1,497 / 1,811
ニードルに魔力を流して更なる安定感を
しおりを挟む「まぁ、無茶な使い方をしなければいいって事だね」
できるだけ足は真っ直ぐ降ろす必要がありそうだけど、それはグラシスニードルがなくてもそうだったから、問題なさそうだ。
水膜がなくても、やっぱり滑るには滑るから皆気を付けて歩いているから。
魔法や焚き火で融けかけている部分もあるからね……庭と違ってかなりでこぼこした所があるので、やっぱりスケートをするには危険で不向きだけども。
「あ、そうだ。モニカさん達に言って、グラシスニードルに魔力を流す話をしてもらった方がいいかな」
「魔力を?」
「うん。えっとね……」
昨日は、モニカさんとスケートを楽しんだ後、ソフィーはニードルへ魔力を流してといった内容を話す暇もなく、親方衆の所へ行ってしまったからね。
今朝もゆっくり話す余裕もなかったし。
そう思って、ソフィーにも改めて昨日モニカさんと試した事を伝える。
……気恥ずかしかったので、ちょっとしたアイススケートを楽しんだ部分に関しては、何も言わなかったけど。
「成る程な、次善の一手の応用か」
「さすがに全員じゃないけど、できる人も多いし……なくてもなんとかなるけど、やっぱり危険は少ない方がいいだろうからね」
次善の一手は、王軍、侯爵軍共に浸透しているけど、それでも全ての兵士さん達が使えるというわけじゃない。
だから使える人だけでも、魔力を流してニードルを強化した方が転んでしまう危険も少なくなるだろう。
「だがそれなら、魔力で耐久性が補えるから、もっとニードルを尖らせる事もできるんじゃないか?」
「うーん、多分それだと突き刺さり過ぎるんだよねぇ。ソフィーも昨日試したと思うけど、深く突き刺さると逆に動きづらくなっちゃう」
中くらいの強度、というかニードルの長さに合わせてエルサが地面を凍らせてくれた時の事だ。
深々と刺さったニードルは、わざわざ大きく足を上げるようにして抜いてからじゃないと、足を動かせない。
安定というか、転ばないという意味ではそれが一番なんだろうけど、動く事を考えたら深くても半分程度がバランスいいと思う。
今は、先が尖ったおかげもあって昨日一番簡易的なスケートリンクになった、硬い氷の時より少しだけ深く刺さっているけど、三分の一も刺さらない。
ニードルが増えた影響で、接触面が増えて力が分散しているのもあって、予想より少し浅く刺さっているんだろう。
まぁ、着ているものも含めた重さの影響とかもあるだろうけど……体重が軽い人ほど、刺さりにくいから。
「だから、魔力を流す事でもう少し深く刺さらせる事が、一番安定するはずなんだよ」
考えている事や、今試してみた事などを踏まえてソフィーに説明。
魔力を流せば、俺以外の人達なら大体ニードル半分程度は突き刺さるようになるだろう。
可視化されるくらいの魔力量を流してしまう俺と違って、自分がやりやすいようにそれぞれで調整もできるだろうからね。
「そういう事か。わかった、モニカ達に伝えて来よう。私も、次善の一手は使えるからな、協力できる事が増えるのは歓迎だ」
「うん。あ、だけどやっぱり手に持っている武器に魔力を伝えるのと、足から靴、そこからグラシスニードルに魔力を伝えるのは、少し慣れが必要そうだからそこは注意だね」
感覚が違うからなぁ。
まぁ、フィリーナやカイツさんなど、魔力の扱いに長けた人ならすぐにコツを掴むだろうけど、そもそも魔法が使えない人の戦力アップのために考えたのが、次善の一手だ。
これまで魔法を使わず、魔力の操作なんてしてこなかった人達には、伝えてもすぐに実行するのは難しいだろう。
少しの間だけ、練習とか必要そうだ。
「それと、魔力を流している時には、氷のひび割れに注意してね。他の氷よりも、突き刺さりやすくなっているから」
話している間に少し試してみたんだけど、俺が作ったひび割れだとニードルがさらに深く刺さった。
それでも半分まではいかないんだけど、何もしていない氷よりも刺さりやすいのは間違いないいたいだ。
通常の氷とひび割れた氷で深さが急に変わると、足を取られてしまいかねないから、注意が必要だ。
「わかった、それも伝えておこう。しかし、さっきから気になっていたがこのひび割れは……? いや、リクがやったというのはわかるんだがな」
「まぁね。ユノ達みたいに、割っていこうかと思ったんだけど加減をするとこうなっちゃって」
広範囲に広がるひび割れを見渡すソフィーに、苦笑しながら話す。
力の伝わり方の問題なのか、俺のやり方が悪いのか……何故か加減を弱めると周囲の氷が隆起してしまい、加減を強める、つまり弱めに拳を打ち付けるとひび割れが放射状に広がる。
隆起する方は打ち付けた部分がちゃんと割れるんだけど、氷が隆起してしまう事で突起のような部分が出来上がったりして危険。
とまぁ、解氷作業をする際にちょっと試してみたりもしていた。
その際にできた、隆起して尖った氷などは放置すると、誰かに突き刺さるなんて見たくない事件が起きる恐れがあるため、優先的に融かしてもらったけど。
ワイバーンの鎧ならまだしも、通常の金属鎧の籠手を貫いたりもしていたから……。
ちなみに、割れた部分はひび割れと一緒で融かしやすく斬りやすいんだけど、隆起した部分は何故から何もしていない地面の氷と強度は同じだった。
不思議だ……。
「ひび割れから近い氷は強度が下がっていて、次善の一手を使えば簡単に斬ったりもできるんだけどねぇ」
「ふむ、それなら私も少しは貢献できそうだな。まぁ、少し休ませてもらいたいが……」
「ははは、ソフィーは無理しないで。そういえば、レッタさんの方は?」
あくびを噛み殺しながら言うソフィー。
ほとんど寝ていないから、疲れだけじゃなく眠気もあるんだろう。
協力できるとしても、無理し過ぎず休んで欲しい。
「そちらの方は……」
レッタさんがどうなったのか、ソフィーがグラシスニードルを持ってきた理由も含めて聞いてみる。
なんでも、落ち込んだ様子のリネルトさんをアマリーラさんが連れて帰ってきたので、見張りというか見守り役を交代したんだとか。
落ち込んだ様子かぁ……シュットラウルさんとの話は、リネルトさんの思うようには進ま中たみたいだ。
それはともかく、レッタさんも大分落ち着きを取り戻して、割と話せる状態になっているとか。
今日の解氷作業が終わったら、ちゃんと話せそうだね。
ソフィーの方は、交代して休息を……と思ったところで、グラシスニードル完成の報せが届いたと。
それで、急いで取りに行って今ここにいるってわけみたいだ。
「それじゃ、レッタさんとは戻ったら話をするよ」
その前に、リネルトさんから何か言われそうというか、色々言われる可能性もあるけど……。
まぁ、愚痴くらいは聞こうと思う。
「ソフィーは……」
「今リクと話した事を伝えてから、戻って休ませてもらうさ」
「うん、わかった」
モニカさん達の所へ向かうソフィーを見送り、再び拳を打ち付ける作業を開始。
グラシスニードルがあるから、さっきまでよりも足下に気を使わなくて済むのはありがたい。
まぁ俺は転んでも多分平気そうだけど、格好悪い姿はあまり見せたくない……特にモニカさんにはね――。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,117
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる