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リクフリークのクラウスさん登場

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「積極的に街を守るために協力し、貢献度が高いモニカさん達……フィネさんもですが……それらの方達はもっと多くなる見込みです。これから精査していきますが、モニカさん達が活躍したのはセンテにいる者なら誰もが知るところですから」
「は、はぁ……」

 モニカさん達は確実に、他の冒険者さん達の中でも高い報酬が受け取れる組になるだろう。
 俺達のパーティ、いつの間にか大富豪になりかけている気が……。

「報酬のためだけに頑張ったわけではありませんが、評価をしてもらえるというのは嬉しいものですね」
「文字通り命を賭して戦ったわけですからね。冒険者ギルドとしては、それらの冒険者達には報いねばなりません」

 確かに、皆命懸けで戦っていたから、見合った報酬が出るのは当然か。
 兵士さんや冒険者さんの中にも、犠牲になった人はいるわけで……そう思うと、むしろ少なく思えてしまう不思議。
 いや、俺への報酬は置いておいてね。

「あと、リク様には国からの褒賞が支払われるでしょうから……さすがにギルドからよりは少ないでしょうけど……」
「まってフィネさん! そこまでにして! これ以上は考えたくないから!」

 思わぬところからの飛び道具に、思わず叫んで止めた。
 ……そうだった、国からの褒賞もあるってさっき聞いたじゃないか。
 さすがフィネさん、斧を投擲するみたいに近距離武器を持ちながら、遠距離からでの攻撃にも長けている……関係ないか。
 ともあれ、迂闊に報酬の額を聞いた自分に後悔をしつつも、話を逸らして心の安寧を優先した。

 何も知らずに支払い証明を受け取るよりは、良かったと思いたい。
 ちなみに、エルサが「それだけあれば全てのキューを手に入れられるのだわ。すぐに買いまくるのだわ!」なんて言っていたけど、買い占めは良くない。
 あと、都度買うのではなく今一気に買ったとしても腐るから、食べられなくなるから。
 そんなこんなで、危険な事は何一つないのに何故か焦りながら、談笑と言えなくもないような気がする話をして、クラウスさんの到着を待った――。


「お待たせしました、リク様! このクラウス、一切の仕事を投げ出してはせ参じました!!」
「……失礼いたします」

 お茶のおかわりをもらったりして待っていると、部屋の扉を勢いよく開け放ちながらクラウスさんが飛び込んできた。
 まったりした雰囲気になっていて油断していたから、声と音に体が一瞬だけビクッとなってしまったけど……エルサ以外にはバレていないようだ。
 満面の笑みを湛えて叫ぶクラウスさんの後ろから、落ち着いた礼をしつつ秘書のトニさんも一緒に入って来る。
 二人とも相変わらずだなぁ……ただクラウスさん、呼び出したのは俺とヤンさんではあるけど、仕事を投げ出すのはどうかと思う。

 またトニさんに怒られたり、引きずって庁舎まで連れ戻されなきゃいいけど。

「お久しぶりです、クラウスさん。トニさんも」
「おぉ、おぉ、リク様! 本物のリク様! お久しゅうございます……このクラウス、リク様とお会いできる日をどれだけ待ち望んだか……!」
「お久しぶりでございます、リク様。ご健勝なご様子で安心いたしました」

 椅子から立ち上がり、クラウスさん達を迎えると共に挨拶。
 クラウスさんはむせび泣くような仕草をしつつ、俺との再会を喜んでくれる。
 トニさんは、相変わらずの冷静さで頬笑みを湛えて、もう一度礼で答えてくれた。
 というかクラウスさん、本物って……俺の偽物とかいたのだろうか?

 あと、前回会ったのはセンテに行く直前だから、大体一カ月とちょっと前くらいか。
 待ち望んだというのは大袈裟だと思うし、おじさんにそう言われても微妙な気分だ……歓迎されているのは間違いないから、嬉しくないわけじゃないけど。
 ともあれ、俺が微妙な表情になっていたからか、トニさんがコッソリ教えてくれたんだけど。
 このクラウスさん、俺がセンテで消息を絶った時に色々不安定になって幻とかを見ていた様子だったらしい。

 なんか、クラウスさんだけにしか見えず、でも見ちゃいけないはずの幻と会話していたとか。
 トニさんからは、クラウスさんの精神安定のためにこれからも無事でいて下さいとも言われた。
 ……うーむ、本当にヘルサルの代官はこのままクラウスさんでいいのだろうか、と不安になるなぁ。
 ま、まぁ平常時は優秀な人みたいだから、きっと大丈夫なんだろう……うん。

「……成る程、センテではそのような事が」
「はい」

 クラウスさんに座ってもらい、ヤンさんと一緒にセンテであったできごとの詳細を伝える。
 魔物に包囲されていた事や、ヒュドラーが複数迫って来ていた事などは、まだ連絡を取れていたためその後の事だね。
 特に、ヒュドラーとの戦いの部分はクラウスさんが詳細を知りたがったから。
 まぁ俺が戦っていたかららしく「さすがリク様!」を連呼していて、後ろに立っていたトニさんが何度も溜め息を吐いていたり、俺やヤンさん、フィネさんに対して申し訳なさそうにしていたけども。

 レッタさんやロジーナの事も、ある程度は伝えてある。
 さすがに、ロジーナが破壊神だとかそういう話はしていないけど、レッタさんが素性とか魔物を扇動して……といった部分は話した。
 全ての人に伝えるわけにはいかないけど、伝えるべき人には伝えておかないとね。
 何故魔物達が集結し、センテに向かっていたのかという部分がわからないから、調査をしようとして無駄な手間を掛けさせてしまったりもするし。

 あと、俺の意識が乗っ取られたとかそういう部分は話していない。
 長くなるし、その辺りはシュットラウルさんとマルクスさんが後々上手く説明してくれるそうだ。
 ただ、センテの周辺が凍ってしまった原因などは、さすがに俺がやった事だとは言っておいたけど。
 魔物を殲滅するためでもあったから、クラウスさんは驚きながらも納得してくれた。

「そんなわけで、現状のセンテは孤立している状態です。魔物との戦闘が続き、疲弊はしていますが物資の備蓄は王軍のおかげでなんとか。今日明日ですぐに不足するわけではありませんが……」
「ヘルサルからも、援助の物資をさらに送らなければならないわけですな。承知しました」

 ヤンさんの言葉にクラウスさんが頷く。
 マルクスさんが率いてきた王軍が運び込んだ物資のおかげで、今のセンテは保たれている部分は多い。
 食糧にはまだ余裕があるようだけど、薬品とかそういう物がね。

「これまでにもヘルサルからもセンテに物資を送っていたため、何かと不足しがちだとは思いますが……こちらの冒険者にも、協力するよう要請しておきます」

 当然ながら、マックスさん達や冒険者さん達がセンテに来てくれたように、ヘルサルからも物資が既に送られているからね。
 まだそれなりに新鮮な物を食べられるのは、ヘルサルの助けによるものだ。

「まぁ、こちらも胸を張ってお任せ下さい、と言える程十分な備蓄が残っているわけではありませんが……なんとかしましょう」

 少しだけ難しい表情をしながらも、クラウスさんはヤンさんや俺に対して頷いてくれた――。


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