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44 オリュンポス2
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オリュンポス神殿前。
円柱形のオリュンポス神殿に到着した吸血鬼の三人は、神殿を囲むように三カ所に散らばっていた。
それぞれが出した血霧で神殿を取り囲み、それを入り口や窓などの隙間から中へ侵入させる。
神殿内に広がった血霧はさらに各部屋へ侵入し、解鍵しながら敵の人数や仕掛けなどを探っていく。
さらに、三人はそれぞれの血の眷属——イリヤとブラッドは鳥、キャリーは蝶を大量に作り出し、神殿の外の警戒にあたらせた。
しばらくすると、イリヤから死精霊を経由して第三部隊全員へ連絡が入る。
『報告する。神殿内に合計で五人の神がいる。ヘラ、アテナ以外の場所は特定できた。不明の二人は特殊な術で姿を消しているようだが、この神殿にいることは確かだ。そちらの各死精霊に神殿内の情報を送った。各自確認してくれ』
『了解。神殿内の状況は?』
ハデスがイリヤに質問した。
『一部屋以外はすでに魔法鍵を解除済みだ。その一部屋は強靭な結界が張られていて、我々三人の血では解除できなかった』
『問題ない。今から我々は神殿内へ潜入する。三人は合流してくれ』
『了解』
ミカエル隊(ミカエル、ジーク、ブラッド、キャリー)はアテナ救出へ、ハデスはベルセポネ探索へ、アレス隊(アレス、ロディユ、イリヤ)はゼウスとの戦いに向けてそれぞれ分かれた。
*
オリュンポス神殿内廊下。
『——ちょっと待て……』
移動していたイリヤは急に立ち止まった。
同じ時、別の場所にいたブラッドとキャリーも異変を感じ取る。
『いたはずの神二人が消えた……』
『どういうことだ?』
イリヤの発言に、アレスは怪訝な表情を浮かべた。
『その直後、ゼウスの様子が変わったんだ……まるで別人になったように』
『なるほど。我々がここに来たから、体を強化するために神二体を飲み込んだな。おそらく、アフロディテとヘパイストスだろう』
『アレスさんも気をつけてくださいね』
ロディユはアレスの背中を心配そうに見つめる。
『心配する必要はない。オーディンからそれを回避する術を教わった。そんなことより、ゼウスの位置は変わったのか?』
『変わってない』
イリアの返答にアレスは口角を上げた。
***
豪華な家具が置かれた一室に、薄手のショールを羽織った下着姿の女がいた。
大きな赤いソファーに足を投げ出し、笑みを浮かべながらグラスに入った赤い酒を喉へ流す。
「ふふふっ」
女は黒から白へ変わった自分の翼を愛おしそうに撫で、それを眺めながらもう一口酒を含む。
そんな至福の時間を味わっていると——。
女は、突然グラスを落とした。
「あ゛っ!!!」
胸を押さえ、苦痛の表情を浮かべていた。
「ゔ……」
女はうつ伏せになってもがき苦しんでいると、床に映った人影に気づいた。
背筋を凍らせ、恐る恐る視線を上げる……。
そこには、冷たい視線を向けるハデスが立っていた。
「せっかくもらった魂が潰される気分はどうだ? ベルセポネよ」
「どうして……」
ハデスは口角を上げる。
「お前がいつか神域へ寝返ることなど想定済みだ。その時のために呪いを仕掛けておいた。お前が冥界へ輿入れする時にな」
それを聞いたベルセポネは愕然とする。
「ヘラから新しい魂をもらったようだが、それは私にとっては好都合だ。お前を完全に始末することができるからな。この呪いを受けた者は冥界にさえ行けない。完全な無にかえる」
「ふふっ……あなたが帰る冥界は……もうお終いよ……。奈落の門が……」
話の途中で魂は破裂し、ベルセポネは力が抜けるようにソファーから落ちた。
「最後まで余計なことをする女だな……」
ハデスはため息をついた。
***
ブラッドとキャリーは、眷属を使ってヘラとアテナの痕跡をたどりながら廊下を歩いていた。
ミカエルとジークは、その二人の後ろにいる。
「——ミカエル」
突然、ミカエルは敬愛する主人の声を耳にし、立ち止まった。
その直後、足元に魔法陣が展開・起動する。
ジークは慌ててミカエルの腕を掴み、そこから離脱させようとするが——。
二人は床に飲み込まれるように消えてしまった。
それはあまりにも一瞬で、ブラッドとキャリーは助ける時間さえ持てなかった。
『——さらわれた二人は、ヘラかアテナがいる場所に連れて行かれたと思うのだが?』
『私も同感よ。仲間二人の血なら完全に追える。急ぎましょう!』
ブラッドとキャリーは急いで眷属に指示を出した。
