1,454 / 1,811
冒険者ギルド前でマックスさんとの話し
しおりを挟むフィネさんとの話に出てきたカルステンさんは、魔法使い風なだけあってかちょっと怪しめのローブを着ている人。
クラウリアさんやレッタさんみたいに、顔を隠すくらいの全身で怪しいです! と言っているような物じゃないけど……細身で苦笑が張り付いているような人だった。
フィネさんやコルネリウスさんにとっても幼い頃からの付き合いで、大事な人みたいだ。
俺の印象としては、自分勝手に突き進むコルネリウスさんと、真面目なフィネさんが注意して言い合いに発展するのを、やんわりと苦笑しながらだけど止める人なのがカルステンさん、といったところだね。
二人……主にコルネリウスさんだけど、振り回される苦労人のようにも見えたかな。
その苦労が滲み出ているからか、よく言えば大人っぽい、悪く言えば老けて見える事もあったけど。
「カルステンは、私やコルネリウス様からすると、兄のような人で……」
なんて、冒険者ギルドに向かう間、フィネさんからコルネリウスさんの事だけでなく、カルステンさんの話を聞いた。
……話を聞くうちに、カルステンさんがちょっと不憫に思えたのは俺の心にしまっておこう。
小さい頃から、二人に振り回されていたみたいだから。
なんにせよ、フランクさんとカルステンさんがいるなら、フィネさんが心配するのも無理はないとしても、あっちは大丈夫だろうな。
むしろ、センテでこれだけの大事があったので、向こうがこちらを……特にフィネさんを心配してそうだ。
こちらの無事を報せるて、フランクさん達を安心させないとね。
「お、リクじゃないか。こんな所に来てどうしたんだ?」
「マックスさん! こんな所って……これでも俺、冒険者なんですからギルドに来るのも当然じゃないですか?」
「はっはっは! そうなんだがな。リクは冒険者を越えて、国などからも頼りにされているからな。今はここに来るよりもやる事があるんだろうし、今わざわざ冒険者ギルドまで来る必要はなそうだったからな。それこそ、ヤンやここのギルドマスターだって呼びつけられるだろうに」
冒険者ギルドの前まで来ると、何やら建物の前で十人くらいが集まっている中から、マックスさんが出て来て俺に声を掛けてくる。
マックスさんも元冒険者だし、俺も一応現役の冒険者だから、冒険者ギルドの来る事はおかしくないしこんな所って……と苦笑すると豪快に笑っていた。
「まぁ、頼めば来てくれるとは思いますけど……」
シュットラウルさんやマルクスさんに頼めば、ヤンさん達を呼んでもらう事も可能だと思うけど……他の事で忙しいわけじゃないからね。
「それはともかく、俺はヤンさんに用があってきたんですが、マックスさん達は何を? えっと、あそこにいる、というか皆に囲まれているのはトレジウスさんでしたよね?」
マックスさんが抜けてきた集団、全員が冒険者だと示すようにバラバラな装備で男女入り混じっている人達は、中心に見た事のある爽やかな好青年を囲んでいた。
トレジウスさん、ヒュドラー戦の時アマリーラさんと一緒にいた冒険者さんだっけ。
俺が来たからか、全員こちらに視線を向けているけど……まさかその好青年を囲んで恐喝、なんて事はないだろう。
マックスさんがそんな事に加担したり、黙って見ているわけない。
「リクはトレジウスの事を知っていたのか」
「まぁ、一度だけ話した事がありまして」
アマリーラさんを連れて下がって、というくらいの会話と言えるか怪しいものではあったけど。
まぁ顔見知りなのは間違いないかな。
「そうか。そのトレジウスがな、先の戦闘で触発されたみたいで……」
「あぁ、そういう……」
なんでも、トレジウスさんの周囲にいる人の数人は同じパーティメンバーで、ヒュドラー戦の時に見た俺やアマリーラさん、それにユノやロジーナ達のように強くなりたい……いやなって見せる! みたいな、事を言っていたらしい。
それだけなら、パーティメンバーだけや親しい人達に宣言するだけでいいのではと思うんだけど、そこにマックスさんが関わってきてしまう、というか巻き込まれた。
元冒険者ながら、Bランクでありユノ達とは別の場所で、さらに魔法鎧や中央軍の援護にヤンさんや元ギルドマスターさんがいたのもあるけど、ヒュドラーを一時的にでも押し留めた功労者。
そんなマックスさんに教えを請おうとしていたわけだ……集まっている人の中で、パーティメンバー以外は興味本位の見物人とか野次馬らしい。
「他にもっと頼る先があるだろうに、どうして俺なんだが……」
「まぁ、マックスさんは頼りがいのある人ですからね」
溜め息交じりのマックスさんに、苦笑しながら答える。
マックスさんは、ヴェンツェルさんと筋肉的な競争をしているだけあって、筋骨隆々で大柄な男性。
豪快な性格で面倒見がいいのも相まって、後輩とかには好かれるタイプだからね。
かくいう俺も、マックスさんには頼りっきりだし。
「そう言われるのは嬉しいが、俺はもう冒険者を引退した身だからなぁ。まぁ、思わぬ協力をしていたのは確かだが」
ヘルサルの時は獅子亭を守る事にも繋がるため、今回のセンテでは、食材の仕入れの関係もあって大きな影響を及ぼすためとか、モニカさんやヤンさんのからも頼まれて、マックスさんやマリーさんは協力してくれた。
まぁ、センテが魔物に蹂躙されたら、その次は近くにあるヘルサルが襲われる可能性も高いからだろうけど。
「リクやモニカの時は……特にモニカがいるから協力というか、色々心構えなどを教えたがな」
「おかげで、助かりました。マックスさんの教えてくれた事があったおかげで、こうしていられる部分も大きいですよ」
「教えた甲斐があるが、リクの場合は何も知らなくても切り抜けそうだがな。ともあれ、俺以外にも適任がいるだろうに……」
マックスさんは、俺が冒険sにゃになる前に色んな知識を教えてくれた。
期間が短かったから、全てをじゃないし実戦で学べという部分もあったけど……でも、凄く助かったのは間違いない。
それはともかく、トレジウスさんがマックスさんに師事したいと願ったにもある程度理由があるそうだ。
候補として出たのは、俺、ユノとロジーナ、アマリーラさん、元ギルドマスターやヤンさん、それからマックスさんだったらしい。
けど、俺に指示するのは畏れ多いというよくわからない理由で却下、同じくユノとロジーナも……というかユノ達は、見た目が子供なのもあって躊躇われたうえに、ヒュドラーとの戦いを見ていて凄いのはわかったけど何がどうしたらあんな事ができるのかわからなかったんだとか。
アマリーラさんは、トレジウスさんの中で憧れに近い物になっていて、こちらも師事するのが躊躇われた。
ヤンさんはヘルサルのギルドマスターをやっているので、個別の冒険者に指示させるわけにはいかないだろうと考えたらしい
それならと、元ギルドマスターにも既に頼み込んだらしいけど、あちらはルギネさん達リリーフラワーを鍛えているから、これ以上増えるのは手に負えないからと断られたみたい。
そうして、最後にマックスさんの所に来たのが今ってわけらしい。
強さを求めるって事なら、アマリーラさんが一番適任な気がするけど……憧れているみたいだしちょうどいいんじゃないかとも思う。
演習の時、兵士さん達に教えるようにしながら戦っていたし、そういう事もできそうだ……まぁ、本文は冒険者じゃなくて傭兵だけどね――。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,117
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる