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はじめての“理不尽”(母目線)
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私には2人の娘がいる。
そのうち1人は私が産んだ子で、もう1人は夫の連れ子である。
夫とは最近うまくいっていなく、文字通り、日々“すれ違っている”形だ。
そのせいか、私は普段からイライラしてしまい、つい娘たちに当たってしまう頻度も増えてきていた。
『このままではいけない…。』
そう頭の中では分かっていながらも、いざ娘の粗相を目の当たりにすると、自分を抑えることが出来ずにいるのだった。
…そしてそのまま“あの日”を迎えることになる。
・・・
「あなた、またこんな時間に出かけるの?…やっと帰ってきたと思ったらいつもすぐに出かけて……ほんと、いい加減にしてちょうだいっ!!」
私がこんな毎日を過ごす中、ようやく帰ってきた夫は悪びれもせず平然としている。
玄関へと向かう背中に言葉をぶつけるが、当然のように返事はなかった。
その態度に、私の中の“もやもや”が膨れ上がっていくのがわかる。
「待ちなさいっ!次はいつ帰ってくるのっ!?」
止まることのない夫の足取りがようやく停止し、暫しの沈黙が流れる。
「………もう、帰らない。」
「……は?」
…いま、この人はなんと言ったのだろう。
いつもは大体の日数が返ってくる場面で、今回はそれと違っている。
「ちょ、ちょっと、帰らないって“出て行く”ってこと?……だったら、まいはどうするのよっ!?一緒に連れていくのっ!?」
再び歩き出した夫を止めるため、まとまらない思考のままに言葉をぶつけた。
「…まいは、お前に任せる。……“好きなよう”に育ててくれ。」
だが、今度は止まることなく、静かに“丸投げ”という答えを出される。
…どうやら、本当に出ていくつもりなのだと、この時に悟るだった。
「そんな勝手なことが許されると思うのっ!?…大体、お金とか、いろんな問題があるでしょっ!?」
「……金は毎月“養育費”を振り込む。…そのほかのことは後日連絡する。」
「後日って……、まだ話は終わってないのよっ!!」
“ガチャンッ”
「っ…。」
そのまま夫は話し合いをすることなく、一方的に押しつけて出て行ってしまった。
…結局、私は捨てられ、更には“まい”という子供の面倒まで見る羽目になってしまう。
その現実を“理解”するまでには暫しの時間がかかった。
・
しばらくすると思考がまとまり、キッチンへと戻る。
するとテーブルの上に飾られた“家族だったもの”が写った写真立てが目に入った。
「…あーっ!もうっ!!」
“バリンッ”
いまはその写真が憎らしく、思いっきり床に叩きつける。
…だって、これからは“家族でない”のだから、これはもういらないだろう。
ふと顔を上に上げると、娘たちが怯えているのがわかった。
……“娘たち”?………いや。
こうなってしまった以上、確認をしなければいけない。
「…で?……まい、あんたはどうするの?」
「……え?」
「いま追いかければ、まだ間に合うかもしれないわよ?……それとも、ここに残るの?」
「……えっと。」
その可憐な顔立ちを睨みつけるように、私は腕を組みながら問いかける。
そう。まいは私が産んだ子ではない。
この返答次第では“娘”という関係でなくなるのだから。
「……どうなの?」
なかなかこない返事に、私の中の“イライラ”が高まる。
この様子に、まいは涙目になりながら口を開いた。
「……ここに、…残りたいです。」
「…そう。」
どうやら、“私の娘”のままでいたいらしい。
その返答を聞いた瞬間、私の心が黒く塗りつぶされていくのを感じた。
「なら、別にここにいても構わないわよ。」
「……ありがとうございます。」
怯えていた様子から安心したのか、表情が少しずつ明るくなっていくように思える。
……だが。
「…ただ、これまで通りにはいかないから。」
「………え?」
「今日からお姉ちゃんの罪は、あんたにお仕置きすることにしたわ。」
「………。」
私が言った言葉の意味が理解できないのか、まいは“おどおど”と様子を伺ってきた。
「もちろん、今まで以上に厳しくて、恥ずかしいお仕置きにするから、覚悟しなさい。」
…そう。こうなってしまった以上は仕方がないのだ。
なぜなら、まいは私の娘であり、それ以前に、憎い“あの人”の連れ子なのだから。
・
その後、“娘たち”を寝かせ、私は1人キッチンで夜中を迎える。
お酒は苦手なため、お水で心を落ち着かせながら、今日のことを振り返っていた。
…その中でも一際“まい”のことに意識がいく。
先程はつい“かっと”なってあんなことを言ってしまったが、落ち着いてみると言い過ぎだった気がする。
いくらまいが“あの人”の子供はいえ、いまは可愛らしい私の娘であることに変わりはないのだから。
『ごめんなさいね、…まい。』
心の中で謝りながら、明日“娘たち”に説明しようとキッチンの電気を落とした。
・
太陽の光が部屋を照らし、1日の始まりを告げる。
