んでいたの。まぁ、私は苦戦するとしても、リクがやられるとは思っていなかったけど。ユノが近くにいるのも知っていたし……」

 つまり、帝国の俺に対する切り札をこのタイミングで使ってしまったわけだ。
 ヒュドラーと戦う前にもロジーナから聞いたけど、改めてレッタさんがロジーナの気配に気付き、暴走した結果でもあるみたいだ。
 ちなみに、レッタさんがロジーナを信奉しているのは、世界を呪って破壊を望んでいる事の他に、クズへの復讐のために行動しているうちにとからしい。
 気付いたら、今みたいに狂信者っぽくなっていた、とはロジーナ談。

 話を聞いている限りでの予想だけど、多分捕まって極限の状態だったレッタさんを助け出した事や、記憶を封印した事、さらに復讐するためのあれこれ等々、多少なりとも一人の時より上手くいっていた実感があったからじゃないかなと思う。
 ロジーナを信じていれば、望みが叶うとかそんな風に思っていたんじゃないだろうか?

「まぁ何はともあれ、レッタと私の話はこんな所かしら。レッタに関しては、私が言えば変な事をしないはずよ。別にこの国に対して恨みがあるわけじゃないんだから。まぁ、世界を呪って……とかはあるけど、それは最終目的とか復讐の手段であって、無差別に暴れるわけじゃないわ」
「……俺と会った時はほとんど話を聞いてくれなかったんだけど。話を聞いてくれそうにないくらい」

 謂れのない事を俺に叫び、弁解しようとしても聞く耳を持ってくれなかったからなぁ。
 一応ロジーナも制止しようとしていたけど、それすら聞き入れなかったくらいだ。
 ロジーナは自分が言えばというけど、本当にそれでおとなしくしてくれる気がしない。

「あれは……レッタも焦っていたのよ。計画が失敗して、私が人間の体に収まらなければいけなくなった。これまでは、自由に出入りしていたのよ。でも人間として固定されたから……今これはいいわね。とにかく、それでレッタは私と繋がっているようにしてあるから、気配をこの街で感じてってわけ。私と一緒にリクが来て、さらに混乱したんじゃないかしら。本来の標的で利用するべき相手だもの」
「……まぁ、レッタさんの側で考えれば、焦ったり混乱するのもわからなくもないけど」

 もしかしたら、俺を利用して世界の破壊を早められるかもしれない、クズに取り入る必要がもうないかもしれない……なんて考えていたかもしれない計画が、破綻したわけだからね。
 センテは無事だし、俺も無事。
 しかも、信奉していた破壊神様が相手側にいる……もしかしたら何かあったのかも? と思って焦って本来使う予定じゃなかったヒュドラー達をけしかけて、とかかな。
 予想だけどね。

「あぁあと、全ての地下施設を把握しているわけじゃないけど、ほとんどは破壊されて埋まってしまっていると思うわ。もしかしたら、もうないかもね。無事なのは……確か、リクが抑えた地下施設は、そのままになっているんだったかしら?」
「まぁそうだね。ツヴァイを捕まえて、中にいる復元された魔物も倒して……今は、国が管理していると思うけど」
「はい。厳重に見張りを付けて、何者も侵入できないようにしてあります。また、地下から地上への道も全て埋めて通れなくしてあります」
「なら、そこは一応無事と言えば無事ね。使えないけど」
「だがどうして、破壊されているとわかるのだ? いや、様子を見て回ったのならともかく、全てを把握していないとも言っているからな」
「簡単な話よ、魔物を復元する施設でもあるから、そこから魔物を出す時に暴れて破壊されるの。そうならなかった場合は、帝国の手の物……リク達は組織とか言っていたかしら。あれによって有用な研究資料を持ち帰る以外は、完全破壊してできるだけ痕跡を消すのよ。まぁ、破壊したという痕跡や、何かがあったのかもという物まで、全て消す事はできないけど。でも、最低でも帝国に繋がると思われる物は全て、消されるわ。物だけじゃなく、人もね」
「徹底しているな……」

 ほとんどであって、残っているのもあるみたいだから警戒や調査はするべきだけど、大きな脅威という程でもないかもしれないな。
 そういえば、クラウリアさんがゴブリン達をヘルサルに向かわせる時に、地下の施設はなくなったって言っていたっけ。
 あれは、ゴブリンが増えすぎたせいで破壊されたパターンだろうけど、それがなくても破棄される施設だったんだろう。

「それにしても、魔物の大群が押し寄せるのが、基本的にその地下施設からだとしたら……ヘルサルとセンテに集中し過ぎじゃない?」
「それだけ、この付近はこの国にとって重要だと帝国でも見られているってわけよ。人口の多い街、食料が大量に集まり国全体に運ばれるための街、とね。もちろん、他にも要衝はあるけれど」
「そう考えると、ヘルサルに一つ、センテに一つでちょうどいいのか……」
「いえ? 一つの街に対しては一つだけど、この付近にあった地下施設は二つよ?」
「え?」
「ヒュドラーと、最初に街を囲んだ魔物は、別って事。だってそうでしょ? 街を囲むだけの魔物……全て核からの復元じゃなく、周辺からも集めているけど……数としてはそちらの方が多いわね。とにかく、その魔物が出て行ったのなら施設は破壊される。一度の計画に一つの施設の総力を挙げるの。だから、最初にヒュドラーがいない時点で、二つなければいけないのよ」

 センテを囲んだ魔物達とヒュドラー達が同じ施設だったら、同時に出て来なければおかしいという事か。
 周囲の魔物を集めてと言うのは多分、ルジナウムの時のようなクォンツァイタで引き寄せる事にプラスして、ワイバーンの輸送をつかってだろうな。
 囲んでいた魔物を倒しても大きく減らない、とセンテで戦う人達の精神面でも疲弊しかけていたし――。

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