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魔物を倒して食事休憩

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「カイツさん!」
「お任せ下さい! ウィンドブラスト」
「GYAUN!?」
「ふぅっ! リクさん、そっち!」
「了解! はぁっ!」
「GYA……!」

 カイツさんの案内で、いくつかの場所で魔物を発見、討伐を進め、今はフォレストウルフとの戦闘中。
 魔物の知識として、フォレストウルフに関してカイツさんはあまり知らなかったけど、森に入る前にモニカさんが戦闘した事や、道すがら伝えていたのでしっかり対処できているようだ。
 今は、とびかかって来たフォレストウルフに爆裂する風の魔法で弾き飛ばし、それをモニカさんが回り込んで槍を突き刺してとどめを刺す。
 さらに、別方向からモニカさんに向かっていたフォレストウルフを、俺が剣で斬り裂いた所だね。

 その後も、危なげなくモニカさんやカイツさんと連携して、フォレストウルフ……計六体を全て討伐。
 盗伐証明部位を切り取って終了だ。

「ふぅ……これまでの魔物の中で、一番森の木々を有効に使って動いていましたね。少々厄介ではありますが……落ち着いて対処すれば良さそうです」
「そうですね。結局、狙ってくるのはこちらの誰かなので、それを待っていれば向こうから来ますし。遠くから何かをやって来る、という事がない以上素早い動きに翻弄されなければ、ラミアウネより対処は楽です」
「そうね。木の幹を蹴って、上からというのは初めてだと驚くかもしれないけど、慣れればただそれだけだもの」

 フォレストウルフの討伐を終えて、一息吐きながら話し合う。
 戦闘開始してすぐは、気を蹴って縦横無尽に動き回るフォレストウルフに対し、カイツさんは少し驚いていたようだけど、それも本当に少しだけ。
 前もって情報を伝えていた事もあり、すぐに魔法で対処を始めてくれた。
 森の中での戦闘も、エルフにとってはそれなりに慣れているからっていうのもあるんだろう。

 俺だけでなく、モニカさんも以前フォレストウルフと戦った事があるので、こちらは特に驚く事もなく落ち着いて対処。
 結果的に、正面からでなくてもどこからか必ず襲い掛かってくるのを待ち、対処しつつ止めを刺すだけになったってわけだね。
 もちろん、油断したら危険であることは変わりないので、簡単な作業と言うつもりはないけど、戦い慣れた今となっては大した相手とは言えない。
 それは、ここでフォレストウルフと戦う前に倒した、オークもそうなんだけど、もちろん思い上がるつもりはない。

 ちなみにオークは、鈍重な動きなのもあってカイツさんの魔法で押しとどめる、密集した木々を壁にしてぶつけるなどで、フォレストウルフよりも楽だったりした。
 まぁ、オークの攻撃に当たれば骨にまで届く衝撃なんだろうけど、どこかの誰かが言っていた通り、当たらなければってわけだね。

「ふむ、そろそろこの付近の魔物はほぼいなくなったと言ってもいいようです。いなくはないですが、私たちが向かう程でもないでしょう」

 まだ森の深くではないけど、とりあえず南の一部にいる魔物はほぼ倒したと言っても、おかしくないくらいにはなったらしい。
 近くにいなくなったわけではないらしいし、広範囲を探せば他にもいるんだろうけど、俺達の役目は魔物を全て見つけ出して殲滅、ではないからね。
 隠れて見つからない魔物とかもいるかもしれないけど、それを探すのはもっと後の事だ……最終段階ってところだろう。

 あと、詳細な数はわからなくても、ある程度魔物が多いか少ないか、くらいはカイツさんもこの森に慣れてわかるらしいので、残りは冒険者さん達に任せても良さそうだ。
 冒険者さん達にとっても、魔物を倒せば報酬増加に繋がるので俺達が全て倒すわけにもいかないからね。
 
「じゃあ、そろそろ頃合いだし、昼食にしようか。それが終わったくらいで、冒険者さん達の方を見に行けばちょうどいいと思うし」
「そうね。ここまで気が密集しているとは思わなかったけど、それで移動にも時間がとられたし、それは同じく森に入った他の冒険者達も同じでしょうから」
「気が付けば、日も高く昇っていましたか」

 空を見上げ、枝葉の隙間から見える太陽はずいぶん高い位置……大体、昼前後といったところだ。
 同じ条件で、移動も常より遅くなる事が予想される冒険者さん達も、昼食を終えた頃になれば俺達の今いる場所の近くまで来るだろう事が予想でされるし、ひとまず休憩だね。
 俺一人なら気にせず目印代わりに、木を斬り倒しながらさっさと進めるし、昼食が遅くなってもかまわないけど今はモニカさん達がいる。
 それに、木を斬り倒しまくっていると魔物にもこちらの位置を報せる事になるので、目印は最低限にしてあったりする。

 カイツさんがいてくれれば、魔物をおびき寄せる必要はないしそれが目的でもないんだから。
 昨日は魔物を探してできるだけ倒そうとしていたから、木を斬り倒した時に響く音で、こちらに来てくれればラッキーくらいに思っていたんだけどね。
 というのはまぁ、カイツさんに音で魔物を刺激する……と注意されてから考えた言い訳だけど。

「森の中で、携帯食……というわけではないですが、こうしてまともな食事ができるのは素晴らしいですね」
「父さん、張り切っていましたからね」
「ははは、そうだね」

 獅子亭で作ってもらった食事……お弁当を食べて舌鼓を打つ俺達。
 特にカイツさんは、獅子亭の料理が初めてだったのもあって美味しさに驚いているようだ。
 今日のお弁当の献立は、じっくり煮込んで溶けた野菜が体に優しいスープと、薄い食パンに近い物二枚にたっぷりとした焼いたお肉をソースと一緒に挟んだ物だ。
 焚き火などはしていないけどモニカさんによる炎の魔法で、少しだけ温めなおしてある。

 パンとお肉は大きく、一つで成人男性一人分がお腹いっぱいになるくらいなので、食べ応えがあるし、温めなおした物を咀嚼すると、奥の方からじんわり肉汁が溢れるのが嬉しい。
 大きめのお肉、というよりお肉主体になっているのはそれその物の仕入れが安くなっている影響だろう。
 高くなっている野菜が少なめなのが、好きな人にとっては残念かもしれないけど、この場には菜食主義の人がいないようで、満足。

 カイツさんとか、エルフは俺の中にある日本人的なイメージで菜食主体かと思っていたけど、結構肉食というかお肉主体の食事を好むらしいというのはまぁ、フィリーナやアルネ達もそうだったんだけど。
 エルフの村でも狩猟とかしているみたいだし、向こうに行った時もお肉メインの料理はいっぱい食べさせてもらったからね。

「……これは、売れるわね」

 食事の終盤、モニカさんと話す内容はお弁当を獅子亭で売り出してみたらどうなるか? という事。
 既に昨日の夕食をいただいた後で、マックスさんにそれとなく話し手はみたんだけど、乗り気ではあっても人手が足りないと難色を示してもいた。
 まぁ現状で人手がギリギリらしいし、もしリリーフラワーの人達が俺のクランに入るとさらに人手が減るわけで、そこに新しくお弁当始めました……というのはやっぱり難しいよね。
 でも、あくまで個人的な考えとして、もう少しお弁当を美味しくできないかと思って、ちょうどいいしモニカさんに話してみたってわけだ――。


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