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新しい魔法具研究開発のためのヒント
しおりを挟む「でも、ロジーナはわからない感じだったけど?」
「あれは、頼られるのは嫌いじゃないけど安易に聞かれて、すぐにヒントを出したりするのが嫌だっただけなの。ロジーナはツンデレなの」
「デレがあるような気はしないけど、確かに素直じゃないって感じはするね。まぁ急に凄い協力的になられても、何かあったのかと心配してしまうだろうけど」
ロジーナがツンデレ、とユノが言ったあたりでこちらを見ていたロジーナ本人の目が吊り上がったけど、そこは気にしない。
地獄耳なのかな? 小声で話しているし、他の皆には全く聞こえていないようなのに。
……自分に関して何か言われている、と感じたのかもね。
自分に関する事や、興味や関心を持っている事に対しての言葉って聞こえやすいらしいから。
ともあれ、そんなこんなで内緒話を終わらせ、皆の元へ戻る。
話した内容はさすがに皆に言えないようだし、そのための内緒話なんだから、皆から見られていてもとりあえず笑って誤魔化すしかない。
「ははは……えっと、ユノがに何か思いついたみたいんだ。カイツさん、いいかな?」
「なんでしょう?」
から笑いをしつつ、カイツさんに話を振る。
強引だけど、とりあえず誤魔化せた……と思っておこう。
「ほら、ユノ。ヒントくらいならあげられるんだろう?」
この場には、マティルデさん以外ユノの素性を知っている人ばかりなので、ユノからエルフでもわからない事や、ヒントを伝える事に対して、何か言う人はいない。
というか、信じてくれる人ばかりだ。
マティルデさんは、ヒントと俺が言ったのに対して訝し気にしているけど……マティルデさんにユノの事などを伝えるかどうかは、あとで皆と相談してからってところかな。
「うん。あのね、個別に魔力の性質を詳しく調べる事はできなくても、ちょっとだけならできると思うの」
「それは……確かに。ですがそれだと、爆発する人間を見極める事は難しいかと」
「詳しく調べないとわからない、と思うからいけないの。さっきレッタが言ったように、混ぜ物が魔力にあるの。だから、その魔力を調べればいいだけなの。本来の魔力に、別の魔力が混ざっているっていう事なの」
「……ふむ」
つまり、何かしらの魔力が混ざっているかどうか。
少量だろうけど、別の魔力が入り込んでいる事がわかれば、爆発する可能性のある人間だとわかるって事、かな?
腕を組んで俯き、考え込むカイツさん。
その頭の中では今、ユノに言われた事に対して考えを巡らせているんだろう。
「そうか……! 二つの魔力がある、という事があればいいだけで何も魔力を全て調べる必要はない。なら、変質している魔力、もしくは混ざり合おうとしている魔力を調べるようにすれば……!」
「何かわかったみたいね」
「そうみたい」
急にハッとなったカイツさんが、一人で話し始める。
いや、話すというよりは独り言のようだけど。
「わかったなんてものじゃないですよ、研究者からすればほとんど答えのようなものです!」
俺と姉さんが顔を見合わせて話していたのを聞いたのか、カイツさんは喜色満面、興奮した様子だ。
ユノの言葉は、俺が聞く限りではまぁそういう事もできるのかも? ってくらいだけど、魔法具に詳しく研究もしているカイツさんにとっては違ったんだろうね。
「それじゃあ、さっき言った魔法具の研究と開発。急いだとしてどれくらいかかるかしら?」
「一日や二日、なんて短期間ではさすがに難しいですが……一週間もあれば形にできるかと」
「一周間!? それはまた、随分と短縮されたわね……それだけ、そちらの子が言った内容が凄かったって事かしら」
姉さんの問いにカイツさんが答えたないように、マティルデさんが驚いていた。
ユノから、という部分も驚いているみたいだけど……そちらに関してはマティルデさん以外さもあらんといった様子。
ロジーナだけは少し不満げだったけど。
もしかしたら、自分が言いたかったのかもしれない。
「ただ、魔力パターンの把握も含めて色々な人に協力してもらう必要があります。混ざったとは言っても、それは帝国にいる者達の魔力。エルフも協力しているから、エルフに……それからもちろん人間も……それと……」
「要請しているのはこちらだから、協力するのは当然だけど……まだ他にもあるの?」
混ざった元々の魔力をある程度は調べておく必要がある、とかだろうか? よくわからないけど、複数の種族や数から魔力を調べておく必要があるみたいだ。
カイツさんがあれこれ言うのに対し、姉さんが頷きながらも問いかける。
協力できる範囲とかもあるし、姉さんはそれも考えなきゃいけないからね……。
「量産の問題です。ある程度は既存の魔法具を改良して使えるように……やってみなければわかりませんが、そうして数を用意しようとは考えております。ですが、新しく作るとなると素材や人でも必要です。私とアルネ……他のエルフもそうですが、単純な作業もあるはずですので」
もし望む物が完成したとして……一つだけじゃ足りないから、量産する必要がある。
帝国を警戒するなら、それこそ数十とか数百発くらいは作らないといけないかも。
魔法具を作るのだから、エルフに協力を仰ぐのは当然として、他にも人手やお金などなどが必要なんだろう。
カイツさんは改良って言っているけど、魔法具自体が結構なお値段だったりするからね。
新しく作るにしても、そのための素材に対する費用が掛かって当然だし。
「要は人手と費用ってわけね。いいわ、事は国の危機にも発展しかねない事だから。無尽蔵にというわけにはいかないけど、できる限りの協力を約束する。それと、エルフに関しては村の方から幾人かが来ているわ。もし足りないようなら、村からエルフを呼んでもらう必要がありそうだけど……そちらは?」
「それに関しては、問題ありません。我が村はアテトリア王国に帰属し、協力を惜しみません。幸いエルフの村は現在大きな問題を抱えてはいない……はずですので、足りなければ補充もできるかと」
強力を約束する姉さんの問いかけに対し、カイツさんの代わりにフィリーナが答えた。
カイツさんは研究熱心なのはいい事なんだけど、それで村の事とかあまり考えていないようだからかもね。
フィリーナが最後の方に少し言い淀んだのは、センテにいる間エルフの村との連絡ができず、現状を把握していないからだと思う。
まぁそれでも、村を主導する役割になっているエルフに似合わない筋骨隆々としたエヴァルトさんなら、大きな問題もなくやってくれているだろう。
長老達も取り込んでいたようだからね……半分以上、俺に対する崇拝みたいな刷り込みとか、洗脳に近いものを感じなくもないけど。
そういえば、どうでもいい話だけどエヴァルトさんって、ヴェンツェルさんやマックスさんと話が合いそうだよなぁ、筋肉にこだわりを持っていそうだ。
なんて、俺が本当にどうでもいい事を思い出して考えている間に、姉さんがある程度考えをまとめたのか、カイツさんに微笑みかけながら話し始めた――。
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