わたしの家の“変わったルール”

ロアケーキ

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はじめての“理不尽” (後編)

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バッヂィィンッ!!

「ひっぐ…。」

バッヂィィィンッ!!

「…グスッ。もうゆるじてぇ…。」

…あれからどのくらいの時間が経っただろうか。
無実なお尻への平手打ちは今も変わらず続いていた。

バッヂィィンッ!!

「…もうじまぜん……。」

バッヂィィンッ!!バッヂィィンッ!!

「いだいよぉ…。ごめんなざい…。」

一体“なに”をもうしないのか、そもそも“なに”に対して謝っているのかわからないが、今は頭の中にその言葉しか思い浮かばなかった。

もはや叫ぶ元気もなくなり“ぐったり”しているわたしは無抵抗で痛みを与えられ続ける。
“そんなこと”など構わず、平手打ちの強さは変わることなく、わたしのお尻を痛めつけるのだった。

「マ、ママァ…。」

「…なに?お姉ちゃん。」

“ピタッ”と、鳴り止むことのなかった音が収まり、同時に“ジグジグ”とした痛みが押し寄せてくる。

「あ、あの…もうまいのこと許してあげてほしいの。…お尻ももう“痣だらけ”だし…。」

「ダメよ。この後“別のお仕置き”も控えてるし、まだまだ許すわけにはいかないわ。」

「…で、でも……。」

“チラッ”とお姉ちゃんの方を見ると、わたしのお尻を見ながら涙目になっている様子だった。

『もしかしたら、お姉ちゃんがなんとかしてくれるかもしれない。』

普段はだらしないが、お仕置きの時は“頼れる姉”を思い出し、少しだけ希望に満ちた目で、“お姉ちゃん”を見つめ出す。

「じゃあお姉ちゃん“も”一緒に受ける?」

「……え?」

「もともとはお姉ちゃん“が”原因なんだし、一緒に受けるならまいの分を“軽く”してあげてもいいわ。」

「そ、それは……。」

お仕置きが“軽くなる”かもしれない。

その言葉に、わたしは飛びつくように反応してしまう。

『お願い。…お姉ちゃん、わたしを助けてっ!』

わずかな希望を瞳に宿し、先ほどよりも強く姉を見つめる。

「……う、受けたくないです。」

『え…。お、お姉ちゃん…。なんで……。』

「…そう。わかったわ。……残念だったわね、まい。…ほら、お仕置きの続きをするから、姿勢を直しなさい。」

「いやだぁぁっ!?もう痛いのい゛やぁぁっ!!」

気がつくと、わたしは無意識の内に暴れてしまっていた。

力いっぱいに振り回す手と足が“母の身体”に当たっていく。

「痛いじゃないの…。…はぁ、これじゃお仕置きの続きができないわね。……お姉ちゃん?」

“ビクッ”

「は、はいっ!?」

「“いつもみたいに”まいのことを抑えなさい。」

「で、でもぉ…。」

「早くしないと、お姉ちゃんも一緒にお仕置きを受けさせるわよ?」

「ひいっ!?…お、抑えますっ!!」

“ガシッ”

わたしの腕が抑えられ、姉と目が合う。

そして、足は母の“両足の間”に挟まれ、身動きが取れなくなってしまった。

「まったく…。あんたが暴れたせいで私の腕に痣ができたじゃないっ!……罰としてお尻叩き50発の追加よっ!」

「もうやだぁっ!…お姉ちゃん助けてよぉっ!!」

わたしは睨みつけるように、姉を見る目に力を込める。

「まい…、ごめんなさい…。ほんとうに…ごめんなさい。」

「いーやぁーっ!!」

姉の顔から一筋の涙が落ち、わたしから顔を逸らす。

『もうお姉ちゃんなんか“だいきらい”っ!!』

この時、姉がわたしを助けてくれることはないのだと、はっきりと理解する。

…そして、これまで頼りにしていた“お姉ちゃん”は、わたしの中から消え去っていくのがわかった。

「さあ、もう暴れられないわよ。しばらく座れないようにしてあげるから、覚悟しなさいっ!」

抵抗が出来ないわたしのお尻めがけ、母の平手が振り下ろされる。

“うつらうつら”と意識が遠のく中、“理不尽”なお仕置きは続くのだった…。



「ほらっ、早く降りなさいっ!」

“ドサッ”

「いだっ!」

夕日が部屋の中に差し込み、あたりが赤に染まる頃、ようやくわたしは母の膝から下される。

…いや、下されるというより、“落とされた”という方が正しいのかも知れない。

あの後、暴れられなくとも、口は動くわたしは、必死で母と姉を罵倒し続けた。

それが原因で“追加罰”はみるみると増え、わたしが泣き叫ぶことしかできなくなった頃に、罪の償いを終えたようだった。

「まい。何“ボーッと”してるの?…次のお仕置きをするから早く立ちなさい。」

「も、もうやだぁ…。」

もはや、痛みの感覚が薄れるほどに叩かれ、立つ気力すら失っている。

そっと自分のお尻に触れると、“熱い”という事実だけが伝わってきた。

「なら、次はお姉ちゃんに受けてもらおうかしらね。」

“ビクッ”

「ひっ!?」

ふと、母が姉のほうを向き、睨め付ける。

その目線にいた姉は身体を震わせ、顔がだんだんと青に染まっていった。

「ま、まいっ!?早く立ってっ!!」

「…いや。」

「……あーっ!もうっ!!」

「い゛っ!?」

突然、焦り出した姉はわたしの方へ近づくと、腕を乱暴に握り、力づくで立たせた。

「早くしないと“私が”お仕置きされるでしょっ!?」

「っ!?」

“誰のせいだと思ってるのっ!?”・“なんで自分で受けないのっ!?”・“わたしは悪くないのにっ!!”

