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「…まだエウルは見つかってないのか!?」
ルナディオルド家の当主であるレード・ルナディオルド・レヴァニアは苛立ちを隠せず貧乏ゆすりをしていた。
「…あ、あの…!」
すると、エウルの侍女が飛んできた。
彼女もレードもあまりにも慌てていて、本来ならすべき作法を無視しても、レードは気にしなかった。
「どうした!?」
「…お嬢様の部屋にこんな物が…」
レードは奪い取るように紙を掴んだ。
『私を探さなくても大丈夫です。色んなところを旅してきます。 エウル』
「これって…」
レードは今にも炎が噴き出そうだった。
「あの!!!!!!じゃじゃ馬娘があああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
「へくち。」
「…風邪か…?」
「い、いや…??」
エウルはくしゃみをして、鼻を抑えた。
「???誰か私を…噂してる…?」
「それでくしゃみなんて出ねえだろ…」
今、二人は隣町を目指している。
「……エウル。魔導って何が使えるんだ…?」
「えっとね。魔法でできる事なら全部できるよ。だけど、大きい魔導であればあるほど時間はめちゃくちゃかかる。」
「ふーん。」
エレストはそもそも魔法でできることを知らない。
まず魔力がどれくらいあるのかが知らないからだ。
恐らくゼロでは無いと思うだけで、実際は分からない。
「…あ、あそこにウルフいるじゃん。」
「ああ。何もするなよ。」
「えー!?」
「的あてじゃねえんだから、無駄な事はするもんじゃない。」
「…はぁい。」
「貴族の面子ってのは無いのか…」
「無い。」
「清々しいな…」
恐らくルナディオルド家にはバレてる気がするので、早く隣町に行きたい。
「あ。…やっとあった…」
「本当ね!自分の足で違う場所に行ったのは初めて!足が痛い!死ぬほど痛いわ!」
「………そうか…」
エレストも隣町まで行ったことがないので、疲れていた。
「本当にお金の心配は要らないのか?」
「ええ。ちゃんと知ってるわ。」
「…知ってる?出来るじゃなくて…?」
「貴族と平民じゃ、払い方が違うの知ってるでしょ!家族に止められて、実際にできなかったのよ!悪い!?」
「エウルも苦労してるんだな…」
それでも知らないよりは安心だ。
「いらっしゃいませー」
取り敢えず、エウルは銀行に行きお金引き出した。
大分怪しかったが、無事にエレストが言った金額分引き出した。
「足りるの?」
「当たり前だ。あと、持ち過ぎると盗まれるかもしれないだろ?」
「…確かに!」
流石の貴族でもそこは分かるらしい。
引き出した金額は約三日分。
これでも多く見積もってその金額分引き出したので、ちゃんと三日過ごせたら、あとは安心だ。
「…でも、盗まれてもお金には困らないわよ?」
「盗まれたお金が盗賊の手に渡ってみろ。そのお金で装備とか買われて他の人が襲われるぞー。…ま、銀行に引き出しまくってたら、どこから引き出してるかエウルの家族にバレるから盗まれないことに越したことはない。」
「なるほど…!」
すると、老人がこちらに話しかけてきた。
「…見ない顔じゃのぉ…」
「旅人です!」
嬉しそうにエウルはそう語る。
「そうかそうか。ホッホッホ。」
二人は楽しそうに会話している。
(今のエウルを見てると…平民の常識さえあれば、平民って思われるだろうが…肝心の平民の常識が皆無だからなぁ…)
そんな事を考えていると、突如警鐘が鳴った。
「…ひゃぁ…!?」
「警鐘だよ。慣れろ。……盗賊か…?それとも……」
「魔物が来た!!!!思ったよりも数は多い!ゴブリンもいるぞ…!!」
「まじか…!?」
ゴブリンは一番倒すのが楽で一番倒すのが難しいと言われている。
一体だけじゃ、村自慢の大男一人でも簡単に殺せるが、大軍が来ると王族の兵隊ぐらいじゃないとちゃんと討伐できない。
