【完結・R18】苦しいだけの愛なんだ〜婚約者の御曹司に執着されていたなんて別れを切り出すまで知りませんでした〜

堀川ぼり

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34 ※凪視点

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「……チェーン邪魔。開ける気あるならちゃんと開けてくれる?」
「話をしたいだけで中に入れるつもりはないからな。出てきただけ十分だろ」

 仮にも初対面の相手に最初から喧嘩腰。
 特に自己紹介をした覚えもないけど、大事な婚約者と番った相手が僕だと知っているなら話は早い。

「僕の番が中にいると思うんだけど連れて帰っていい? 別れ話する時間は十分あったでしょ」
「卑怯な真似して無理やり番ったくせに勝手なこと言わないでくれるか? 自首しに行くなら連れてってやるから、先にあの子との繋がり全部切れ」

 分かりやすい敵意が自分に向けられていることに少し安心する。
 よかった。コイツが彼女に酷く執着してるって思っていたの、僕の勘違いじゃないみたいで。

 あれだけ大事に囲っていた子が他の奴と番って帰ってきて、平常でいられる方がおかしい。
 急な来客に対応するくらい冷静なのかと思って少し驚いたけど、ちゃんと気が立っているし、彼女に対する執着心は全く消えてない。

 彼女の匂いが少し混じっているあたり、激昂して手を出した後だろう。
 直接話して感じたこの直感は、ほとんど確信に近い。

「自首したいならそっちがすれば? 逆上して襲って、僕よりよっぽど酷いこと色々してるでしょ。僕は由莉ちゃんが気持ち良いって言ってくれることしかしてないよ」
「はぁ?」
「キスしながら一番奥押すと、簡単にイッて凄い可愛い顔してくれたけど、君にも同じ反応してくれた?」

 煽るように言うと、苛立ちを隠しもしない顔で睨まれる。
 何を言われようがどうでもいいし、こんなやり取りで冷静さを欠いてくれるなら好都合。

「初めてのセックスだって言ってたけど、凄く気持ち良さそうな顔してたよ。一回くらいなら目の前で見せてあげようか?」
「強制的にヒート起こして襲っただけのくせに、彼女が望んでしたような言い方するなよ」
「望んで自ら首輪を外したのはあの子の方だよ。君から逃がすきっかけを作ってあげただけで、僕は番になる事を強制なんてしてない」
「ヒート中にまともな思考ができる訳ないだろ。由莉は俺から逃げたいなんて思ってないし、昨日話したら俺と結婚するって言ってくれたが?」
「……ああ、まだそういう感じなんだ」

 長く一緒にいて積もった情のようなものだってあるだろうし、一回セックスに持ち込まれたくらいじゃ由莉ちゃんは分からないのかな。
 気持ちがあればそのうち身体も慣れて、いつかは受け入れられるとでも思っているんだろうか。
 今後も絶対に気持ち良く思える事なんてないのに。

(どうしようかな)

 本当は今直ぐにでも連れて帰りたいけど、無理に引き離したら相手への想いが強くなっちゃうだけか。

 どうせ今までに散々触られてるし、あと数回この男が手を出すくらいなら誤差の範囲だ。
 それならもういっそのこと、早く気持ちが消えるように仕向けた方がいいような気がする。
 他の奴のことをいつまでも想ってるとか、僕は耐えられないし。

「ねぇ、由莉ちゃん連れて来てくれる?」
「は、会わせるわけないだろ」
「君と結婚したいって本当に由莉ちゃんが言ってるなら、条件付きで番の解除してもいいよ」
「は?」
「だから一度会わせてくれる? 君の言い分だけで判断できない」

 番の解除って言葉を出した瞬間、分かりやすく瞳が揺れた。
 全く信用してないって顔をしているのに、聞かずにはいられないのだろう。険しい表情はそのままで、東条がゆっくりと口を開く。

「……解除するつもりなんて本気であるのか」
「由莉ちゃんの口から直接頼まれたら断らないよ。でも君が勝手に言ってるだけじゃ納得できないから、会わせろって言うのは当然でしょ」
「条件付きって言ってたよな。由莉に何させる気だ?」
「うん? 子供できたら手放してもいいよって、それだけ」
「は……?」

 笑いながら落とした僕の言葉に、目の前の男が分かりやすく表情を歪ませる。
 由莉ちゃんと遊びで番ったって思われたかもしれないけど、それならそれでいいや。
 この場では僕の本心なんて伝わらない方が絶対に良いし。

「オメガは妊娠しやすい性だけど、番以外の人間とセックスしても子供ができる確率が1%程度しかないって知ってる?」
「そのくらい知ってる」
「それなら分かるでしょ。可能性は低いけど絶対に無理なわけじゃないし、数打てばできるかもしれないんだよ。もしそうなったら諦めて手放してあげる」
「馬鹿なこと言うなよ。妊娠するまで俺に抱かれろなんて話を、自分が番った相手にする気か?」
「するよ? 由莉ちゃんが君との結婚望んでないならそんなことさせるの可哀想でしょ? だからちゃんと説明して、本人がこの条件で了承するなら契約する。番の関係解消するって約束してあげるよ」
「……お前、本気で何がしたい?」

 無理やり突っ込んで中で出して、由莉ちゃんがコイツのこと完全に嫌いになった状態で僕のところに来て欲しい。
 そんな言葉を笑いながら覆い隠して、半分本音を混ぜながら言葉を吐く。

「番以外との行為なんて苦しいだけだから、それを乗り越えてでも結婚したいって言うなら本気なんだって認めてもいいかなって思って。証明してよ、お互い好き合ってるんでしょ?」

 この条件で僕が引かないと分かれば、この男は絶対にするだろう。
 妊娠させるために中で出して、確率の低い行為を何度も繰り返して彼女を泣かせて、そしてお互いに知ればいい。
 
 一緒にいても擦り減るだけの関係だって、時間が経てば嫌でも分かるんだから。
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