雷撃の紋章

ユア教 教祖ユア

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5章 魔法国の始まり

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「おはよう。」

「…うん。」

「…………」

トーラスはまだ眠っている。

服を着替え、椅子の上で器用に寝ているのだ。

「おい、トーラス。」

「ああ、起きてるよ。」

「これ寝てるのか寝てないのか分からないな。」

「脊髄反射で会話してるんじゃないのかしら。」

「せきず…え?いや、無理だろ。」

エレストは呆れながらトーラスを叩く。

「くべしっ…!」

「起きろー」

三人は宿屋を出る。

「さて、ここから普通に歩いて行ったら、月の魔女のいる場所に辿り着くはずだ。」

「登山だけど、頑張りましょ!嫌だけど…」

エレスト達は山に向かっていった。

「…やれやれ。」

村を出ると、至る場所に魔物がいた。

「昨日の残りカスみてえに居るぜ。」

「…元々山に居る奴らの筈だが…あいつらは戻らないのか?」

「さあな。」

三人は魔物を軽く倒しながら進んだ。

「トーラスは魔力とかは気にしなくていいのか?」

「勿論、気にしてるよ。使い過ぎたら魔力枯渇症が起きるからな。」

「…それでエルフが全滅できる程のものだからね。…マオを死んでなければいいけど。死んでないと思うけど。」

「魔力を吸い取る魔法って、魔法が一番効率が悪くて、その次に魔導、一番良いのが呪術…だっけか?」

「おお…正解だ、エレスト。魔法を使えないお前がそれを知ってるのは意外だな。」

「…まあな。俺もこういうのは知らない側だし。変なところで身に着けた変な知識さ。」

魔力枯渇症とは、不快感で終わる時もあれば、吐き気を催す時もあり、最悪死ぬ時もある。

魔力消費の激しい魔法を発動した時だけで無く、人に大量に魔力を譲渡した場合の時も起こる。

なので、魔力を奪い取る行為、過剰に譲渡する行動は場所によって禁止されている。

あまり魔力を人に受け渡すことはあまり無いので、それによって魔力枯渇症が起こることは滅多にない。

「傾斜が…」

体力の無いエウルは既に息切れを起こしている。

しかし、まだ山の半分も進んでいない。

「確かに大変だな、この山。」

「俺も体力無いからな…俺も疲れたぜ…」

トーラスも汗を拭いながら息を吐く。

「こんな所で、魔女はなんで…」

トーラスの言葉でエウルは純粋に疑問が湧いた。

「あ、確かに。今思ったけど本当に何で?」

「知らん。」

「トーラスに聞いてないわよ。」

「はーい、喧嘩しなーい。」

エレストが呆れながら二人に言う。

「進むぞ。休憩は十分終わったろ。」

「仕方ねえな。」

「進まないと、一生着かないものね…」

再び登山を再開した。

「魔物が居ない…ここまで居ないと不自然ね。」

「分かってねえのか?エウル。気配はするぜ。」

「え!?」

「俺はずっと気配探知ディテクションの魔法を使ってる。」

「そうだったのか!?」

魔法を使っていたような姿は無かったので、エレストは驚いた。

「ああ。まあ、魔力消費は激しくない。慣れたしな。」

トーラスの持っている本を見ると、確かに魔法陣が薄っすらと光っている。

どうやら本を媒体として発動している為、トーラス本人から魔法を使ったような痕跡が見れなかったという訳だ。

「その本、魔法具か何かか?」

「あ?あー…これはただの本だよ。仕込んではいるが。」

「…変わった本ねぇ。」

「それは確かにそうだな。『トーラス』という存在は一番偽物の俺の中で、一番本物の俺に近い。」

「…なぞなぞみたいな話ね?」

「色んな身分を持ってる人間にしか分からない感覚かもな。」

そんな話をしていると、そろそろ頂上にやってきた。

「…あら?」

畑が見える。

「…家だ。」

「…こんなところに…」

「……獣の気配は無い。…月の魔女か。魔女と呼ばれるだけはあるぜ。莫大な魔力は探知できる。」

するとドアが開いた。

「どちら様ですか…?あ…お客様ですか?」

思った以上に小さい女の子がいた。

「トーラス、人ってあと何人部屋に…」

「この子以外いねえよ。」