私は“パチッ”と目を覚ますと、体を伸ばし、辺りの様子を確認した。
ぐっすり眠り、リラックスした様子で起き上がる。
そのまま朝の支度をするため、エプロンへと手を伸ばした。
…今日はまいが大好きな“ハンバーグ”を作ってあげよう。
罪滅ぼしの気持ちも込めるため、さっそく長袖の服をまくった。
・
「ママ…。……おはよう。」
「おはようお姉ちゃん。…今日は早いのね?」
「うん。……ママ、もう怒ってない?」
「怒ってないわよ。…昨日はごめんね?」
どうやら、昨日の私は相当怖い様子だったらしい。
私は安心させるように姉に笑顔を見せると、ほっと胸を撫で下ろしていた。
「お姉ちゃん。ご飯ができたから“まい”のこと呼んできてくれる?」
「はーい。」
天真爛漫な笑みを浮かべながら、部屋の方へと駆けていく様子だった。
私は料理を並べ終えると、食卓の席へ腰をかける。
すると、目を擦りながら少し眠たげな“まい”が姿をあらわす。
まいもまた、私の様子を伺っているみたいだ。
まいには料理を食べながらゆっくり説明しようと、席に着くのを待った。
・
食事が始まりしばらく時間が経つ。
私はなかなか話を切り出すきっかけがなく、ぎこちない時間を過ごしていた。
だが、このままだとなんの説明もせずに食事の時間が終わってしまう。
「……まい、あの…。」
「ん?…お母さん、なに?」
「…昨日のことなんだけど……。」
私は決意を固め、ハンバーグを口に運ぶまいへ話しかける。
“昨日”という言葉に反応したまいは、それまで口に運んでいた手を止めた。
まずは、“これまで通り”の生活にすることを説明しなければ…。
「あの後考えたんだけど、やっぱりやめ…」
「あっ!!」
“ベチャッ”
「お、お姉ちゃん…。」
説明を始めようとした瞬間、姉の箸からハンバーグが落ちる様子を目撃する。
白いパジャマに黒が滲み、同時に“私の心の中”も塗りつぶされていくのがわかった。
「マ、ママ…、ごめんなさ…」
「まいっ!お仕置きするからお尻出しなさいっ!!」
『あぁ…。…もうダメだ。』
無意識のうちに自分の口が動き、言いたかったこととは真逆の言葉が発せられる。
そこには、“あの人”に重なるまいのことが憎らしくて仕方ない私がいる。
……そこからは、もう自分の心を止めることが出来なかった。
※
原因を作った姉を尻目に、私は“まい”をきつく睨みつける。
その瞬間、“娘たち”がビクッと身体を震わせるのがわかった。
「マ、ママ…、私にお仕置きじゃないの?」
「昨日も言ったでしょ?…お姉ちゃんの罪は、まいにお仕置きするって。」
「そ、そんな…。お母さん、わたし何もしてないよ?」
まいの“口答え”に私のイライラも大きくなっていく。
「関係ないわ。それが“この家のルール”よ。…従えないなら出て行きなさい。」
「ルールって…。」
「……お仕置きを受けるなら、パジャマのズボンとパンツを脱いで、私の膝の上に来なさい。」
「………。」
だが、まいは服を脱ぐどころか、わたしを睨みつけてくる。
その反抗的な態度は、“追加罰”を決定するには十分なものだった。
「まい、…何その目は?……いい度胸ね。なら後で“恥ずかしいお仕置き”も追加してあげるわ。」
「…なんでっ!?わたし悪くないのにっ!!」
「それが“ルール”だからよ。何度も言わせないで。……あと一回でも反抗したら、強制的に追い出すわよ?」
「………。」
再度きつく睨みつけると、まいは何も言えずにいた。
姉に視線で助けを求めているみたいだが、きっと、“その子”は何もできないだろう。
「……グスッ。わかった。お仕置き受けるから追い出さないで…。」
「ちゃんと受けられたら許してあげるわ。…さあ、早く脱ぎなさい。」
「…はい。」
ようやく決意が固まったまいは服を脱ぎ、恥ずかしそうに前を手で隠している。
きっと、“いつもの私”ならこの時点で膝へ誘導していただろう。
…だが、いまの私にとって、“その程度”では納得する訳がなかった。
「……脱いだよ。」
「だめよ。全部脱いで、脱いだものは床に畳んで置きなさい。…それに、お仕置きを受けるのに“その手”は何?ちゃんと気をつけの姿勢になりなさい?」
「……恥ずかしいよぉ…。」
「“恥ずかしくする”とも言ったはずよ?…叩かないとわからない?」
「わ、わかったよぉ…。」
まいは震えながら服を脱ぎ、畳んで床へ置いた。
私の方へ向き直ると、ぎこちなく、気をつけの姿勢をとる。
「もう少しこっちに来て頰を出しなさい。」
「…?…うん。」
バヂンッ!
「…っ!?」
その真っ白な頰へ“警告”として、私の平手を叩きつける。
突然のことに驚くまいは、真っ赤な手形がついた頰を庇い出した。
「脱ぐのが遅れた罰よ。…今後、お仕置きはこの服装でするから、すぐに準備しなさい。」
これからは厳しくする。
その言葉を実現するように、まずは“警告”から始めることにした。
「わかったら、早く膝の上に来なさい。…それとも、もう一回叩かれたい?」
「っ!?…い、いま行きますっ!?」
そして、私の膝の上へ来るように命じ、“お仕置き”の始まりを促した。
その小柄な背中をがっちりと固定し、高々と腕を振り上げる。
バッヂィィンッ!!
