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“あまい”痛み
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鞭の痛みを“売って”から1ヶ月が経つ頃、わたしのお尻はようやく元の“白”に戻りつつあった。
あの日以来、少なくとも数日間は歩行するだけで痛みが走り、母や弟に心配されたりもしたが、「…だいじょうぶ。」と返答し、なんとか乗り切っていた。
その後、弟の体調も少しずつ良くなり、今では自力で立つことができるほどに回復していた。
・
今日は天気も良く、わたしは“中級”の場所へ弟の薬を買いに来ていた。
ただ、わたしの着ている服はボロボロでみすぼらしいため、時折、すれ違う人の“蔑む視線”を感じる。
更にその見た目故、お店によっては入店拒否を言い渡されることもあった。
流石に、普段訪れる薬屋さんではそのようなことは無いのだが、厄介者のように手で追い払われた際は悲しい気持ちとなってしまう。
そんな“下級層の扱い”を受けながらも購入を済ませ、のろのろと帰路への道を歩いていた。
「はぁー。なんか今日は特にひどく追い払われたなぁ…。……ん、なんだろ、“あまい”匂い?」
チラッと匂いのする方へ目をやると、小さめの屋台がポツンと立っていた。
そのテーブルの上には、“黒い塊”のような物がいくつか並べられている。
「ん、お嬢ちゃん、寄ってくかい?」
ちょうど中にいたおじさんと目があい、呼びかけられる。
興味がそそられたわたしは、そのまま吸い込まれるように屋台の方へ足を進める。
そして、匂いの原因となる“黒い塊”を見つめると、おじさんへ聞いてみることにした。
「…おじさん、これなに?」
「あぁ、これはチョコレートと言って、とてもあまいお菓子だよ。」
「やっぱり、…甘いんだ。」
「少しだけ味見してみるかい?」
「えっ、いいのっ!?」
その魅力的な言葉に、わたしは目をぱっと見開き反応してしまう。
おじさんは優しく微笑み、ひとかけら分をわたしの方へ差し出してくれた。
「ほらっ、食べてごらん。」
「あ、ありがとうございますっ!」
わたしは大事に両手で受け取ると、恐る恐る口の中に入れてみる。
“パクッ”
『あ、あまいっ!?…見た目と違って優しい味がするっ!』
思わず頰が緩みながらその味を堪能する。
そして、ハッと我に返り、おじさんの方へ向き直った。
「この“ちょこれいと”ってお菓子、とても美味しいですっ!」
「ハハハッ、満足そうな表情を見れてよかったよ。」
『…これを食べたら、リクの体調も良くなるかも。……何より、食べさせてあげたい。』
その気持ちが昂り、わたしはまだ料金を聞いてなかったことに気づく。
「おじさん。この“ちょこれいと”はおいくらですか?」
「いま試食したカケラ10個分で“銀貨1枚”だよ。」
「……やっぱり、高いんですね。」
「…そうだね。中々手に入りにくいからね。」
わたしの今の手持ちでは到底足りず、財布に伸ばす手が止まってしまう。
そもそも、弟の薬を買うのがやっとの生活で贅沢などすることは出来ず、諦めるしかない状況だった。
「…もし、買う機会があれば、また来てくれるかい?」
おじさんは、わたしが買えないと判断したのか、会話を終了する流れへと進めているようだ。
……でも、“この味”を知ってしまうと、どうしても弟へ食べさせたくなってしまう。
「……おじさん、今日はあと何時までお店開けてますか?」
「…夕暮れまで開ける予定だから、あと3時間くらいかな。」
「…今日中にまた来るので、待っててください。」
「……わかった。待ってるよ。」
わたしはその返事を聞くと、これまで歩いた道へ振り返る。
『また、“あそこ”へいかなきゃ…。』
…だって、今のわたしに出来ることは、“売る”ことだけなんだから。
そう心に決めると、賑やかな通りへと駆け出した。
・
「…それでここに来たと。……はぁ、“買う側”のあたしが言うのもなんだけど、もう少し自分の身体を大事にしたらどうだい?」
唯一の“希望”であるここで先程の事情を話し終える。
話を聞いたロゼッタさんの第一声がその言葉だった。
「それは、わかっています。……でも、あの美味しい食べ物を弟にも食べさせてあげたくて…。」
「はぁ…。チョコレートね。…厄介なものを与えられたもんだよ。」