「…じゃあ、この子が…月の魔女?」

「そんな、子供扱いしながら見るの、やめていただけます?」

月の魔女は顔をムッとした。

「ムー…じゃなくて、あの…何の御用ですか?」

どう説明をするのか三人は話し合う事を忘れてたことを思い出した。

「…あ。」

「月の魔女っていう奴が、魔物を使って村を襲ってるって聞いて来た。」

容赦なく、かみ砕いて言わないまま、トーラスはドストレートに言った。

「トーラスてめえ!」

「この馬鹿者!」

二人でトーラスの頭を叩きつける。

「いってえ!!!!」

「…良いのですよ。実際…私によって魔物たちが村を襲っているのは事実ですから。」

「結局これが事実じゃねえか。」

「あのなあ…」

「皆さんも、お帰りになられた方がいいと思いますよ。夜になれば、私は私でなくなります。そうなれば、貴方達を傷付けてしまう。」

「ご忠告身に染みるぜ。」

空はもう直ぐで太陽が堕ちる。

(今のところ、雷撃の紋章から何も感じねえな。)

「それとも、私を殺す気ですか?…いや、それも良いかもしれませんね。」

「面倒くせえ性格してるな。」

「ガーン!酷い!」

月の魔女は分かりやすく落ち込んでいる。

「トーラスがいつもより悪口が止まらない…」

「殺すつもりはねえよ?一応聞くが、そうだよな、エレスト。」

「ああ。」

「…そうなのですね…では、何しに来たんですか?」

「…」

「え、ホントに何しに来たんですか?」

「私達って何しに来たっけ?」

「さあ?」

「実は結構おバカさんたちだったりします?」

「うるせえ、月の魔女。」

「反論できてないじゃないですか!あとアイシェです!」

月の魔女と呼ばれる少女、アイシェは再び顔が膨らんだ。

(コロコロ表情が変わる子だな…)

と、エレストは思っているが、勿論そう思っているのはエレストだけではない。

「アイシェ、『私によって魔物たちが村を襲っている』って言ってたけど、どういう事なんだ?…俺たちは昨日見た時、獣の咆哮しか聞こえなかったが…」

「…それが私です。」

「…え!?」

「私は…知らぬ間に獣と化し、私の意志と関係ないまま、魔物が村を襲っています。私はその時の記憶を殆ど覚えておりませんが…なんとなく、私のせいであることは分かります。」

「…ふーん。」

徐々に太陽が堕ちてきている。

太陽が徐々に大地に隠れようとした時、アイシェは大声で叫ぶ。

「皆さん、お下がりください!!!!ああ、ダメ…また止められない…!!」

「おい、アイシェ!?」

「いや…!!!!」

太陽が隠れ、宵が空を覆う。

その瞬間から左が突如強く光り出す。

「急に俺の紋章と反応しやがった…!さっきまで紋章がある事すら気付かなかったのに!」

「逃げてぇ!!!!」

アイシェの身体が光に包まれる。

すると、狼の姿に変わった。

二足歩行で、人間よりもはるかに大きい姿だ。

「思ったよりもでかいな!?カルシウムがこっちに吸い取られてるんじゃねえか!?」

「どうするの、エレスト!」

狼は雄たけびをあげる。

「あー!!!!うっせえ!!!」

「アイシェの姿を見て分かった!暴走してるだけだ!」

エレストは雷撃の紋章を光らせる。

狼は腕を大きく振り上げエレストのいる場所を叩きつける。

「ちょっと痛いぞ!『雷撃』!」

エレストはその攻撃を避けて、狼の肩に飛び移る。

そのままエレストは雷撃を放つ。

狼は苦しそうな声を吠え、倒れる。

「あ、人の姿に戻った。」

「やっぱり、神の紋章って神の紋章を止めれるんだな。」

「そういえば、雷撃の神は月の紋章に対する評価は。」

「うーん…『あんま好きじゃない』って感じ。」

「なんだそのどっちつかずみたいなのは。」

「まあ、この子は眠ってるし…行くか。」

「え、どこに?」

「村に。」

エレストはトーラスとエウルを突如担ぐ。

「うおっ!?」

「え!?」

「魔物を倒しに行くぞ。この山から魔物は逃げてる。」

「ここ山頂だぞ!?馬鹿か!?」

「舌嚙むなよ!『雷撃・閃光』ー!」

村には二回目の雄たけびが聞こえたとか聞こえていないとか。
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