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六
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生徒たちの目があるからこそ、さも困った顔をしているが、内心では雪葉の命がどうなろうが学院長にとってはたいした問題ではないのだろう、ということをシスターも杉も知っていた。
晃子が困惑した顔で、もくもくと出てくる煙を見上げている。
その頃になると、守衛たちが駆けつけてきた。後ろには呼びに行ったレイチェルがおり、息を切らしながら戻ってきた。
長身の若い守衛は煙を見るや、叫んだ。
「すぐ消防車を呼ばないと。加藤さん、携帯持っていますか?」
「ああ」
加藤という初老の男はあわてて胸のポケットから携帯を取り出す。
「だ、駄目よ!」
「もう、無理です。消防車を呼ばなかったら問題になりますよ!」
「なかに、雪葉って子がいるの」
こんなときに間延びしたのんきな口調で晃子が告げる。男の顔色が変わった。
「どこにいるのかわかるか?」
「多分、二階の部屋。その子も妊娠中なの」
「くそっ!」
学院長があわてたのは、煙の出てくる建物のなかへ男が行こうとするからだ。
「ま、待って、パトリック、止めなさい! 危ないでしょう!」
すがりつかんばかりに学院長が必死にその腕をつかむのを、パトリックと呼ばれた男は振りはらった。
「もう、止めよう。もう、これ以上犠牲者を出してはいけないんだ。加藤さん、すぐ消防車を呼んでください! 救急車も!」
「だ、駄目よ! 駄目!」
男は振り返ると、学院長にむかって低くつぶやく。聞こえた言葉に、晃子は驚いた。
――もう、終わりにしようよ、母さん。
男はそう言うと、今やオレンジ色の火を見せはじめた建物に向かっていった。
晃子が困惑した顔で、もくもくと出てくる煙を見上げている。
その頃になると、守衛たちが駆けつけてきた。後ろには呼びに行ったレイチェルがおり、息を切らしながら戻ってきた。
長身の若い守衛は煙を見るや、叫んだ。
「すぐ消防車を呼ばないと。加藤さん、携帯持っていますか?」
「ああ」
加藤という初老の男はあわてて胸のポケットから携帯を取り出す。
「だ、駄目よ!」
「もう、無理です。消防車を呼ばなかったら問題になりますよ!」
「なかに、雪葉って子がいるの」
こんなときに間延びしたのんきな口調で晃子が告げる。男の顔色が変わった。
「どこにいるのかわかるか?」
「多分、二階の部屋。その子も妊娠中なの」
「くそっ!」
学院長があわてたのは、煙の出てくる建物のなかへ男が行こうとするからだ。
「ま、待って、パトリック、止めなさい! 危ないでしょう!」
すがりつかんばかりに学院長が必死にその腕をつかむのを、パトリックと呼ばれた男は振りはらった。
「もう、止めよう。もう、これ以上犠牲者を出してはいけないんだ。加藤さん、すぐ消防車を呼んでください! 救急車も!」
「だ、駄目よ! 駄目!」
男は振り返ると、学院長にむかって低くつぶやく。聞こえた言葉に、晃子は驚いた。
――もう、終わりにしようよ、母さん。
男はそう言うと、今やオレンジ色の火を見せはじめた建物に向かっていった。
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