「あ゛ぁぁぁっ!!」
一切の手加減をすることなく、まいのお尻へ平手を叩きつける。
まだ幼さが残る白い肌に私の平手が痛々しく浮かび上がった。
「お、おがぁさんっ!痛すぎるよぉっ!?」
「当たり前でしょ?これまでみたいな“甘いお仕置き”は、もう二度としないわ。
…さあ、その手をどけなさい。数を増やされたくなかったらね。」
「…お尻壊れちゃうよぉ。」
お尻を庇っている手が戻るのを確認し、私は再度、“同じ場所”へ狙いを定める。
バッヂィィンッ!!バッヂィィンッ!!
「い゛いぃぃっ!!」
バッヂィィィン!!!
「ぎゃぁぁぁっ!!」
『あぁ、憎いっ!“この子”のことが憎くて堪らないっ!!』
もはや、お仕置きとしてではなく、自分の感情を叩きつける“的”として、手を振り下ろしていた。
まいの叫び声が部屋中に響き渡るが、私の心には全く届かない。
…このまま私の“憂さ晴らし”は、しばらく続くのだった。
・
「マ、ママァ…。」
「…なに?お姉ちゃん。」
しばらく叩き続けていると姉から呼び止められる。
無意識のうちに腕を振り下ろしていたため、まいのお尻はとても悲惨な状態になっていた。
「あ、あの…もうまいのこと許してあげてほしいの。…お尻ももう“痣だらけ”だし…。」
「ダメよ。この後“別のお仕置き”も控えてるし、まだまだ許すわけにはいかないわ。」
「…で、でも……。」
姉は罪悪感からか、涙目で許しを求めていた。
だがそもそも、原因を作ったのは“この子”だ。
…まあ、そこまで言うのならば。
「じゃあお姉ちゃん“も”一緒に受ける?」
「……え?」
「もともとはお姉ちゃん“が”原因なんだし、一緒に受けるならまいの分を“軽く”してあげてもいいわ。」
「そ、それは……。」
迷っているというより、戸惑っているという様子が正しいだろう。
まいの“悲惨な”状態を見て、ガクガクと震えているようだった。
「……う、受けたくないです。」
……やっぱりね。
思った通りの返答に、私は“無実なお尻”に視線を戻した。
「…そう。わかったわ。……残念だったわね、まい。…ほら、お仕置きの続きをするから、姿勢を直しなさい。」
「いやだぁぁっ!?もう痛いのい゛やぁぁっ!!」
『いたっ!いたいっ!!』
このまま“続行”を促すと、パニックになったまいが暴れ出した。
それをなんとか押さえつけ、手が当たった部分をみると、まいのお尻ほどではないが、“青痣”が浮かび上がっていた。
『お仕置きに反抗するだけじゃなく、私に痣を付けるなんて…。……もう許さない。』
「痛いじゃないの…。…はぁ、これじゃお仕置きの続きができないわね。……お姉ちゃん?」
“ビクッ”
「は、はいっ!?」
「“いつもみたいに”まいのことを抑えなさい。」
「で、でもぉ…。」
「早くしないと、お姉ちゃんも一緒にお仕置きを受けさせるわよ?」
「ひいっ!?…お、抑えますっ!!」
“ガシッ”
従順な姉は、可愛い妹を力づくで押さえつける。
その様子に“いつもの優しさ”は一切感じられなかった。
そして、まいの足は私の自分の足の間に挟み、身動きを取れなくした。
「まったく…。あんたが暴れたせいで私の腕に痣ができたじゃないっ!……罰としてお尻叩き50発の追加よっ!」
「もうやだぁっ!…お姉ちゃん助けてよぉっ!!」
「まい…、ごめんなさい…。ほんとうに…ごめんなさい。」
「いーやぁーっ!!」
まいは姉に助けを求めるが、その助け舟が来る様子はない。
再度パニックとなり暴れだそうとするが、私と姉が押さえつけているため抵抗できずにいる。
「さあ、もう暴れられないわよ。しばらく座れないようにしてあげるから、覚悟しなさいっ!」
まいが泣き叫ぶ中、私は高々と腕を上げる。
そのまま1番痛がっている真ん中の部分へと振り下ろすのだった。
・
「ほらっ、早く降りなさいっ!」
“ドサッ”
「いだっ!」
その後、まいの罵倒が続くためお仕置きの数をさらに増やし、ようやく今に至る。
赤黒く染まったお尻にようやく許しを出し、私は膝の上からまいを落とした。
…だが、まいへの“罰”はまだ終わりではない。
「まい。何“ボーッと”してるの?…次のお仕置きをするから早く立ちなさい。」
「も、もうやだぁ…。」
もはや、当分の間まともに座れないであろうお尻を自分でさすり、動くことができない様子だった。
ただ、その様子を見ても、私の中に“許す”という感情は全く生まれなかった。
「なら、次はお姉ちゃんに受けてもらおうかしらね。」
“ビクッ”
「ひっ!?」
姉を睨みつけながら、“まいを”なんとかするように煽る。
姉は、このままでは自分がお仕置きを受けるかもしれないと悟ったのだろう。
目に見えるほどに焦り出していた。
「ま、まいっ!?早く立ってっ!!」
「…いや。」
「……あーっ!もうっ!!」
「い゛っ!?」
「早くしないと“私が”お仕置きされるでしょっ!?」
「っ!?」
自分の妹を力づくで立たせると、私の方を伺うように“ビクビク”としている。
普段、温厚な姉が見せるこの様子は相当追い詰められているのだと思った。
