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ヘルサルにはマックスさん達も
しおりを挟む「まぁそういうわけでな、どう断ったものかと考えていたところに」
「俺が来たってわけですね」
「あぁ。しかしリクの方は、ヤンになんの用があるんだ?」
「俺の方はヤンさんをヘルサルに連れて行こうかと。向こうの冒険者ギルドに、報告などをする必要があるみたいで……」
マックスさんから問いかけられ、ここにきた理由を話す。
「そうか、あいつはヘルサルの冒険者ギルドだから、直接行くのが手っ取り早いだろうからな。何か行く方法がないか、侯爵様達に聞いていたらしい」
「はい。それで、ちょうどやる事がなくなったので、俺が連れて行くのがいいんじゃないかと。エルサもいますし、ワイバーン達が人を乗せて飛べるので」
「成る程な。やる事がなくなった、というのは気になるが後で聞こう。リク、相談なんだが……俺とマリーも一緒に連れて行っちゃくれないか?」
「マックスさんとマリーさんをですか?」
ヘルサルに、と言ったらマックスさんとマリーさんもと提案された。
話を聞いていたエルサが、問題ないと言うように俺の頭をポンと手で軽く叩いているし、大きくなれば多くの人を乗せられるし、ワイバーンもいるから大丈夫だと思う。
ちなみに、センテの外の状況は薄っすらと見える隔離結界の外を見たり、報せられたりで大体の人には知られている事だから、今は通常の方法で他の街に行けない事をマックスさんも知っているんだろう。
「けど、こっちの事はいいんですか? 皆、マックスさんの作る炊き出しとか、期待していると思うんですけど」
料理に関しては、マックスさんが一部の避難民や兵士さん達への提供を担っている。
そのマックスさんがいなくなるのは、多くの人が残念がると思うんだけど……耳をそばだてて、俺達の話を聞いているトレジウスさん達も、うんうんと頷いているみたいだし。
食事は、安心して過ごすための一助になるからね。
……まぁトレジウスさんだけは、師事できる相手がいなくなるからの頷きだろうけど。
「それもそうなんだが、獅子亭の方も気がかりでな。ルディとカテリーネ、それからカーリンに他の奴らに任せちゃいるが……ずっとというわけにもいかない。ルギネ達も、今はこちらにいるしな」
「あー、それはそうですね。ルディさん達なら、滞りなくやってはくれてそうですけど……」
ルディさんはマックスさんから料理を教えられ、奥さんのカテリーネさんと一緒に頑張って獅子亭を切り盛りしてくれるだろうけど、マックスさん達がずっといなかったら、誰の店かわからなくなってしまいそうだ。
カーリンさんとは、ヴェンツェルさんの姪っ子さんだね……そちらも、料理の才能があるらしくマックスさんから教えられていたから、一応料理屋としての心配はないんだろう。
でも、マリーさんとルギネさん達がこちらに来ているから、ウェイトレスとかのホール係がかなり少なくなっている。
リリーフラワーのメンバーは全員、元ギルドマスターから冒険者としての修業を受けながら、獅子亭で働いているからね。
以前、俺が様子を見に行った時の忙しさを考えたら、マックスさん達が抜けている現状は大変というだけでは済まなさそうだ。
センテが魔物に囲まれてからは、緊急事態のために通常通りではないんだろうけど、それでもね。
「わかりました。ヤンさんと一緒にヘルサルに行きましょう。でも、ルギネさん達はいいんですか?」
「そうか、助かる! ルギネ達は、しばらくこのままセンテにいる方が身になるだろう。元ギルドマスターも、街の復興にやる気を出しているしな」
ルギネさん達について聞くと、元ギルドマスターも残っているためかここにいるようにと考えているらしいマックスさん。
何やら、冒険者としての経験とかで、今ヘルサルに戻るよりはいいだろうとの事だ。
やっぱり、マックスさんは獅子亭よりもルギネさん達の今後を考えるあたり、面倒見がいいと思う。
獅子亭の事だけを考えるなら、一緒に連れ帰ってお店で働いてもらった方がいいもんな。
「お、お話の途中に失礼します! リク様、マックスさん! マックスさんがヘルサルへ向かうなら、俺……いや私も連れて行ってくださいませんか!?」
「トレジウスか……」
ルギネさん達の話をして納得している俺の前……というか、俺とマックスさんの前に滑り込んできたのはトレジウスさん。
駆け寄ってきたとかではなく、膝で文字通り滑ってこちらにきた。
俺達の出方次第で、そのまま土下座をしそうな勢いに俺はちょっと気圧される。
マックスさんは、溜め息を吐くようにしているけど。
「さっきから言っているだろう。俺はもう冒険者を引退した身だ。今は自分の店を繁盛させる事くらいしか頭にない。誰かに教えを授けるなど、する気もない」
「くっ……うぅ……」
マックスさんに言れて、俯くトレジウスさん。
そんな事を言って、マックスさん……ルギネさん達の事も考えていたし、本当に教えるのが嫌ってわけじゃないくせに、なんて頭に浮かんだけど口には出さないでおく。
ここは俺が口を挟むよりも、マックスさんの考えややり方を尊重した方が良さそうだからね。
「それにだ、今このような状態にあるセンテから離れて、冒険者として大成すると本気で考えているのか? 冒険者は、少なくともこの国に根差した冒険者は、困っている者達を見捨てないよう、教えられているはずだ」
「そ、それは……そうですが……でも、このままじゃ俺はずっと燻ったままだと……先の戦いで強く感じました」
「もし今、俺に付いてきたらこの先も燻ったままだぞ」
厳しい言葉をかけるマックスさんに、それでも縋りつこうとしちるトレジウスさん。
俯いた顔を上げ、マックスさんを見上げるその目は救いを求めているようにも見えた……少し大袈裟かも。
「燻りたくないと思うのなら、今全力でこの街のためになる事を考え、行動しろ。それが、後々のお前のためになる」
「街のために……」
「あくまで俺の見込みなのだがな? リリフラワーという冒険者パーティがいるだろう」
「は、はい……目立つので見知っています」
ルギネさん達、目立つのか。
まぁ、女性だけのパーティというのもあるし、信号機みたいに髪色がバラバラだったりするからね。
おっとりしている風のアンリさんが、巨大な斧を背負っているのも目立つ理由かもしれないけど。
「あれはおそらく、いずれ冒険者ギルドにも認められて、Bランクに昇格するだろうな。……まぁ、指導しているのもいるのだが」
最後は、トレジウスさんに聞こえないようボソッと呟くマックスさん。
指導している人というのは、元ギルドマスターさんの事だろうけど……あの人、マックスさんやヤンさんと一緒にヒュドラーを押し留めただけあって、相当な実力者みたいだからね。
あの人も元冒険者らしいけど、そういえば冒険者ランクは聞いた事がなかったような? まぁ、マックスさん達と一緒に戦えるのなら、実力的にはBランクはあるんだろうと思う。
「Bランクに……」
マックスさんの言葉に、呆然としたトレジウスさんが呟いた――。
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