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蔵“泣き”子
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夏休みが始まり、一週間が過ぎる頃。
暇なわたしは家の敷地にある“蔵”でお道具あさりをし、暇つぶしをしていた。
本来は学校のプールとか、ラジオ体操等の行事があるのだろうが、どうやら今年その気配はない。
…宿題は“初日”で終わす派のわたしには、どうしてもできることが限られてしまう。
そんなことを考えながらあさっていると、1台のビデオカメラが顔を出した。
随分と古いカメラのようで、少しホコリも被っている。
一緒に充電用のアダプターもあり、蔵のコンセントへ挿し、しばらくすると電源が入った。
「お、なんだろ。…いっぱい録画した記録がある。」
そこには、“20年くらい前”の日付けで撮影されたビデオ映像が、おびただしいほどに残されている。
「とりあえず、適当に見てみようかな…。」
ピッ
《まったくこの子はっ!!》
「ちょっ!?」
興味本位で再生してみると、いきなり大音量で怒鳴り声が流れ、慌てて音量を下げた。
恐る恐る画面をよく見ると、そこには正座し、何やらお説教をされている女の子が映し出されている。
《るみえっ!お仕置きを始めるよっ!!》
《グスッ…、はい、お母さま。》
『るみえ?……ってことはまさか…。』
わたしの“母と同じ名前”の女の子は立ち上がり、服を脱ぎ始める。
よくみるとかなり幼いが、どこか“母”に面影のある顔立ちだった。
…ということは、この子は恐らく幼少期の母なのだろう。
なら、撮影しているのは“おばあちゃん”なのだろうか。
そんなことを考えているうちに母は服を脱ぎ終え、一矢纏わぬ姿で大切な部分を隠していた。
バヂンッ!
《い゛っ!》
《お仕置きの時は“気をつけの姿勢”って何度いったらわかるのっ!?》
《ご、ごめんなさいっ!!》
母の頰がいきなりぶたれ、とても痛々しい音が響き渡る。
そんな母は急いで気をつけの姿勢となり、ガクガクと怯えながらカメラの方を見つめた。
《反省が足りないみたいだし、今日はうんと厳しくしてあげるわ。》
《ひいっ!?は、反省してますっ!!》
《そうは見えないって言ってるのっ!…ほら、まずはお馬さんになんなさいっ!》
《うぅ…。》
《返事はっ!!》
《は、はいっ!?》
母はビクッと反応すると、その場で言われた通りの姿勢になる。
おばあちゃんはビデオカメラを持った手で、そんな母のお尻やおまた等“恥ずかしい部分”を映し出し、映像に残していった。
《じゃあ今日はうんと懲らしめるために、“折檻版”にしてあげようかね。》
《そ、そんなぁっ!?それだけは許してくださいっ!!》
「折檻版ってなんだろう…。」
そんなことを思っているとおばあちゃんはカメラを持って棚の方へ移動し、“黒い木箱”を取り出す。
箱を開けると、そこには数枚の紙が入っていた。
《ほら、この紙に書いてある罰をするからねっ!》
おばあちゃんが母に紙を見せつけると、その顔がサーッと青くなっていく様子が、カメラ越しでもわかった。
「ん?…この木箱なら、さっきあさってた中にあったかも。」
わたしはビデオの一時停止ボタンを押すと、テーブルの上に置いた。
そして、先ほどあさっていた戸棚へ移動すると、“ガサガサ”と木箱を求め手を突っ込む。
『…あった。』
随分と奥の方に、埃が被った木箱が押し込んであった。
「げほっげほ」
箱を上げると、一瞬中から白が溢れ出し、黄ばんだ紙が数枚現れる。
『何が書いてあるんだろ…。』
「……なっ!?」
おもむろにその内1番上にあった紙を“パサッ”と広げると、そこには目を疑う内容が書かれていた。
【東城家の掟】
当家の掟として、母が子へ“躾”を行う場合、子が犯した罪の度合いにより、以下五つの段階に応じた罰を与えること。
■お説教版
主に子が軽い“粗相”をした際に行う。
痛みを伴わない躾。
■お仕置き版
主に子が“粗相”をした際に行う。
軽い痛みを伴う躾。
■体罰版
主に子が重い“粗相”をした際に行う。
