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少しだけ休憩する事に

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「くっ……ふふふ。やっぱりロジーナはロジーナだなぁ」
「そうなの」
「な、何よ……!」

 思わず笑ってしまった俺に対し、頬を膨らませる勢いで目を少しだけ吊り上げるロジーナに、また少しだけおかしくなって笑う。
 俺やユノだけでなく、フィリーナやレッタさんも微笑んでいる様子だ。
 もはやロジーナがツンデレであることに疑いの余地はない、のかもしれない。

 デレデレになるような事まではないのかもしれないが……なっても反応に困るし。
 ロジーナはこのまま、なんとなく素直じゃない感じでいいのだろう。
 若干、エルサと被ってしまう気はするけど、最近はエルサもモニカさんのおかげか素直な面を見せてくれる事もあるか。

「何か、変な事を考えられている気がするのだわ」
「気のせいだよエルサ」

 契約などで、何かがエルサに流れ込んでしまったのか、察したようにムッとしてこちらを見るエルサ。
 とりあえず誤魔化しておこう。
 考えている事を言っちゃうと、また素直じゃないエルサになってしまいそうだからね。

「それじゃあ、もう一度魔力を放出して練って行くの。さっきの魔力はもうなくなったからもう一度なの」
「え、確かめるためって言っていたけど、まだやるの?」

 ロジーナとエルサ以外が、和やかな雰囲気になって終了かなと思っていたら、ユノからの無慈悲な言葉。
 結構ユノって、スパルタ気質があるのかもしれない。
 大きく疲れたりはしないけど、慣れない事だから魔力を調節しながら練るのは、割としんどかったりもするんだけど……。

「魂の修復が進んで、いざ結界が作れるようになった時のために、今から練習しておくの。結界の大きさと消費する魔力を変えるの。リクは調節が下手だから、そこを重点的に嫌るの!」
「調節に関して言われたら、ぐぅの根も出ないなぁ。はぁ、仕方ないか」

 そう言って、立ち上がる。
 まだ少しだけ体が重い気がするし、全身の疲労感は少し残っているけど動けないなんて事はない。
 噴き出していた汗も止まっているし……大量の汗が出たから、後でしっかりお風呂で洗い流そう。
 できるなら今すぐ流したいけど、それはユノが許してくれなさそうだ。

「というか、もう一回試す前に水分補給をしたいんだけど……」
「私が何か持ってくるわね。ちょうど、クォンツァイタも補給したかったし」
「……まだ、限界まで魔力が充填されていないのもあるのに……まぁいいや。とりあえずお願いするよ、フィリーナ」

 喉がカラカラって程ではなくとも、乾いた感じがするし、噴き出した汗の量を考えると先に水分補給をしておきたい。
 そう考えて呟くと、フィリーナが取りに行ってくれるようだ。
 うず高く積まれたクォンツァイタは、俺の魔力を吸収して多くが満充填状態を示す黄色になっているけど、その中にはまだまだ白に近いほとんど魔力を蓄積していない物もある。
 でもフィリーナは俺達が続ける以上、まだまだいけると思ったんだろう……魔力が無駄にならないからいいんだけど、なんとなく魔力充填装置になったようで複雑な気分になりつつも、とりあえずプニプニ結界や訓練場を出て行くフィリーナを見送った。

「ちょっとだけ、休むついでにフィリーナを待ってから、続きをしようか」
「仕方ないの。私も少し喉が渇いたところだったの。ロジーナだけ卑怯なの」
「別に卑怯も何もないでしょ。あんた達はレッタに頼んでいなかったんだから」
「ロジーナ様の仰る通りです。――それに協力関係とはいえ、私がわざわざ全員分の飲み物を持ってくるわけがないでしょう?」
「……レッタさんは、ロジーナ以外には当たりがきついなぁ」

 まぁそれでも、協力してくれるだけでありがたいかな。
 レッタさんの目的はどうあれ、本来は敵対関係だったんだから。
 ……協力しなければ、今のようにある程度レッタさん自身が自由に動けるなんて事もなかったかもしれないけど。

「そういえば、結界がまた使えるようになったら便利だなぁって思ったから、その方向で話が進んでいるけど……実際、これが俺の訓練に何か関係があるの? 魂の修復とは別で、魔力を意識するとか、魔力の放出量を調節するとかはまぁ、やっていて無駄じゃないと思うけど」

 魔力を意識し始めたおかげで、調節も少しはやりやすくなったし、体を覆う魔力を霧散させる事で力の調整もできるようにもなった……まだまだ完全じゃないけど。
 ただどちらかというと、結界を作るように頑張るよりかは意識する事から魔力の扱いを熟達させる方が、短期的には成果が見込めそうな気がする。

「それも、結界を作る過程……主に、魔力の放出量を調整する事で、リクの力加減の調節も兼ねているの。そもそも、リクは魔力の扱いが下手過ぎるの」
「な、成る程……?」

 下手過ぎるとまで言われて、少しだけ落ち込むけど……これまでがこれまでだから言われても仕方ないか。
 原因はこの世界とは別の地球から来た事で、魔力を知らずに育ったからでもあるけど。

「それに、結界を作ったらまたやる事があるのよ。私としては、そちらが本題ね」
「結界を作った後?」
「えぇ。まぁ、私だけじゃなくてユノの力も借りなくちゃいけないし、そこの駄ドラゴンにも協力してもらわないといけないんだけど。なんで、私がリクのためにここまでしなくちゃならないのか、よくよく考えると疑問に感じるわ」
「誰が駄ドラゴンなのだわ!!」
「あー、はははは……」

 エルサの抗議の声はとりあえずスルーしとくとして、結界が作れるようになったその先に、ロジーナとユノ、それからエルサが協力してやる事があるみたいだ。
 むしろロジーナとしてはそちらが重要らしい。
 何をするかわからないけど、結界が再び作れるようになるために頑張るのは、先を見据えた、味方を巻き込まないような技術や力加減を習得するのに、無駄ではないんだね。

 ユノが言うように、魔力の調節というだけでも扱いを上達させる効果もあるなら、これ以上疑問を挟む余地はなさそうだ。
 ロジーナ達が協力して、何をするのかは気になるけど……そちらは結界が作れるようになった後だな。

「お待たせ、リク」
「あぁ、ありがとうフィリーナ……って、ヒルダさん?」

 ロジーナやユノと話していたら、飲み物やクォンツァイタを取りに行っていたフィリーナが戻って来た。
 けどフィリーナはクォンツァイタが入っているだろう革袋を、いくつか下げているだけで、飲み物とかを持っていない……と思ったら、その後ろからヒルダさんが姿を現した。

「リク様方が飲み物をご所望のようでしたので。お持ちいたしました」
「わざわざありがとうございます」
「いえ、このくらいはさせて下さい」

 そのヒルダさんの方が飲み物のを持っていた。
 両手に大きめのお盆を持ち、そこに大きなポット……ではなくもうドリンクピッチャーという方が正しそうな物。
 さらに、人数分のカップが載っている。
 ヒルダさん、俺達が使っている部屋の管理とかもやっていて、掃除やら雑多な事をやってくれるんだけど……特に俺が戻らなければ、大体このくらいの時間は休憩していたりするのに――。


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