龍蘭帝国奇談夜話

平坂 静音

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痴蝶戯画 五

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「それで、まぁ、眉雪が嫁入りして一年ぐらいで生まれた子は、これは男の子だったんですが、眉雪だって、そりゃ喜んだそうですよ。それが十日足らずで亡くなるなんて」
「原因は何なの?」
「よくわからないらしいんですが、寒いころだったので悪い風邪でももらってしまったのか。急に泣き声が激しくなったかと思ったら、ころ、っとね。まぁ、赤子というのはいつどうなるかわからないものですからね、本当に」
「お気の毒に……。その眉雪さん、さぞ力を落としていることでしょうね」
「ええ……」
 ここで、一瞬、また間があった。
「でも、さすがに若いだけあって、今はかなり元気になってますよ。ありがたいことに」
「え? また、おめでた?」
「今度こそは無事に生まれて育ちますように、って、眉雪はもちろん、ご隠居様も大変な気の入れようでね。ご隠居様もかなりのお歳だっていうのに、三日とあけずに寺院に参ってお祈りしてらっしゃるようで。金に糸目をつけずに、薬や、滋養にいいものを買い集めているそうですよ」
「わかるわ。今度こそ、無事だといいわね」
 言葉にはしみじみとした情がこもっている。
「私も最初の子、息子だけれど、あの子のことで、どれだけ悩んだか。しょっちゅう熱を出したり、お腹をこわしたり。そのたびに医者を呼んだり、薬屋に走ったりと」
「上の坊ちゃんは、お身体が弱かったですからねぇ」
「ええ。おかげで、それは大変だったわ。二人目の、あの娘は健康そのもので、ありがたいことはありがたいけれど、あんな変わり者になってしまって」
「あら、春玉さん、相変わらずなんですの?」
「相変わらずよ。室にこもって本ばかり読み耽って。そんな暇があるならお裁縫でも習えばいいのに。あんなんで、どうするのかしら」

「その続きはもういいわ」
 春玉は手をふった。だが、一重の両目はきらきらしている。
「でも、確かに不思議な話ね。奥さん二人が病死で、六人も子どもが生まれて、育ったのは一人だけだなんて」
「その一人もかなり身体が弱いそうですよ。あのお家は呪われているんじゃないかっていう、もっぱらの評判だそうです」
 これは隣家の下働きの女中から聞いた話だ。主が噂好きだけあって、隣家の使用人もみな噂好きの地獄耳である。その女中は、さらにおもしろい話を黄風に聞かせてくれた。
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