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魔力を通したニードルは有効
しおりを挟む「さて、氷の上だとどうなるかなっと……?」
「リクさんがやりたい事ってこれだったのね。ん……」
こればっかりは、突き刺さっていた土からニードルを抜いて足を上げておき、広く凍てついている氷の端にゆっくりと足を降ろす。
すぐ近くで、モニカさんも俺と同じように足を降ろした。
多分大丈夫だろうけど、転んだりしないよう支える準備はしておく。
「うん、ちゃんと刺さったね。というか、土の上に足を降ろした時とあまり変わらないや」
さすがに硬い抵抗は足裏から感じたけど、それでも体重を乗せればニードルは軽々と根元まで突き刺さった。
感覚的には、エルサが中の威力で凍らせた地面の時に、魔力を通さないグラシスニードルを使って上に乗った時と似ているかも。
ニードルの長さに合わせて厚めに凍らせたやつだね。
横に動かそうとしたら、氷を削りながら力を入れれば動かせそうだけど、さすがにこれはちゃんとニードルを抜いてから歩いた方が動きやすそうだね。
「私の方は、半分もいかないくらいね。魔力の差かしら?」
「多分そうだと思う。滑りそう?」
「いえ、全部じゃなくてもこれくらい突き刺さっていれば、大丈夫よ。何もしないよりは、全然動きやすいわ。相変わらず、真っ直ぐ足を降ろさないといけないというのはあるけど」
「まぁそこは仕方ないよね」
魔力の量の問題だろう、モニカさんの方はニードルが三分の一より少し深めに突き刺さっているようだった。
何度か、足を上げたり下ろしたりとその場で足踏み、さらに一歩二歩と歩いて使用感を試す。
グラシスニードルは足の上半分しかないため、相変わらず不安定だけど滑って転びそうになる事はないみたいなので、少し慣れれば氷の上を歩くのに問題はないみたいだ。
ソフィーと話した、鋭さを増すようにしたニードルとかかと部分にも装着すれば、もっと安定すると思う。
「考えた通り、かな。俺の方はまぁちょっと行き過ぎな感があるけど……」
さすがに根元まで突き刺さってしまうと、滑らないのはありがたいけどニードルを抜くのよう意識して足を上げる必要があるので、少々歩きづらい。
けど、モニカさんくらいの突き刺さり方なら、大丈夫そうだ。
「これなら、さっきソフィーと話していたニードルを鋭くする話は、なくてもいいんじゃない?」
「うーん、そうとばかりは言えないんだよ。まず、グラシスニードルはこれで完成じゃないでしょ? まだかかと部分もある」
「……そうね。今のままだとバランスが悪いわ」
「そうすると、接地面が増えるから……」
結局、ニードルが突き刺さるのは体重を乗せるからだ。
かかと部分が加わった時、それぞれのニードルにかかる重さなどは分散してしまう。
次善の一手のように魔力を通して、現状のモニカさんのようになるのなら、かかとを加えたらもっと浅くなるだろう。
人によって、刺さる深さでの動きやすい動きづらいというのはあるにしても、今のモニカさんが丁度いいと考えたら、浅くなると滑りやすくもなるという事でもあるわけで。
だったら、鋭くしてもらってもっと深く刺さるようにして、かかとを付け加えたらちょうどバランスが取れるんじゃないかと考えられる。
まぁ予想混じりなので、色々試してみないとわからないんだけど……今回の魔力を通すお試しは無駄じゃないはずだ。
「成る程、そういう事なのね」
「接地面が増えれば、一つのニードルにかかる力が分散される。もちろん、魔力もね。今がこれなら、鋭くしてもらえばかかと部分が加わって、ちょうどいいかなって」
考えている事をモニカさんに話すと、納得してもらえたようだ。
とりあえず、この事は後で夜食を終えたソフィーに伝えるとして……。
「思い付きを試すのは終わったから、後はお楽しみだね」
「お楽しみ? まだ何かやるの? そういえばさっき、リクさんは他にもあるような事を言っていたわね……?」
首を傾げるモニカさんに、にやりと笑って見せる。
特に何か含む事があるわけじゃない。
ただ、ここ最近……というかずっとな気もするけど、遊びという事をしていなかった。
だから、ちょっとくらい今の状況を楽しめるようにしてもいいんじゃないか、と思っただけだね。
「うーんと……ちょっと待っててね。あ、氷の上からは降りて、グラシスニードルは外しておいて」
「え、うん……」
モニカさんにそう言って、一旦宿へと入る。
宿の人に頼んで水を多めに用意してもらって……。
「お待たせ」
「あまり待ってはいないけど、それはお水?」
「うん。これをこうして……」
戻ってきた俺が持つ、抱える程の桶の中身になみなみと水が入っているのを見て、キョトンとしているモニカさん。
その表情を見ながら、内心ほくそ笑みながら……というとあまり印象が良くないけど、なんとなくイタズラをしているような気分になりながら、宿の庭に広がる凍てついた地面に向かい、ぶちまける。
イタズラってわけじゃないんだけどね。
「……あれ?」
「どうしたの?」
「いや……水を掛けたら表面が少しくらいは融けるかなって思っていたんだけど」
ぶちまけた水は、凍っている地面に触れたとたん重なるようにして凍る。
表面を少しだけとかせればよかったんだけど、結果としてはほんの少し厚みを増しただけだった。
「うーん、氷の温度が低すぎるのか……硬いし、放っておいても表面すら融けないってのは、そういう事でもあるんだね」
さすがエルサが作った氷だ、通常の氷なら常温の水をかけられたら外気にさらされるよりも、早く溶け始めるはずなのに、むしろその水すらも凍らせた。
いやまぁ、多分隔離結界の外に広がっている、俺がやっちゃった氷の地面も同じかそれ以上に融けにくい可能性もあるけど。
それはともかくだ。
「えっと……リクさん一体何がしたいの?」
「ごめん、思った通りに行かなくて。ちょっと待ってて」
「え、えぇ」
イタズラが失敗したなバツの悪さを感じつつ、それならともう一度モニカさんに待ってもらい、宿に戻る。
常温の水が駄目なら、ちょっとだけ手を入れればいい。
そうだ、俺達がグラシスニードルを試していた時、暇そうにこちらを見ていたリーバーにも協力してもらえるか、頼んでみよう。
なんて考えつつ、宿の使用人さんに手間を掛けさせてしまって申し訳ないと謝りつつ、次の準備をして、再び……三度? 庭へと戻った。
「今度は、お湯? リクさんが何をしようとしているのか、よくわからないわ」
「まぁまぁ、ちょっと見てて。今度は上手くいくと思うから。とはいえ、失敗しないように念のため……リーバー」
「ガァ?」
疑問符を浮かべてばかりのモニカさんに言って、もう少し待ってもらい、リーバーに声をかける。
リーバーは、行ったり来たりしている俺や持っている桶に入ったお湯を、モニカさんと同じように不思議そうに首を傾げながら見ていた。
「ちょっとお願いがあるんだけど、いいかな? えっと……」
「ガァ!」
考えていた事をお願いすると、リーバーは任せろというように鳴いて頷いてくれた。
そして、凍っている地面全体にいきわたるように、口から炎を吐きだす。
まぁ吐き出しているように見えるけど、実際は魔法を使っているだけなんだよねこれ……別にワイバーンの体内に炎を生成する器官なんてないわけだし――。
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