痛みや軽い辱めを伴う躾。
■折檻版
主に子が“罰行使へ反抗”した際に行う。
重い痛みや辱めを伴う躾。
■懲罰版
主にこれまでの躾では“不足”とされる場合にのみ行う。
怪我以下の痛みや重度の辱めを伴う躾。
※ただし、こちらは滅多なことで無い限り、行わないこと。
・罰の詳細はそれぞれ“別紙”を確認すること
・この段階の判断は、すべて“母に一任”すること
・上記とは別の“定期的な躾”については別紙を参照すること
以上
『なにこれ…。』
あまりの内容に、わたしは言葉を失った。
こんな掟があることなんて知らなかったし、母やおばあちゃんからも何も聞いていないから、あまり現実味がなかった。
でも母はこうしてビデオの中で、この紙に書いてある通りに罰が行われようとしている。
…そういえば、一体どんな罰を受けるんだろう。
わたしは他の紙も取り出し【折檻版】と書かれた紙を広げた。
……嘘でしょ。
【折檻版】
折檻版では、以下の罰を行うこと。
・頰への平手打ち十発(手心を加えることを禁ず)
・太ももへの平手打ち百発
・お尻への靴べら打ち百発
・四つん這い姿勢での反省(一時間)
・太ももへの靴べら打ち百発
・お尻への縄跳び打ち二百発
・おむつ替え姿勢での反省(三十分)
・ふくろはぎへの靴べら打ち百発
・太ももへの縄跳び打ち百発
・性器、お尻の穴への靴べら打ち(それぞれ百発)
・母へ土下座し、お仕置きのお礼
……まさしく“折檻”という名に相応しいほどの罰が、びっしりと詰め込まれていた。
「……お母さん、ほんとに今から“これ”全部されるの?」
わたしは青ざめながらビデオの再生ボタンを押すと、母の顔に画面が近づいていった。
《頰への平手打ち十発、始めるよ?》
《…は、はい、……お願い、します。》
バッヂィィンッ!!
《い゛いぃっ!?》
…先ほどの平手打ちとは比べ物にならないほど物凄い音が響き渡る。
ガクガクと震えながら姿勢を保つ母の頰には、古いビデオ画面からでもわかるほどに真っ赤な手形が浮かび上がっていた。
バッヂィィンッ!!バッヂィィンッ!!
ドサッ
《いっだぁぁいっ!?》
間髪入れずに、次は連続で左右の頰がぶたれる。
その衝撃から母は倒れてしまったようで、突然画面から消えてしまった。
《るみえっ!いい加減にしなっ!…姿勢が保てないんなら、“懲罰版”にしてあげてもいいんだからねっ!!》
《お、お母さまっ!!どうかっ!…どうか懲罰版だけは堪忍してくださいっ!?》
《……なら早く元の姿勢に戻りなっ!…次はないからねっ!!》
《は、はいぃっ!ありがとうございますぅっ!!》
その声と同時、ビデオ画面に母の姿が戻る。
その両側の頰はさらに痛々しく腫れ上がっており、わたしの心がサァーッと引いているのがわかった。
バッヂィィンッ!!
《んぎいぃっ!?》
少し崩れかけながらも、今度は姿勢を崩さなかった。
…歯を噛み締めながら必須に痛みを耐えているようだ。
震えながら睨みつけるようにビデオ画面を見つめるその目は、その先にいるわたしへ、“何か”を伝えているような予感がした。
・
……その後も厳しいお折檻は続き、今は“太ももへの縄跳び打ち”が行われてる所だった。
そんな母の下半身はお尻からふくろはぎまで余す所なく真っ赤に染め上げられており、特に多くぶたれた部分には青黒い痣が浮かんでいる。
…だが、その悲惨な状況でも折檻が終わる気配はなく、おばあちゃんの縄跳びが振り下ろされるたび、母の悲鳴が蔵中に響き渡っていた。
……そういえば、“ここ”はどこなのだろう。
蔵の中のようだが、わたしの知らない空間だった。
……もしかしたら、蔵の2階かもしれない。
今いる1階は入る許可が出ているが、母から「2階には行かないように」と言われ、“そこ”は未知の空間だった。
2階の様子が気になるが、何故かこのビデオに“魅かれて”しまっているため、わたしはここから動き出せないでいた。
・
《ひぐっ…お、おがあさま……おぜっがん、ありがどう、…ございまじだぁ……ぐすっ。》
ようやく長かった“地獄”のような時間を終え、母はおばあちゃんへ土下座をしている。
《まったく、これに懲りたら普段から気を引き締めて生活するんだよっ!》
