死神“ソワレ”のお仕置き日記

ロアケーキ

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1 (後編)

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バヂンッ!パァンッ!バシッ!

「い゛っ!きゃあっ!あぁっ!」

「96、97、98」

リズミカルにお尻を叩く音が鳴り響く。
すでに熟したトマトのようなお尻は、お仕置きの悲惨さを物語っていた。

「も、もうむりっ!げんかいっ!!」

「…そう。」

バッヂン!!

「きゃぁぁあっ!?」

…もうこのセリフは何回聞いただろう。
わたしは、その度に構わず“一層強く”平手を振り下ろすのだった。

「ほら、あと1発よ。歯を食いしばりなさい。」

「やぁだっ!ゆるしてっ!!」

バッヂィィィン!!!

「いだぁぁぁぁいっ!!」

結局、最後まで素直にお仕置きを受けられず“100叩き”が終わった。
わたしは内心、ため息をつきながら“小さな子ども”が落ち着くのを待った。

「ひっく…。おしりいだいぃ…。」

対象は、散々叩かれたお尻を押さえる。
身体中から吹き出した汗が、押さえる手を滑らせるようだった。

「さて、休憩時間は終わりよ。次のお仕置きをするわ。」

「えっ!?まだお仕置きするのっ!?」

「当たり前でしょ?と、いっても次で最後よ。」

わたしは魔法で“パドル”を取り出し、真っ赤なお尻に“ペンペン”と当てた。

「最後はこれで“300叩き“よ。」

「…やだぁっ!?ぜったいにいやっ!!」

「…じゃあ、刈られる?」

「どっちもいやっ!!」

『はぁ…。』
何度目かわからないため息をつく。
この“お仕置き”の欠点は、対象の精神年齢まで、身体の年齢に比例することだ。

つまり、対象の精神年齢は、現在13歳。
こうした“わがまま”は、これまで行ってきたお仕置きでも、日常茶飯事だった。

こういう“子ども”に理屈を言っても意味がない。
長年の経験でそれがわかっているわたしは、対象を起き上がらせると、その身体を抱きしめた。

「…!?」

「えらいね。よくここまで頑張ったわね。」

頭を“ポンポンッ”としながらお尻をさする。
対象は突然のことに、戸惑っている様子だった。

「お姉ちゃんも、あなたが消えてしまうのは悲しいの。だから、もう少し頑張りましょう?」

「…でも、いたいのいや。」

「じゃあ、頑張れたら“ご褒美”をあげるわ。」

「ごほうび?…なに?」

「それは、お楽しみよ。頑張れたら教えてあげる。」

「……わかった。がんばるっ。」

「いい子ね。じゃあ膝の上に乗りましょう?」

対象が膝の上に乗ると、わたしはパドルを構える。
すでに覚悟は出来ているのか、対象は拳を“ギュッ”と握り、迫りくる痛みを耐えようとしていた。

バッヂィィンッ!!

「いっだぁぁぁいっ!!」

「…1つ。」

覚悟していた以上であろう痛みが、対象を襲う。
お尻を手で庇おうとするが、わたしはその時を捻り、背中の上で固定する。

「だめでしょ?手で庇っちゃ。」

「だってぇ…。」

「ほら。続きいくわよ。」

バヂィィンッ!バヂィィンッ!

「いっだいっ!いだいよぉぉ!!」

パドルが振り下ろされるたび、お尻に青紫色の跡ができる。
対象の身体はエビ反りになるのを繰り返し、その威力を物語っていた。

パドル打ちは、11歳を超えた段階から使用される。
数は年齢が上がるたびに“100発”ずつ追加されるため、上限の16歳は“600発”のパドル打ちが待っている。



「…お姉ちゃん、ごめんなさい。しほが悪い子でごめんなさいっ!!」

200発を超えた頃、対象が素直に謝ってきた。
これまでは泣いて叫ぶばかりだったが、ここに来て“変化”が見られた。

「あなたが“罰”をしっかりと受けられたら、許してあげるわ。
あと、100発くらいだからがんばりましょ?」

「…はい。わかりました。」

身体の震えが伝わるが、“反省しよう”という態度が感じられた。
わたしは少し、微笑ましい感情を抱きながら、“罪が残るお尻“へパドルを振り下ろした。



「最後の一発よ。心して受けなさい。」

「…あ゛い。おねがいじます。」

バッヂィィィン!!

「いだぁぁぁぁ!!」

「…300。これでおしまいよ。」

掴んでいた対象の手を離し、自由にさせる。
対象は、両手でお尻を“優しく”支え、痛みを堪えていた。

わたしは再度、対象の身体を抱き寄せると頭を優しく撫でる。
対象は、甘える子どものように抱きつき、服をぎゅっと握るのだった。

「これで“お仕置き”はおしまいよ。約束通り、これからあなたはいつも通りの生活を送れるわ。」

「…ご褒美は?」

「それは、あなたが家に帰ったら、わかるわ。」

わたしは微笑みながら、“1つの魔法”を使った。
対象は次第に眠気を覚えたのか、うとうとしてきた。

「…お姉ちゃんとは、もう会えないの?」

「あなたがまた“軽い罪”を犯したら、会えるかもね。…だから、もう二度と会わないことを祈っているわ。」

「………。ばいばい…。」

眠気の限界がきて、対象は眠ってしまった。
わたしは微笑みながら、対象の涙を拭き、魔法を使うと、世界が白で覆われた。


・・・

「…えっ?」

私は気がつくと、書店の中で立っていた。
先程、本をカバンに入れたと思ったが、本はカバンではなく、本棚に陳列されている。

この一瞬がとても長い時間に感じられたけど、なにも思い出せない。
ただ、何故かお尻に“じんじん”とした軽い痛みと、『次に罪を犯したら後がない』という予感が頭の中に“残っている”。

それが原因で、“盗もう”という気持ちは無くなっていて、そのまま家に帰ることにした。



「しほ。今までごめんなさい。」

帰って玄関のドアを開けた瞬間、私は何かに抱きしめられた。
不思議と、抱きしめられるという感覚が“久しぶり”とは感じなかった。

「……お母さん?」

気がつくと、私はお母さんから抱きしめられていた。
身体に振動が伝わり、お母さんが泣いているのがわかる。

「これまで構ってあげられなくて、ごめんなさい。」

いつも仕事で忙しいお母さんは、私に構ってくれたことは、ほとんどなかった。
授業参観は一度も来てくれなかったし、私がテストで100点を取っても、喜んでくれなかった。

それが私のストレスとなって、初めて“万引き”をしてしまったことを覚えている。

「…いいよ。お母さん仕事で忙しいのわかってるし。」

「……ありがとう。今日からは、ママが料理を作るわ。…なにが食べたい?」

「…じゃあ、ハンバーグがいい。」

お母さんの手料理を食べるのは、何年振りだろうか。
私は久しぶりのこの感覚に、期待と“味の不安”を覚えながら、キッチンに向かう母を見送った。

『もう“戻ってきちゃ”ダメよ。』

不思議と、頭の中にその言葉が響いた気がした。

「完」
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