神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
1,635 / 1,955

緊急事態の発生

しおりを挟む


「そうね……とりあえず、探ってみるわ。大分経っているし、リクのやったあれの事を異変と感じている木々も減ったでしょうから」

 俺がやったあれ、というのはレムレースとの戦いなどで荒野ができたり、森の木々を斬り倒した事だろう。
 カイツさんも、森の木々はあれが異変だと捉えてたから、魔物や冒険者さんの情報がわかりづらいって言っていたっけ。
 ……荒野はレムレースのせいなんだだから、俺がやったと一緒くたにされるのはちょっととは思うけど。
 それはともかく、フィリーナが言いたいのはもう夜になったし、少しずつ森の木々から得られる情報も整理されたとか、そういう事なんだろうと思う。

「ははは、そうかもね。うん、お願いするよ」

 直接探しに行くより、まずはフィリーナに探ってもらった方が手っ取り早いからね。
 それで、何かあるようだったら、助けに行けばいいわけだし。

「え? え?」
「木に手を……?」
「エルフさんだから、私達の知らない何かをしているんでしょうけど……さっきもそうだったし。でも一体?」
「あぁ、気にしないで下さい……と言っても、気になりますよね。えっと、フィリーナはエルフだからこそ……」

 俺に頷いて、早速広場の端まで駆けて行き、木に手を当てて情報を探り始めるフィリーナ。
 それを見た女性冒険者さん達が、それぞれ不思議そうにフィリーナを見ていたため、簡単に説明する。
 エルフだから、木々から直接……ただしはっきりではなくぼんやりとだけど、周囲の状況を探れる、と説明しておいた。
 本当は、距離が離れ過ぎていない木々が続く限り、つまり森の中全体をある程度探れたりするらしいけど、まぁ今は詳細を話す程の事じゃないからね。

 ちなみに、情報を探るエルフがいる場所から離れれば離れるほど、ぼんやりとした情報というのはさらにわかりづらくなるらしい。
 とはいえ今回はそんなに距離が離れていないだろうから、問題にはならないはずだ。
 なんて考えているうちに、情報を得られたのか俺や女性冒険者さん達が見守る中、フィリーナが手を離してこちらを振り返った。
 ……でもなんだか、焦っているような?

「大変よリク! 二人の人間……おそらく、ここにいない二人でしょうけど。その二人が魔物に襲われているわ!」
「え!?」

 なんだって!? 戻って来るのが遅いと思っていたら、魔物と遭遇していたのか!

「魔物!? ふ、二人は無事なんですか!?」
「おそらく、としか言えないわ。さすがにそこまではわからないけど、人間がいるという感覚を木々が持っているから、生きてはいるはずよ」

 女性冒険者のうち一人、おそらくリーダーの人が驚いて立ち上がりながら、広場の端、木の近くにいるフィリーナに大きな声で聞く。
 こちらに戻って来ながらの、フィリーナからの言葉。
 多分、もし魔物にやられて死んでいたら木々というか自然は、人間ではなく物として認識するとかなのかもしれない。

「その二人、武器とかは……」
「持って行っています! 森の中では、常に何があるかわからないと警戒していますから!」

 さすがに、森の中に入るのに武器を持って行っていないって事はないか。
 冒険者だし、大きな怪我もなくここまで来れる人達だから、もちろん襲われても戦えるだろうし、少しだけ安心だ。

「でも急がないと。戦っている、ではなくて襲われているようなの!」
「襲われている……という事は一方的に!?」
「おそらくそうよ。さすがに細かい事はわからないけど……戦っているという状況ではないようなの」
「それは……」

 武器を持って行っているのに、戦っていないというのはどういう事なんだどう?
 襲われているという言葉からは、一方的にやられている様子が思い浮かぶ。
 ……仲間のいるこちらに向かって逃げてきている、とかだったらいいんだけど。

「得た情報では、魔物が十いるかどうかと言ったところよ。人間は複数の少数だから、おそらく状況から考えてここにいた冒険者だろうから二人ね。ただ、その二人はほとんど動いていないようなの。移動していれば、わかるんだけどそれもないみたいよ」
「移動もしていない、ただ襲われている……」
「魔物が十体も!?」
「囲まれてしまえば、あの二人でも……!」

 移動をしていないという事は、逃げいているわけではないという事。
 それで戦っていないのなら、本当にただ襲われるだけ……一刻も争う状況かもしれない。
 さっきまで、いずれ戻って来るだろうと高をくくって、悠長に焚き火を眺めていた自分を責めたいが、そんなことをしている場合じゃない。

「とにかく、助けに行かないと! その二人と魔物はどこに!?」
「ここからだと、あっちへ真っ直ぐ行けば辿り着けるわ。距離はそこまで離れていないはずよ。大きな声を出せば、届くくらいの距離!」

 フィリーナが森の南側を指し示す。
 大きな声が届くくらい、という事は本当にそこまで離れていないんだろう……夜だから、少し声は通りやすいかもしれないけど。
 それなら、何故襲われている二人からの助けを求める声が聞こえないんだろうか? 大きな声で悲鳴でも上げれば、こちらに届くだろうに……。

「俺と……もう一人、付いてきてください! 他の二人とフィリーナはここで! リーバーが戻ってきたら、俺が戻るまで待機を!」

 リーバーが戻って来た時、誰もいなかったら困ってしまうだろうし、全員で森に入るのは危険が伴うため少数で行く事にする。
 フィリーナがいてくれれば、森では大体の事に対処できるだろうし。

「わかったわ! やり過ぎないようにね、リク!」
「わ、わ、私が行きます!」
「勢い余ってちょっと強めに行くかもしれないけど、わかったよ……!」

 頷いて念のための警戒態勢を取るフィリーナと、女性冒険者さん達の中からリーダーさんが進み出てくれる。
 いきなりの事で、多少戸惑ってはいるようだけどこういう時決断するのが早いのは助かる。
 いや、助けるのはこちらで今からなんだけどね。
 あと、状況に応じて動く必要があるから、やり過ぎないかどうかは保証できない……人命を助けるためなら、全力で魔物を倒さないといけないかもしれないから。

 とはいえ魔法を使う時よりひどいことにはならないだろうし、今後のためにもできるだけ加減はするよう気を付けながら、フィリーナに返事をした。
 やり過ぎると、明日以降にフィリーナとカイツさんが木々から情報を得る時に、困るかもしれないからね。

「それと、これはおまけよ! ライティング!!」
「っ! ありがとうフィリーナ、助かるよ!――行きましょう! 走りますので付いてきて下さいっ!」
「は、はいっ!!」

 フィリーナが明りの魔法で行き先を照らしてくれたのにお礼を言って、リーダーさんを連れて剣を抜きながら駆け出す!
 もちろん光を遮ったら暗くて何も見えなくなるので、懐中電灯のように照らされている光の横を沿うようにだけど。
 ともあれ、魔物に襲われていると思われる女性冒険者さんが、まだ無事で間に合うように心の中で祈りながら森の中へと入った――。


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜

難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」 高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。 だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや—— 「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」 「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」 剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める! 魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」 魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」 神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」 次々と編み出される新技術に、世界は驚愕! やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め—— 「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」 最強の頭脳戦が今、幕を開ける——! これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語! ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...