死神“ソワレ”のお仕置き日記

ロアケーキ

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1 (前編)

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まだ暑さを残した生暖かい風が、わたしの銀色の髪をすり抜ける。
ビルの上から見下ろす景色は、人々が暑さに喘ぎ、忙しそうな日々をおくっている光景だった。

「はぁ…」

いつも通り気が乗らないまま、
これから罰を執行する“執行対象者”が記載されたリストを手に、ビルの上から飛び降りた。



わたしは“死神”だ。
いつからかはわからないが、死神になって、もう何百年も経っている。

…かといって、ヨボヨボの姿ではなく、いくら時が経とうと、初等部を卒業したくらいの見た目は変わらなかった。

『ソワレ・グリエル』
死神という役目に就いた時、この名前が贈られた。
この日からわたしは“ソワレ”として、死神の仕事を続けている。

死神は、罪を犯した者の魂を刈り取り、突然死させるのが役目である。


わたしは死神の中で“軽度の罪”の担当で、
他の死神にはない、執行対象者へ“お仕置きか刈り取りか”選ばせる権利を持っている。

執行対象は子供から成人済みの大人まで。
対象者が“お仕置き”を選択した場合、現在の年齢に問わず、“犯した罪の重さに応じた年齢”に、歳を変えられる。

犯した罪が重いほど年齢も増し、上限は16才である。
もちろん、年齢が上がるごとに“お仕置き”は厳しいものとなり、11歳を超えると道具も使用する。


対象者がきちんと罪を償い、“わたしがそれを認めた時”に初めて、刈り取りが免除される。



今回の“対象者”は、〈安藤 しほ〉

年齢は18歳。
小学生の時から“万引き”を繰り返しており、今に至るまで計49回、犯行を成功させている。
…むしろよく今まで捕まらなかったものだ。

『きっと、今回の罰は厳しくなるだろう。』

そんなことを思いながら、わたしはとある書店に入る。
迷わず店内を進み、本を物色している“対象”を確認する。

人間から“認識されない”わたしは、対象の隣に並び、様子を伺う。

対象は慣れた手つきで、辺りに気を配りながら、手に取った本をカバンの中に入れた。



「…!? なにこれっ!」

対象がそれまでの落ち着きを捨て、慌てふためく。

まあ、無理もない。
本をカバンに入れた瞬間、わたしは“対象以外の時間”を止めたのだから。

レジを打つ店員も、本の場所を聞くおばあちゃんも、みんなそのまま止まっている。
周りに神経を尖らせた対象には、より変化がわかりやすかっただろう。

「あなたが“安藤 しほ”ね。」

「だ、だれっ!?」

「わたしは死神“ソワレ”」

「……は?」

一時的に“認識阻害"を解いたわたしは対象から認識される。

わたしは、可哀想な子供を見るような目で見られる。
…この見た目のせいで、今まで死神と認識されたことはない。
すでに何万回とされるこの反応には慣れきっていた。

「…お嬢ちゃん、ふざけてるの?」

「ふざけてないわ。わたしはあなたに罰を与える為に来たの。」

「罰?」

「ええ。まずは…。」

わたしは手に持っていた自分の身長よりも大きな“鎌”を振りかざし、対象の胴体を貫通させた。

「きゃぁぁあっ!?」

「安心しなさい。物理的な“ダメージ”はないから。」

「…。えっ?」

自分の身体が繋がっていることに安心したみたいだった。
ただ、対象の身体には“ある変化”が起きている。

「そ、そんな…、身体が小さく…。」

「“13歳”ね。…はぁ、やっぱり厳し目ね。」

そう。わたしの大鎌には2つの能力がある。
1つは、対象の“魂”を刈り取ること。
そしてもう1つが、対象の身体を“犯した罪の重さに応じた年齢”に、変化させることだ。

今、わたしの目の前には、年齢に釣り合わない“サイズがぴったりの制服”を着た対象がいる。

「さあ。今のあなたには2つの選択肢があるわ。」

「えっ。」

「一つは、“お仕置き”を受けてこれまでの罪を償うこと。
もう一つは、罪を償わず、このまま“魂”を刈られること。」

「…お仕置き?…刈られる?」

突然突きつけされた現実に、ひどく困惑している様子だった。
わたしは“いつも聞かれる質問”を補足説明として加える。

「ちなみに、お仕置きを受けた後は、これまで通りの生活を送れるわ。」

「…。」

「でも、それを拒否して魂を刈られた場合、あなたという“存在”は消滅して、この世にも、あの世にも居なくなるわ。」

「……。」

肩に掛かった長い髪を、くるくると弄び、真顔で対象を見た。

「ち、ちなみに“お仕置き”って何するの?」

「それは、あなたが“お仕置きを選択”した時じゃないといえない決まりなの。」

「…………。わかった。…死にたくないからお仕置きを受ける。」

「そう。決定ね。」

『話が早くて助かる。』
わたしはさっそく魔法で椅子を召喚し、その上に座る。
対象は突然現れた椅子に驚くが、あいにく、その反応は見飽きている。


「さあ、お尻ペンペンのお仕置きよ。膝の上に来なさい。」

「お、お尻ペンペンっ!?」

わたしは、自分の膝を“ポンポンッ”としながら対象を呼ぶ。
対象は唐突なお仕置き内容に顔を赤くしていた。

「早くきなさい。…それとも、刈り取られたいの?」

「わ、わかってるわよっ!?」

覚悟を決めたのか、対象は膝の上に腹ばいとなる。
わたしはそれを見届けると、スカートをめくり、パンツを膝まで降ろした。

「ちょっ!?ちょっとっ!?」

「…うるさいわね。」

バヂンッ!

「いっだぁいっ!」

お尻に真っ赤な手形が出来た対象を冷たい目でみる。

「今みたいに態度が悪い時は“警告”をするから、そのつもりでいなさい。」

「ねえ、痛すぎるよ…。」

「お仕置きなんだから痛くて当たり前でしょ?」

パァンッ!

「ひいっ!?」

お尻に2つ、手形ができるとようやく静かになった。
顔が真っ赤に火照っているが、気にしないことにする。

「今からお仕置きを始めるわ。まずは“平手”で100回のペンペンよ。」

「ひゃ、ひゃくっ!?そんなにっ!?」

「いちいちうるさい。」

バヂンッ!!

「いっだぁぁぁ!!」

「まずは1つ。」

先程の警告よりも強く、腕を振り下ろした。
3つ目の手形は、真っ白かったお尻の真ん中に、くっきりと出来た。

バヂッ!バヂッ!バヂンッ!!

「いっ!?だぃっ!きゃあっ!!」

「2つ。3つ。4つ。」

1発叩くたびに、対象の身体が仰け反った。
お尻はみるみる内に真っ赤に腫れていき、“綺麗な手形”が無数にできていく。

50・60と数を重ねていき、70を超える頃には、“年相応”に顔を真っ赤にしながら泣き出していた。

『…まだお仕置きは始まったばかりなのに、先が思いやられる。』

そんなことを思いながら、わたしはお尻の真ん中に狙いを定め、腕を振り下ろした。
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