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混ぜ物のある魔力

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「混ぜ物のある魔力……かぁ。あ、だから違和感があったのかな……?」
「違和感ってのは何、りっくん?」
「いや、今こうして話を聞いてなんとなくってくらいなんだけど……」

 俺が探知魔法を使っていた時、混ぜ物と言われて初めて気付くくらいの微かな違和感があったように思う。
 ……今そう思うから、単なる気のせいとかかもしれないし俺がわかっていなかっただけかもしれないけど。
 ともかく、なんと言ったらいいのか……探知魔法は魔力の量や質などで、ソナー的な反応が返って来た感覚でどこに何がいるのかを調べたりするんだけど、同じ場所、同じ魔物のはずなのに一瞬だけ反応がほんの少し違うような気がしたんだ。
 とりあえず、それらの事を姉さんやレッタさん達に伝えた。

「……リクはそんな方法で魔物を調べる事ができたのね。私は魔力誘導をする時にわかるのだけど。これもリクと同じく多分に感覚的なものよ。ある程度慣れないと、違和感すら感じない可能性もあるわ」
「まぁ、今はできないんですけどね。魔法が使えないから」

 探知魔法が使えないから、目に見えない所にいる魔物などの正確な位置を把握したりはできなくて不便なんだよね。
 森で魔物を探すときとかも苦労したし、「華麗なる一輪の花」パーティを探す時や、魔物に襲われているのを発見した時など、使えればもっと簡単に済ませられたはずなんだよね……。
 使えなくなって初めてわかる不便さ。

「りっくん達でもそれなら、正確性に欠ける魔法具じゃ調べようがないわね」
「だから、誰でもできる事じゃないって言ったの。もしかしたら、私以外にも特殊な能力でわかる人もいるかもしれないけど……それを探すのは不毛でしょうね」 
「確かに……どこにいるかもわからない、特殊な能力を持った人を探すなんて雲をつかむようなものですからね……」

 レッタさんという例があるんだから、魔法や魔力以外で何かしら特殊な能力を持っている人がいる可能性は否定できない。
 けどどこにいるかなんて探しようがないからなぁ。
 そもそもこの国にいるとは限らないわけだし。

「まぁ手っ取り早い方法としては、魔法具を改良して調べる方法を確立させる方が早いかしら? どれだけかかるかはわからないけど、エルフも協力しているならできなくはないんじゃない?」

 そう言って、カイツさんの方を見るレッタさん。

「うぅむ、魔力は細かく言えば個人で違うからな。種族的な性質を調べて分けるだけならいいが、同一の種族を詳しく調べるのは難しいだろう。研究者としてはできないとは言いたくないし、やればできるはずだ。だが、それは数万……いや数百万の同一種族の魔力パターンを調べる必要があるだろう。おそらく数年、いや十年を越える研究期間になるか」
「それはさすがに……」

 要は人間なら人間、エルフならエルフに限定して魔力を調べ続けて、全ての特徴や個人差による差異がどれくらいかを完全把握しなければいけない、という事かもしれない。
 カイツさんの答えに期待してはみたけど、十年以上というのはさすがに難しすぎる。
 俺と同じく、姉さんやマティルデさんを始めとしたこの部屋にいるほとんどの人が、落胆の表情になった。
 特にマティルデさんは実際に自分がいた冒険者ギルドの建物が壊されているから、なんとか見分けて対処法が欲しいんだろう。

 姉さんも同様で、王都だけでなく他の村や街にも被害が出ているんだから、気持ちは似ているのかもしれない。
 そもそも、人間が使われているわけだし野放しにしていたら、アテトリア王国の人達にも及ぶかもしれないんだからね……爆発した時の被害だけじゃなく、爆発する側として。

「こればっかりは、さすがにユノやロジーナでもわからない……かな?」
「リクは、私達を便利な知識アイテムか何かだと思っていない?」
「いや、そういうわけじゃないけど……」

 ロジーナは帝国の研究に知識を与えたりもしていたわけだし、ユノは創造神だったわけで、何か便利な魔法具とかを作れたり、ヒントを出してくれるくらいはしないかなぁ? と淡い希望だったわけだけど。
 でも、ロジーナからはジト目で返された。
 そんなに便利に使っているつもりはないのになぁ。
 まぁ頭を悩ませてもわからない事があれば、ユノ達に聞く癖みたいなのができているのは否定できないか。

「ロジーナ、意地悪はいけないの。――リク、わからなくはないし方法もあるの。だけど、それを直接伝えられないというか、実際は知らないというか……」
「ん、どういういう事だ?」

 ロジーナを注意して、俺を見たユノはなんだか歯切れが悪い。
 どういうことなのかと疑問に思っている俺を連れて、部屋の隅で内緒話……皆、こちらを不思議そうに見ていたけど、あんまりおおっぴらに話せないって事か。
 ユノと離れる俺を見て、ロジーナは仕方なさそうに溜め息を吐いていたけど。

「あのね、そういった知識もある程度入ってはいるの。だけど今は人間だから詳しくは引き出せないの。それで……」

 ユノが言うには、人間の体に入る際に持ってきた知識などはあるけど、それは全てにおいて詳細がわかるようなものではないらしい。
 とりあえず大まかにといった具合で、ユノやロジーナがそれぞれ必要と感じた知識だけ、詳細を持っていると。
 だから、子供の体でも不自然に戦う技術があるとかみたいだ。
 それで知識自体は追って入れる事はできなくもないけど、色々と条件があるとかなんとか。

 要は、神様だった時のように干渉力みたいなのが必要だったり、条件がそろわないとはっきりとした知識として引き出せないとからしい。
 ルジナウムだったかな? どこかで以前ユノから何かしらの知識を教えてもらったはずだけど……あの時は緊急事態とかそういう条件があったからと言われた。

「結構、色んな制約があるんだなぁ」
「人間、というより世界の生き物にはそういう制約を課しているの。というより、神も同じく制約だらけなの。じゃないと、ロジーナみたいに好き勝手する神がいたら、世界は混乱だらけなの」
「まぁ、それもそうかも?」

 ロジーナと簡易的な神の御所だったか、あの隔離空間で戦った時のような力を、気楽に使われたらたまったもんじゃないからね。
 しかも干渉力という制限がなかったら、俺にはどうする事もできなかっただろうし……そもそも、もっと強大な力で圧倒されていた可能性もある。
 破壊神なんだから、俺なんてプチッと小さな虫でも潰すくらいの感覚でやられるかもしれないわけで。
 まぁ神々もなんだかんだ言って、全ての事ができるわけでもないってところだろう。

「だから、今ある知識でヒントを出す事はできるの」
「ヒントかぁ。詳細がわからないから仕方ないんだろうけど……」

 本当は知っているはずなのに、人間の体に入れていないからわからない。
 けど知識としてあったはずとか、どんな感覚なんだろうか? ぽっかり穴があいたような感じとか? まぁなんにせよ、あんまり体験したくない感覚かもしれないな――。


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