《あ゛い…。》
…ピッ
と、ビデオはそこで終わり、画面が真っ暗となった。
『…っ!?』
その瞬間、画面に人影が映り込み、わたしは驚いて後ろを振り向く。
……そこには“母”が立っていた。
しかも、とても恐ろしい表情で、わたしを睨みつけている。
…普段の優しい母からは、想像もつかないような雰囲気を纏っていた。
「あみ…。……見たのね?」
「み、見たって何を?」
「とぼけたって無駄よ。…そのビデオの中身、見たんでしょう?」
母は確信したようにわたしへ問いかける。
そして、「はぁ…。」とため息をこぼした。
「あみ、そのビデオに映ったお母さんね、“何もしてない”のよ。」
「…えっ?」
「何も悪いことをしてないのに、こんなに厳しいお仕置きを毎日されてたの。」
「な、なんで?」
「それが、この家の掟だからよ。“定期的な躾”っていう名目のね。」
「……。」
わたしはあまりの事実に言葉が出ないほど衝撃を受ける。
おばあちゃんは優しいし、そんな掟があったことなんて知らなかったのだ。
「“定期的な躾”をするかどうかは、その子どもの母親となる人が決めていたの。……お母さんがそれを望まなかったから、あみは躾を受けなかったのよ。」
「……う、うん。」
母の考え次第で、わたしはこの“躾”を受けていたと思うと、鳥肌が走るのを感じた。
「……でも、それももう終わりにしようと思うの。」
「………え?」
「最近思い始めたのよ。お母さんはこんな厳しい躾を受けたのに“不公平”だなって。」
「お、お母さん…?」
「そのビデオも見られたことでもう隠す必要もないし、あみもお仕置きを受けられる年齢だから、ちょうどいいのよね。」
…母が何を言っているのか、わたしには理解ができなかった。
……いや、というよりは、理解“したくなかった”のだ。
「じゃあ早速、この“お仕置き蔵”の2階へ行きましょうか。…お道具のお手入れは今もしてるから、すぐに使えるわよ。」
「い、いやっ!?……い゛っ!」
わたしは逃げ出そうとするが、母に耳を引っ張られ動けずにいた。
そして母は懐かしそうに“ビデオカメラ”を持つと、わたしの耳を引っ張りながら、階段の方へと歩いていく。
「今日から“毎日”躾直しをするから、覚悟しなさい。」
「いやぁぁぁっっ!!」
・
…その日以来、この蔵の中ではわたしの“泣き声”が連日響き渡ることになる。
そして今日もビデオカメラを構えた母の前で“
躾直し”が始まった。
……わたしは将来、自分が“母親”になっても絶対にこの躾はしないと、心に決めるのだった。
「完」
暇なわたしは家の敷地にある“蔵”でお道具あさりをし、暇つぶしをしていた。
本来は学校のプールとか、ラジオ体操等の行事があるのだろうが、どうやら今年その気配はない。
…宿題は“初日”で終わす派のわたしには、どうしてもできることが限られてしまう。
そんなことを考えながらあさっていると、1台のビデオカメラが顔を出した。
随分と古いカメラのようで、少しホコリも被っている。
一緒に充電用のアダプターもあり、蔵のコンセントへ挿し、しばらくすると電源が入った。
「お、なんだろ。…いっぱい録画した記録がある。」
そこには、“20年くらい前”の日付けで撮影されたビデオ映像が、おびただしいほどに残されている。
「とりあえず、適当に見てみようかな…。」
ピッ
《まったくこの子はっ!!》
「ちょっ!?」
興味本位で再生してみると、いきなり大音量で怒鳴り声が流れ、慌てて音量を下げた。
恐る恐る画面をよく見ると、そこには正座し、何やらお説教をされている女の子が映し出されている。
《るみえっ!お仕置きを始めるよっ!!》
《グスッ…、はい、お母さま。》
『るみえ?……ってことはまさか…。』
わたしの“母と同じ名前”の女の子は立ち上がり、服を脱ぎ始める。
よくみるとかなり幼いが、どこか“母”に面影のある顔立ちだった。
…ということは、この子は恐らく幼少期の母なのだろう。
なら、撮影しているのは“おばあちゃん”なのだろうか。
そんなことを考えているうちに母は服を脱ぎ終え、一矢纏わぬ姿で大切な部分を隠していた。
バヂンッ!
