わたしの家の“変わったルール”

ロアケーキ

文字の大きさ
8 / 15

はじめての“理不尽” (前編)

しおりを挟む
これは、わたしにとっての“理不尽”が始まる頃の記憶だ。

思えば、母の様子が変わり始めたのは、“あの日”がくる数日くらい前からだった。

その頃は、すでに父の帰りが次第に遅くなり、何日か帰らない日も増えてきていた。

それが影響してか、それまで優しかった母が、些細なことでお姉ちゃんを怒るようになり、時には一緒にいたわたしまで並んで叱られることもあった。

…まあ、実際にお仕置きを受けたのは“お姉ちゃんだけ”だったけど。

そうこうしている間に、“あの日”がきてしまったのだ。

・・・

「あなた、またこんな時間に出かけるの?…やっと帰ってきたと思ったらいつもすぐに出かけて……ほんと、いい加減にしてちょうだいっ!!」

“あの日”の夜、数日ぶりに帰宅した父に向けられた第一声が、その言葉だった。

普段は温厚な母が、“これまでため込んだもの”を吐き出すように、父を怒鳴りつける。

無口な父は、その言葉を気にも止めず、玄関のドアへと向かっていった。

「待ちなさいっ!次はいつ帰ってくるのっ!?」

少し焦った雰囲気の母が、父の背中に問いかけると、進行していた足が止まった。

…だが、すぐに返答はなく、しばしの時間が流れる。

「………もう、帰らない。」

「……は?」

父からの返答はそれだけだった。

きっと、この場にいる父以外の全員に、“?マーク”が生まれたことだろう。

そして、返答を終えた父は再び玄関へと歩き出した。

「ちょ、ちょっと、帰らないって“出て行く”ってこと?……だったら、まいはどうするのよっ!?一緒に連れていくのっ!?」

「…まいは、お前に任せる。……“好きなよう”に育ててくれ。」

「そんな勝手なことが許されると思うのっ!?…大体、お金とか、いろんな問題があるでしょっ!?」

「……金は毎月“養育費”を振り込む。…そのほかのことは後日連絡する。」

「後日って……、まだ話は終わってないのよっ!!」

“ガチャンッ”

「っ…。」

悲しい音を立てて玄関の扉が閉じられる。

その場に立ち尽くした母は、しばらく放心したのち、怖い顔でキッチンへと戻ってきた。

「…あーっ!もうっ!!」

“バリンッ”

