雷撃の紋章

ユア教 教祖ユア

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6章 神に愛された子

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「ここは中級魔物が多いな。」

「そうですね。魔法国自体、初級魔物の方が数が少ない大陸ですし。村も僅かに初級魔物が多い場所を選んであるので…」

「君の紋章ってどんな感じに使うんだ?」

彼女は少しだけ考え込む。

「……そうですね、説明が苦手なんですけど…血でまあ色々と造形するんです。見てもらった方が早いですね。」

彼女は一体の魔物を指さした。

「あれを紋章を使って倒しますね。」

弓を構える。

左手の紋章が光ると、血で出来た矢が生成された。

「神の紋章の使い手が選ばれてから一か月も経っていないと言いましたけど、とはいえ私も一か月どころか一週間も経っていないので、私もまだ完全に使いこなしていないんですよね。」

矢を放ち、魔物の脳天に突き刺した。

「まあ、こんな感じに血を色々作り変えれます。」

「まんま吸血鬼じゃ…?」

「確かに…あまりにも使い過ぎると、貧血っぽくなりますし、そうかもしれませんが、吸血鬼と違うのは血を吸わなくていいって言うだけですね。」

「それは結構強いんじゃ…?」

吸血鬼の特性の良い所取りではないだろうか。

「液体から固形に性質が変わるって、不思議ですよね…」

「そこなの…?」

吸血鬼と戦ったことのない、人から見れば、これがどれだけ脅威的なのかはりかいしづらいのかもしれない。

(…『あの子は自分を神に愛されている者』って言ってたよな…それが思い込みじゃなくて、本当にそうだとしたら、紋章も強いものになったりするのか?…そうだったら、神の紋章位貰えそうだけど…いや、愛されている=選ばれたという事じゃないって言ってたし、違うのか…?)

彼女は自分の情報を開示する気が無い。

エレストが気になったところで、答えが分かることは無いだろう。

それに、それが分かるような村はもう無い。

「…過去の私と比べたら、紋章を使えるようにもなりましたし、随分強くなりました。以前は初級魔物の集団に殺されかけましたし。」

「今なら、中級魔物数体いても何とかなりそうだな。」

「…そうですね。そうだと思います。」

少し歩くと、彼女が表情を変えた。

「…近くにいる…」

「本当か!?」

「…勿論。」

四人に緊張が走る。

「いち早く殺してやる。」

そういって、飛び出していった。

「え、嘘だろ!?」

「エレストよりかは遅いけど…高速で…」

「追いかけるぞ!下手したら見失う!」

「ああ!」











親友は神の紋章である『氷結の紋章』を得ていた。

リーレンは気にも留めてないだろうが、私はまずいと感じた。

私の『神に愛されている者』という肩書が本当に肩書としか機能しないのではと思った。

親友はそんなことも何も考えず、村に自分が神の紋章であるであることを言いふらした。

その日から、私は『偽物』であると罵られることになる。

(…少し嫌悪的な目で見られるようになるだけだと思ったが、まさかここまで村八分レベルに罵倒以外の会話を受け付けてくれないとは…)

ロディ的には神に愛されている者ではないのなら、本当にそれで良かった。

村から出れるという事だから。

神に愛されている者なら、出たら村が滅びるとされている。

神に愛されている者は村に大きくかかっている誓約魔法呪いで村を出れないのだ。

魔物を殺しきれなかったあの日について思うことがあった。

ロディは村から少し離れた場所についた。

誓約魔法の範囲は昔から変わっていないが、今の村の形は変わっている。

つまり、人はいないが、誓約に違反されないということだ。

今からやることは勿論…自殺である。

これで死ねたら御の字。

死ねなかったら、検証が必要だ。

結果…全く死ねなかった。

首吊りだの、刺殺だの、魔物に殺されるだの…色々な方法を試してみた。

そうしたら、丈夫な筈のロープが切れる、魔物に襲われそれどころじゃなくなる、普通起こりえない魔物の同士討ち…というふうに偶然では片づけられない。

一番多かったのはリーレンの邪魔である。

「自殺の試行回数…13回。流石にそろそろ死んでもおかしくない。それで死ねないってことは…私が本当に神に愛されている者って事でいいのかな。試行回数増やしたいけど、流石にそれじゃあ他にしたいことが出来ないし。」

それにしても、死ねない体質になったのは自殺志願者にとっては最高の呪いだろう。

皮肉過ぎる。

「要は、神に愛されているからといって、神の紋章に選ばれるわけじゃないし、その逆も言えるって事ね…」

ロディは深くため息を吐いた。

自分が本物であることを村の人々に証明するべきか?

