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色々あったけどようやく王都到着
しおりを挟む「久しぶりだなぁ。相変わらず王城は大きいし、城下町も広いね。まぁ、多少離れていたからって大きさが変わったりしないけど」
変わっていたら、それは建て直した場合だろうからこんな短期間でできないし、そもそもかなりの大惨事だろうから変わってなくて当然なんだけどね。
「あれが王城ですか……って、あれ? 近くに降りるとかじゃないんですか?」
王都の上空、眼下に城下町が広がっているんだけど、エルサの背中から地上を見降ろすカーリンさんが、戸惑っている様子。
センテやヘルサルでは、街の外に降りて歩いてから入っていたし、出発する時も基本的には外に出てからだったからだろう。
王都では、外から入ると王城まで結構距離があるし、直接行った方が町の人達を驚かせないで済むからね。
あと、さすがにワイバーンを数十体、しかも兵士さん達を引き連れて町中を闊歩するわけにもいかないし。
「このまま、王城に直接行きますよ。ワイバーン達の事は報せてあるし、大丈夫ですよ」
「エルサちゃんなら、いつも王城の中庭に降りるから私達も慣れたものよね……本来なら怒られるだけで済まない事でしょうけど。まぁ今回はワイバーン達がいるのもあって、さすがに中庭にってわけにはいかないわね」
「そ、そうなのですか……」
簡単にカーリンさんに話して、そのまま王城へ……と思ったんだけど。
「なんだか、町の様子が少しおかしくないかな?」
「そうかしら? 暗くなってきているから、よくわからないわ」
王城へ向かい、速度をゆっくり目に落としたエルサの背中から眼下に広がる城下町を眺めていたら、なんとなく以前とは違うような気がして首を傾げる。
モニカさんや他の人達は、特に何も変わらないと考えているようだけど……うーん。
俺の見間違い、というか記憶違いかなぁ? 記憶って、結構いい加減なところがあるから。
「いくつかの建物が、なくなっているのだわ。多分それで、リクが違和感を感じているのだわ」
俺の疑問を肯定するように、エルサが顔を下に向けながらそう言った。
やっぱり、俺の気のせいじゃなかったみたいだ……というか、エルサって結構そういう細かい事を覚えているよね。
町の明りがポツポツと灯り始めて、一つ一つの建物はほとんどわからないくらい暗くなっても確認できるのもすごいかも。
「よくわかるなぁ……でも、やっぱり気のせいじゃなかったんだ。まぁ、建物くらいは建て替えたりくらいはするから、気にする必要はないかな」
「そうね。ヘルサルやセンテだって、新しい建物が建ったり、古い建物を壊して新しくしたりしているもの」
二か月で程度離れていたんだから、大きく町の様相が変わるとまではなくとも、多少建物が建て替えられるくらいはあるだろうね。
それこそ、新しい建物の前段階、古い建物を崩すくらいなら二か月あればできると思うし……多分。
「よしエルサ、そろそろ高度を落としてくれ」
「了解したのだわー」
王城がすぐ近くまで迫り、暗くなってきたのもあってワイバーン達も町の人達から簡単には見えないだろうと判断し、エルサに地上に近付くようお願いする。
エルサが空を飛ぶのは、ある程度王都の人達も見慣れてはいるだろうけど、今回はワイバーンも大量にいるからな。
一度大量の魔物達から襲撃を受けたうえ、ワイバーンもいたから、できるだけ驚かせたくない。
まぁ、ヴェンツェルさん達の話によれば、お触れを出してある程度周知しているみたいだけども。
「ん? あれは……」
「誘導してくれているみたいね」
「そうみたいだね。――エルサ、あそこに向かってくれ」
「アイアイサー、なのだわ」
また俺の記憶からだろう、モニカさん達にわからない言葉を使って返事をするエルサ。
そのエルサがさらに高度を降ろし、ワイバーンを先導して引き連れながら、王城にある大きなグラウンド……というか、広い場所へと誘導してくれている兵士さんへと向かう。
今日の出発時に、二体のワイバーンとそれに乗った兵士さんを先に向かわせ、それを先触れのようにして到着を伝えてもらったからね。
広い場所にいる兵士さん数人は、光を放つ明りの魔法かな? それと松明を振って俺達にわかりやすいようにしてくれていた。
なんとなく、飛行機が着陸する時の誘導灯を彷彿とさせるけど、声が届かないくらい離れているし、暗くなってきている状況でわかりやすくするためには、当然なのかもしれない。
もしかしたら、姉さんの指示かもね……姉さんなら、飛行機の誘導灯とかも知っているだろうから。
「大地に立つ、なのだわー」
「また妙な言葉を……まぁ確かに、降りて地面に立つから間違っていないけど」
機嫌良さそうに、兵士さんによって誘導されて広い場所の中心に降りたエルサ。
どこかで聞いた事のあるフレーズを言うエルサに突っ込んでいる間にも、ワイバーン達も続々と地上に降りて着陸している。
「よ……っと。はぁ、なんか久々な気がするなぁ」
エルサから降り、王城を見上げながら呟く。
「気がする、じゃなくて本当に久々なのよリクさん?」
「まぁ、俺は色々とあってモニカさん達よりも、少し日数が立つ感覚が希薄だから……」
続いて降りて来たモニカさんに、苦笑しながら返す。
実際には二か月以上経っていても、ロジーナと戦っていたほんの少しの時間だけで一か月過ぎていたし、十日程かな? 意識を乗っ取られて日が経っている実感がない時もあったからね。
その後センテが落ち着くまで色々とあったけど……俺にとっては、実質的に一か月経っているかどうかくらいの感覚だ。
いやまぁ、一か月でも十分久しぶりと言えるかもしれないけどね。
「早く荷物を降ろすのだわー。それとも、ここで放りだしてもいいのだわ?」
「ごめんごめん。すぐに降ろすから……」
王城を見たり、モニカさんと話して悠長にしている俺に催促するエルサ。
ずっと大きいままだと魔力を消費するし、早く小さくなって落ち着きたいんだろう。
今のまま小さくなると、荷物が全て落下しちゃうからね……エルサに謝りつつ、ワイバーンから降りて近くにいた兵士さんや他の皆に荷物を降ろすよう指示を出す。
……俺が指示を出さなくても、すでに動き始めてくれていたけども。
「リク様、お帰りなさいませ!!」
「あ、はい。ただいま戻りました」
俺もエルサの荷物を降ろす手伝いを始めようとしたら、誘導してくれた兵士さんとは別の兵士さんが王城から駆けてきて、俺に向かって敬礼で迎えてくれる。
ちなみに誘導してくれた兵士さんは、ワイバーンに乗っていた兵士さんと何やら話をしているようだ……知り合いなんだろう、結構親しそうにしながらも、近くで見るワイバーンに驚いたりもしている。
そちらに挨拶を返していると、さらに王城の方からこちらへ駆けて来る人影……あれは。
「リク様!」
「ヒルダさん。お久しぶりです」
「お帰りなさいませ、リク様。無事のお戻り、安心いたしました」
王城から出てきたのは、お城での生活に慣れない俺のお世話を色々とやってくれている、ヒルダさんだ。
元、というか今もだけど姉さんである女王陛下の侍女さんでもある――。
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