「いいわ。じゃあ、お姉ちゃん、お風呂場から洗面器を持ってきなさい。」
「は、はいっ!」
いつもは“トロトロ”している姉が、この日ばかりはすぐに行動する。
「は、はいっ!ママァッ!」
「ありがとう。…さあ、はじめましょうか。」
私はまいの下に洗面器を置き、“グッと”しゃがませる。
そのまま姉へ姿勢を保つよう、押さえつけさせた。
まいは恥ずかしいのか、頰を赤くしながら私のことを見上げている。
「最後のお仕置きは、その洗面器の上で“おしっこ”をしなさい。」
「…はぁっ!?なにそれっ?…なんでそんなことしなくちゃいけないのっ!?」
「それが、“恥ずかしい”お仕置きだからよ。…早くしなさい。」
「いやだっ!!」
こんな屈辱的な姿勢になっても、まだ私への反抗心は残っているようだ。
涙を流しながら睨めつけるその目には、どこか“あの人”の面影を感じさせる。
……もういい。
従えないというなら、“追い出す”だけなのだから。
「……はぁ。…まい、荷物は自分の“手に持てる程度”にまとめなさいよ?」
「……え?」
「初めに言ったでしょ?この家の“ルール”に従えないなら追い出すって。…罰は受けたくないんでしょ?」
「そ、それは…。」
ようやく自分の立場を思い出したのか、睨みつける目が困惑の表情へと変わっていた。
…まあ、これは“最後”のチャンスとしてあげよう。
優しい私は、“娘”へ選択する時間を与えた。
「グス…。お、お母さん…。」
「なに?」
「……おしっこします。」
「聞こえないんだけど?」
どうやら選択が決まったようだ。
消え入りそうな声が聞こえたが、“あえて”聞こえない形で聞き返した。
「お、おしっこするからっ!…だから、追い出さないでっ!!」
私が聞き返すと、まいは頰をさらに赤く染めながら大声で答える。
その反抗心が消えた様子に、私の心が満たされていくのを感じた。
「じゃあ、早くしなさい。…追い出されたくなかったらね。」
「…はい。」
“ジョロォォォ”
覚悟を決めたまいは、言われた通り尿を出し始める。
部屋の中に“おしっこ臭さ”が充満するが、特に気になることはなかった。
“チャポッ……チャポンッ”
「…お、終わったよ。」
※
「よくがんばったわね。…洋服を汚したお仕置きはもう終わりでいいわ。
…このまま、お風呂で“おまた”を洗ってあげるからきなさい。」
まいがお仕置きをやり遂げ、私の心にある“黒いモヤ”が無くなっていく感覚を覚える。
『…やりすぎてしまった。』
心が戻った私が最初に感じたことは、罪悪感と自分への苛立ちだった。
……せめて、アフターケアくらいは優しくしなければ。
まいへの“償い”の気持ちが沸き立ち、ぎこちなく手を伸ばす。
「じ、自分で洗えるよぉ…。」
「いいから、きなさい。……あと、お姉ちゃんは、まいのおしっこが入った洗面器を持ってきなさい。」
「わ、わかった。」
…とにかく、お風呂場で今日のことを謝ろう。
まいの手を“優しく”握ると、お風呂場へ向かうためエプロンを脱ごうと手を伸ばす。
「あっ!?」
“バジャンッ”
…だが、その時間は長くは続かない。
嫌な予感がして音のした方を見ると、絨毯と姉の服へ黄色い液体が滲んでいた。
『なんで、“この子”はこう何度もっ!!』
その光景を目撃し、私の心へ再度“黒いモヤ”がかかる感覚が走る。
※
「……まい。シャワーの前に、“おまた”へのお仕置きを済ませましょうか?」
「い、いやっ!…いやぁぁぁっ!?」
私はまいのことをきつく睨みつけ、エプロンポケットに入った“木べら”を取り出す。
そのまま“まいの身体”を持ち上げると、テーブルの上へ寝かせ、オムツ替えの姿勢にした。
もう何をされるかわかったであろうまいは、大粒の涙を流しながら、固定している私の腕を握り締めてくる。
「じゃあ、始めるわよ。…文句なら“絨毯を汚した”お姉ちゃんにいいなさい?」
私の言葉を聞き、まいは“キッと”姉を睨みつけた。
その様子に構わず、この哀れな“おまた”へ木べらを振り下ろす。
…次の瞬間に響き渡る悲鳴は、大切なところが痣だらけになるまで鳴り止むことはなかった。
・・・
結局その日、まいは気絶してしまい、お風呂に連れていくことなくベッドへと寝かしつけた。
“まいは悪くない”
そんなことはわかっているのだが、姉の粗相が原因で、私は自分を抑えることができなくなってしまっていた。
……だが、もうこれは仕方がないだろう。
まいには悪いが、この選択を選んだのは“あの子自身”なのだから。
そう自分へ言い聞かせると、私は改めて自分の作った“ルール”を振り返る。
…きっとこれからも、私は“この自分”を抑えることが出来ないのだろうから。
『ごめんなさいね、まい。……でも、やっぱり“あんた”が悪いのよ。』
…こうして、心を捨てた私が誕生していく。
……それと同時に、これまで存在した“まいへの愛”は、私の心から消え失せていくのだった。
「完」
そのうち1人は私が産んだ子で、もう1人は夫の連れ子である。
