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アマリーラさん達にこれまでの話を伝える
しおりを挟む「あ、どうも~。お久しぶりです。えっと、さっき食事したばかりなので、ごめんなさい……」
等々、治安の良くなったヘルサルを歩いていると、以前から顔見知りになっていた人達、特にお店を営んでいる人達から声を掛けられる。
食べ物を分けてくれようとする人には、お腹がいっぱいだからと丁重にお断りしつつ、できるだけ挨拶を返しながらぶらぶらと歩く。
特に目的もないし早くセンテに帰らないと、というわけでもないので歩く方向は適当だ。
無目的に歩きすぎて、何度か同じ道を通ったりもしたけど。
「以前からヘルサルでのリク様に関する評判は良かった、と聞き及んでいますが……ここまで街の者達に親しまれているとは思っていませんでした。さすがリク様です」
「いやまぁ、しばらくヘルサルで……というか獅子亭で働いて、過ごしていた事がありますからね」
「それに加えて、ゴブリン達が迫った時に助けられたという人が多いからでしょ、リクさん。あの時、大量のゴブリンが来る可能性を突き止めたのも、備えるためにセンテと連携しつつ、街の皆がまとまるよう動いたのも、リクさんだし」
「俺だけじゃなくて、モニカさんもでしょ? あと、ヘルサルの人達が協力的だったのもあるし……」
初めての依頼で、ゴブリンジェネラルだったっけ? それを見つけてヤンさんに報告した時には、モニカさんも一緒だった。
さらに、センテとヘルサルの人達は防衛戦をするにあたって、ほとんどの人が協力的で街を守るために尽力してくれたからね。
それで顔見知りになったり、親しくさせてもらっている人が増えたのは確かだけど……あと、獅子亭の常連さんとかも協力してくれたし。
マックスさん達への信頼というのもあったと思う。
「人伝には聞いておりますが、その時のリク様の活躍……もっとよく知りたいです!」
「……聞いても、あまり楽しいとは思えませんけど。まぁ、歩きながらで良ければ」
「ふふ、リクさんの活躍をいっぱい知ってもらわなきゃね」
何故か楽しそうなモニカさんと一緒に、アマリーラさんに請われるままヘルサルでの事……というより、俺がこちらの世界に来てからの話を順序立てて話す。
途中、街の人との挨拶を交わしながら、適当に歩いてヘルサルの様子を見ながらだけど。
図らずも、やるべき事をやるために奔走していたここ最近とは違って、のんびりとした時間を過ごせたかな。
ゆっくりするのは明日でもいいかなと思っていたけど、まぁ余裕があるのはいい事だ。
俺やモニカさんの話を、アマリーラさんは尻尾をゆらゆら、リネルトさんは大きく振りながら聞いてくれていたし、喜んでくれてもいるみたいだから。
それとついでに、ユノやロジーナの事も含めて大まかにだけど俺が別の世界から来た事、アテトリア王国の女王陛下は前世が俺の姉だった事なども話しておいた。
ユノやロジーナ、あと姉さんはともかくとして、俺の事に関しては特に隠している事じゃないからね。
まぁ、別の世界とか姉さんの前世という話は、アマリーラさん達によくわからなかったみたいだけど……生まれ変わりとか、輪廻転生的な考え方はこちらにはほぼないみたいだ。
後リネルトさんはレッタさんと話した時に同席していたので、ある程度知っている事ではあるけども。
話した理由は、一緒にいるなら……というかアマリーラさん達は張り付くという程じゃなくても、近くにいるつもりみたいだから、こういう話はしておかないとね。
以前スピリット達を召喚した時、獣神と勘違いしそうになったのもあるから、誤解も解いておかないと……本当の神様は、ユノやロジーナだし。
「ユノ殿やロジーナ殿が本当の……では、リク様は神の使徒様というわけですか」
「いやぁ……使途も何も、神様そのものがいて満喫しているんですけどね。特にユノが」
使徒というのは、神様の使いで代理人みたいなものだと考えているけど、その神様がいるんだから代理も何もない。
ロジーナはともかく、ユノは人間として色々と満喫しているし、俺もそんな大層なものじゃないからね。
一応、ユノがこの世界に人間として来る前は、使徒みたいな感じだったのかもしれないけど……俺にもユノにも多分そんな感覚はない。
ただ創造神が作ったドラゴンのエルサと出会って契約し、自由に過ごしていただけだから。
ともあれ、アマリーラさんの新しい誤解を解きつつ、ヘルサルを色々と歩き回って見て日が傾き始めた頃、センテへと戻った。
その途中、小物を売っているお婆さんと再会して、少しだけ懐かしくもなった。
アンリさんが絡んできたガラの悪い冒険者を飛ばして、お店を破壊した際に、怪我をしたお婆さんで、ユノのがま口財布を売ってくれた人でもある。
あと、俺が治癒魔法で怪我を治した人でもあったっけ。
その時の事を感謝されつつ、ユノがいない事を残念そうにするお婆さんは、モニカさんだけでなくアマリーラさんとリネルトさんを見て、侍らせているなんてニヤニヤ笑っていたのを、そんなんじゃないと弁解したりというのもあった。
……明日またヘルサルに来るんだから、ユノを連れて来よう。
ユノもお婆さんに会いたいだろうし。
「やっぱり、男一人で女性複数と一緒に歩いていると、邪推されるものなのかなぁ?」
センテに戻って、夕食やらお風呂を済ませて部屋に戻り、エルサと俺だけになってから呟く。
今日はモニカさんとアマリーラさん、それにリネルトさん。
また別の日というか以前はモニカさん、ソフィー、フィネさんやフィリーナなど、女性を連れて歩いている事が多いからか、変な目で見られることはやっぱり多い。
小物売りのお婆さんとかのように、面白がって何か言われる事だってある。
仕方ない事かもしれないけど、なんだかなぁ……まぁ皆それぞれ方向性は違うけど、可愛かったり綺麗だったりする女性だから、俺が見る側でも同じ反応をしたかもしれないけど。
……別に、近くにいる女性全員に粉をかけているなんて事は一切ないし、そのつもりもないけど、一部の男性から妬まれていないかと少しだけ心配。
もしかして、そこから変な噂でも流れたからこそ、森で話しているのを聞いてしまった華麗なる一輪の花パーティの人達が、ハーレムなんて言い方をしていたのかも?
「リクの周りはいつもそうなのだわ。そう見る俗な人間なんてほとんどがそうなのだわ。諦めるのだわ~」
「中々手厳しいなぁ、エルサは……そんな事を言っていると、毛を梳いてやらないぞ?」
「それは横暴なのだわ! 濡れて絡まっているのだわ、早くやるのだわ!」
「ははは、はいはい」
ドライヤーもどきの魔法が使えないけど、エルサのモフモフを保つ義務があると俺自身が勝手に思っているので、お風呂上がりのケアは欠かせないからね、冗談だ。
念入りにお湯を吸ったエルサの毛から水分を拭き取り、さらに念入りにふわふわになるまでブラシで毛を梳いていやる。
無心でそうしていると、なんとなく疲れが取れていくような感覚がする。
本当に体の疲れが取れているわけではないけど、心が軽くなるようなそんな感じだ。
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