必要か?

「…いや、自分が本物であるという証拠は死ねないだけじゃ少なすぎる。調べるか…」

村には資料は多少ある。

それを今の自分に見させてくれるかどうかという問題がある。

「あ、リーレンいるじゃん。」

別に親友が悪い訳ではないが、こうなった原因なので、彼女の肩書を使わせてもらおう。

こうなった後も、リーレンは自分のせいである自覚が無いのか、ロディに平気で話しかけてくる。

この村が、自分にとって、最悪に生きにくい場所になってしまった以上、使えるものは使わなければ、ロディと言う存在が壊れる。

「良いよ!一緒に行こ!」

(チョロい…)

親友と言ってもリーレンが親友って呼ぶから親友と言うだけだ。

それ以外は特に考えたことは無い。

資料は、嫌な目で見られたこと以外は見ることが無事に許可された。

やはり、見た目上の本物は便利だ。

「…何で見たいと思ったの?やっぱり、自分のことを知るため?」

今となっては、話しかけられるのが非常に鬱陶しい。

「ある程度の情報は必要だからね。」

どうやら、今回のことは前例がないらしい。

そもそも、神に愛されている者の定義が割とあやふやだ。

しかし、後天的に出来ることが増えるらしい。

直ぐにではなく、神が必要になったと感じた時だけらしい。

(私が欲しい時は今なんですけど。そして、死ねない能力は死ぬほど要らないんですけど。)

心の中で愚痴を言いながら、本を捲る。

でも、神に愛されている者が神の紋章を手にすることが出来た件は一応前例がある。

それは『魂の紋章』。

この世界で、今のところ使えるものはいないとされている。

しかし、前例があるとはいえ、一つだけだ。

ほぼ、神に愛されているからといって、神の紋章をくれる訳では無いと言い切っていい。

この村は、一朝一夕でできたものじゃない。

魔法国という名前が付く前から、つまり、数百年も前から存在している。

それで前例が一つだけなら、本当に関係ないのだろう。

(じゃあ…神に愛されている者って…一体何?)

今わかることは、『神に愛されし者』であって、神の紋章を使える訳では無い、その逆も然りであって、そんなことを分からない、理解しようともしない者共が村民であるということだ。

(ようは、私を罵倒している奴らは馬鹿ってことか。馬鹿に説明なんてしても意味ないよなあ。)

ふと、ロディは思った。

この村を、最初から存在しなかったかのように、抹消すればいいんじゃないか…と。

(面倒だ。…抹消すれば、村から出れるし、神を殺しにも行ける。)

神は村にはいない。

これだけは確かだ。

じゃあ、村を出て神を殺す。

そして…死んでやるのだ。

(と、危険思想がてら思ってみたはいいが…流石に親友を殺すのも、家族殺すのもなあ…出来る出来ないの問題じゃなくて、倫理観の問題なんだよね。一番の問題は結局倫理観無視しても殺せるのかっていう話だけど。)

ロディは溜息を吐いた。

悲劇の終わりまで、あと3週間。








「なんで、私の居場所が分かるの?私をそんなに殺したいの?」

リーレンは言った。

居場所が分かるのはロディが神に愛されている者だから、という理由でしかない。

神はロディに神の紋章の使い手を殺させようとしている。

「お前を殺さないと、終わらないからね。」

「…私は死にたくないし、貴方を殺したくはないよ…」

ロディは高らかに、嘲笑った。

「村人殺しておいて、どの面下げて言ってんだよ。」

そうだ。

奴は、ロディの考えを白紙にしただ。
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