夫とは最近うまくいっていなく、文字通り、日々“すれ違っている”形だ。
そのせいか、私は普段からイライラしてしまい、つい娘たちに当たってしまう頻度も増えてきていた。
『このままではいけない…。』
そう頭の中では分かっていながらも、いざ娘の粗相を目の当たりにすると、自分を抑えることが出来ずにいるのだった。
…そしてそのまま“あの日”を迎えることになる。
・・・
「あなた、またこんな時間に出かけるの?…やっと帰ってきたと思ったらいつもすぐに出かけて……ほんと、いい加減にしてちょうだいっ!!」
私がこんな毎日を過ごす中、ようやく帰ってきた夫は悪びれもせず平然としている。
玄関へと向かう背中に言葉をぶつけるが、当然のように返事はなかった。
その態度に、私の中の“もやもや”が膨れ上がっていくのがわかる。
「待ちなさいっ!次はいつ帰ってくるのっ!?」
止まることのない夫の足取りがようやく停止し、暫しの沈黙が流れる。
「………もう、帰らない。」
「……は?」
…いま、この人はなんと言ったのだろう。
いつもは大体の日数が返ってくる場面で、今回はそれと違っている。
「ちょ、ちょっと、帰らないって“出て行く”ってこと?……だったら、まいはどうするのよっ!?一緒に連れていくのっ!?」
再び歩き出した夫を止めるため、まとまらない思考のままに言葉をぶつけた。
「…まいは、お前に任せる。……“好きなよう”に育ててくれ。」
だが、今度は止まることなく、静かに“丸投げ”という答えを出される。
…どうやら、本当に出ていくつもりなのだと、この時に悟るだった。
「そんな勝手なことが許されると思うのっ!?…大体、お金とか、いろんな問題があるでしょっ!?」
「……金は毎月“養育費”を振り込む。…そのほかのことは後日連絡する。」
「後日って……、まだ話は終わってないのよっ!!」
“ガチャンッ”
「っ…。」
そのまま夫は話し合いをすることなく、一方的に押しつけて出て行ってしまった。
…結局、私は捨てられ、更には“まい”という子供の面倒まで見る羽目になってしまう。
その現実を“理解”するまでには暫しの時間がかかった。
・
しばらくすると思考がまとまり、キッチンへと戻る。
するとテーブルの上に飾られた“家族だったもの”が写った写真立てが目に入った。
「…あーっ!もうっ!!」
“バリンッ”
いまはその写真が憎らしく、思いっきり床に叩きつける。
…だって、これからは“家族でない”のだから、これはもういらないだろう。
ふと顔を上に上げると、娘たちが怯えているのがわかった。
……“娘たち”?………いや。
こうなってしまった以上、確認をしなければいけない。
「…で?……まい、あんたはどうするの?」
「……え?」
「いま追いかければ、まだ間に合うかもしれないわよ?……それとも、ここに残るの?」
「……えっと。」
その可憐な顔立ちを睨みつけるように、私は腕を組みながら問いかける。
そう。まいは私が産んだ子ではない。
この返答次第では“娘”という関係でなくなるのだから。
「……どうなの?」
なかなかこない返事に、私の中の“イライラ”が高まる。
この様子に、まいは涙目になりながら口を開いた。
「……ここに、…残りたいです。」
「…そう。」
どうやら、“私の娘”のままでいたいらしい。
その返答を聞いた瞬間、私の心が黒く塗りつぶされていくのを感じた。
「なら、別にここにいても構わないわよ。」
「……ありがとうございます。」
怯えていた様子から安心したのか、表情が少しずつ明るくなっていくように思える。
……だが。
「…ただ、これまで通りにはいかないから。」
「………え?」
「今日からお姉ちゃんの罪は、あんたにお仕置きすることにしたわ。」
「………。」
私が言った言葉の意味が理解できないのか、まいは“おどおど”と様子を伺ってきた。
「もちろん、今まで以上に厳しくて、恥ずかしいお仕置きにするから、覚悟しなさい。」
…そう。こうなってしまった以上は仕方がないのだ。
なぜなら、まいは私の娘であり、それ以前に、憎い“あの人”の連れ子なのだから。
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その後、“娘たち”を寝かせ、私は1人キッチンで夜中を迎える。
お酒は苦手なため、お水で心を落ち着かせながら、今日のことを振り返っていた。
…その中でも一際“まい”のことに意識がいく。
先程はつい“かっと”なってあんなことを言ってしまったが、落ち着いてみると言い過ぎだった気がする。
いくらまいが“あの人”の子供はいえ、いまは可愛らしい私の娘であることに変わりはないのだから。
『ごめんなさいね、…まい。』
心の中で謝りながら、明日“娘たち”に説明しようとキッチンの電気を落とした。
・
太陽の光が部屋を照らし、1日の始まりを告げる。
私は“パチッ”と目を覚ますと、体を伸ばし、辺りの様子を確認した。
ぐっすり眠り、リラックスした様子で起き上がる。