「ロゼッタさん、お願いします。…どうか、“痛み”を売らせてくださいっ!」
いつもはすぐに買ってくれるロゼッタさんが、今回は中々首を縦に振ってくれない。
『もしかしたら、断られちゃうかも…。』
その不安が頭に浮かび、わたしの頰から一筋の汗が流れる。
「…わかった。買ってやるよ。」
「……あ、ありがとうございます。」
「…ただ、今後は出来るだけどうしようもない時だけ“売り”にきな?…その調子で売ってばかりいたら、その内お前の身体が壊れるからね。」
「わ、わかりました。…気をつけます。」
「わかればいいんだ。じゃあ、ついてきな。」
「は、はいっ!」
ロゼッタさんはいつものように“地下”への誘導をしてくれる。
夕方前の日差しが当たらず暗い階段は、相変わらずわたしの“不安”を煽るようだった。
・
「じゃあ今日はどの道具にするんだい?」
地下の蝋燭が“チラチラ”と照らす中、ロゼッタさんはテーブルの上に並べられた道具を示し、厳しい眼差しで問いかけてきた。
その中にはもちろんこの間の“鞭”もあり、わたしの中にある“恐怖感”を思い出させてくる。
「たしか、銀貨1枚だったね。…この前みたいにその鞭なら10発で1枚だよ?」
「ひ、ひいっ!?」
“あの時”のトラウマからわたしの身体は震え上がってしまう。
あれから少し時間は経つが、一度刻まれた“痛みの記憶”は中々無くなることはなかった…。
「その様子だと、相当答えたみたいだね…。やっぱり鞭はやめとくかい?」
「は、はい。…今日は少し時間があるので。」
「そうかい。なら今日は、そこにある“パドル”にしておくかい?…これなら、痛みを少し抑えて、10発で銅貨2枚だよ。」
「うぅ…。」
確かに痛みは抑えられるが、それでも50発分を受けなければいけなくなる。
躊躇っているわたしを見て、ロゼッタさんは優しく待ってくれていた。
「その、…パドルでぶってください。」
自分のお尻に手を当て、意思を固める。
この“痛み”で弟の笑顔を買えるなら、頑張れるような気がした。
「わかった。じゃあいつものように“準備”しな。」
「…はい。」
わたしは拘束台の近くへ移動すると、薄汚れたスカートとパンツを脱いで畳む。
そのまま台の上へ腹ばいとなり、両手をだらんと下へ垂らした。
正面にある姿鏡を覗くと、後ろからロゼッタさんがもう一つの姿鏡を持ってくるのがわかる。
それをわたしのお尻部分へ立てかけると、いまは“白い”お尻を優しく撫でてくれた。
「この前の“跡”はほとんど消えたみたいだね。」
「はい。」
「でもまた痣ができるだろうから、今のうちにお尻をしっかり見ておきな。」
「っ!…今日もいっぱい“買って”ください。」
その言葉が合図となり、パドルを持ったロゼッタさんの腕がわたしのお尻へ振り下ろされた。
パァァンッ!!
「いっだぁぁいっ!」
わたしのお尻をすっぽり覆う大きさのパドルが、思いっきり打ち付けられる。
その痛みはこの前の“鞭”ほどではないが、それでも小さいお尻を痛めつけるには十分な威力だった。
バヂンッ!パァァンッ!!パァァンッ!!
「ひいぃぃっ!?いっだいぃっ!!」
連続で与えられる“売った”痛みがわたしのお尻に襲いかかる。
たった数発でわたしの白かったお尻は真っ赤に腫れあがり、痛々しく鏡に写り込んでいた。
「次は太ももだよ。歯を食いしばりな?」
「…も、もう太ももをぶつんですか…?」
「そうさ。今日は嗜好を肥やす目的で来たみたいだから、“軽い気持ち”で売らないようにするためにね。」
「そ、そんなぁ…。わたしはリク…弟のために。」
そう。わたしのためじゃなく“リク”のためなのに…。
わたしは少しふてくされながら、ロゼッタさんの様子を伺う。
「でも、それはあの子の病気に関わることじゃないだろう。…さあ、続きをするよ?」
「あ、あんまりです…。」
「嫌ならやめるかい?」
「っ!?…い、嫌じゃないですっ!わがまま言ってごめんなさいっ!!」
痛みを売れなければ、意味がなくなってしまう。
わたしは表情を戻すと、涙目でロゼッタさんへお願いした。
「じゃあこのまま太もも叩きをするよ。…覚悟はいいかい?」
「は、はい…。お願いします。」
“ギュッ”と拳を握り、痛みを待つ。
鏡を見ると、ロゼッタさんがこれまでよりも高く腕を振り上げてるのがわかった。
バッヂィィンッ!!
