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連携できた戦闘は楽
しおりを挟む魔力量が増えている影響もあるんだろう、厳密に操作せず、なんとなくというだけでもそれだけの量を使っていたんだ……と今更ながらに自覚する。
まぁ、自分がどれだけ魔力を使っているかとか、比較対象がないとわかりづらいよね。
と勝手に自己完結して話を流しておく……そろそろ、魔物がいるらしい場所に近いから。
「あれは……」
「シュリーガーラッテ、だったかしら?」
「そうだね。俺も昨日戦ったから、間違いないと思う」
森に入って十分程度だろうか、外との境界に近い場所、そこにある木々の枝に逆さになってぶら下がっている魔物、シュリーガーラッテを発見。
数は、十と少しくらいかな……密集した木々に遮られていたり、枝葉の裏に隠れているのもいるかもしれないけど。
「この槍だと、ちょっと届きそうにないわね」
「あと、シュリーガーラッテは不利だと悟ったら逃げるみたいだから、逃がさないようにしないとね……どうしようか?」
俺が剣魔空斬を使って、一気に倒してもいいんだけど……と思ってモニカさんやカイツさんを窺うと。
「リクさんばかりに任せていたら、なんのためについてきたのかわからなくなるわ。魔物との戦いが好きってわけじゃないけど、私もちゃんと戦っておかないとね」
戦うつもりのモニカさんの主張。
木の枝にぶら下がって、高い場所にいるシュリーガーラッテとは戦い辛いだろうけど、それでも経験の一つとして戦っておきたいみたいだ。
まぁ俺ばかりが戦うってのも、モニカさんは望んでいないみたいだからね……なんというか、ありがたい。
「シュリーガーラッテはエルフの集落……いえ、村付近の森でも時折見かける事がありました。確かあれの特徴は……ふむ、まずは私が叩き落しましょう」
「叩き落す?」
カイツさんもシュリーガーラッテの事は知っていたらしく、俯いて何やら考える仕草。
すぐに顔を上げて、シュリーガーラッテが集まっている場所を見据えた。
けど、叩き落すってどうやってやるんだろう? さすがに、木を揺らしてとかではないと思うけど。
「こうして、です……ウィンドラフ!」
両手を空へ突き出し、一瞬の間の後魔法を発動させるカイツさん。
魔法の発動と共に、腕を振り下ろした瞬間発生する突風。
その突風は、空から大地へと吹き降ろされ、枝にぶら下がるシュリーガーラッテが声を発する暇もなく、全て地面へと叩き落した。
……叩き落したって言うよりは、風で叩き付けたようにも見えたけど、似たようなもんか。
「今のうちに! 逃げようとしたシュリーガーラッテは、私が叩き落します!」
「ありがとう、カイツさん! リクさん!」
「うん、わかった!」
地面でもがき、羽を広げて再び飛ぼうとするシュリーガーラッテ、そこにカイツさんの声を受けて飛び出す、俺とモニカさん。
突然の事で、こちらに襲い掛かるという事すら忘れたのだろう、俺の剣、モニカさんの槍と魔法によって、一分も経たないうちに落ちた全てのシュリーガーラッテが一掃された。
もちろん、逃げようと飛んだシュリーガーラッテもいたけど、それらは全てカイツさんの風の魔法ですぐに押さえつけられるようにして、地面に落ちていたりする。
突風によってバランスを保てなくするだけでなく、上から下に以外にも横からの風も混じっていたようで、文字通り風を叩き付けたからみたいだ。
「奇襲したからってのもあるけど、こうして逃げられないようにして戦うのは楽でいいね」
「そうね。私達だけだと、逃がさないまでもこんなに楽には済ませられなかったわ」
「人間よりも、すぐ近くに魔物がいる状況で暮らしているので、エルフは魔物ごとの特徴に対し、有効な手立てを持って戦う事が多いですからね。まぁ、リク様やモニカさんがいますので、私は足止めや語気の疎外に集中しているのが適任でしょう」
シュリーガーラッテの討伐証明部位、両羽の先を斬り取って回収しながら、昨日戦った時より楽に終わらせられたと感心する。
初めてというわけではないけど、これも連携って事だろう。
やっぱり、一人でよりも複数で協力した方がいいってわけだ……わかってはいた事だけどね。
「じゃあカイツさん、オークとかフォレストウルフとか、この森にいる他の魔物に関しては……? あと、ラミアウネもですね」
「ふむ、その中であればフォレストウルフ以外であれば、エルフの村近くで見た事がありますね。リク様達もご存じでしょうが、オークであれば村へと押し寄せた魔物の中にも混ざっておりました」
フォレストウルフはエルフの村でもある、あの森にはいないのか。
まぁ、ラミアウネを知っているなら話は早い。
オークに関しては……実はあの時、俺自身余裕がなかったし色々とあったので、サマナースケルトンの召喚によって、大量の魔物が押し寄せてきていた中にいたのか覚えていなかったりする。
一番厄介だったゴーストは覚えているんだけどね。
他の魔物に関しては、ウッドイーターとかは覚えているけど……あと、ローパーとかマンドラーゴがいたかな? くらいの記憶だ。
多分戦闘を終わらせる直前に起こった事の方が、強く印象に残っていたからだろうと考えている。
封印していた姉さんとの記憶とか、色々とね。
「それじゃあ、さっきみたいに基本はカイツさんが後ろから魔法で援護、俺とモニカさんが魔物に直接ぶつかる、でいいかな」
「そうね。私も今はこの槍だし、使える魔法も森の中ではあまり使いたくないから、リクさんの案でいいわ」
「畏まりました」
俺も今は魔法が使えないし、モニカさんの場合は炎の魔法が多いため、森の中では延焼の危険があるためできるだけ使わない方向で、風の魔法が得意なカイツさんに援護を頼む事にした。
炎の魔法って、標的を倒すという一点では効果的で攻撃性も高いんだけど、意外と使い勝手が悪かったりもするんだよね。
あと風の魔法と言えば、急造でモニカさんが使っている今の槍からも放てるけど、耐久性に難があるとカイツさんが言っていた通り、連発は禁物らしいので戦いながらのワンポイント的に使うのが効果的だとのことだ。
ともあれ、俺たちはカイツさんに再び魔物がいる位置を探ってもらい、モニカさん、俺、カイツさんの順で並んで移動を開始した。
モニカさんが先頭の理由は、本人がそうしたがったのもあるけど、一応武器としては一番リーチが長いためだ。
もし正面から魔物が襲ってきた場合などは、モニカさんが槍で牽制している間に、俺が後ろから飛び出して剣で斬る……と一応の打ち合わせをしておいた。
まぁ、カイツさんがいてくれるから、レムレースとの事で多少わかりにくくなってはいても、魔物に奇襲される心配はほぼないんだけども。
昨日、突然ラミアウネに囲まれて襲われたのと同じ事が起こらないのは、助かるね。
それからしばらく、木々に邪魔されて思うように移動できないながらも、カイツさんのおかげで魔物を発見し討伐。
さらに、フォレストウルフの群れも発見し、モニカさんやカイツさんと協力しての戦闘を開始した――。
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