そのまま朝の支度をするため、エプロンへと手を伸ばした。
…今日はまいが大好きな“ハンバーグ”を作ってあげよう。
罪滅ぼしの気持ちも込めるため、さっそく長袖の服をまくった。
・
「ママ…。……おはよう。」
「おはようお姉ちゃん。…今日は早いのね?」
「うん。……ママ、もう怒ってない?」
「怒ってないわよ。…昨日はごめんね?」
どうやら、昨日の私は相当怖い様子だったらしい。
私は安心させるように姉に笑顔を見せると、ほっと胸を撫で下ろしていた。
「お姉ちゃん。ご飯ができたから“まい”のこと呼んできてくれる?」
「はーい。」
天真爛漫な笑みを浮かべながら、部屋の方へと駆けていく様子だった。
私は料理を並べ終えると、食卓の席へ腰をかける。
すると、目を擦りながら少し眠たげな“まい”が姿をあらわす。
まいもまた、私の様子を伺っているみたいだ。
まいには料理を食べながらゆっくり説明しようと、席に着くのを待った。
・
食事が始まりしばらく時間が経つ。
私はなかなか話を切り出すきっかけがなく、ぎこちない時間を過ごしていた。
だが、このままだとなんの説明もせずに食事の時間が終わってしまう。
「……まい、あの…。」
「ん?…お母さん、なに?」
「…昨日のことなんだけど……。」
私は決意を固め、ハンバーグを口に運ぶまいへ話しかける。
“昨日”という言葉に反応したまいは、それまで口に運んでいた手を止めた。
まずは、“これまで通り”の生活にすることを説明しなければ…。
「あの後考えたんだけど、やっぱりやめ…」
「あっ!!」
“ベチャッ”
「お、お姉ちゃん…。」
説明を始めようとした瞬間、姉の箸からハンバーグが落ちる様子を目撃する。
白いパジャマに黒が滲み、同時に“私の心の中”も塗りつぶされていくのがわかった。
「マ、ママ…、ごめんなさ…」
「まいっ!お仕置きするからお尻出しなさいっ!!」
『あぁ…。…もうダメだ。』
無意識のうちに自分の口が動き、言いたかったこととは真逆の言葉が発せられる。
そこには、“あの人”に重なるまいのことが憎らしくて仕方ない私がいる。
……そこからは、もう自分の心を止めることが出来なかった。
※
原因を作った姉を尻目に、私は“まい”をきつく睨みつける。
その瞬間、“娘たち”がビクッと身体を震わせるのがわかった。
「マ、ママ…、私にお仕置きじゃないの?」
「昨日も言ったでしょ?…お姉ちゃんの罪は、まいにお仕置きするって。」
「そ、そんな…。お母さん、わたし何もしてないよ?」
まいの“口答え”に私のイライラも大きくなっていく。
「関係ないわ。それが“この家のルール”よ。…従えないなら出て行きなさい。」
「ルールって…。」
「……お仕置きを受けるなら、パジャマのズボンとパンツを脱いで、私の膝の上に来なさい。」
「………。」
だが、まいは服を脱ぐどころか、わたしを睨みつけてくる。
その反抗的な態度は、“追加罰”を決定するには十分なものだった。
「まい、…何その目は?……いい度胸ね。なら後で“恥ずかしいお仕置き”も追加してあげるわ。」
「…なんでっ!?わたし悪くないのにっ!!」
「それが“ルール”だからよ。何度も言わせないで。……あと一回でも反抗したら、強制的に追い出すわよ?」
「………。」
再度きつく睨みつけると、まいは何も言えずにいた。
姉に視線で助けを求めているみたいだが、きっと、“その子”は何もできないだろう。
「……グスッ。わかった。お仕置き受けるから追い出さないで…。」
「ちゃんと受けられたら許してあげるわ。…さあ、早く脱ぎなさい。」
「…はい。」
ようやく決意が固まったまいは服を脱ぎ、恥ずかしそうに前を手で隠している。
きっと、“いつもの私”ならこの時点で膝へ誘導していただろう。
…だが、いまの私にとって、“その程度”では納得する訳がなかった。
「……脱いだよ。」
「だめよ。全部脱いで、脱いだものは床に畳んで置きなさい。…それに、お仕置きを受けるのに“その手”は何?ちゃんと気をつけの姿勢になりなさい?」
「……恥ずかしいよぉ…。」
「“恥ずかしくする”とも言ったはずよ?…叩かないとわからない?」
「わ、わかったよぉ…。」
まいは震えながら服を脱ぎ、畳んで床へ置いた。
私の方へ向き直ると、ぎこちなく、気をつけの姿勢をとる。
「もう少しこっちに来て頰を出しなさい。」
「…?…うん。」
バヂンッ!
「…っ!?」
その真っ白な頰へ“警告”として、私の平手を叩きつける。
突然のことに驚くまいは、真っ赤な手形がついた頰を庇い出した。
「脱ぐのが遅れた罰よ。…今後、お仕置きはこの服装でするから、すぐに準備しなさい。」
これからは厳しくする。
その言葉を実現するように、まずは“警告”から始めることにした。
「わかったら、早く膝の上に来なさい。…それとも、もう一回叩かれたい?」
「っ!?…い、いま行きますっ!?」
そして、私の膝の上へ来るように命じ、“お仕置き”の始まりを促した。
その小柄な背中をがっちりと固定し、高々と腕を振り上げる。
バッヂィィンッ!!