理由は簡単だ。
学習する知性があり、そして我慢する理性は無い。
人に近く、しかし人に遠い存在故に人間では理解できない。
どうやら、何かの魔物とゴブリンが結託して襲撃しようとしているのだろう。
「行くぞ。エウル。」
「わ、分かった!」
「俺らはあんまり魔物を倒せない。弱いからな。」
「うん!だから、やる事は牽制…よね!」
「ああ。…さて、上手くいくか…俺達がしくじると、当分は野宿だと思うことだな。」
「それは嫌!!」
ウルフもいれば、モフモフしてる魔物もいる。
後ろにゴブリンの姿も見える。
「…」
エレストは左手に紋章を宿す。
今まで動かなかった腕が、雷の手によって義手が動いた。
本来は魔導具が要るが、今のエレストは雷が自分の腕となっている。
丁度雷の腕が隠れている。
せめて鍛冶屋が作れる義手だけでもと作ってくれていたのだろう。
そうでなければここまでサイズが合うことは無い。
(…あのおっちゃんもお人好しって事だな。)
「小さい魔導で良い。細かく細かく敵を倒すぞ。」
「分かったわ!」
村人が避難するまでの間に時間を稼げば良い。
「もし、村人が怪我をせずに避難できたら、もしかしたらタダで宿を貸してくれるかもしれないな!」
「あら、いいわねー」
二人は少しずつモンスターを倒していった。
(…一応、俺達以外にも戦ってるやつはいる。)
地方の警備団のようだ。
紋章を持っている人はいない。
大型の魔物が来なければなんとかなるはずなので、取り敢えず今のやるべき事をやらなければならない。
「…エレスト、このままいけば誰も怪我をせずに済みそうね。」
「ああ。それがいいんだけど…!!『雷撃』…!」
ウルフを雷で撃ち殺す。
「問題は、あのゴブリンだ。」
「あの一匹しかいないおかしなゴブリン?」
「ああ。」
普通のゴブリンは群れる。
なぜなら一匹じゃ弱いからだ。
じゃあ、何故一匹しかいないのか。
「もしかしたら、あいつ紋章持ちかもしれないぞ?」
「えー!?」
左腕があれば、人じゃなくても紋章を持つことができる。
ゴブリンなら、紋章を持っていてもおかしくはない。
「攻撃が来るぞ!!」
炎の矢が放たれる。
「『火の紋章』か!?」
「分からないよ!!それより上位かもしれないし!」
「分かる前に殺すしかないか!!エウル!魔道で援護をしてくれ!」
「分かった!」
エレストはゴブリン目がけて走った。
「最大効率でやってあげるわ…!」
エウルの左手の『回路の紋章』が光る。
さらに杖がそれに合わせて光始めた。
エレストの前に、モフケモが飛んでくる。
「邪魔だ!!」
飛び蹴りをくらわし吹き飛ばした。
さらに火の玉が飛んでくる。
「あちっ!?この野郎…!」
エレストは必死に避けながらゴブリンに近付いていった。
「発動するわよ!赤の厄災から逃れよ。『魔導・水壁』!」
ゴブリンの周りに水の壁が現れた。
火を出しても、すぐに消えてしまう。
「…これで、死にやがれ!!!」
エレストは水の壁を突き抜け、ゴブリンの頭を突き刺した。
「まだ死なねえか!なら…」
ゴブリンの口に手を突っ込んだ。
「『雷撃』…!!!」
雷は首を穿った。
ゴブリンは倒れ、水の壁も消えた。
「…結局、ただの討伐になっちまった…」
「良いじゃない。…アレを放っておいたら、半分位は木の家。…燃やされてしまう。」
「…そうだな。」
少年はゴブリンの耳を切り落とした。
「…うげっ…」
「討伐した証だよ。知ってるだろ?ゴブリンから出る素材なんて無いんだよ。」
「…確かに…そうだけど…キモいじゃん!」
「…そうか…他のモンスターはあるっぽいから、俺はそれを回収しに行く。」
周りを見渡してもモンスターの気配は無い。
恐らく、全て終わったのだろう。
「…よし、これを売れば一日くらいは生きていけるだろ。」
「そうなのね。じゃあ、街に戻りましょう。怪我人がいなければいいけどね。」
