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二
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そんな美波を見下ろし、学院長は目をゆがめて笑った。ひどく邪悪な顔になる。
「自分で言っているじゃないか。誰もベッドにあったとは言ってないよ」
(ああ……!)
美波は絶望した。それでも、絶望の底にはまだ捨てきれない希望の火が灯っている。
肉を打つ不気味な音がまた起こり、美波は今度は右頬に痛みを感じた。
生徒たちが怯えた顔で学院長を見ている。痛みと屈辱を感じながらも、内心美波はすこしいい気味だと思った。
今の学院長は生徒たちのまえで聖職者の仮面を捨ててしまい、残酷な性格を丸出しにしているのだ。
「この淫売のあばずれ! おまえたちみたいな堕落した女を救うのは無理だね! おまえのような女は、あいつみたいに神罰を受けるんだよ。神の怒りを受けてあいつみたいに死ぬんだよ! 死んで、地獄に落ちるんだ!」
学院長は普通の状態ではないようだ。青い目は狂気をはらんでいることが周囲の人間全員にわかった。
「そうさ、おまえもあの女のように死ぬんだ! 男といやらしいことをして神の怒りに触れ、地獄に落ちるんだ!」
完全に冷凍庫と化した食堂に、奇妙に間延びした声がひびいた。
「あいつって、誰ですか?」
声の主はレイチェルだ。
気に入りの生徒のはずだが、今の学院長は彼女を眼鏡ごしに睨みつけると、さも憎々しげに言い放つ。
「ふん、私の妹だよ。妹といっても血のつながりはないけれどね、ありがたいことに」
そこで学院長は一息ついた。
「いい機会だから、おまえたちに教えてやろう。私の妹はね……、エミリーという名だったけれど、虚栄心が強くて淫らで、おまえたちのようなとんでもない淫売で、十三、四のころから男といちゃつくような娘だったんだ。こともあろうに神父にまで色目を使って、その罰が当たったのか、十七で死んだんだよ」
「ど、どうして死んだんですか?」
訊いたのはやはりレイチェルだった。
「神罰さ。神罰以外のなにものでもないさ。男と接吻した後すぐ死んだんだからね。そのまま息を引き取ったんだ。私はその様子をこの目で見たんだから間違いない。あれは、その好色さゆえに、ふしだらさゆえに、神の怒りを受けて死んだんだ。あんたたちもそうなるんだよ!」
そのときドアが開いてジュニア・シスターの紗江が入ってきた。どうやら彼女もレイチェルとおなじく大部屋で生徒たちの私物やベッドを調べていたようだ。
「あの、私が調べた部屋には特にあやしいものはありませんでした」
食堂の雰囲気が違うのに気付いたのだろう、おずおずと怯えた顔で言う。
「自分で言っているじゃないか。誰もベッドにあったとは言ってないよ」
(ああ……!)
美波は絶望した。それでも、絶望の底にはまだ捨てきれない希望の火が灯っている。
肉を打つ不気味な音がまた起こり、美波は今度は右頬に痛みを感じた。
生徒たちが怯えた顔で学院長を見ている。痛みと屈辱を感じながらも、内心美波はすこしいい気味だと思った。
今の学院長は生徒たちのまえで聖職者の仮面を捨ててしまい、残酷な性格を丸出しにしているのだ。
「この淫売のあばずれ! おまえたちみたいな堕落した女を救うのは無理だね! おまえのような女は、あいつみたいに神罰を受けるんだよ。神の怒りを受けてあいつみたいに死ぬんだよ! 死んで、地獄に落ちるんだ!」
学院長は普通の状態ではないようだ。青い目は狂気をはらんでいることが周囲の人間全員にわかった。
「そうさ、おまえもあの女のように死ぬんだ! 男といやらしいことをして神の怒りに触れ、地獄に落ちるんだ!」
完全に冷凍庫と化した食堂に、奇妙に間延びした声がひびいた。
「あいつって、誰ですか?」
声の主はレイチェルだ。
気に入りの生徒のはずだが、今の学院長は彼女を眼鏡ごしに睨みつけると、さも憎々しげに言い放つ。
「ふん、私の妹だよ。妹といっても血のつながりはないけれどね、ありがたいことに」
そこで学院長は一息ついた。
「いい機会だから、おまえたちに教えてやろう。私の妹はね……、エミリーという名だったけれど、虚栄心が強くて淫らで、おまえたちのようなとんでもない淫売で、十三、四のころから男といちゃつくような娘だったんだ。こともあろうに神父にまで色目を使って、その罰が当たったのか、十七で死んだんだよ」
「ど、どうして死んだんですか?」
訊いたのはやはりレイチェルだった。
「神罰さ。神罰以外のなにものでもないさ。男と接吻した後すぐ死んだんだからね。そのまま息を引き取ったんだ。私はその様子をこの目で見たんだから間違いない。あれは、その好色さゆえに、ふしだらさゆえに、神の怒りを受けて死んだんだ。あんたたちもそうなるんだよ!」
そのときドアが開いてジュニア・シスターの紗江が入ってきた。どうやら彼女もレイチェルとおなじく大部屋で生徒たちの私物やベッドを調べていたようだ。
「あの、私が調べた部屋には特にあやしいものはありませんでした」
食堂の雰囲気が違うのに気付いたのだろう、おずおずと怯えた顔で言う。
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