聖白薔薇少女 

平坂 静音

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断髪 一

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「……西条雪葉です」

「その髪、長すぎるわよ。切るように言われてないの?」

 美波はあわてて説明した。

「あの、わたしたち入寮したばかりなんで。今度、切ることになっているんです」

「ふうん……。まぁ、今回はいいわ。以後、気をつけなさいよ。私は一年赤薔薇組のジュニア・シスターのバーバラよ」

 雪葉の顔が微妙になる。一年生にこんな口の聞き方をされることにおさまりがつかないのだろう。

「なによ、あれ」

 紗江が去ってから悔しげに言うのに、美波はあわてて人差し指を自分の口にあてた。

「ジュニア・シスターに逆らったり、目をつけられたりしたら、困ったことになるんだって。我慢して」

「だって、あの子一年生でしょう? それがあんな口の聞き方して……。あなた悔しくないの?」

 勿論、美波だとて不快だが、トラブルは避けたいものだ。

「まぁ、それでも、今日は髪を洗える日で良かったのよ」

 あふれるような雪葉の黒髪を見ながら言うと、またも彼女の顔色が変わる。だんだん美波は説明するのに疲れてきた。

「髪を洗う日まで決めらているの?」

 昨日聞いた規則を説明すると、雪葉は失神するのではないかと思うほど取り乱した。

「そ、そんなの困るわ。夏に髪が週三回しか洗えないなんて!」

「……だから、髪切った方がむしろ楽じゃない?」

 洗髪が週三日なら、いっそショートカットの方が手入れが簡単でいいだろう。美波はあきらめ半分でそう告げた。

「そ、そんなの……、そんなの、困るわ。パパは私のこの長い髪が好きだって」

 その言葉に美波はつい笑ってしまっていた。同時に、父親を慕っているらしい雪葉がすこし羨ましい。美波の父は滅多に家に帰ってこず、顔を合わせることすら少ないほどだ。

「ファザコンなのね」

 順番がまわってきてシャワー室が空くと、美波たちは向かって右側のシャワーブースへ行く。そこで近くにいた中年のシスターがまた雪葉に注意した。

「あなた、新入生ね。言っておきますが、そのうっとしい髪は今週中に切るんですよ」

「……でも、髪の長い生徒もいます」

 黙っておけばいいものを、雪葉はそんなことを言い返す。

「髪が長くてゆるされるのはジュニア・シスターか、プレ・ジュニア・シスターだけですよ」

 雪葉の顔色がその言葉にすこし変わった。

「それじゃ、ジュニア・シスターとかプレ・ジュニア・シスターとかになれば、髪を長くしてもいいんですか?」

 ほのかな希望をこめた言葉にその中年のシスターは冷たい目を向ける。
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