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リク自身がわかりやすい行動をしていた

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「んー? モニカさんの言い方だと、ソフィー達がこっちに来ていたってわかっていたように聞こえる? カイツさんは、誰がとまではわからなかったはずなのに、なんで?」
「大方の予想通りだったからってとこね。冒険者達が、私達から離れているみたいだって話だったでしょ? その中で、私達に近づいて来るなら、ソフィーかフィネさん達だって考えていたのよ。それか、フィリーナ達くらいね」
「フィリーナ達かもって言うのは、俺も考えていたけど……どうしてソフィー達かもって?」

 どうやら、モニカさんは俺達の方に近づいてきていたのが、ソフィー達……仲間の誰かだって予想していたようだ。
 俺達の位置を探れるのもあって、フィリーナ達の可能性はまぁ、俺も考えていたけど。
 さすがに、ソフィー達かもとまでは考えていなかった。
 森に入った冒険者さんのうち誰かなのは間違いないだろうから、可能性としてはあり得ないわけじゃないけども。

「原因はリクさんよ。多分、他の冒険者達はリクさんから逃げていたの。だから、離れていくようになっていたんでしょうね」
「え、俺?」
「……リクは無自覚だったのか、モニカ?」
「えぇ。私も近くにいて、そちらに考えが及んだのが遅れたのだけど……」

 何やら、通じ合ったように苦笑しあうモニカさんとソフィー。
 モニカさんの言葉が正しければ、さっきチラッと考えたけど……冒険者さん達は俺から逃げていたって事になる。

「もしかして俺、冒険者さん達に嫌われているのかな……?」

 やっぱり、俺何かしたんだろうか? 逃げられるって、相当嫌われていると思うんだけど。
 というかそもそも、どうして俺が近づいているってわかったんだろう? 嫌われているとしても、正確に俺が近づいているなんて視界の悪い森の中では、簡単にわからないはずなのに。

「え? リクさんが嫌われてる?」

 ネガティブな事を考えて、ポツリと漏らした俺の言葉に、キョトンとなるモニカさん達。
 こういった話に興味がなく、木々の様子を観察しているカイツさん以外の、モニカさん、ソフィー、フィネさんの三人の目が点になって、顔を見合わせていた。
 俺、そんなに変な事を言ったかな?

「ぷっ! く……あはははははは!」
「リク、リクを嫌うなんて……くふっ、はははは!」
「くっ……わ、笑ったら失礼ですよ、モニカさん、ソフィーさん! くっ……ふっ……!」
「え、え、え?」

 顔を見合わせた三人が、吹き出し、笑い出して戸惑う俺。
 いや、フィネさんは我慢しているのか、はっきりと笑い声をあげていないけど。
 でも一体どうして……?

「魔物のいる森で、こんなに笑うとは思わなったな……いや、すまんすまん!」
「ふぅ、はぁ……すぅ……ふぅぅ……も、申し訳ありません、リク様」

 よっぽどおかしかったのか、目に涙を溜めているソフィーに謝られるけど……それはあまり誤っているうちに入らないと思う。
 まぁ、笑われている理由もよくわからないから、別にいいんだけど。
 フィネさんの方は、深呼吸してソフィー達のように笑うのを我慢したようだ。

「もうリクさん。リクさんが嫌われているなんて事は、絶対にないわよ? どれだけの人が、リクさんに感謝していると思っているの?」

 お腹を押さえたモニカさんが、俺にそう言う。

「いやだって、俺だってわかっていてそれで離れているなら、嫌われているって事なんじゃないかって。ほら、ソフィー達もここに来た時やっぱりって言っていたし。どうしてかはわからないけど、俺がいるとわかっていたなら、それしか……」

 逃げられている、というのと同じ状態だからね。
 森に入った全ての冒険者さん達と親しい、というわけでもないから、中には俺の事を嫌っている人だっているかもしれないし……。
 これまでの事を考えると、多くの人を助けられたという自負はあれど、同じくらい迷惑もかけていると思う部分もあるからね。
 主に、魔法の失敗とか、赤い光とか、凍った大地とか、隔離結界とかその他諸々……多くは、魔法の失敗だけど。

 まぁ、これまで好意的に接してくれた人が多いというか、そういう人達ばかりだったので、自分でもなんでいきなりこうしてネガティブになっているのか、わからないけど。
 多少なりとも、皆に迷惑をかけていると自覚しているからかもしれない。

「はぁ……リクさんはもう少し、自分を認めてあげた方がいいんじゃないかしら?」
「そうだな。もちろん、万人に好かれているとは言わないが、少なくともセンテでの戦いに参加した冒険者たちの中で、リクノ事を嫌っている奴はいないはずだぞ? 恐れている、という事くらいはあるかもしれないが……」
「そ、そうなのかな?」

 溜め息を吐くモニカさんに、苦笑するソフィー。
 二人がそう言ってくれて、ちょっとだけ元気になれた。
 うん、そうだよね……俺自身、出会う人全員に好かれようとは思っていないけど、友好的に接してくれる人は多いわけで。
 あまりネガティブに考えなくてもいいのかもしれない。

「冒険者が離れていっていたのは、リクが嫌われているのとは全く関係がない。まぁ、リクと関わりがないとは言えないが……冒険者達がリクと認識しているかはともかくな」
「ソフィーとフィネさんが来た事で、私が予想していた通りだったんだろうけど」
「えっと、それはどういう……?」

 モニカさんは、俺と一緒にいたのに理由がわかるみたいで、ソフィーやフィネさんを顔を合わせて苦笑いしている。
 嫌われているとかは俺の考えすぎらしいけど、俺と関わりがあるっていうのはなんだろう?

「リクさん、ここに来るまでに何本もの木を斬り倒していたでしょ? 軽々と」
「え? まぁ、うん。魔物を回収してくれる兵士さんの目印のためだけど」
「理由はそれよ」
「うぇ? 木を斬り倒していたからって、冒険者さん達が俺から離れていくっていうのはさすがに……」

 モニカさんの言葉に驚く俺。
 俺の中では、木を斬り倒している事と、冒険者さん達が近づかないのは繋がらないんだけど。
 そういえば、さっきからモニカさんが何度も斬り倒した後の木や、切り株に視線を向けていたような……?

「こちらにも届いていたし、森に入った冒険者は大抵が耳にしていただろうな。リクが木を斬り倒す音を」
「斬り倒す音……?」
「あれだけの木よ、たださえ木々の間が狭いのに、一本の木を斬り倒すだけでも相当な音が出るわ」
「まぁ、それは確かに」

 ソフィーの言葉に首を傾げる俺に、モニカさんが周囲にある木を示しながら言う。
 森の木は、大小さまざまあるけど大体は人が数人で手を伸ばしてようやく、一周できるくらいの太さがあるかな。
 樹高……木の高さは少なくとも十メートル以上はあるうえ、密集している。
 その木を斬り倒せば、他の木々の枝葉にぶつかって大きな音を立てるし、そのまま支えられる物もあれば、地面に倒れる物もあるわけで。

 地面に倒れた時なんて、地面が揺れるくらいの衝撃と大きな音も出ているのは、昨日から何度も経験した。
 木々のざわめきがあるとしても、そんな音が発生したら離れた場所にも届くのは間違いないからね――。


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