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訓練相手に相応しい人達
しおりを挟む「話がそれたが、リクでもそうなのじゃ。お主達がいくら頑張っても、救えない命というものはあって当然じゃ。その覚悟はあるのかの? 辛いぞ、力を求めて、戦える自信を付けて。じゃが、それでも目の前で命の灯が消える事もある。力不足のせいにできるうちは、ある意味救いがある。自分に力が足りなかったと、納得する事ができる。完全にとは言わんが。じゃが、自分の限界まで達し、その限界すらを越えても助けられない者を見てしまえば、絶対に誤魔化せはせんし言い訳もできないのじゃぞ?」
「「「……」」」
エアラハールさんの言葉に、モニカさん達三人が押し黙る。
俺もそうだけど、今の言葉を頭の中で考えているんだろう。
力不足である事を自覚し、自分はまだまだだと思えるうちはそのせいにできるから、ある程度誤魔化す事はできる。
けど、全力を出し、限界を越えてまで鍛えて強くなったのに、その力が及ばなかったら言い訳なんてできない。
つまりエアラハールさんは、強くなって助けられる人が多くなったとしても、絶対に取りこぼしてしまう人もいる。
そうした時に、言い訳も誤魔化しが利かずとも、それでも受け止めて前を向けるか……と問うているんだろう……多分。
「……絶対に、潰れないとは約束できません。ですけど、それでも、自分の力不足を理由に納得をしたくないんです。私は、ソフィーやフィネさん程立派な志があるとは言えませんが……それでも、これ以上ないという程に突き詰める事で、リクさんの隣に立てるんだと、そう考えます」
「モニカが言うような志は、私自身どうなのかと思いますが……それでも、強くなって、多くの困っている人達を助ける。それが私が冒険者になった理由ですから。日々の研鑽により、助けられる人を増やす事。どうしても、取りこぼす存在はいるのかもしれません。ですが、私一人でも……いえ、自分を磨いた私だけでなく、モニカ達と協力する事で、一人でも多くの誰かを助けたいと、今はそう思っています」
「志、という言葉でなら、騎士であり冒険者でもある私の本懐は、多くの民を救う事です。そのためには、今のままでは無力だとも考えます。これまでの私は何処か満足している部分がありましたが、リク様と出会い、モニカさん達と話し、センテでの経験を経て、本懐を遂げるためにも、自己満足と言われようと、本当に自身が満足する力を身に着けたいのです。例えそれが、どうしても助けられない人を見る事になったとしても」
モニカさん、ソフィー、フィネさんと、それぞれが決意を語る。
皆、俺みたいになんとなくとか、流れもあってとかではなくちゃんと考えているんだな。
王都に戻るまで、特にアルケニーと戦ったあたりで色々と考えないとと思ったけど、モニカさん達はそれ以前から凄く真剣に考えていたんだろう。
俺なんかより、よっぽど心が強い。
「成る程のう。お主らの決意、決心の一端は見られた。実際に、力が及ばない状況になったら多少変わるかもしれんが……長いとは言わないまでも、それなりにお主達を見て来たワシじゃ、そこは信用しよう」
「それじゃあ……!」
「うむ。当初お主達の訓練を引き受けた時は、そこまでの事は考えておらなんだが……状況が状況じゃ。どこかのんびりとした雰囲気が漂う、この国がワシも好きじゃからの。できる限りの事を約束しよう。じゃが……」
許可が出た、訓練してもらえる、と思ったらしいモニカさん達が前のめりになるのを片手を挙げて制し、言葉をいったん切るエアラハールさん。
何か問題があるのだろうか?
「ワシ一人で三人もというのはのう。これまでのような訓練を見てやる、ちょっとした指導くらいであれば可能じゃろうが、腰を据えてというのはな。ワシも若くはない……マックスやヴェンツェルを見ていた頃ならまだしも、じゃ」
「それは……確かに」
「なら、私達の中から誰かを選んで、という事になるのでしょうか?」
「待て待て、早合点し過ぎじゃ」
ソフィーの言葉に慌てて待ったをかけるエアラハールさん。
三人の中の誰か、ではなく三人とも訓練を付ける算段があるのだろうか?
というか、この分だと俺が考えている事を頼むのはさらに負担になるし、ちょっと難しいかなぁ?
「お主らは、まぁセンテでの経験などからある程度力を付けてきておると考えている。じゃが、それでもまだまだ冒険者のランクで言うとBランクの域を出ておらんじゃろう。尋常ではない戦いを経て、Aランクの片鱗くらいは見ている、近付いているかもしれんがの。そこでじゃ、ちょうどいい事にリクが強者……Aランクの者を連れて帰って来たおるじゃろ?」
「Aランク……アマリーラさんとリネルトさんの事ですか?」
二人は、冒険者としての活動はあまりしていなかったため、ランクとしてはCランクだったけど……センテを出て王都へ来る際にBランクに昇格したらしい。
まぁ色々とあったからね、それくらいは冒険者ギルドの方で融通を効かせたって事だろう。
そして二人は、実力的にはAランク相当だというのはセンテでの戦いだけでなく、侯爵軍との演習や森の魔物殲滅の際にも発揮されていて、自他共に疑いようがない。
「うむ、そうじゃ。その二人と協力すれば、お主ら三人ともAランク……とまで行けるかは絶対とは言えんが、不可能ではなくなるはずじゃ。まぁ、Aランク自体がともすれば人外とも呼ばれておるからの。誰でも努力すればなれるというものでもないが」
「それは、わかっています。私達にその才覚があるかはさておき、努力不足という事にだけはしたくないんです」
エアラハールさんの言葉を受けて、モニカさんとソフィー、それにフィネさんが顔を見合わせて頷く。
三人とも、自分が絶対にAランクになれると考えているわけではなく、単純にもっと厳しく自分を鍛えたいというのもあるんだろうね。
努力不足……やっていれば実はできていたけど、なんて言い訳ができないくらいに。
モニカさん達は、言い訳をしたがる人達じゃないけども。
「それなら、まずはアマリーラとリネルトの二人を説得じゃの。話は聞いたが、あの二人はリクの傍を離れたがらんじゃろうし、リク以外の訓練に協力するかは微妙なところじゃ」
そういえば、エアラハールさんは朝食の時にアマリーラさんやリネルトさんと話していたっけ。
最初は女性に対してまた痴漢を……と思って注意してユノと一緒に見ていたんだけど、それをあの二人はさせなかった。
さすがAランク相応の実力者と言うべきなのか。
リネルトさんが伸びたエアラハールさんの手をひらりと避けたと思ったら、アマリーラさんが後ろから首筋にナイフを突き付けていた。
あわや乱闘というか、エアラハールさんの首が危険で危ない……と止めようとした俺の耳に届いたのは、地の底から湧き上がるようなアマリーラさんとリネルトさんの怒りの声。
二人の脅しで、エアラハールさんはおとなしくなったという。
……さすがにアマリーラさんも、いきなり斬り付けるなんて事はしなかったか……薄っすらとエアラハールさんの首の皮が切れていたような気もするけど――。
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