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ヤンさん達と別れて獅子亭へ

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 何やら真剣な様子のヤンさんが、物理的な距離から直接的ではないにしろ、支援などを約束してくれる。
 犯罪者というか、犯罪行為を推奨するというか……とにかく、話しを聞く限り表に出せない悪事を働くためのギルドみたいだからね、裏ギルドって。
 冒険者ギルドとしては、口実もあるわけで俺達だけでなくアテトリア王国側に付いてくれるのは、心強い。

 もしかしなくても、冒険者さん達の参加意欲が高いのは自由意志だけでなく、冒険者ギルドが推奨する、後ろに付いていると感じているからじゃないだろうか?
 じゃないと、ギルド側から話を持って行くなんてありえないわけだし。

「それじゃ、意思確認した冒険者さん達の事。それからエレノールさんも、よろしくお願いします。明日には王都に行きますので、しばらくは会えませんが……」
「はい。こちらで何かあれば、王都の冒険者ギルドを通してリクさんに」
「畏まりました。あちらの件はお任せ下さい。順次、完成品ができましたらお送りいたします。あと、資金の引き出し報告なども滞りなく、契約通りに」
「はい、お願いします」

 色々と話して、色々と理解して話を終え、ヤンさんとエレノールさんに挨拶をしてモニカさんと一緒に退室する。
 最後に、エレノールさんにはエルサを撫でてもらって、極上のモフモフを堪能してもらうと共に、ぬいぐるみを作るための参考として覚えてもらったけど……昨日散々撫でまわしたから、今更な気がしなくもない。
 名残惜しそうに、本当に目端に涙を浮かべてエルサのモフモフから手を離したエレノールさんを見るに、単純にエルサのモフモフを堪能したかっただけっぽいかな。
 ともかく、冒険者ギルドでの話し合いなどやる事を終えて建物を出て、獅子亭へと向かう。

「結局、今日一日はのんびりするつもりだったのに、そうでもなくなっちゃったね。ごめんモニカさん。もう少し、モニカさんとセンテなりヘルサルなりで、色々と見て回ったりとかしたかったんだけど」

 獅子亭への道中、日の傾いた空を仰ぎ見ながら隣を歩くモニカさんに言った。
 ちなみに、アマリーラさんとリネルトさん、ソフィーとも合流して一緒だ……三人とも、クラン参加の意思確認の説明会に参加していて、何やら見て確かめた冒険者さん達の事について話し合っているけど。
 何やら、あれは見込みがあったとか、あちらは意気込みばかりが先走っているようだったなど、評価みたいな言葉が聞こえてくるけど、まぁ楽しそうなのでそのままにしておこう。

「ふふ、別にいいわよ。リクさんがそう考えてくれていたっていうのは嬉しいわ。確かに少し残念だけど……でも、こういうのもいいじゃない?」
「そう言ってくれると助かるよ。ありがとう」

 笑ってそう言うモニカさんに、心の中で感謝しておく。
 まぁ、口でもお礼を言ったけど――。


「ふむ、盛況なのはいい事だ」
「そうですね。ルギネさん達がいないので、人手が少なくなったのが厳しそうですけど……」

 適当にヘルサルをぶらぶらした後、獅子亭に到着……どうせ俺達の夕食は獅子亭の営業終了後だとわかっているからか、ユノ達はまだヘルサル回っているようで来ていない。
 夕食の時間少し前だったのもあって、忙しくなり始めていた獅子亭だけど、見ているのもなんだし美味しい物を食べさせてもらっているから手伝おうと思ったんだけど、俺は何故かヴェンツェルさんと一緒に奥の休憩室へと押し込められた。
 王都へ出発する前まで手伝わなくてもいいから、ヴェンツェルさんの相手をしていろという事だったけど……ヴェンツェルさんが面倒で俺に押し付けた、とかじゃないですよねマックスさん?
 というか、本当に毎日のように来ているんだなヴェンツェルさん。

 まぁ近くに美味しいのが確実なお店があり、しかも顔見知りどころか昔馴染みがやっている店なんだから、常連になるのも当然と言えば当然か。
 ヴェンツェルさん自身はマックスさんよりも、カーリンさんが目的っぽいけどね。

「そういえば、カーリンがいないようだったが……」
「もうルギネさん達と一緒に、センテに行ったみたいですね。さっきマリーさんから聞きました」
「むぅ、そうだったか。では、明日王都へリク殿達が出発する前に、見送りに行けばいいか」
「王都に戻ればまた会えるんですから、見送りは別に……というか、あまり過保護過ぎるとカーリンさんに呆れられますよ?」

 というか、過保護な部分は既に呆れられている気がするけど。
 そのカーリンさん、俺が冒険者ギルドで諸々の手続きをしたりしている間に、ルギネさん達とセンテに出発していたらしい。
 ヘルサルを出る直前まで、カーリンさんとリリフラワーのメンバーは律儀に獅子亭を手伝っていたらしいけど……それもあって、俺に手伝わなくていいと言ったのかもしれない。
 ……モニカさんはマリーさんに引っ張られて、手伝っているんだけど。

「しかし、カーリンたちがセンテに行ったのなら、リク殿がここにいていいのか? あちらでカーリンが困るような事はない方がいいのだが……」
「あぁ、それは大丈夫です。カーリンさん達にはシュットラウルさん……侯爵様が用意してくれた宿に泊まってもらえるよう手配していますから。どうせヘルサルに用があったから、タイミングが合えば俺達がセンテに戻る際に一緒にとは思いましたけど、入れ違いみたいでした」
「そうか。手配しているのなら大丈夫そうだな」

 納得して頷くヴェンツェルさん。
 一瞬、「カーリンが困るような事は――」の部分で視線が鋭くなったけど……本当に過保護だなぁ。
 それだけ、姪っ子のカーリンさんを可愛がっているという事でもあるんだろうけど。
 ちなみに、俺と入れ違いなる事も考慮して、センテではカーリンさんやルギネさん達を迎える準備はしてある。

 とはいっても、明日の出発まで一泊するくらいだけどね。
 当然ワイバーンを使うわけでもなし、徒歩もしくは乗合馬車で行くのでセンテ西門の衛兵さんには、カーリンさん……というかルギネさん達が来たら、宿に向かうよう伝言を頼んである。
 カーリンさんはともかく、ルギネさん達はセンテの戦闘に参加しているし、ヘルサルやセンテの周辺で活動していた冒険者でもあるため、衛兵さんが間違う事もない。
 念のため、信号機……では伝わらないけど、カラフルな髪色をした冒険者パーティなど、特徴を伝えておいた。

 それは宿の人達にもそうだし、任せておけば俺達がいなくてもちゃんと歓待してくれるだろうから安心だ。
 ……あちらはプロだし、シュットラウルさんの使用人さんもいるからね。

「まぁ、カーリンに会えないのは残念だが……リク殿にも伝える事があったからな。ちょうどいい」
「俺にですか?」

 俺に伝える事とはなんだろう? と思いつつも、ここなら他の人に聞かれる可能性も低いという意味でも、ヴェンツェルさんがちょうどいいと言っている気がした。
 ……カーリンさんだけでなく、俺に話をするのも目的だったのか――。


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