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エアラハールさんに請う者達

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「とにかく、至急冷蔵庫……もう冷却箱と呼んでも良さそうだけど、作るように指示しておくわ。私から頼んで研究してもらっていたアルネ達には悪いけど」

 あとアルネ達がせっかく研究していたのに、魔法具とは違う方法で解決してしまったのは、俺も少し申し訳ない気がする。
 でもアルネやカイツさんの研究への熱意を考えると、いつかは本当に冷蔵庫を魔法で再現できそうな気もしていた。
 さすがに日本の冷蔵庫みたいに多機能で高機能ってわけじゃないとは思うけどね……。

「アルネ達は、カイツさんが行ったから今は魔力を調べる魔法具の研究開発の方で忙しいと思うけどね。もしかしたら、気にしないかも」

 ふとそう思って呟いたけど……研究さえできればという部分もある気がするので、今は冷蔵庫よりもさっき話した魔力を調べるための、爆発する人間を探し出すための魔法具の方に集中して欲しいと思った――。


 ――姉さん達と話した翌日、朝食後の訓練場にて俺だけでなくモニカさんやソフィー、それにフィネさんもエアラハールさんの前に集まった。

「正直、自分の力不足を感じています。センテではなんとか生き残れましたが……これから先、生き残るためにもこのままではいけないと」
「私もです。リクさん以外一人でどうにもできる事じゃなかったのはわかっていますけど、少しでも強くならなければと思うんです」
「冒険者としてだけでなく、騎士として今後私は戦っていくでしょう。ですが、今のままでは皆を……民を守れない気がするのです」
「ふむぅ……」

 なんて、俺以外のソフィー、モニカさん、フィネさんがそれぞれエアラハールさんに意気込みのような物を語った。
 エアラハールさんは、それらの言葉を受けて顎髭をさするようなしぐさをしつつ考えている様子……エアラハールさんに顎髭はないけど。

「あれ、ユノが教えたの?」
「そうなの。便利そうな技があったから、誰にでも使えるように改良……というより、劣化した技だけど、それを教えたの」
「……ただでさえ、魔物を使わなければ国力、兵力でも負けているのに。同等であったとしても、帝国は負け戦でしかないわね。まぁ、だからこそ魔物を使う手段の研究をしているのだろうけど」

 他の場所では、次善の一手の訓練をしている兵士さんを眺めつつ、ユノやロジーナ、それにレッタさんが何やら話していた。
 まぁあっちは見物しているだけのようだし、問題なさそうだ。
 エルサもユノに抱かれてのんびりというか、朝食後の満腹感でウトウトしているようだし、レッタさんが次善の一手に関して帝国に漏らす事もないだろうと思うから。

「お主らの気持ちはわかった。じゃが、それはつまり冒険者のランクで言うとAランクを目指すと言っているようなものじゃぞ? まぁ、ただ生き残る術を磨くというのなら別じゃが、そうではないのじゃろ?」
「もちろんです。私達……少なくとも私は、どれだけ力不足でもリクさんの隣に立って、足手まといにはなりたくありません。そのため、生き残るだけでなく戦う術をもっと身に着けなくてはならない、と考えていますから」

 モニカさん達の事を、足手まといと考えた事はないんだけどなぁ。
 まぁそれでも、モニカさん達はモニカさん達なりに一緒に戦っている時、思う事があったんだろう。
 俺から何も言えないのはもどかしいけど、何かを言ってモニカさん達の意気込みを邪魔するわけにはいかないしね。

「ふぅむ、決意は相当なもののようじゃな。それだけ、センテでの経験はお主らにとって考えるきっけにもなったという事か」
「私達にもっと力があれば、と思うのは思い上がりかもしれません。あの状況で、できる最善を尽くしたと。ですがそれでも、もっと私に……私達に力があれば、死にゆく者達を減らせたのではないか。と思う気持ちも確かなんです」

 そう言うフィネさんは、エアラハールさんに気持ちを語った後悔しそうに、自分の唇を噛んでいる。
 話している事に関しては、俺も思う所がある……もっと早く、ロジーナの隔離から抜け出せていればとかね。
 俺と違ってモニカさん達は、魔物にセンテが囲まれた初期からずっと戦いに参加しているため、助けられなかった人なども多いんだろう。
 結構な人数の兵士さん、冒険者さんが犠牲になったようだし……街への侵入は何とか防げていたおかげで、街の人達への被害はおrが意識を乗っ取られる前、伏兵として潜ませていたレムレースなどの魔物にやられた人達くらいか。

 それだって、最初からもっとちゃんと考えて調べておけば、防げた事かもしれないしね。
 まぁ、全部終わってから考えるたらればだけど。

「ワシは元Aランク。Sランクになるのも近いとまで言われた冒険者じゃった。じゃが、それでも助けられない命というのはある。どれだけ強くなろうと、人が一人で守れる数には限りがあるからの。それは、Sランクになるリクも変わらんじゃろ?」
「え、あ、はい。そうですね……できるだけ助けられる人は助けたい。そう思いますけど……全てを助ける事はできない、とは感じています」

 急に俺へと話が降られたので、一瞬戸惑ったけど……俺一人で助けられる人というのに限界があるのは間違いない。
 特に、今のように魔法が使えなくなった状況であればなおさらだ。
 だからこそ、モニカさん達とは別の理由でここにいるんだけどね……いや、理由としては近いというか同じかもしれないけど。
 ちなみに、俺がSランクにという話は今朝マティルデさんとも話があった。

 本来なら俺が王都に戻って来たらすぐに、Sランクに昇格する手はずだったらしいけど、冒険者ギルドの建物が複数破壊された混乱で、少しだけ手続きが遅れるらしい。
 なんにせよ、Sランクの冒険者カードは受け取っているし、手続きというのもギルドの内部的な話なのでほとんど正式にSランクになったようなものだとか。

「センテで、多くの怪我人の治療にもあたりましたが……それでも救えなかった人、というのはいますから。まぁ、治療と強さというのは別物かもしれませんが」

 怪我人の収容所で、本来なら助けられない人でも治療して見せた。
 それで助けられて良かったと思うと同時に、それでも助けられなかった人もいて、どうしようもない気持ちになったものだ。
 モニカさん達が求める、戦う力というのとはまた違った話になると思うけど。
 なんにせよ、どれだけ魔力が多かったとしても、ドラゴンの魔法で規格外の魔法を使えるようになったとしても、全てを助けるなんてできないって事だ。

 それは、センテでの戦いで身に染みて感じた。
 しかも今は魔法が使えなくなったから、その治癒魔法すら使えなくなっていて、助けられる人っていうのはもっと限られてしまっている。

「リクによる怪我人の治療はともかく、負傷者を手当てする者というのもそれはそれで力じゃよ。戦うのとはまた別……いや、ある意味戦っているのかもしれんがの」
「はい……」

 もしかしたら、俺へのフォローだったのかもしれない。
 少しだけ、俺に優しい目を向けたエアラハールさんは、すぐに明後日の方へと顔を向けて咳ばらいをした。
 照れ臭かったらしい。
 年齢的にも経験も、当然ながらエアラハールさんは大先輩だから、思うところがあったのかもしれない。
 もしかしたら、エアラハールさんが大きな怪我をした時に助けられたとか? まぁそのあたりは別の機会でもあれば聞くとしよう――。

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