姉の“この言葉”が原因で、わたしの中にさまざまな感情が生まれだす。

ただ、一度に言いたいことが多く、頭の中が混乱してしまい、結局言葉にすることが出来ずにいた。

「いいわ。じゃあ、お姉ちゃん、お風呂場から洗面器を持ってきなさい。」

「は、はいっ!」

そういうが早いか、姉は足早に洗面所へと向かう。
そして、洗面器を持ってくると、母に手渡した。

「は、はいっ!ママァッ!」

「ありがとう。…さあ、はじめましょうか。」

そういうと、母は目の前に洗面器を置き、わたしの腕を強く握る。
そのまま、洗面器の上にしゃがませると、姉に姿勢を保つよう抑えさせた。

「最後のお仕置きは、その洗面器の上で“おしっこ”をしなさい。」

「…はぁっ!?なにそれっ?…なんでそんなことしなくちゃいけないのっ!?」

「それが、“恥ずかしい”お仕置きだからよ。…早くしなさい。」

「いやだっ!!」

もはや大切なところを全てさらけ出す姿勢だが、それでも、なけなしの“反抗心”がわたしの中に残っていた。

「まい。…お願い、ママの言うことをきいて…。」

「お、お姉ちゃんのばかぁっ!?」

「……はぁ。…まい、荷物は自分の“手に持てる程度”にまとめなさいよ?」

「……え?」

「初めに言ったでしょ?この家の“ルール”に従えないなら追い出すって。…罰は受けたくないんでしょ?」

「そ、それは…。」

…そうだった。結局、わたしは母に逆らうことが出来ないことを思い出した。

今ここでいう通りにしなければ、わたしはこのまま……。

「グス…。お、お母さん…。」

「なに?」

「……おしっこします。」

「聞こえないんだけど?」

「お、おしっこするからっ!…だから、追い出さないでっ!!」

頰を赤く染めながら、叫ぶように母へ訴える。

さっきまで、わたしの中に残っていたなけなしの“反抗心”は、いつの間にか消え失せていた。

「じゃあ、早くしなさい。…追い出されたくなかったらね。」

「…はい。」

…もう、するしかない。

わたしは覚悟を決めると、“大切なところ”に意識を集中させた。

“ジョロォォォ”

洗面器から聞こえる卑猥な音が、わたしの心に突き刺さっていく。
おしっこの臭いが部屋中に充満していくと、わたしを抑える姉が、顔を“しかめた”のがわかった。

“チャポッ……チャポンッ”

「…お、終わったよ。」

ようやく、自分の中にあった尿を出し終えると、開放感がわたしの中を満たしていた。

「よくがんばったわね。…洋服を汚したお仕置きはもう終わりでいいわ。
…このまま、お風呂で“おまた”を洗ってあげるからきなさい。」

「じ、自分で洗えるよぉ…。」

「いいから、きなさい。……あと、お姉ちゃんは、まいのおしっこが入った洗面器を持ってきなさい。」

「わ、わかった。」

…やっと、終わった。

長く続いた“苦痛”な時間が終わり、わたしの胸の中にも安堵の色が出てきたところだった。

「あっ!?」

“バジャンッ”

……ま、まさか…。

“恐る恐る”音がした先を見ると、姉が洗面器を落とし、黄色い液体を絨毯にぶちまけていた。

「……まい。シャワーの前に、“おまた”へのお仕置きを済ませましょうか?」

「い、いやっ!…いやぁぁぁっ!?」

母はエプロンのポケットに入れていた“木べら”をわたしに見せつける。

そして、わたしをテーブルの上にあげると、オムツ替えの姿勢にし、足を固定した。

「じゃあ、始めるわよ。…文句なら“絨毯を汚した”お姉ちゃんにいいなさい?」

母の言葉を聞き、涙目でお姉ちゃんを睨みつける。
その瞬間、お尻の時よりも鋭い痛みが、わたしの下半身に叩きつけられるのだった…。

・・・

こうして、わたしにとっての“理不尽”は、始まりを告げる。

一体、どこで選択肢を間違えてしまったのだろうか。

もしかしたら、あの時、“父”についていけば、結果は変わっていたのかもしれない。

…そんな物思いにふけることも何度かあったが、結局“答え”は出ることなく、時間だけが虚しく過ぎていった。

……ただ、1つだけわかることは、この理不尽は“これからのわたし”にとって軽いものでしかないことであった…。


「完」
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