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追加の援軍が来ているみたい

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「すぐ近くのセンテの事。さらに領主様である侯爵様もあちらにいますので、何もしないわけにも参りませんから。個人的にも、ヘルサルとセンテの関係を考えても、援助するのは当然の事。例え、こちらで多少なりとも不足が出ようとも」

 ヘルサル農園は始まってまだ浅い。
 元々食糧などはセンテから買っていたという関係上、人口の多いヘルサル側にはあまり余裕はない。
 とはいえ、他の物資や街との関係も含めて、クラウスさんは物資の輸送を承諾してくれた。
 ……お互い、ちょっと回りくどいやり取りをしているだけで、クラウスさんが断る事はなかっただろうけどね。

「トニ、余剰分の物資をかき集め、センテに送れるよう手配を。多少、こちらが不足しても構わない」
「畏まりました」
「……ヘルサルが不足する程までは、しなくてもいいんじゃ?」

 トニさんへと指示をするクラウスさんに、そこまで力を入れなくてもと思い聞いてみる。
 こちらで物資が不足すれば本末転倒……とまではいわないけど、多くの人が困ってしまうだろうから。

「なに、リク様から直々の要請なので私としても協力を惜しみたくない、というのはもちろんありますが……」

 あるんだ。
 いや、俺からだからとかは聞いていなかったんだけど。
 なんだろう、微妙にクラウスさんから期待しているような雰囲気が漂っている。
 これはあれかな? 俺の役に立てているとかのアピールとか?

「えっと、ありがとうございます?」
「おぉ、リク様からのお言葉がもらえる、生きていて良かった……!」

 なんとなく、お礼を言っておいた方がいいのかな? と思ったのは間違いじゃなかったようだ。
 大袈裟に喜ぶクラウスさんを見て、溜め息が出そうになるのは我慢だ……協力してくれるわけだし、悪い人でもなく信用もできる人だからね。

「……コホン!」
「おっと、あまりの喜びに取り乱しました。……物資に関してですが、センテに多くの物資を融通したとしても、ヘルサルでの不足分はすぐに解消される見込みです。ですので先にセンテへと送る物資を集めておけばと」
「こちらで不足分の解消ですか? 周囲の村や他の街から、取り寄せるのですか?」

 トニさんのわざとらしい咳払いにより、正気に戻ったかもしれないクラウスさんが教えてくれる。
 それに対し、ヤンさんが尋ねた。

「既にセンテへと送っていた物資で、近辺の村々からは取り寄せていましたから……これ以上は難しいですな」
「では、不足が解消される見込みとは?」
「今日、遅くとも明日にでも、再び王都からの王軍が到着する予定になっていまして……」
「王軍が……?」

 ヤンさんは知らなかったみたいだけど、俺はマルクスさんから聞いていた事だ。
 そろそろ、王軍の第二陣が出ていればヘルサルに到着している頃だろう、という話だね。
 その王軍は現在ヘルサルに向かって来ている途中らしく、クラウスさん曰く今日明日中に到着するという報せがあったんだそうだ。
 これはマルクスさんがセンテに到着した時もチラッと言っていたんだけど、従軍している人達の中には荷駄隊という物資輸送のための部隊がいるとか。

 その荷駄隊の物資があれば、しばらくはヘルサルとセンテの両方での物資不足は解消されるだろうとの事。
 本来は長期間の戦闘で軍隊が必要とする物資ではあるけど、援軍として合流する予定のため余剰分もあると伝えられているらしい。
 ただ、当然ながら王軍は魔物と戦う事を想定して来ているので、物資の量はともかく種類は豊富とは言えない。
 そのあたりはまぁ仕方ない事だし、今必要なのは生活するうえでの物資だから問題ないだろう。

「リク様のおかげで、センテとの行き来は難しくとも魔物の脅威は去りました。ですから、王軍の物資は戦後の復興に使われるでしょう」
「成る程、それで解消の見込みがあると。だから、一時的にヘルサルで不足しそうであっても、問題ないわけですね」
「えぇ。王軍が到着してからセンテへの物資を集めるよりは、今のうちにヘルサルから出しておく方が、素早く準備できるでしょうし……侯爵様への印象も良いでしょう」
「クラウス様、本音が漏れておりますよ」
「おっと……ははは、リク様と女王陛下であればともかく、領主様の顔色を窺うのはここではあまり関係ありませんでしたな」

 トニさんに注意されて、苦笑するクラウスさん。
 俺はともかく、姉さんに絶対の信頼と崇敬を持っているらしいけど、シュットラウルさんに対しては違うみたいだ。
 シュットラウルさんの人望がないとかそういう話ではなく、貴族との関係とかしがらみとかそういう話なんだろう。
 俺にはよくわからないというか、面倒そうなのでつくづく貴族にならなくて良かったと内心感じた。

「ま、まぁとにかく、準備が早いのはいい事ですよね」
「えぇ。我々冒険者ギルドとしましても、協力は惜しみません」

 ヤンさんとクラウスさんの間で、協力に関しての話が進む。
 大体は物資を運ぶ、集めた場所での警備などに冒険者もという話くらいだけど。
 衛兵さんもそうだけど、センテに送っている人員が多いため冒険者も含めて人手不足だから、そこは協力してセンテを安定させようという事らしい。

「あとはそうですな……先程リク様との話にもありましたが、凍った地面を融かす作業でしたか。あちらも我々で協力しましょう」
「え、でも……大丈夫なんですか?」

 人手とかをそちらに割く余裕があるのか、という意味で。

「何も問題がないわけではありませんが、こちらからも作業をした方が早く解決できるでしょうから。リク様が困っている時に、私達が何もしないわけにはまいりません!」
「……まぁ、クラウス様だけのお考えではありますが。早くセンテとの行き来が可能になった方が、今後のためにも良いのは間違いありません」
「そ、そうですか……」

 意気込むクラウスさんに、溜め息交じりのトニさん。
 ともあれ、センテとヘルサルがこれまで通りの行き来ができるようになるのは、周辺だけでなく国全体にとってもいい事だと思うし、早く解決できるに越した事はない。

「それなら、こちらからはセンテよりも多少楽ではあるとは思いますが……」

 センテでの、解氷作業の注意点なんかを話す。
 氷の上は滑るので注意する事と、寒さに対する対策などなど……。
 まぁ、閉ざされているセンテと違うため、ヘルサルなら寒さへの対策は十分に取れるだろう。
 服とか、焚き火をするための薪とか……不足するようなら他で買って持ってくればいいわけだし。

「あと、アイススパイク……滑らないための道具ですけど」
「そちらは、センテで完成した余剰分をこちらに……」

 アイススパイクは現在センテの鍛冶師達が取り組んで作っているので、余った物をワイバーンがヘルサルへと運ぶ事になった。
 クラウスさんと話しながら、大体の事を俺が決めてしまっているけど、協力するためだしシュットラウルさん達が断る事はなさそうだ。
 ……もし断られたら、別の方法を考えるか速度は遅くとも焦らずじっくり氷に乗らないよう、解氷作業をしてもらえればいいかな――。


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