「いっぎゃぁぁぁっっ!!」
お尻と太ももの付け根部分にパドルが当たった。
だがその痛みが尋常じゃなく、1発で青痣が浮かび上がるほどだった。
「グスッ……い、いだいよぉ…。」
「ほら、次行くよ?」
「そんなっ!ちょ、ちょっとだけまっ…」
バッヂィィンッ!!
「あ゛あぁぁぁっっ!!」
“ボダッ、ボダボダボダボダ”
次の衝撃も同じ場所に加えられ、今回もお漏らしをしてしまう。
同時に顔の下にある床にも、涙と汗で水溜まりができている状態だった。
「ロ、ロゼッタさん、お願いしますっ!もう少しだけ、優しく叩いてくださいっ!!」
「ベルッ、お前は痛みを“売り”にきたんだろう?…これ以上売れないってなら銀貨はあげられないよ。」
「グスッ…でも、痛すぎて…。」
「これまでと今回じゃ“事情”が違うからね。…悪いけど、手加減はできないよ?」
「うぅ…。……わ、わがりました。…そ、その強さで続きをお願いします。」
これまでは手加減されていたという事実に、ロゼッタさんの優しさと厳しさが伝わってくる。
わたしは説得を諦め、次の“買われた痛み”が来るのを待った。
バッヂィィンッ!!
・
「うぇぇーんっ!おじりど太もも、いっだいよぉぉっ!!」
その後、何度かお漏らしをしながらもなんとか全てを“売り切る”ことができた。
…結局、7割ほどは“太もも”を叩かれ、広範囲に渡り青痣が広がっている。
いまは下半身裸のまま、縄を解かれた身体でロゼッタさんに抱きついている状態だ。
「よくがんばったね、ベル。これは約束の銀貨だよ。」
「あ、ありがとうございまずっ。」
「今回の件で思い知ったと思うけど、これからは安易に“売り”へ来ないようにしなよ?」
「は、はい。…絶対に守りますっ!」
目を見て約束をすると優しく頭を撫でられる。
その後はしばらく抱きついて、ロゼッタさんへと“あまえる”のだった。
・
「ただいまぁ…。」
「おねーちゃん。おかえりなさい。…でも今日おそかったね?」
「ちょっと色々ね…。…それよりリクにこれあげるっ!」
家に帰ると、ベッドへ腰掛けた弟が迎えてくれる。
…ただ、その様子は暗く、心なしかわたしのことを心配してくれているような感じがした。
その心配を振り切るように、わたしはお尻を“犠牲”にして手に入れた袋を弟の前に差し出す。
「なに?これ。」
「“ちょこれいと”っていうお菓子だよ。とっても美味しいから食べてみてっ!」
ひとかけら分に折り、弟へと渡す。
そのかけらを受け取った弟は、迷うことなく口に入れ味わっている。
「お、……おねーちゃん。おいしいっ!!こんなにあまい味、はじめてっ!!」
「ね、美味しいでしょ。…リクのその顔が見れてよかった。」
しばらく見ることができなかった“満面の笑み”がわたしに向けられる。
その笑顔が見れたことで、わたしのお尻に残る痛みは一瞬だけ消えた気がした。
「おねーちゃん、ありがとっ!」
「い゛っ!?」
不意に弟から抱きつかれ、お尻の部分に手が当たる。
…突然の激痛に、つい、声が漏れてしまった。
「?…おねーちゃん、どうしたの?」
「な、なんでもないっ!」
涙目でごまかすと、こっそりと腰に手を回し、弟の抱きつく位置をお尻から移動する。
そのまま弟の頭を撫でると暖かさが伝わってきた。
「おねーちゃんも、いっしょにたべよ?」
「うん。お母さんが帰ってきたら3人で食べようね?」
「うんっ!」
久しぶりの“元気な姿”に安心する自分がいる。
わたしも弟を抱きしめ返し、そのままベッドへ横にさせた。
そして、母の“笑顔”を想像しながら晩ご飯の用意を始めるのだった…。
「完」
あの日以来、少なくとも数日間は歩行するだけで痛みが走り、母や弟に心配されたりもしたが、「…だいじょうぶ。」と返答し、なんとか乗り切っていた。
その後、弟の体調も少しずつ良くなり、今では自力で立つことができるほどに回復していた。
・
今日は天気も良く、わたしは“中級”の場所へ弟の薬を買いに来ていた。