《い゛っ!》
《お仕置きの時は“気をつけの姿勢”って何度いったらわかるのっ!?》
《ご、ごめんなさいっ!!》
母の頰がいきなりぶたれ、とても痛々しい音が響き渡る。
そんな母は急いで気をつけの姿勢となり、ガクガクと怯えながらカメラの方を見つめた。
《反省が足りないみたいだし、今日はうんと厳しくしてあげるわ。》
《ひいっ!?は、反省してますっ!!》
《そうは見えないって言ってるのっ!…ほら、まずはお馬さんになんなさいっ!》
《うぅ…。》
《返事はっ!!》
《は、はいっ!?》
母はビクッと反応すると、その場で言われた通りの姿勢になる。
おばあちゃんはビデオカメラを持った手で、そんな母のお尻やおまた等“恥ずかしい部分”を映し出し、映像に残していった。
《じゃあ今日はうんと懲らしめるために、“折檻版”にしてあげようかね。》
《そ、そんなぁっ!?それだけは許してくださいっ!!》
「折檻版ってなんだろう…。」
そんなことを思っているとおばあちゃんはカメラを持って棚の方へ移動し、“黒い木箱”を取り出す。
箱を開けると、そこには数枚の紙が入っていた。
《ほら、この紙に書いてある罰をするからねっ!》
おばあちゃんが母に紙を見せつけると、その顔がサーッと青くなっていく様子が、カメラ越しでもわかった。
「ん?…この木箱なら、さっきあさってた中にあったかも。」
わたしはビデオの一時停止ボタンを押すと、テーブルの上に置いた。
そして、先ほどあさっていた戸棚へ移動すると、“ガサガサ”と木箱を求め手を突っ込む。
『…あった。』
随分と奥の方に、埃が被った木箱が押し込んであった。
「げほっげほ」
箱を上げると、一瞬中から白が溢れ出し、黄ばんだ紙が数枚現れる。
『何が書いてあるんだろ…。』
「……なっ!?」
おもむろにその内1番上にあった紙を“パサッ”と広げると、そこには目を疑う内容が書かれていた。
【東城家の掟】
当家の掟として、母が子へ“躾”を行う場合、子が犯した罪の度合いにより、以下五つの段階に応じた罰を与えること。
■お説教版
主に子が軽い“粗相”をした際に行う。
痛みを伴わない躾。
■お仕置き版
主に子が“粗相”をした際に行う。
軽い痛みを伴う躾。
■体罰版
主に子が重い“粗相”をした際に行う。
痛みや軽い辱めを伴う躾。
■折檻版
主に子が“罰行使へ反抗”した際に行う。
重い痛みや辱めを伴う躾。
■懲罰版
主にこれまでの躾では“不足”とされる場合にのみ行う。
怪我以下の痛みや重度の辱めを伴う躾。
※ただし、こちらは滅多なことで無い限り、行わないこと。
・罰の詳細はそれぞれ“別紙”を確認すること
・この段階の判断は、すべて“母に一任”すること
・上記とは別の“定期的な躾”については別紙を参照すること
以上
『なにこれ…。』
あまりの内容に、わたしは言葉を失った。
こんな掟があることなんて知らなかったし、母やおばあちゃんからも何も聞いていないから、あまり現実味がなかった。
でも母はこうしてビデオの中で、この紙に書いてある通りに罰が行われようとしている。
…そういえば、一体どんな罰を受けるんだろう。
わたしは他の紙も取り出し【折檻版】と書かれた紙を広げた。
……嘘でしょ。
【折檻版】
折檻版では、以下の罰を行うこと。
・頰への平手打ち十発(手心を加えることを禁ず)
・太ももへの平手打ち百発
・お尻への靴べら打ち百発
・四つん這い姿勢での反省(一時間)
・太ももへの靴べら打ち百発
・お尻への縄跳び打ち二百発
・おむつ替え姿勢での反省(三十分)
・ふくろはぎへの靴べら打ち百発
・太ももへの縄跳び打ち百発
・性器、お尻の穴への靴べら打ち(それぞれ百発)
・母へ土下座し、お仕置きのお礼
……まさしく“折檻”という名に相応しいほどの罰が、びっしりと詰め込まれていた。
「……お母さん、ほんとに今から“これ”全部されるの?」
わたしは青ざめながらビデオの再生ボタンを押すと、母の顔に画面が近づいていった。
《頰への平手打ち十発、始めるよ?》
《…は、はい、……お願い、します。》
バッヂィィンッ!!
《い゛いぃっ!?》
…先ほどの平手打ちとは比べ物にならないほど物凄い音が響き渡る。
ガクガクと震えながら姿勢を保つ母の頰には、古いビデオ画面からでもわかるほどに真っ赤な手形が浮かび上がっていた。
バッヂィィンッ!!バッヂィィンッ!!