“家族”を写した写真立てが、ものすごい音を立てながら、キッチンの床に投げつけられる。
そして、保護していたガラスが割れ、写真と共にぶちまけられた。

……きっと、これが“家族”の壊れた瞬間なんだと思う。

「…で?……まい、あんたはどうするの?」

「……え?」

「いま追いかければ、まだ間に合うかもしれないわよ?……それとも、ここに残るの?」

「……えっと。」

怖い表情を向けられ、わたしは焦るように、視線で姉へ助けを求めた。

隣にいる姉は“オドオド”としながら、母とわたしを交互に確認している。

「……どうなの?」

痺れを切らした母が、催促をするように、再び、わたしに問いかけた。

「……ここに、…残りたいです。」

「…そう。」

“恐る恐る”母に気持ちを伝えると、口に手を当て、何かを考えている様子だった。

「なら、別にここにいても構わないわよ。」

「……ありがとうございます。」

てっきり、反対されると思っていたため、“ホッと”胸を撫で下ろすわたしがいた。

「…ただ、これまで通りにはいかないから。」

「………え?」

「今日からお姉ちゃんの罪は、あんたにお仕置きすることにしたわ。」

「………。」

一体、母は何を言っているのだろう。
突然の展開が続き、頭が回らず、母の言ったことを理解できないでいた。

「ちなみに、あんたの罪は、あんたに2倍お仕置きするから。」

そんなわたしのことを気にも止めず、母は話を続け出す。

「もちろん、今まで以上に厳しくて、恥ずかしいお仕置きにするから、覚悟しなさい。」



その後、わたしが何か言い出す前に、母は一方的に会話を終了した。

すでに食事やお風呂は終了していたため、「もう寝なさい。」と言われ、わたしは“不安”が残る中、ベッドの中に潜り込む。

結局、その日の夜は何事もないまま終わり、次の日を迎えた。

朝日が部屋の中に差し込み、すっかり見慣れた天井が、わたしに1日の始まりを告げる。

『もしかしたら、昨日の怖い時間も夢だったのかな…。』

ぼんやりする頭でそんなことを考えていると、姉に“ご飯の準備”が出来たことを知らせられた。

目を擦りながらキッチンに向かうと、すでに席についている母と、色とりどりのご飯がわたしを迎えた。

母の様子を確認すると、昨日の“怖い雰囲気”はなく、いつもの様子みたいだった。

『やっぱり、夢だったのかな。』

少し安心しながらわたしも席につく。
隣へ姉も座り、「いただきます。」の挨拶が響き渡った。



今日は休日で、まったりとした時間が流れる。

特に今日は、わたしの大好きな“ハンバーグ”も並んでいるため、とても幸せな気持ちで口に運んでいた。

「……まい、あの…。」

「ん?…お母さん、なに?」

「…昨日のことなんだけど……。」

母は少し悲しそうな表情で、わたしを見つめている。

“昨日のこと”とは、やはり、あれは夢ではなかったのだろうか。

「あの後考えたんだけど、やっぱりやめ…」

「あっ!!」

“ベチャッ”

「お、お姉ちゃん…。」

母との会話の途中に、姉がハンバーグをパジャマに落とした。

元々白かったパジャマに、ハンバーグの黒が滲み、悲惨な結果になっている。

「マ、ママ…、ごめんなさ…」

「まいっ!お仕置きするからお尻出しなさいっ!!」

静かだったキッチンに母の怒鳴り声が響き渡った。

その“鬼のような豹変ぶり”に、わたしと姉は“ピクッと”身体を震わせる。

「マ、ママ…、私にお仕置きじゃないの?」

「昨日も言ったでしょ?…お姉ちゃんの罪は、まいにお仕置きするって。」

「そ、そんな…。お母さん、わたし何もしてないよ?」

あまりの展開に、わたしは顔を青くしながら母に反抗する。

「関係ないわ。それが“この家のルール”よ。…従えないなら出て行きなさい。」

「ルールって…。」

「……お仕置きを受けるなら、パジャマのズボンとパンツを脱いで、私の膝の上に来なさい。」

「………。」

『わたしは、何も悪いことをしていないのに…。』

おかしなルールで、お仕置きされることに納得がいかず、つい、母を睨みつけてしまう。

「まい、…何その目は?……いい度胸ね。なら後で“恥ずかしいお仕置き”も追加してあげるわ。」

「…なんでっ!?わたし悪くないのにっ!!」

「それが“ルール”だからよ。何度も言わせないで。……あと一回でも反抗したら、強制的に追い出すわよ?」

「………。」

母に睨み返されて、わたしは一歩後ろに下がってしまう。

隣を見ると、“原因を作った”姉は、昨日同様“オドオド”として、どうしていいかわからない様子だった。

「……グスッ。わかった。お仕置き受けるから追い出さないで…。」

「ちゃんと受けられたら許してあげるわ。…さあ、早く脱ぎなさい。」

「…はい。」

わたしは“しぶしぶ”腰の部分に手をかけ、ズボンを膝まで下ろした。

“スースー”する感覚が、最近芽生え始めた“羞恥心”を酷く煽るようだった。

続いてパンツに手をかけ、一気に膝まで下ろす。
大事な所やお尻に当たる空気に、わたしの頰は赤くなっていく。

まだ産毛は生えていないが、成長してきた“秘部”を晒す屈辱で、わたしは手で隠すようにそこへ持っていった。

「……脱いだよ。」

「だめよ。全部脱いで、脱いだものは床に畳んで置きなさい。…それに、お仕置きを受けるのに“その手”は何?ちゃんと気をつけの姿勢になりなさい?」

「……恥ずかしいよぉ…。」

「“恥ずかしくする”とも言ったはずよ?…叩かないとわからない?」

「わ、わかったよぉ…。」

わたしは震える手で、言われた通り下に着ているものを脱ぎ、畳んで置いた。

そして、母の方を向き直ると、気をつけの姿勢になる。

「もう少しこっちに来て頰を出しなさい。」

「…?…うん。」

バヂンッ!