ただ、わたしの着ている服はボロボロでみすぼらしいため、時折、すれ違う人の“蔑む視線”を感じる。
更にその見た目故、お店によっては入店拒否を言い渡されることもあった。
流石に、普段訪れる薬屋さんではそのようなことは無いのだが、厄介者のように手で追い払われた際は悲しい気持ちとなってしまう。
そんな“下級層の扱い”を受けながらも購入を済ませ、のろのろと帰路への道を歩いていた。
「はぁー。なんか今日は特にひどく追い払われたなぁ…。……ん、なんだろ、“あまい”匂い?」
チラッと匂いのする方へ目をやると、小さめの屋台がポツンと立っていた。
そのテーブルの上には、“黒い塊”のような物がいくつか並べられている。
「ん、お嬢ちゃん、寄ってくかい?」
ちょうど中にいたおじさんと目があい、呼びかけられる。
興味がそそられたわたしは、そのまま吸い込まれるように屋台の方へ足を進める。
そして、匂いの原因となる“黒い塊”を見つめると、おじさんへ聞いてみることにした。
「…おじさん、これなに?」
「あぁ、これはチョコレートと言って、とてもあまいお菓子だよ。」
「やっぱり、…甘いんだ。」
「少しだけ味見してみるかい?」
「えっ、いいのっ!?」
その魅力的な言葉に、わたしは目をぱっと見開き反応してしまう。
おじさんは優しく微笑み、ひとかけら分をわたしの方へ差し出してくれた。
「ほらっ、食べてごらん。」
「あ、ありがとうございますっ!」
わたしは大事に両手で受け取ると、恐る恐る口の中に入れてみる。
“パクッ”
『あ、あまいっ!?…見た目と違って優しい味がするっ!』
思わず頰が緩みながらその味を堪能する。
そして、ハッと我に返り、おじさんの方へ向き直った。
「この“ちょこれいと”ってお菓子、とても美味しいですっ!」
「ハハハッ、満足そうな表情を見れてよかったよ。」
『…これを食べたら、リクの体調も良くなるかも。……何より、食べさせてあげたい。』
その気持ちが昂り、わたしはまだ料金を聞いてなかったことに気づく。
「おじさん。この“ちょこれいと”はおいくらですか?」
「いま試食したカケラ10個分で“銀貨1枚”だよ。」
「……やっぱり、高いんですね。」
「…そうだね。中々手に入りにくいからね。」
わたしの今の手持ちでは到底足りず、財布に伸ばす手が止まってしまう。
そもそも、弟の薬を買うのがやっとの生活で贅沢などすることは出来ず、諦めるしかない状況だった。
「…もし、買う機会があれば、また来てくれるかい?」
おじさんは、わたしが買えないと判断したのか、会話を終了する流れへと進めているようだ。
……でも、“この味”を知ってしまうと、どうしても弟へ食べさせたくなってしまう。
「……おじさん、今日はあと何時までお店開けてますか?」
「…夕暮れまで開ける予定だから、あと3時間くらいかな。」
「…今日中にまた来るので、待っててください。」
「……わかった。待ってるよ。」
わたしはその返事を聞くと、これまで歩いた道へ振り返る。
『また、“あそこ”へいかなきゃ…。』
…だって、今のわたしに出来ることは、“売る”ことだけなんだから。
そう心に決めると、賑やかな通りへと駆け出した。
・
「…それでここに来たと。……はぁ、“買う側”のあたしが言うのもなんだけど、もう少し自分の身体を大事にしたらどうだい?」
唯一の“希望”であるここで先程の事情を話し終える。
話を聞いたロゼッタさんの第一声がその言葉だった。
「それは、わかっています。……でも、あの美味しい食べ物を弟にも食べさせてあげたくて…。」
「はぁ…。チョコレートね。…厄介なものを与えられたもんだよ。」
「ロゼッタさん、お願いします。…どうか、“痛み”を売らせてくださいっ!」
いつもはすぐに買ってくれるロゼッタさんが、今回は中々首を縦に振ってくれない。
『もしかしたら、断られちゃうかも…。』
その不安が頭に浮かび、わたしの頰から一筋の汗が流れる。
「…わかった。買ってやるよ。」