ドサッ
《いっだぁぁいっ!?》
間髪入れずに、次は連続で左右の頰がぶたれる。
その衝撃から母は倒れてしまったようで、突然画面から消えてしまった。
《るみえっ!いい加減にしなっ!…姿勢が保てないんなら、“懲罰版”にしてあげてもいいんだからねっ!!》
《お、お母さまっ!!どうかっ!…どうか懲罰版だけは堪忍してくださいっ!?》
《……なら早く元の姿勢に戻りなっ!…次はないからねっ!!》
《は、はいぃっ!ありがとうございますぅっ!!》
その声と同時、ビデオ画面に母の姿が戻る。
その両側の頰はさらに痛々しく腫れ上がっており、わたしの心がサァーッと引いているのがわかった。
バッヂィィンッ!!
《んぎいぃっ!?》
少し崩れかけながらも、今度は姿勢を崩さなかった。
…歯を噛み締めながら必須に痛みを耐えているようだ。
震えながら睨みつけるようにビデオ画面を見つめるその目は、その先にいるわたしへ、“何か”を伝えているような予感がした。
・
……その後も厳しいお折檻は続き、今は“太ももへの縄跳び打ち”が行われてる所だった。
そんな母の下半身はお尻からふくろはぎまで余す所なく真っ赤に染め上げられており、特に多くぶたれた部分には青黒い痣が浮かんでいる。
…だが、その悲惨な状況でも折檻が終わる気配はなく、おばあちゃんの縄跳びが振り下ろされるたび、母の悲鳴が蔵中に響き渡っていた。
……そういえば、“ここ”はどこなのだろう。
蔵の中のようだが、わたしの知らない空間だった。
……もしかしたら、蔵の2階かもしれない。
今いる1階は入る許可が出ているが、母から「2階には行かないように」と言われ、“そこ”は未知の空間だった。
2階の様子が気になるが、何故かこのビデオに“魅かれて”しまっているため、わたしはここから動き出せないでいた。
・
《ひぐっ…お、おがあさま……おぜっがん、ありがどう、…ございまじだぁ……ぐすっ。》
ようやく長かった“地獄”のような時間を終え、母はおばあちゃんへ土下座をしている。
《まったく、これに懲りたら普段から気を引き締めて生活するんだよっ!》
《あ゛い…。》
…ピッ
と、ビデオはそこで終わり、画面が真っ暗となった。
『…っ!?』
その瞬間、画面に人影が映り込み、わたしは驚いて後ろを振り向く。
……そこには“母”が立っていた。
しかも、とても恐ろしい表情で、わたしを睨みつけている。
…普段の優しい母からは、想像もつかないような雰囲気を纏っていた。
「あみ…。……見たのね?」
「み、見たって何を?」
「とぼけたって無駄よ。…そのビデオの中身、見たんでしょう?」
母は確信したようにわたしへ問いかける。
そして、「はぁ…。」とため息をこぼした。
「あみ、そのビデオに映ったお母さんね、“何もしてない”のよ。」
「…えっ?」
「何も悪いことをしてないのに、こんなに厳しいお仕置きを毎日されてたの。」
「な、なんで?」
「それが、この家の掟だからよ。“定期的な躾”っていう名目のね。」
「……。」
わたしはあまりの事実に言葉が出ないほど衝撃を受ける。
おばあちゃんは優しいし、そんな掟があったことなんて知らなかったのだ。
「“定期的な躾”をするかどうかは、その子どもの母親となる人が決めていたの。……お母さんがそれを望まなかったから、あみは躾を受けなかったのよ。」
「……う、うん。」
母の考え次第で、わたしはこの“躾”を受けていたと思うと、鳥肌が走るのを感じた。
「……でも、それももう終わりにしようと思うの。」
「………え?」
「最近思い始めたのよ。お母さんはこんな厳しい躾を受けたのに“不公平”だなって。」
「お、お母さん…?」
「そのビデオも見られたことでもう隠す必要もないし、あみもお仕置きを受けられる年齢だから、ちょうどいいのよね。」
…母が何を言っているのか、わたしには理解ができなかった。
……いや、というよりは、理解“したくなかった”のだ。
「じゃあ早速、この“お仕置き蔵”の2階へ行きましょうか。…お道具のお手入れは今もしてるから、すぐに使えるわよ。」
「い、いやっ!?……い゛っ!」
わたしは逃げ出そうとするが、母に耳を引っ張られ動けずにいた。
そして母は懐かしそうに“ビデオカメラ”を持つと、わたしの耳を引っ張りながら、階段の方へと歩いていく。
「今日から“毎日”躾直しをするから、覚悟しなさい。」
「いやぁぁぁっっ!!」
・
…その日以来、この蔵の中ではわたしの“泣き声”が連日響き渡ることになる。
そして今日もビデオカメラを構えた母の前で“
躾直し”が始まった。
……わたしは将来、自分が“母親”になっても絶対にこの躾はしないと、心に決めるのだった。
「完」
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