「…っ!?」

言われた通りにすると、返ってきたのは頰に感じる鋭い痛みと衝撃だった。

「い、いっだいっ!?」

その後に“ジグジグ”とする持続的な痛みが残り続け、わたしの頰に涙が伝う。

突然の衝撃に舌を噛んでしまったわたしは、同時に舌の“ズキズキ”とした痛みも襲いかかってくる。

「脱ぐのが遅れた罰よ。…今後、お仕置きはこの服装でするから、すぐに準備しなさい。」

これまでは、脱ぐのが少し遅れただけで、叩かれたことなんてなかったのに…。
…その厳しさに身体が震えだしてしまった。

「わかったら、早く膝の上に来なさい。…それとも、もう一回叩かれたい?」

「っ!?…い、いま行きますっ!?」

もうこれ以上ぶたれるのは嫌なため、急いで膝の上へ腹ばいになった。

しばらくお仕置きを受けていなく、久しぶりのこの感覚が、わたしに恐怖心を与えてくる。

「じゃあ、“まずは”平手でお尻100叩きよ。…かなり厳しくするから覚悟しなさい。」

「ひゃ、ひゃくっ!?…お姉ちゃんが服にこぼしただけだよっ!?これくらいなら、いつも20回くらいじゃんっ!!」

「ほんと、何回おんなじことを言わせるの?“これまで以上”に厳しくするって言ったでしょ?…それに、また口答えをしたわね?」

「…ひぃっ。」

バヂンッ!!

「いっだぁいっ!!」

「これからは、口答えするたびに“警告”として叩くから、そのつもりでいなさい。」

「……厳しすぎるよぉ。」

「…返事は?」

バヂンッ!!バヂンッ!!

「い゛いぃっ!!…はい、わかりましたぁっ!!」

お尻全部に痛みが走り、その度に身体が“ビクンッと”跳ね上がる。

いつもよりも強い痛みに、涙が溢れ出してくるのがわかった。

「じゃあ、お尻100叩きを始めるわよ。…お願いは?」

“ペンッ、ペンッ”

「は、はいっ!?お仕置き、お願いしますっ!!」

お尻に“優しい注意”をもらい、わたしは焦って声を振り絞る。

…じゃないと、また痛い“警告”を貰うことになると思ったからだ。

バッヂィィンッ!!

「あ゛ぁぁぁっ!!」

『い、いだいっ!?…痛すぎるっ!!』

いつも、お仕置きの終盤にされるくらいの痛みが与えられる。

予想以上の痛みに、わたしはお尻に手を当ててしまっていた。

「お、おがぁさんっ!痛すぎるよぉっ!?」

「当たり前でしょ?これまでみたいな“甘いお仕置き”は、もう二度としないわ。
…さあ、その手をどけなさい。数を増やされたくなかったらね。」

「…お尻壊れちゃうよぉ。」

わたしは“しぶしぶ”お尻から手を戻す。

いつも、お仕置き中に手を握って安心させてくれる姉は、今日は来てくれないようだった。

バッヂィィンッ!!バッヂィィンッ!!

「い゛いぃぃっ!!」

バッヂィィィン!!!

「ぎゃぁぁぁっ!!」

『いだいぃっ!?いだすぎるよぉっ!』

たった数発で、これまでにされたお仕置きの“何倍も痛く”感じる感覚を覚える。

…だが、それでも、お仕置きはまだまだ終わる気配がない。

バッヂィィィン!!!

「もうい゛やぁぁぁっ!!」

…それからしばらくキッチンには、わたしのお尻をぶたれる音と悲鳴が、響き渡っていた。

……まだ幼い身体には厳しすぎるこの“理不尽な時間”は、一体、いつになったら終わるのだろうか…。


※後編に続きます
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ナースコール

wawabubu
大衆娯楽
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...