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レッタさんの様子を伝える
しおりを挟む「予想していたより、かなり落ち着いていました。ロジーナがいる事が大きいんでしょうけど、聞けば知っている事は話してくれましたよ」
「そうか……なら話しやすくて良いな」
本当に真実を話しているかどうかは、全ての裏付けを取れるわけではないのでレッタさんを信じないといけないけど、多分俺が話した限りでは嘘を言っていないと思う。
ロジーナとレッタさんの様子から、嘘を言う理由もないようにも見えたし。
「では、入れ替わりになるが私も聞かねばならん事があるからな。話して来よう」
「旦那様、護衛を連れて行った方がよろしいのではありませんか?」
「ふむ……アマリーラはリネルトが連れて行ったし、しばらくは無理だろう。リク殿、警戒する必要はあると思うか?」
「そうですね……」
執事さんの提案に、考えるシュットラウルさん。
レッタさんに抵抗する素振りがないのと、見張りとしてロジーナとユノがいるのでレッタさんを縛ったり、魔法を使えなくしたり、といった措置は今のところやっていない。
とはいえ多くの被害を出したセンテと、大量に魔物をけしかけた元凶でもあるわけだから、執事さんの心配もわかる。
今ここでシュットラウルさんに何かあれば、センテにいる人達が混乱しかねないからね。
ただシュットラウルさんもかなりの実力者ではあるから、レッタさんが何かしようとしても簡単にはいかないだろうし、ユノ達がいるからなぁ。
まぁ、ロジーナとレッタさんが共謀したら危険ではあるけど、その際にはユノがいてくれるし。
俺と話していた時の落ち着きようと、クズ皇帝と比べた時どちらに付くべきだったかを後悔していた節もあった事を考えると、何かを企んだりはしなさそうだ。
「多分、大丈夫だと思います。ロジーナははっきりと味方と言えるか微妙な部分がありますけど、現状は無駄に問題を起こすとは思えません。それに、ユノもいますから」
「そうか、ユノ殿がいてくれるのなら心強い」
単純な戦闘になった場合、ユノとロジーナは多分同等の実力と考えて良さそうだ。
何かあればユノがロジーナを、シュットラルウさんはレッタさんを押さえるという事もできると思う。
魔力貸与されているから、魔法を使われたら厄介だろうけど……そういった気配をユノが見逃すとは思えない。
それに、レッタさんは武器も何も持っていないし、これまで話したり見て来た感じでは戦闘が得意という風にも見受けられない。
もし特殊能力の魔力誘導で、魔物をおびき寄せようとしたとしても、ここまで来るのに時間がかかるうえ、今センテの周辺には一切の魔物がいないから、届くのかどうかもわからないからね。
アイシクルアイネウムが発生している可能性はあるけど、どこでどうしているかもわからないからどうしようもない。
あ、でも……。
「一応、ロジーナとレッタさんを引き離すような事はしない方がいいと思います」
「わかった、肝に銘じておこう」
俺がヒュドラーを倒した直後にロジーナと一緒に、レッタさんと会った時の様子や、先程話した時の様子を考えると、ロジーナを心の底から信奉しているようだった。
一部、神様相手というよりも子供相手にする可愛がりもあった気がするけど……それも含めてロジーナが近くにいる事と、ロジーナとレッタさんを不必要に刺激しなければ落ち着いて話してくれるだろう。
「それじゃ、俺は……あ、北にいる兵士さん達なんですけど、数人借りてもいいですか? できれば、王軍の一部にいる、ワイバーンの鎧を持っている人がいいんですけど。マルクスさんに頼む方がいいかもしれませんが、今いませんし」
シュットラルウさんとの話を終え、宿から出ようとして思い出す。
他にもアイシクルアイネウムが発生している可能性を考えて、対処するために兵士さんに協力してもらうための許可が欲しかったんだ。
王軍のうち、ワイバーンの鎧を着た大半の人は防寒十分として解氷作業に駆り出されているけど、全員じゃないはず。
残っている人を借りて、やりたい事があった。
本来は王軍はマルクスさん指揮下のため、そちらに許可を求める必要があるんだけど、今マルクスさんはヘルサルに行っている。
その間、代理として指揮権はシュットラウルさんに預けられているってわけだ。
「む? リク殿なら構わんが、何をするのだ?」
「えぇとですね……」
簡単に、宿へと戻る前にアイシクルアイネウムという危険な魔物が発生した事、さらに他の場所でも発生している可能性を話す。
それらの対処のため、ワイバーンと外に出ても寒さ対策ができている兵士が必要な事、方法などを伝えた。
「成る程な、わかった。さすがに全ての兵をというわけにはいかんが、ある程度ならリク殿が自由に使って構わん。――至急、街北駐屯地に報せを」
「畏まりました」
「ありがとうございます。ワイバーンも必要ですし、できれば多い方が助かりますけど……最終的な対処は俺がやるので、大勢の兵士さんを借りる事はないと思います」
承諾してくれたシュットラウルさんが、報せを送る指示を出すのを見ながら、頭を下げる。
ワイバーンは数十体いるけど、半分近くは今ヘルサルに行っているからあまり多くは使えないし、そのワイバーンに乗ってもらう予定のため、兵士さんの数もそんなに多くは必要ない、というか使えない。
それに、発生したアイシクルアイネウムへの直接的な対処は俺が担当するつもりだから、多過ぎても俺の手が足りないだけになるからね。
とりあえずは、様子を見ながら少しずつやっていこうと思っている――。
「さてと……さっきも説明しましたけど、皆さんには空からアイシクルアイネウムを探してもらいます」
隔離結界の外、解氷作業をしていたり焚き火の煙が空へと昇っていくのを遠めに見ながら、連れてきた皆の前に立って話し始める。
連れてきたのはリーバーとワイバーン五体、青い鎧を着た兵士さん三人、重ね着をして着ぶくれしている兵士さん七人。
リーバは俺が乗るため、ワイバーン五体にはそれぞれの兵士さんが二人ずつ乗ってもらう予定だ。
ワイバーンの鎧である青い鎧を持っている兵士さんの中で、すぐに動ける人が少なかったため三人で、残りはとりあえずの防寒として着込んでもらった兵士さん達だ。
ついでにちょっとした連絡法を試すため、兵士さんには特定の魔法が使える人がいる。
その魔法を使える兵士さんが五体のワイバーンそれぞれに乗り、残った兵士さんも別れてワイバーンにというわけだね。
ワイバーンは体の大きさ的に、本来は一人で乗るのがワイバーンにかかる負担的にも一番いいんだけど、今回は頑張ってもらうよう二人乗せるようお願いした。
「アイシクルアイネウムは、ここに来る途中にも話しましたが氷の塊です。空からは少し見つけづらいかもしれませんが……」
地上からだと大きな氷の塊だから、平面の地面に立っていたらわかりやすいけど、空から見下ろすと地面の氷との見分けが少し難しそうだった。
まぁ出て来る際に、巨大な穴が開いている可能性が高いので、それを発見して近くを探せば見つかるとは思うけど。
それらの説明をしつつ、何をするのかも既に話してはいたけどもう一度説明していった――。
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