1,692 / 1,811
王都への道程は思うようにいかず
しおりを挟む「センテが救われたのに、また別の計画、ですか……」
レッタさんの話を聞いて、険しい表情になる兵士さん。
話を聞いていた他の人達も同様で、皆食事をする手が止まりがちになっている。
無理もないかなぁ……ヴェンツェルさんが連れて来た王軍兵士さんは、ヘルサルに到着した時点で大きな問題、ヒュドラーなどはほぼ解決していたわけだけど、報告などで何があったのかは知っているはずだし。
モニカさんやソフィー達、ルギネさん達リリーフラワーの人達は絶望に近い魔物の数を見ているんだから。
場の雰囲気が沈む中、モリモリと食事を続けているのは、エルサとユノ、それからロジーナくらいだ。
気楽だなぁ……とは思うけど、ここで考えすぎて沈んでしまっても仕方ないので、意識的に明るくなるよう皆に声をかけた。
「まぁでも、考えようによっては多くの魔物を倒せているんだから、計画の邪魔もできているって事だよね。どこかに集めて、またぶつけようとしているにしても、結構戦力を削ぐ事ができていると思うんだ!」
魔物の種類は違えど、合計すると数百体の魔物を倒した事になるからね。
どれだけの魔物を集めようとしているのかはわからないけど、それが計画の一端だとしたら、その戦力を削げばセンテのような事はそうそう起こらないし、起こせないだろう。
「まぁリクの言う通りね。どんな計画なのかは私にもわからないけど……というか、私が言うのもなんだけどね。でも、この国に点在していた拠点ももうほとんどないわ。センテの時程の数や種類を集めるなんて事はもうないはず。それこそ、帝国内でない限り。だから、あれだけ倒しておけば大kな問題になる程じゃないわ」
俺の言葉を補足するように、皆に通る声でそう言うレッタさん。
少しだけ、魔力の揺らぎのようなものを感じた。
「……レッタさん?」
「少しだ魔力誘導を使わせてもらったわ。魔力で生きている魔物と違って、人には効きにくいけれど……それでも少しは気分を変える事くらいはできるはずよ」
「成る程……ありがとうございます」
どうやらレッタさんは、皆の沈んだ気分や空気を変えるために魔力誘導を使ったみたいだ。
魔物に対してみたいに、動きを誘導する事はできないみたいだけど、多少は気分を変える方向に影響を与えられるらしい。
人を操るわけじゃないみたいだし、これくらいなら皆も少しは気分が良くなって、表情も明るくなったからいいだろうと思い、レッタさんにお礼を言っておく。
「……辛気臭い顔をしていたら、ロジーナ様が健やかに食事できないし、それを観察する事もできないじゃない」
「そ、そうですね……」
皆のためを思ってとか、レッタさんも元々は善良な人だったんだろうから、それを思い出して……みたいなことを頭の片隅で考えていたら、ロジーナのためだった。
うん、ブレないなぁ……お礼を言って損したとまでは思わないけど。
まぁレッタさんはやっぱりレッタさんって事で、復讐とロジーナに執着するのは簡単に変わらないか。
「何はともあれ、王都までそんなに遠い場所じゃなし。明日は見つけ次第魔物を討伐しつつ、王都に向かえば計画とかも進められなくなるかもね」
「そうね。ここにはそれがやれるだけの戦力もあるんだし、もちろん私達も戦うわ」
皆を沈み込ませないようにと考えた俺の気持ちを察してくれたのか、モニカさんが俺に続いてくれた。
王都まで、大体だけどあと三分の一で程度。
もう一度荷物をエルサに載せる必要はあるにしても、ものすごい時間がかかる事じゃない。
途中に魔物を討伐する事が何度かあって遅くなっても、王都に到着するのは昼過ぎくらいだろうし、魔物の集団を見つけたら即討伐でいいだろうね。
そう決めて、帝国がどんな計画をしているのかわからなくとも、それを挫くべく動く事に。
理由や原因に関しては、この場でわかる事じゃないし、王都に行ってから考える、調べるでもいいからね。
そうするしかないわけで、考えすぎてもいけないから。
というわけで、レッタさんの魔力誘導の効果があったのか、皆が多少明るい表情に戻り、それぞれの食事を終えてテントに入って就寝。
名目上の護衛だからと、アマリーラさんが俺やカイツさん、エルサやユノがいるテントの出入り口で寝ずの番をやると言ったのを、モニカさんとリネルトさんに止められたりするトラブル? みたいなことはあったけど、おおむね平穏に夜が過ぎた。
交代で兵士さん達が見張りをしてくれるのに、俺のテント前で寝ずの番をする必要はないよね――。
「昨日考えていた事は、甘かったんだなぁと実感する今日この頃です」
「誰に話しているのだわ、リク? おかしくなったのだわ?」
「いや、おかしくなったわけじゃないけど……予定って思うように進まないんだなぁと」
真っ直ぐ王都へ向かって飛ぶエルサのツッコミに、ぼんやりと遠い目をしながら実感した事を答える。
翌日、片付けなり荷物をエルサに載せるなりをして、王都へ何度目かわからないけど再出発。
決めた通り、危険と判断できる魔物の集団を見つけた先から討伐しながら、王都へ向かっていたんだけど……遠目に王城や王都の街並みが見え始めたのは、日が傾き薄っすらと暗くなり始める頃だった。
昼過ぎくらいには到着できると思っていたんだけどなぁ……見つけた魔物の集団の数が多すぎたから。
「さすがに数が多すぎよね。やっぱり、何か計画をしているのは間違いないと思うわ」
「そうだよね。でも、王都が見え始めてからはほとんどいないようだけど……狙いは王都じゃないって事なのかな?」
「わからないわ。王都周辺は軍も冒険者の数も多いから、もしかしたら発見して討伐した可能性もあると思うの」
「確かにね」
王都に近付く程に、魔物の手段を見かける数は減っていった。
俺達が昨日野営をした場所から少し行った場所辺りが、王都から離れていて、他の街や村とも距離があるためなのか、点在する魔物の集団の数が多かった。
ただそれも、俺達が知らないうちに別の誰かに討伐された可能性もあるから、計画の目標が王都ではないと断言できる材料にはならないか。
ヘルサルに派遣されているとはいえ、王都には当然多くの兵士さん達がいるし、冒険者さんだっている。
ヒュドラーみたいなSランクのとんでもない魔物でない限り、討伐不可能なんて事もないだろう。
俺達が発見した魔物の集団も、そうなる程の数でもなかったしね。
「まぁなんにせよ、センテの事以外にも報告する事ができちゃったなぁ。場合によっては、皆で魔物を探さないといけないかも?」
空からなら簡単に見つけられるし、移動も楽だからエルサに頼んで魔物の集団を探しては潰す、というのをするのも悪くない。
王都と往復すれば、討伐した後に素材を回収するのも楽だしね。
まぁワイバーン達もいるから、訓練がてらワイバーンに誰かを乗せて空から急襲とか色々とやれるだろうし、運用を考えるのにもいいかもしれない。
帝国が何かの計画を企てているのだとしても、それを利用してやればいいだからから。
……ツヴァイの研究所を除けば、これまで後手後手に回って被害を抑えるために戦うばかりだったから、たまにはこちらが先んじて対処するのも悪くないよね。
そんな風に、モニカさん達と話しながらもう目と鼻の先に近付いていた王都へと向かう。
空からだから、実際には地上に降りて歩いて行けば結構時間がかかるくらいなんだろうけども――。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,117
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる