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3.婚約者を知りたくて②
しおりを挟む「いつもつけているのか」
「あ、ネックレスのことですか? 特別な日に、いつもつけています」
特にアクア様と会う日や社交の場に出る時は、必ずつけている。
「そうか。では来月の舞踏会に合わせて今から新しいのを買いに行かないか?」
「えっ……どうしてですか?」
私はこのネックレスをとても気に入っている。
アクア様を近くに感じられて、来月の舞踏会にもつけていくつもりだった。
「黒は暗く不吉な色だろう。君にはもっと明るい色がいいとわかっているが……すまない。そのような色を選んでしまって」
「そんなことありません! 私はこれがいいです!」
ネックレスに触れ、絶対に外さないと意思表示する。
「気を遣わなくていい。わかっているのにそれを選んだ俺が悪い。本当は淡い色を選ぶつもりが、欲が出てしまった」
「欲、ですか……?」
「誰にも手出しされないよう、一目で俺の婚約者だとわかるように……それをつけてほしいと望んでしまった」
「……へ」
アクア様の表情や声音はいつもと変わらない。
そのため聞き間違いかと思ってしまった。
「君がそれをつけていると、俺に染まったように思えて気分が良い。だが、黒の暗さが君の明るさの邪魔をしているようで、罪悪感も抱いてしまう」
アクア様の言葉を理解するのに時間を要してしまい、すぐには返せなくなる。
「ここを出たら新しいのを買いに行こう」
「待っ……てください」
あまりにも情報量が多い中、やっとの思いで言葉を放った。
「あの、アクア様は私のことをそんなに……その、考えて……」
自惚れ発言をするのは恥ずかしく、言葉に詰まらせてしまう。
「確かにそうだな。気づけば君のことばかり考えてしまって、その度に君との約束が待ち遠しくなる」
そう言って微笑むアクア様にいつもなら胸が高鳴るはずなのに、衝撃のあまり頭が真っ白になり、それ以降の記憶がほとんど残っていない。
アクア様と別れてからも呆然としていて、お母様に何かが届いていると声をかけられた気がしたけれど、一人になりたくて部屋に直行した。
(私がブラックダイヤモンドのネックレスをつけているとアクア様は気分が良い……気づけば私のことを考えている……?)
夕食時も入浴時も、何度も何度もアクア様の言葉が脳内で繰り返される。
様子のおかしい私を見た両親や侍女に心配され、早めにベッドで横になったけれど、寝付けそうにない
じっと天井を見つめながら、もう一度アクア様との会話を思い出す。
そこでようやく今日の出来事が現実だと実感でき、勢いよく状態を起こした。
(いや、アクア様って私のことが好きなのでは……⁉︎)
自惚れてはいけないと考えないようにしていた答えにようやく辿り着く。
あの言葉の数々にあの表情……私もアクア様を好きだから、その気持ちがよくわかるのだ。
(い、いつから……⁉︎ アクア様はいつから私のことを……え⁉︎)
熱くなる頬に手を添える。
両想いだとわかり、嬉しさが込み上げてくる。
(けれど……)
私は人生最大のチャンスを逃してしまった気がする。
アクア様と進展したいと思っていたのに、あの時の状況を受け止めきれず、ろくな言葉を返していなかった。
「あああ、私のバカ……本当にバカだわ!」
もし私も同じ気持ちだと伝えていたら、何かが変わっていたかもしれない。
喜びと後悔に襲われ、その日の夜は全く眠れなかった。
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