円柱形のオリュンポス神殿に到着した吸血鬼の三人は、神殿を囲むように三カ所に散らばっていた。
それぞれが出した血霧で神殿を取り囲み、それを入り口や窓などの隙間から中へ侵入させる。
神殿内に広がった血霧はさらに各部屋へ侵入し、解鍵しながら敵の人数や仕掛けなどを探っていく。
さらに、三人はそれぞれの血の眷属——イリヤとブラッドは鳥、キャリーは蝶を大量に作り出し、神殿の外の警戒にあたらせた。
しばらくすると、イリヤから死精霊を経由して第三部隊全員へ連絡が入る。
『報告する。神殿内に合計で五人の神がいる。ヘラ、アテナ以外の場所は特定できた。不明の二人は特殊な術で姿を消しているようだが、この神殿にいることは確かだ。そちらの各死精霊に神殿内の情報を送った。各自確認してくれ』
『了解。神殿内の状況は?』
ハデスがイリヤに質問した。
『一部屋以外はすでに魔法鍵を解除済みだ。その一部屋は強靭な結界が張られていて、我々三人の血では解除できなかった』
『問題ない。今から我々は神殿内へ潜入する。三人は合流してくれ』
『了解』
ミカエル隊(ミカエル、ジーク、ブラッド、キャリー)はアテナ救出へ、ハデスはベルセポネ探索へ、アレス隊(アレス、ロディユ、イリヤ)はゼウスとの戦いに向けてそれぞれ分かれた。
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オリュンポス神殿内廊下。
『——ちょっと待て……』
移動していたイリヤは急に立ち止まった。
同じ時、別の場所にいたブラッドとキャリーも異変を感じ取る。
『いたはずの神二人が消えた……』
『どういうことだ?』
イリヤの発言に、アレスは怪訝な表情を浮かべた。
『その直後、ゼウスの様子が変わったんだ……まるで別人になったように』
『なるほど。我々がここに来たから、体を強化するために神二体を飲み込んだな。おそらく、アフロディテとヘパイストスだろう』
『アレスさんも気をつけてくださいね』
ロディユはアレスの背中を心配そうに見つめる。
『心配する必要はない。オーディンからそれを回避する術を教わった。そんなことより、ゼウスの位置は変わったのか?』
『変わってない』
イリアの返答にアレスは口角を上げた。
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豪華な家具が置かれた一室に、薄手のショールを羽織った下着姿の女がいた。
大きな赤いソファーに足を投げ出し、笑みを浮かべながらグラスに入った赤い酒を喉へ流す。
「ふふふっ」
女は黒から白へ変わった自分の翼を愛おしそうに撫で、それを眺めながらもう一口酒を含む。
そんな至福の時間を味わっていると——。
女は、突然グラスを落とした。
「あ゛っ!!!」
胸を押さえ、苦痛の表情を浮かべていた。
「ゔ……」
女はうつ伏せになってもがき苦しんでいると、床に映った人影に気づいた。
背筋を凍らせ、恐る恐る視線を上げる……。
そこには、冷たい視線を向けるハデスが立っていた。
「せっかくもらった魂が潰される気分はどうだ? ベルセポネよ」
「どうして……」
ハデスは口角を上げる。
「お前がいつか神域へ寝返ることなど想定済みだ。その時のために呪いを仕掛けておいた。お前が冥界へ輿入れする時にな」
それを聞いたベルセポネは愕然とする。
「ヘラから新しい魂をもらったようだが、それは私にとっては好都合だ。お前を完全に始末することができるからな。この呪いを受けた者は冥界にさえ行けない。完全な無にかえる」
「ふふっ……あなたが帰る冥界は……もうお終いよ……。奈落の門が……」
話の途中で魂は破裂し、ベルセポネは力が抜けるようにソファーから落ちた。
「最後まで余計なことをする女だな……」
ハデスはため息をついた。
***
ブラッドとキャリーは、眷属を使ってヘラとアテナの痕跡をたどりながら廊下を歩いていた。
ミカエルとジークは、その二人の後ろにいる。
「——ミカエル」
突然、ミカエルは敬愛する主人の声を耳にし、立ち止まった。
その直後、足元に魔法陣が展開・起動する。
ジークは慌ててミカエルの腕を掴み、そこから離脱させようとするが——。
二人は床に飲み込まれるように消えてしまった。
それはあまりにも一瞬で、ブラッドとキャリーは助ける時間さえ持てなかった。
『——さらわれた二人は、ヘラかアテナがいる場所に連れて行かれたと思うのだが?』
『私も同感よ。仲間二人の血なら完全に追える。急ぎましょう!』
ブラッドとキャリーは急いで眷属に指示を出した。
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