「……あ、ありがとうございます。」
「…ただ、今後は出来るだけどうしようもない時だけ“売り”にきな?…その調子で売ってばかりいたら、その内お前の身体が壊れるからね。」
「わ、わかりました。…気をつけます。」
「わかればいいんだ。じゃあ、ついてきな。」
「は、はいっ!」
ロゼッタさんはいつものように“地下”への誘導をしてくれる。
夕方前の日差しが当たらず暗い階段は、相変わらずわたしの“不安”を煽るようだった。
・
「じゃあ今日はどの道具にするんだい?」
地下の蝋燭が“チラチラ”と照らす中、ロゼッタさんはテーブルの上に並べられた道具を示し、厳しい眼差しで問いかけてきた。
その中にはもちろんこの間の“鞭”もあり、わたしの中にある“恐怖感”を思い出させてくる。
「たしか、銀貨1枚だったね。…この前みたいにその鞭なら10発で1枚だよ?」
「ひ、ひいっ!?」
“あの時”のトラウマからわたしの身体は震え上がってしまう。
あれから少し時間は経つが、一度刻まれた“痛みの記憶”は中々無くなることはなかった…。
「その様子だと、相当答えたみたいだね…。やっぱり鞭はやめとくかい?」
「は、はい。…今日は少し時間があるので。」
「そうかい。なら今日は、そこにある“パドル”にしておくかい?…これなら、痛みを少し抑えて、10発で銅貨2枚だよ。」
「うぅ…。」
確かに痛みは抑えられるが、それでも50発分を受けなければいけなくなる。
躊躇っているわたしを見て、ロゼッタさんは優しく待ってくれていた。
「その、…パドルでぶってください。」
自分のお尻に手を当て、意思を固める。
この“痛み”で弟の笑顔を買えるなら、頑張れるような気がした。
「わかった。じゃあいつものように“準備”しな。」
「…はい。」
わたしは拘束台の近くへ移動すると、薄汚れたスカートとパンツを脱いで畳む。
そのまま台の上へ腹ばいとなり、両手をだらんと下へ垂らした。
正面にある姿鏡を覗くと、後ろからロゼッタさんがもう一つの姿鏡を持ってくるのがわかる。
それをわたしのお尻部分へ立てかけると、いまは“白い”お尻を優しく撫でてくれた。
「この前の“跡”はほとんど消えたみたいだね。」
「はい。」
「でもまた痣ができるだろうから、今のうちにお尻をしっかり見ておきな。」
「っ!…今日もいっぱい“買って”ください。」
その言葉が合図となり、パドルを持ったロゼッタさんの腕がわたしのお尻へ振り下ろされた。
パァァンッ!!
「いっだぁぁいっ!」
わたしのお尻をすっぽり覆う大きさのパドルが、思いっきり打ち付けられる。
その痛みはこの前の“鞭”ほどではないが、それでも小さいお尻を痛めつけるには十分な威力だった。
バヂンッ!パァァンッ!!パァァンッ!!
「ひいぃぃっ!?いっだいぃっ!!」
連続で与えられる“売った”痛みがわたしのお尻に襲いかかる。
たった数発でわたしの白かったお尻は真っ赤に腫れあがり、痛々しく鏡に写り込んでいた。
「次は太ももだよ。歯を食いしばりな?」
「…も、もう太ももをぶつんですか…?」
「そうさ。今日は嗜好を肥やす目的で来たみたいだから、“軽い気持ち”で売らないようにするためにね。」
「そ、そんなぁ…。わたしはリク…弟のために。」
そう。わたしのためじゃなく“リク”のためなのに…。
わたしは少しふてくされながら、ロゼッタさんの様子を伺う。
「でも、それはあの子の病気に関わることじゃないだろう。…さあ、続きをするよ?」
「あ、あんまりです…。」
「嫌ならやめるかい?」
「っ!?…い、嫌じゃないですっ!わがまま言ってごめんなさいっ!!」
痛みを売れなければ、意味がなくなってしまう。
わたしは表情を戻すと、涙目でロゼッタさんへお願いした。
「じゃあこのまま太もも叩きをするよ。…覚悟はいいかい?」
「は、はい…。お願いします。」
“ギュッ”と拳を握り、痛みを待つ。
鏡を見ると、ロゼッタさんがこれまでよりも高く腕を振り上げてるのがわかった。
バッヂィィンッ!!