二人は街に戻っていった。
ルナディオルド家の当主であるレード・ルナディオルド・レヴァニアは苛立ちを隠せず貧乏ゆすりをしていた。
「…あ、あの…!」
すると、エウルの侍女が飛んできた。
彼女もレードもあまりにも慌てていて、本来ならすべき作法を無視しても、レードは気にしなかった。
「どうした!?」
「…お嬢様の部屋にこんな物が…」
レードは奪い取るように紙を掴んだ。
『私を探さなくても大丈夫です。色んなところを旅してきます。 エウル』
「これって…」
レードは今にも炎が噴き出そうだった。
「あの!!!!!!じゃじゃ馬娘があああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
「へくち。」
「…風邪か…?」
「い、いや…??」
エウルはくしゃみをして、鼻を抑えた。
「???誰か私を…噂してる…?」
「それでくしゃみなんて出ねえだろ…」
今、二人は隣町を目指している。
「……エウル。魔導って何が使えるんだ…?」
「えっとね。魔法でできる事なら全部できるよ。だけど、大きい魔導であればあるほど時間はめちゃくちゃかかる。」
「ふーん。」
エレストはそもそも魔法でできることを知らない。
まず魔力がどれくらいあるのかが知らないからだ。
恐らくゼロでは無いと思うだけで、実際は分からない。
「…あ、あそこにウルフいるじゃん。」
「ああ。何もするなよ。」
「えー!?」
「的あてじゃねえんだから、無駄な事はするもんじゃない。」
「…はぁい。」
「貴族の面子ってのは無いのか…」
「無い。」
「清々しいな…」
恐らくルナディオルド家にはバレてる気がするので、早く隣町に行きたい。
「あ。…やっとあった…」
「本当ね!自分の足で違う場所に行ったのは初めて!足が痛い!死ぬほど痛いわ!」
「………そうか…」
エレストも隣町まで行ったことがないので、疲れていた。
「本当にお金の心配は要らないのか?」
「ええ。ちゃんと知ってるわ。」
「…知ってる?出来るじゃなくて…?」
「貴族と平民じゃ、払い方が違うの知ってるでしょ!家族に止められて、実際にできなかったのよ!悪い!?」
「エウルも苦労してるんだな…」
それでも知らないよりは安心だ。
「いらっしゃいませー」
取り敢えず、エウルは銀行に行きお金引き出した。
大分怪しかったが、無事にエレストが言った金額分引き出した。
「足りるの?」
「当たり前だ。あと、持ち過ぎると盗まれるかもしれないだろ?」
「…確かに!」
流石の貴族でもそこは分かるらしい。
引き出した金額は約三日分。
これでも多く見積もってその金額分引き出したので、ちゃんと三日過ごせたら、あとは安心だ。
「…でも、盗まれてもお金には困らないわよ?」
「盗まれたお金が盗賊の手に渡ってみろ。そのお金で装備とか買われて他の人が襲われるぞー。…ま、銀行に引き出しまくってたら、どこから引き出してるかエウルの家族にバレるから盗まれないことに越したことはない。」
「なるほど…!」
すると、老人がこちらに話しかけてきた。
「…見ない顔じゃのぉ…」
「旅人です!」
嬉しそうにエウルはそう語る。
「そうかそうか。ホッホッホ。」
二人は楽しそうに会話している。
(今のエウルを見てると…平民の常識さえあれば、平民って思われるだろうが…肝心の平民の常識が皆無だからなぁ…)
そんな事を考えていると、突如警鐘が鳴った。
「…ひゃぁ…!?」
「警鐘だよ。慣れろ。……盗賊か…?それとも……」
「魔物が来た!!!!思ったよりも数は多い!ゴブリンもいるぞ…!!」
「まじか…!?」
ゴブリンは一番倒すのが楽で一番倒すのが難しいと言われている。
一体だけじゃ、村自慢の大男一人でも簡単に殺せるが、大軍が来ると王族の兵隊ぐらいじゃないとちゃんと討伐できない。
理由は簡単だ。
学習する知性があり、そして我慢する理性は無い。
人に近く、しかし人に遠い存在故に人間では理解できない。
