雷撃の紋章

ユア教 教祖ユア

文字の大きさ
38 / 79
6章 神に愛された子

38

しおりを挟む
決戦場の場所に一番近い村に辿り着いた。

「あゝ!足が痛いわ!」

「うるさいな、エウル。これだから…」

「はいはい、宿屋に行くぞー」

四人は宿屋に向かった。

部屋は二人で分かれ、泊まることにした。

「流石に今日は疲れたな…」

「ああ、敵と戦う事を極力避けたとはいえ、この一日で、5回は中級魔物と会敵したからな。」

すると、トーラスが急に声を荒げた。

「うわっ!気持ち悪い!」

「どうした?」

「『精神感応テレパシー』だよ、魔法に慣れてる俺からしたら、魔導って気持ち悪いんだ。」

「魔導…ってエウルだな。」

「ああ、『またどっか行ったわああ』ってさ。」

「真似するなら、もうちょっとマシな真似をしろよ…」

二人は立ち上がった。












あれから更に一週間ほど経った。

ロディは体調を崩すようになった。

よく吐くようになったのだ。

(やっぱり、この村の全員を抹殺すべきか…?)

親友のリーレンはロディが偽物と呼ばれ、自分が本物と呼ばれていることの異常さに流石に気付いていた。

「うーん?私が神の紋章を持っているからってだけで、神に愛されている者っていわれてるけど、ロディが最初に神に愛されている者って言われたんだったらロディの方が本物じゃないの?」

と、言われた。

まあ、そういう反応が割と普通だと思うが、何故、自分はよく敵にされるのだろう。

(最初から、嫌われてる説はある…)

「でも、私はロディが本物の神に愛されている者だと思うよ!皆が私のことを本物だって言っても!」

「うん、ありがと。」

(私が本物である証明をしてくれるわけじゃないのね。所詮、神に愛されている者としての甘い汁を啜りたくて、私を本物にするメリットがさほどないんだろうさ。)

そんな言葉を言っても、特に何か行動で示してくれるわけでもなく、要は口だけ。

心のどこかで、自分のことを偽物だと思っているに違いない。と、ロディは思った。

(やっぱり、こんな何も考えていない知性の無いゴミ共なんて、この世界から消した方が世の為では…?)

ここ最近、村の皆殺しをすることについてしか考えていない。

もう自分の精神はおかしくなってしまったのだろうか。

(いや、そう疑問が出てくるまでは私は普通なんだ。まだ…やれる。我慢できる。そして…まだ私は皆殺し出来るほど、強くない…)

ロディは初めて、神に祈った。

「私の神よ…私の信じる神よ…私を愛する神よ…私に…神と言う概念を都合良く考えている無能共を…ぶっ殺すための力を…早く私に寄越せ…」

ロディは笑った。

「馬鹿馬鹿しいな。神なんて、私なんかを助けてくれるわけが無いのに。というか、要らないし。」

そう呟きながら、ロディは村のはずれで背を木に預けた。

その時に、リーレンに聞かれていたことに気付かなかった。

あれから、数日が経ち、リーレンがしきりに遊びに誘ってきた。

「ねえ、ねえ!私ね、ロディを見て思ったんだけど、私も自分の紋章について考えてみようと思ったの!」

「ふーん、そう。」

(なんで、私がリーレンのままごとに付き合ってやらないといけないんだ…)

「でね?見て!!」

すると、炎の形のような氷が生まれた。

「綺麗でしょ?」

(ただの彫刻…じゃない。炎の様にちゃんと動いてる。)

ロディ程の素人でも分かった。

神の紋章をすでに制御できていると。

「綺麗だね。」

(ここまでくると、私に対する嫌味だな。そんなに私が偽物であると、皆に言いふらしたいのか?)

自分が何をしたというのだろう。

勝手に神に愛されて、そのせいで外に出れないのに。

偽物だと罵倒されてるのに、実際は本物だからここを抜け出せない。

なのに、村を皆殺しにするほどの力はない。

ロディは許せなかった。

何もかも。

死ぬにしても、すべて殺してからでないと気が済まない。

「あ、良い事思いついた!これをさ、ロディが隠して、それを私が見つけるっていう遊びをしよう!」

「ええー…それ面白いの?」

「絶対面白いって!先ずはやってみよ!」

下らない遊びを何度も何度もさせられた。

「あ、見つからなくても、どうせ消えるから気にしなくても良いよ!あと、燃えないし!」

「それはそうだけど…」

全く面白くも無いのに、何故させられるのだろう。

しかし、この遊びはリーレンの虐殺に加担していることに、後で気付くことになるとはロディは思わなかった。

悲劇の終わりまで、あと2週間前。








ロディは静かに夜空を見上げていた。

(やはり死ねなかった…だけど、少しずつ私の望んでいる結末に繋がっている。)

一番大きいところは、村から出れたところか。

全員死んだ最初は、それでも村の外に出ることが出来なかった。

神の紋章である、『氷結の紋章』の力を以ってしても、結局古い魔法の方が上回った。

だから、自力で建物を破壊した。

魔法の綻びを何とかして、たった一人で作り上げた。

なんとか、『氷結の紋章』、『血鬼の紋章』、『雷撃の紋章』の三つの馬鹿火力で強引に魔法を破壊することが出来た。

誓約魔法はある意味解けない呪い。

それを、神の紋章二つの力が無いと壊せなかった。

(最初はただの雷の紋章かと思ったけど、村には雷の紋章よりも上位互換である『雷鳴の紋章』を使える人がいた…それよりも速く、そして闇をも穿つ程の美しい稲光は『雷撃の紋章』以外ありえない…というか、神に愛されている者の能力でなんとなく分かるし。)

神は手段を選ばなくなってきた。

だから、ロディに対して、リーレンの居場所が分かる。

魔法でも何でもない。

いえば、ただの超能力。

そして、異常なまでの魔法の発達。

出せる魔法が急にたくさん増えた。

今更、村の人間を殺せるほどの力を手に入れた。

それに、弓矢の命中率。

百発百中の精度なのは、昔からの才能ではない。

寧ろ、下手糞だった。

努力しても、無意味だった。

今更、その努力を踏みにじるような力を手に入れても嬉しくない。

ただ、リーレンを殺す。

それが出来たら、後は簡単。

「リーレンを殺して、私のしたいことをしたら…私の物語は…ようやく悲劇でなくなる。」

他人から見たら、きっと悲劇だろう。

三人にはきっとつらいところを見せてしまうかもしれない。

だが、やっとのチャンスだ。

神を殺して、神に愛された者に変わる。

そうしたら、ただの人だ。

「もしかしたら、私はただの人に、なりたかったのかな…」

この世界に自分の名前を呼んでくれる人はいない。

あの旅人に、自分の名前を言いたい気持ちは実はある。

忘れないでほしい。と。

だけど、それは呪いだ。

一番ロディが恨んだものだ。

それを押し付けてはいけない。

「私の信じる神よ…あの三人は…私の我儘で殺さないで…私の最初で最期の願いは叶えてください。」

ロディは祈った。

どんなことも自分の力だけで成そうとしたロディが初めて、神に助けを求めた。

力も要らない。

ただ…関係ない人は死んでほしくなかった。

今まで、散々殺したいと思っているのに、恩着せがましいのかもしれないが。

「最初で最期の私がやろうとしていること…絶対に成す。やり始めた時期が遅くても…!!最後に神が選ぶのは私だ…!」











「死にそうにないわよ。」

「流石にな。」

エレスト達は彼女を見ていた。

「まあ、帰ってくるだろ。」

「それもそうね。」

「じゃあ、俺達は、部屋に戻るか?」

「それがいいんじゃないか?」

「…あの子が満足する結果になったら良いわね。」

「ああ。そうだな。」

「じゃあ、帰ろう。」

エレスト達は宿屋に戻っていった。

無事に、何事もなく次の日となった。

決戦はとうとう次の日になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...