神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
1,436 / 1,955

地下施設の役割

しおりを挟む


「……私の助言と、エルフの研究成果を合わせてようやく、帝国の魔物を利用するための研究は前に進めたわ。もちろん、レッタの協力もあってね」

 俺から視線を外し、話を続けるロジーナ。

「それまでの帝国は、どう考えても実を結ばない無駄な研究ばかりだったのよね……だからこそ、焦ってレッタに対しても非人道的な人体実験を、繰り返していたんでしょうけど」

 ロジーナが言うには、帝国の研究は的外れな事が多かったらしい。
 だから、ロジーナとレッタさん、それから帝国のエルフが協力しなければ、おおよそ利用するなんて無理なものだったとか。
 つまりレッタさん達が帝国の研究を数年どころか、数十年は早めたと言っていいらしい。

「じゃあもし、ロジーナやレッタさんがいなければ、こっちの国が魔物の大群に襲われる事は……」
「先の事はまた別でしょうけど、少なくとも数十年はなかったでしょうね。自然発生的に起こった、魔物の大量発生と暴走とかなら別だけど。それも、何度も起こる事じゃないわ。ただ……」
「ただ?」
「研究が進んでいなければ、帝国は酷い事になっていたでしょうね。レッタのような罪人だけならまだしも、罪のない人を巻き込む事を躊躇していないのよ。レッタの故郷が壊滅させられた事を考えても、それは間違いないし、近くで見て犠牲を厭わないとも感じたわ。いえ、あれからすると犠牲とすら考えていないかしら。自分以外は、全て自分のために存在しているとしか思っていないようだし」

 レッタさんの故郷の事を考えれば、帝国のクズが研究の遅れをどうにかしようと多くの人を巻き込むのも納得できる。
 多分、心も痛まないんだろう。

「我が国に魔物をけしかけた事と、魔物の利用が上手くいかず、帝国の民に多くの犠牲が出る……アテトリア王国の貴族としては、自国の犠牲者が出る事は看過できん。だが、正直なところどちらが良いのかはわからないな」
「こちらは、リク様のおかげで大きな被害が出ていないからこそ、そう思うのかもしれません。多少なりとも犠牲者は出ていますが……今の所、街や村の壊滅という事はありませんから。帝国の方にロジーナ殿が現れなければ、犠牲者と言う意味ではそちらの方が多かったかもしれません」

 シュットラウルさんとマルクスさんが、眉をひそめて話している。
 確かに、ロジーナ達がいなければヘルサルからこのセンテまで、各地で魔物が大量に押し寄せて来るなんて事は、なかったのかもしれない。
 そうなればアテトリア王国の方での犠牲者は少ないどころかいなかったわけで……ただその場合、帝国では強行で無駄な研究によって犠牲者が膨れ上がり、レッタさんのような人ももっと多く出てきてしまっていた可能性もある。

 マルクスさんが言うように、俺だけじゃないけど皆で頑張って犠牲者が増えないように戦ったからこそ、帝国に大きな犠牲者が出たらと考えて、悩んでしまうのかもしれない。
 こちらの被害がもっと大きかったら、帝国の犠牲者と天秤にかけるような事すら考えられないだろうから。

「それに関しては、あまり考え込む必要はないわ。だって帝国は、他国……もちろん基本的には隣接している他国に対してだけど、そちらにも何かをするような計画を立てていたから」
「隣接、という事は我が国にもですか。それはどのような計画で?」
「そこまでは知らないわ。レッタもね。魔物の研究が進んだから立ち消えになっていて、そういった計画があった……という話をレッタが聞いただけだもの」

 マルクスさんの質問に、首を振るロジーナ。
 計画があった話をきいただけで、その計画自体はよく知らないらしい。
 もしかしたら、計画を立て始めたくらいだっただけで、レッタやロジーナが現れて研究が進み、見向きもされなくなったとかかもね。

「そうか……だが、帝国のやっている事、やっていた事を考えるに、ろくでもない計画なのは間違いないな」
「そうですね。もしかしたら、こちらの国に研究施設を作って何かがあっても、帝国側は知らんぷりで痛くもかゆくもない……なんて事かもしれません」

 シュットラウルさんも想像しているように、どんな計画であってもまさかアテトリア王国を豊かにとか、帝国と手を取り合って仲良く、みたいな計画じゃないのは間違いない。
 多分、ツヴァイの地下研究施設がこの国で造られていたような事と、近いんじゃないだろうか。
 とそこまで考えて、ふと思いついた。

「ツヴァイのいた地下での研究施設ですけど、あれってどう考えても一年や二年じゃ作れませんよね?」
「規模を考えれば、そうですね。あれ程の施設を地下になど、一朝一夕で作れる物ではありません」
「ですよね。だったらもしかして、ロジーナが聞いた計画っていうのは、あぁいう施設を各地に作って、とかかもしれませんね……」

 地下研究施設は、学校の体育館より少し大きいくらいだった……小部屋が多くあったから、実際にはそれ以上だろう。
 地上に作るならまだしも、地下にそんな広さの施設を作るなんて、それも人知れずバレないようにとか、数年がかりだろう。
 下手したら十年前後とかかかるかもしれない。

 ヘルサルにゴブリンが押し寄せたのも、近くの地下施設でとクラウリアさんが言っていた。
 もしかしたら、他にもあるのかも?

「あぁ、地下施設は既に見つけているんだったかしら。あれは準備段階だった物をこちらの国の魔物を調べるために、作っていた施設だったかしら。核の研究が進んで、侵略……は最初から考えていたようだけど、本格的に侵攻するために少し方向性を変えてだけど、そのまま作ったみたいね」
「それって、他にも何か所かあったり?」
「まぁ一か所だけじゃ、広いこの国の魔物を調べるなんてできないわ。結局、この国の魔物は関係なく研究はしながらも、核から魔物を復元してその魔物を要所で侵攻に合わせて暴れさせる……みたいな計画に修正されたいみたいだけど」
「……つまり、ヘルサルの時やルジナウムもそうだったわけだね」

 研究施設として、他国を利用するために作っていたけど帝国での研究が上手くいったため、奇襲するための施設になった、というところだろう。
 王都でも、魔物が押し寄せた時に帝国は軍を集結していたみたいだし、ヘルサルだけでなくルジナウムなどでも、同じような事を考えていたのかもしれない。

「という事は、もしかしてこのセンテに魔物が来たのも!?」
「今回は侵攻というより、要衝の壊滅を狙っていたわね。でも、進行までは考えていないはずよ。どちらかというと、備えるためかしら? 帝国の帝位が交代して、完全に帝国全土を掌握してあれが覇道とか馬鹿な事を信じて疑わない妄想を、実現するためってところかしら。それを、私とレッタが利用したの」

 他がそうならもしかして? と考えて口に出したら、ロジーナが静かに首を振った。
 今回に関しては侵攻というよりも、備えのためだったらしい。
 というよりも、本格的に動き出す前にセンテという要衝の壊滅を目論んでいたんだろう。
 アテトリア王国を弱めるためだろうね――。


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。 彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。 剣も魔法も得意ではない主人公は、 最強のメイドたちに守られながら生きている。 だが彼自身は、 「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。 自分にできることは何か。 この世界で、どう生きていくべきか。 最強の力を持つ者たちと、 何者でもない一人の青年。 その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。 本作は、 圧倒的な安心感のある日常パートと、 必要なときには本格的に描かれる戦い、 そして「守られる側の成長」を軸にした 完結済み長編ファンタジーです。 シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。 最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。

処理中です...