どうやら、何かの魔物とゴブリンが結託して襲撃しようとしているのだろう。
「行くぞ。エウル。」
「わ、分かった!」
「俺らはあんまり魔物を倒せない。弱いからな。」
「うん!だから、やる事は牽制…よね!」
「ああ。…さて、上手くいくか…俺達がしくじると、当分は野宿だと思うことだな。」
「それは嫌!!」
ウルフもいれば、モフモフしてる魔物もいる。
後ろにゴブリンの姿も見える。
「…」
エレストは左手に紋章を宿す。
今まで動かなかった腕が、雷の手によって義手が動いた。
本来は魔導具が要るが、今のエレストは雷が自分の腕となっている。
丁度雷の腕が隠れている。
せめて鍛冶屋が作れる義手だけでもと作ってくれていたのだろう。
そうでなければここまでサイズが合うことは無い。
(…あのおっちゃんもお人好しって事だな。)
「小さい魔導で良い。細かく細かく敵を倒すぞ。」
「分かったわ!」
村人が避難するまでの間に時間を稼げば良い。
「もし、村人が怪我をせずに避難できたら、もしかしたらタダで宿を貸してくれるかもしれないな!」
「あら、いいわねー」
二人は少しずつモンスターを倒していった。
(…一応、俺達以外にも戦ってるやつはいる。)
地方の警備団のようだ。
紋章を持っている人はいない。
大型の魔物が来なければなんとかなるはずなので、取り敢えず今のやるべき事をやらなければならない。
「…エレスト、このままいけば誰も怪我をせずに済みそうね。」
「ああ。それがいいんだけど…!!『雷撃』…!」
ウルフを雷で撃ち殺す。
「問題は、あのゴブリンだ。」
「あの一匹しかいないおかしなゴブリン?」
「ああ。」
普通のゴブリンは群れる。
なぜなら一匹じゃ弱いからだ。
じゃあ、何故一匹しかいないのか。
「もしかしたら、あいつ紋章持ちかもしれないぞ?」
「えー!?」
左腕があれば、人じゃなくても紋章を持つことができる。
ゴブリンなら、紋章を持っていてもおかしくはない。
「攻撃が来るぞ!!」
炎の矢が放たれる。
「『火の紋章』か!?」
「分からないよ!!それより上位かもしれないし!」
「分かる前に殺すしかないか!!エウル!魔道で援護をしてくれ!」
「分かった!」
エレストはゴブリン目がけて走った。
「最大効率でやってあげるわ…!」
エウルの左手の『回路の紋章』が光る。
さらに杖がそれに合わせて光始めた。
エレストの前に、モフケモが飛んでくる。
「邪魔だ!!」
飛び蹴りをくらわし吹き飛ばした。
さらに火の玉が飛んでくる。
「あちっ!?この野郎…!」
エレストは必死に避けながらゴブリンに近付いていった。
「発動するわよ!赤の厄災から逃れよ。『魔導・水壁』!」
ゴブリンの周りに水の壁が現れた。
火を出しても、すぐに消えてしまう。
「…これで、死にやがれ!!!」
エレストは水の壁を突き抜け、ゴブリンの頭を突き刺した。
「まだ死なねえか!なら…」
ゴブリンの口に手を突っ込んだ。
「『雷撃』…!!!」
雷は首を穿った。
ゴブリンは倒れ、水の壁も消えた。
「…結局、ただの討伐になっちまった…」
「良いじゃない。…アレを放っておいたら、半分位は木の家。…燃やされてしまう。」
「…そうだな。」
少年はゴブリンの耳を切り落とした。
「…うげっ…」
「討伐した証だよ。知ってるだろ?ゴブリンから出る素材なんて無いんだよ。」
「…確かに…そうだけど…キモいじゃん!」
「…そうか…他のモンスターはあるっぽいから、俺はそれを回収しに行く。」
周りを見渡してもモンスターの気配は無い。
恐らく、全て終わったのだろう。
「…よし、これを売れば一日くらいは生きていけるだろ。」
「そうなのね。じゃあ、街に戻りましょう。怪我人がいなければいいけどね。」
二人は街に戻っていった。
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