「いっぎゃぁぁぁっっ!!」
お尻と太ももの付け根部分にパドルが当たった。
だがその痛みが尋常じゃなく、1発で青痣が浮かび上がるほどだった。
「グスッ……い、いだいよぉ…。」
「ほら、次行くよ?」
「そんなっ!ちょ、ちょっとだけまっ…」
バッヂィィンッ!!
「あ゛あぁぁぁっっ!!」
“ボダッ、ボダボダボダボダ”
次の衝撃も同じ場所に加えられ、今回もお漏らしをしてしまう。
同時に顔の下にある床にも、涙と汗で水溜まりができている状態だった。
「ロ、ロゼッタさん、お願いしますっ!もう少しだけ、優しく叩いてくださいっ!!」
「ベルッ、お前は痛みを“売り”にきたんだろう?…これ以上売れないってなら銀貨はあげられないよ。」
「グスッ…でも、痛すぎて…。」
「これまでと今回じゃ“事情”が違うからね。…悪いけど、手加減はできないよ?」
「うぅ…。……わ、わがりました。…そ、その強さで続きをお願いします。」
これまでは手加減されていたという事実に、ロゼッタさんの優しさと厳しさが伝わってくる。
わたしは説得を諦め、次の“買われた痛み”が来るのを待った。
バッヂィィンッ!!
・
「うぇぇーんっ!おじりど太もも、いっだいよぉぉっ!!」
その後、何度かお漏らしをしながらもなんとか全てを“売り切る”ことができた。
…結局、7割ほどは“太もも”を叩かれ、広範囲に渡り青痣が広がっている。
いまは下半身裸のまま、縄を解かれた身体でロゼッタさんに抱きついている状態だ。
「よくがんばったね、ベル。これは約束の銀貨だよ。」
「あ、ありがとうございまずっ。」
「今回の件で思い知ったと思うけど、これからは安易に“売り”へ来ないようにしなよ?」
「は、はい。…絶対に守りますっ!」
目を見て約束をすると優しく頭を撫でられる。
その後はしばらく抱きついて、ロゼッタさんへと“あまえる”のだった。
・
「ただいまぁ…。」
「おねーちゃん。おかえりなさい。…でも今日おそかったね?」
「ちょっと色々ね…。…それよりリクにこれあげるっ!」
家に帰ると、ベッドへ腰掛けた弟が迎えてくれる。
…ただ、その様子は暗く、心なしかわたしのことを心配してくれているような感じがした。
その心配を振り切るように、わたしはお尻を“犠牲”にして手に入れた袋を弟の前に差し出す。
「なに?これ。」
「“ちょこれいと”っていうお菓子だよ。とっても美味しいから食べてみてっ!」
ひとかけら分に折り、弟へと渡す。
そのかけらを受け取った弟は、迷うことなく口に入れ味わっている。
「お、……おねーちゃん。おいしいっ!!こんなにあまい味、はじめてっ!!」
「ね、美味しいでしょ。…リクのその顔が見れてよかった。」
しばらく見ることができなかった“満面の笑み”がわたしに向けられる。
その笑顔が見れたことで、わたしのお尻に残る痛みは一瞬だけ消えた気がした。
「おねーちゃん、ありがとっ!」
「い゛っ!?」
不意に弟から抱きつかれ、お尻の部分に手が当たる。
…突然の激痛に、つい、声が漏れてしまった。
「?…おねーちゃん、どうしたの?」
「な、なんでもないっ!」
涙目でごまかすと、こっそりと腰に手を回し、弟の抱きつく位置をお尻から移動する。
そのまま弟の頭を撫でると暖かさが伝わってきた。
「おねーちゃんも、いっしょにたべよ?」
「うん。お母さんが帰ってきたら3人で食べようね?」
「うんっ!」
久しぶりの“元気な姿”に安心する自分がいる。
わたしも弟を抱きしめ返し、そのままベッドへ横にさせた。
そして、母の“笑顔”を想像しながら晩ご飯の用意を始めるのだった…。
「完」
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