「あ゛ぁぁぁっ!!」
一切の手加減をすることなく、まいのお尻へ平手を叩きつける。
まだ幼さが残る白い肌に私の平手が痛々しく浮かび上がった。
「お、おがぁさんっ!痛すぎるよぉっ!?」
「当たり前でしょ?これまでみたいな“甘いお仕置き”は、もう二度としないわ。
…さあ、その手をどけなさい。数を増やされたくなかったらね。」
「…お尻壊れちゃうよぉ。」
お尻を庇っている手が戻るのを確認し、私は再度、“同じ場所”へ狙いを定める。
バッヂィィンッ!!バッヂィィンッ!!
「い゛いぃぃっ!!」
バッヂィィィン!!!
「ぎゃぁぁぁっ!!」
『あぁ、憎いっ!“この子”のことが憎くて堪らないっ!!』
もはや、お仕置きとしてではなく、自分の感情を叩きつける“的”として、手を振り下ろしていた。
まいの叫び声が部屋中に響き渡るが、私の心には全く届かない。
…このまま私の“憂さ晴らし”は、しばらく続くのだった。
・
「マ、ママァ…。」
「…なに?お姉ちゃん。」
しばらく叩き続けていると姉から呼び止められる。
無意識のうちに腕を振り下ろしていたため、まいのお尻はとても悲惨な状態になっていた。
「あ、あの…もうまいのこと許してあげてほしいの。…お尻ももう“痣だらけ”だし…。」
「ダメよ。この後“別のお仕置き”も控えてるし、まだまだ許すわけにはいかないわ。」
「…で、でも……。」
姉は罪悪感からか、涙目で許しを求めていた。
だがそもそも、原因を作ったのは“この子”だ。
…まあ、そこまで言うのならば。
「じゃあお姉ちゃん“も”一緒に受ける?」
「……え?」
「もともとはお姉ちゃん“が”原因なんだし、一緒に受けるならまいの分を“軽く”してあげてもいいわ。」
「そ、それは……。」
迷っているというより、戸惑っているという様子が正しいだろう。
まいの“悲惨な”状態を見て、ガクガクと震えているようだった。
「……う、受けたくないです。」
……やっぱりね。
思った通りの返答に、私は“無実なお尻”に視線を戻した。
「…そう。わかったわ。……残念だったわね、まい。…ほら、お仕置きの続きをするから、姿勢を直しなさい。」
「いやだぁぁっ!?もう痛いのい゛やぁぁっ!!」
『いたっ!いたいっ!!』
このまま“続行”を促すと、パニックになったまいが暴れ出した。
それをなんとか押さえつけ、手が当たった部分をみると、まいのお尻ほどではないが、“青痣”が浮かび上がっていた。
『お仕置きに反抗するだけじゃなく、私に痣を付けるなんて…。……もう許さない。』
「痛いじゃないの…。…はぁ、これじゃお仕置きの続きができないわね。……お姉ちゃん?」
“ビクッ”
「は、はいっ!?」
「“いつもみたいに”まいのことを抑えなさい。」
「で、でもぉ…。」
「早くしないと、お姉ちゃんも一緒にお仕置きを受けさせるわよ?」
「ひいっ!?…お、抑えますっ!!」
“ガシッ”
従順な姉は、可愛い妹を力づくで押さえつける。
その様子に“いつもの優しさ”は一切感じられなかった。
そして、まいの足は私の自分の足の間に挟み、身動きを取れなくした。
「まったく…。あんたが暴れたせいで私の腕に痣ができたじゃないっ!……罰としてお尻叩き50発の追加よっ!」
「もうやだぁっ!…お姉ちゃん助けてよぉっ!!」
「まい…、ごめんなさい…。ほんとうに…ごめんなさい。」
「いーやぁーっ!!」
まいは姉に助けを求めるが、その助け舟が来る様子はない。
再度パニックとなり暴れだそうとするが、私と姉が押さえつけているため抵抗できずにいる。
「さあ、もう暴れられないわよ。しばらく座れないようにしてあげるから、覚悟しなさいっ!」
まいが泣き叫ぶ中、私は高々と腕を上げる。
そのまま1番痛がっている真ん中の部分へと振り下ろすのだった。
・
「ほらっ、早く降りなさいっ!」
“ドサッ”
「いだっ!」
その後、まいの罵倒が続くためお仕置きの数をさらに増やし、ようやく今に至る。
赤黒く染まったお尻にようやく許しを出し、私は膝の上からまいを落とした。
…だが、まいへの“罰”はまだ終わりではない。
「まい。何“ボーッと”してるの?…次のお仕置きをするから早く立ちなさい。」
「も、もうやだぁ…。」
もはや、当分の間まともに座れないであろうお尻を自分でさすり、動くことができない様子だった。
ただ、その様子を見ても、私の中に“許す”という感情は全く生まれなかった。
「なら、次はお姉ちゃんに受けてもらおうかしらね。」
“ビクッ”
「ひっ!?」
姉を睨みつけながら、“まいを”なんとかするように煽る。
姉は、このままでは自分がお仕置きを受けるかもしれないと悟ったのだろう。
目に見えるほどに焦り出していた。
「ま、まいっ!?早く立ってっ!!」
「…いや。」
「……あーっ!もうっ!!」
「い゛っ!?」
「早くしないと“私が”お仕置きされるでしょっ!?」
「っ!?」
自分の妹を力づくで立たせると、私の方を伺うように“ビクビク”としている。
普段、温厚な姉が見せるこの様子は相当追い詰められているのだと思った。
「いいわ。じゃあ、お姉ちゃん、お風呂場から洗面器を持ってきなさい。」
「は、はいっ!」
いつもは“トロトロ”している姉が、この日ばかりはすぐに行動する。
「は、はいっ!ママァッ!」
「ありがとう。…さあ、はじめましょうか。」
私はまいの下に洗面器を置き、“グッと”しゃがませる。
そのまま姉へ姿勢を保つよう、押さえつけさせた。
まいは恥ずかしいのか、頰を赤くしながら私のことを見上げている。
「最後のお仕置きは、その洗面器の上で“おしっこ”をしなさい。」
「…はぁっ!?なにそれっ?…なんでそんなことしなくちゃいけないのっ!?」
「それが、“恥ずかしい”お仕置きだからよ。…早くしなさい。」
「いやだっ!!」
こんな屈辱的な姿勢になっても、まだ私への反抗心は残っているようだ。
涙を流しながら睨めつけるその目には、どこか“あの人”の面影を感じさせる。
……もういい。
従えないというなら、“追い出す”だけなのだから。
「……はぁ。…まい、荷物は自分の“手に持てる程度”にまとめなさいよ?」
「……え?」
「初めに言ったでしょ?この家の“ルール”に従えないなら追い出すって。…罰は受けたくないんでしょ?」
「そ、それは…。」
ようやく自分の立場を思い出したのか、睨みつける目が困惑の表情へと変わっていた。
…まあ、これは“最後”のチャンスとしてあげよう。
優しい私は、“娘”へ選択する時間を与えた。
「グス…。お、お母さん…。」
「なに?」
「……おしっこします。」
「聞こえないんだけど?」
どうやら選択が決まったようだ。
消え入りそうな声が聞こえたが、“あえて”聞こえない形で聞き返した。
「お、おしっこするからっ!…だから、追い出さないでっ!!」
私が聞き返すと、まいは頰をさらに赤く染めながら大声で答える。
その反抗心が消えた様子に、私の心が満たされていくのを感じた。
「じゃあ、早くしなさい。…追い出されたくなかったらね。」
「…はい。」
“ジョロォォォ”
覚悟を決めたまいは、言われた通り尿を出し始める。
部屋の中に“おしっこ臭さ”が充満するが、特に気になることはなかった。
“チャポッ……チャポンッ”
「…お、終わったよ。」
※
「よくがんばったわね。…洋服を汚したお仕置きはもう終わりでいいわ。
…このまま、お風呂で“おまた”を洗ってあげるからきなさい。」
まいがお仕置きをやり遂げ、私の心にある“黒いモヤ”が無くなっていく感覚を覚える。
『…やりすぎてしまった。』
心が戻った私が最初に感じたことは、罪悪感と自分への苛立ちだった。
……せめて、アフターケアくらいは優しくしなければ。
まいへの“償い”の気持ちが沸き立ち、ぎこちなく手を伸ばす。
「じ、自分で洗えるよぉ…。」
「いいから、きなさい。……あと、お姉ちゃんは、まいのおしっこが入った洗面器を持ってきなさい。」
「わ、わかった。」
…とにかく、お風呂場で今日のことを謝ろう。
まいの手を“優しく”握ると、お風呂場へ向かうためエプロンを脱ごうと手を伸ばす。
「あっ!?」
“バジャンッ”
…だが、その時間は長くは続かない。
嫌な予感がして音のした方を見ると、絨毯と姉の服へ黄色い液体が滲んでいた。
『なんで、“この子”はこう何度もっ!!』
その光景を目撃し、私の心へ再度“黒いモヤ”がかかる感覚が走る。
※
「……まい。シャワーの前に、“おまた”へのお仕置きを済ませましょうか?」
「い、いやっ!…いやぁぁぁっ!?」
私はまいのことをきつく睨みつけ、エプロンポケットに入った“木べら”を取り出す。
そのまま“まいの身体”を持ち上げると、テーブルの上へ寝かせ、オムツ替えの姿勢にした。
もう何をされるかわかったであろうまいは、大粒の涙を流しながら、固定している私の腕を握り締めてくる。
「じゃあ、始めるわよ。…文句なら“絨毯を汚した”お姉ちゃんにいいなさい?」
私の言葉を聞き、まいは“キッと”姉を睨みつけた。
その様子に構わず、この哀れな“おまた”へ木べらを振り下ろす。
…次の瞬間に響き渡る悲鳴は、大切なところが痣だらけになるまで鳴り止むことはなかった。
・・・
結局その日、まいは気絶してしまい、お風呂に連れていくことなくベッドへと寝かしつけた。
“まいは悪くない”
そんなことはわかっているのだが、姉の粗相が原因で、私は自分を抑えることができなくなってしまっていた。
……だが、もうこれは仕方がないだろう。
まいには悪いが、この選択を選んだのは“あの子自身”なのだから。
そう自分へ言い聞かせると、私は改めて自分の作った“ルール”を振り返る。
…きっとこれからも、私は“この自分”を抑えることが出来ないのだろうから。
『ごめんなさいね、まい。……でも、やっぱり“あんた”が悪いのよ。』
…こうして、心を捨てた私が誕生していく。
……それと同時に、これまで存在した“まいへの愛”は、私の心から消え失せていくのだった。
「完」
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